モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 タイトルがちょっとアレですが気にしてはいけない……
ハジメ君が死ん……もとい気を失った後の話になります。
今回は例の娘とフロンティアで登場した武器が活躍します。

※本文の最期が矛盾していたので軽く修正入りました。
 ご指摘ありがとう御座います。


幕間の物語 荒ぶる獣を穿つは天に遣わされた乙女也

 突如町を襲った地震に伴う周辺のモンスター達の暴走。

これらは町に滞在していた数十人のハンター達の働きによって鎮静化されていた。

彼女、プリンセス・テレサベルはその中で最も激戦区と呼ばれる東門にいる。

 

「えーいっ」

 

 狩りの最中でありながら、テレサベルの発する気の抜けた掛け声は変わらない。

両手に構えた棍棒のようなものを右、左と交互に打ち込む姿はさながら拳法の達人のようだ。

驚くべきは彼女の細腕から放たれた棍棒の打撃を食らったモンスターが軒並み倒れていることだ。

負傷した兵士を下がらせるために前線に出ていた兵士の一人が口を開けて放心している。

 

「……嘘だろ……あの女……!?ありゃあ人間の動きじゃねえ……」

 

「馬鹿ッ!今更例外のハンターに人並みの常識を期待してんじゃねえ。さっさと退くぞ!」

 

「おいそっち重いぞ気を付けろ!」

 

 唐突だがハジメが東門から更に奥へ進んだ後、モンスターの群れが押し寄せていた。

こればかりはタイミングが悪かったとしか言いようがないのだが、東門から半径5キロの範囲には大型、中型のモンスターだけで()()ほど集まってきていた。

テレサベルと兵士達が到着してから僅か三十分の出来事である。

彼女はたった一人で十体の怒れるモンスターの群れに突っ込み既に()()()()()()()

 

「やあーっ」

 

 華奢な足からは想像も出来ないような踏み込みで()()()()()()()跳躍するテレサベル。

人間離れした芸当を披露する彼女の動きを可能にしているのは、その手にした武器に秘密がある。

その武器を持つことを許されたのは上位の先、G級(マスターランク)と認められた一部のハンターだけ。

一対の打撃、地を駆け、宙を舞い、敵を穿つ武器の名は穿龍棍(せんりゅうこん)

 

「プリンセスが圧倒している今の内だ!門の守りを固めるぞ!!」

 

 彼女の動きに見惚れていた兵士達は上官の声で我に返り早々とその場から去った。

空中からヒラリと優雅な着地を決めた彼女は顔を上げて先にいるモンスターに微笑んだ。

 

 ”岩穿テツカブラ”―――”鬼蛙”の別名で知られる両生種”テツカブラ”の特殊個体だ。

通常のテツカブラが朱色の外殻を纏っているのに対して、岩穿テツカブラは青い斑紋を全身の至る所に浮かべているのが特徴の一つであり、更には頭部の突起や牙が異様な成長を遂げている。

左右非対称の牙の強度は鉄を軽く上回るという。

 

「あらあらダメよ~貴方はこんなところに来ちゃいけないわ」

 

 怒りで口から白い湯気を吐き出しながら目の前の矮小な獲物を睨む岩穿テツカブラ。

対して彼女は朗らかに笑いながら困った風に片手を頬に当てて小首を傾げる。

今にも飛び掛かりそうな岩穿テツカブラに子どもを叱りつける母親のような言葉をかけた。

 

「良い子だから……ね?貴方の住むお家に帰って頂戴」

 

―――グゴオオォォォォォォォッ!!!

 

 岩穿テツカブラは問答無用と彼女に向かって一歩下がった状態から地面を牙で掬い上げるような形で彼女ごと周りの地面を突き上げた。

しかし宙に飛んだ地面だったものの中にテレサベルの姿はない。

 

 彼女は岩穿テツカブラが攻撃を仕掛ける僅かな間に真横へと飛んでいた。

手にしている穿龍棍の片方からうっすらの白煙が立ち昇っている。

攻撃をされたにも関わらず、余裕のある笑みを浮かべたままだ。

 

「そう~遊びたいの~?……残念ねぇ」

 

 と笑顔のままに穿龍棍を左右に構えたテレサベル。

岩穿テツカブラは鬱陶しそうに前脚で彼女のいた所を薙ぎ払う。

それだけの攻撃でも地面が削れ、周囲の動植物が吹き飛ばされていく。

またしても岩穿テツカブラの攻撃は外れた。

 

「やぁっ」

 

 そんな可愛らしい掛け声とは裏腹に素早いステップを踏んだテレサベル。

二度目の回避で岩穿テツカブラの斜め後ろへと回り込んで脇腹に穿龍棍を叩き込んだ。

初撃、左手の棍から繰り出される斜め上からの打ち下ろし。

岩穿テツカブラの頑強な肉体にそれがめり込んだ直後、テレサベルは左手の根を引いて―――

 

「ていっ」

 

 ドスン!と鈍い音がして岩穿テツカブラの脇腹に棍の先端から飛び出た杭が突き刺さる。

テレサベルの追撃は止まない。今度は右手の棍で半円を描くように同じ部位を殴りつけて、更に左右を連続で打ち上げる攻撃を見舞った。

ハンマーの三分の一にも満たない大きさの穿龍棍の連撃。

遠目に見ていた兵士達の誰もが大したダメージを与えられないと思っていた。

ところが――――――

 

――――ゴォッ!?

 

 大きな呻き声を上げて岩穿テツカブラは殴られた方向へとよろめいた。

彼女は穿龍棍を抜刀したまま走り出して距離を開けさせない。

あろうことか二度のステップを踏んだ彼女は岩穿テツカブラの顔の前へと移動する。

よろめきから復帰した岩穿テツカブラが地面へと深く牙を突き立てた。

次の瞬間、自身の体よりも巨大な岩盤を牙で()()掘り起こしたのだ。

 

「あらあら~」

 

 多くのハンターを恐怖させた岩盤の掘り起こしにもテレサベルは動じない。

それどころか掘り起こす際の無防備な瞬間を狙って穿龍棍の連打を繰り出していた。

掘り起こす際に無防備となった前脚へ先ほどと同じ四連撃を繰り出す。

岩穿テツカブラはその場で姿勢を低くして力を溜める様な動作を始めた。

彼女は右へステップを踏んだ後、穿龍棍を持ったまま華麗なバック転を決める。

 

 岩穿テツカブラは四秒弱の低姿勢から宙に向かって飛び上がる。

門の向こうにいる兵士達がそれを見て悲鳴を上げた。

ギルドが公認する岩穿テツカブラ最大にして最強の攻撃”フライングボディスプラッシュ”

軽く10tは超える巨体が地面と衝突した際の衝撃は広範囲にわたって岩盤隆起を発生させる。

これを食らえば並の人間は確実に死ぬ。ハンターでも大ダメージは免れないだろう。

()()()()()()()であれば……だが……

 

「まぁ!ビックリしたわ~」

 

 地面に着地した後の硬直から回復した岩穿テツカブラの真上から声がした。

テレサベルは岩穿テツカブラが着地する瞬間に空中へと跳躍していたのだ。

その際に穿龍棍の杭を地面に向かって打ち出した結果、高さは4メートルにも届く。

 

「今度は私の番ね~えいっ、えいっ、それ~っ」

 

 気の抜ける掛け声と共に岩穿テツカブラの顔目掛けて左の棍で殴りつけるテレサベル。

間髪入れず右手の棍を回転させて角と化した頭の突起物を破壊する。

それで終わらず着地の瞬間に顔目掛けて右足、左足の順で足蹴りを食らわせた。

棍が岩穿テツカブラへと触れた瞬間、穿龍棍が赤い光のようなものを放つ。

 

「これで終わりかしら?」

 

 着地と同時に岩穿テツカブラの下顎目掛けて穿龍棍の杭を向ける。

先ほどまで打ち出された杭とは比べ物にならない威力がテツカブラを襲う。

直後、穿龍棍が当たった岩穿テツカブラの体の内側から赤い光が破裂した。

 

――――グギャアアァァ!?

 

 絶叫してその場でのたうち回る岩穿テツカブラ。

赤い光の衝撃で、巨大な牙の片方が根元から砕け散っていた。

更には頭部以外の箇所を殴られていたにも関わらず、岩穿テツカブラは眩暈を起こしてその場で転倒してしまったのだ。

この後の展開を長ったらしく書くまでもない――――――

 

「まだ息があるのかしら?もう、いいのよ~」

 

 天使のような慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、一心不乱に岩穿テツカブラを打つテレサベル。

右の棍で殴りつけ、左の根から杭で肉を抉り、その度に骨が砕ける嫌な音がした。

また数十発殴ると赤い光が穿龍棍に灯り、彼女は再び両方の杭をぶつける。

これを繰り返し()()()、眩暈から復帰するも岩穿テツカブラが死から逃れる術はなかった。

 

「ゆっくり、おやすみなさい」

 

 穿龍棍から滴る血を払って、息絶えた岩穿テツカブラから背を向けるテレサベル。

彼女は集中して気づかなかったが他のハンター達も到着したようだ。

彼女を除き到着したハンター達の中で最もハンターランクの高いものが声をかける。

 

「プリンセス、後は我々にお任せを……!」

 

「あら~いいのよ気を遣わなくて。私も町の為に出来る限りの事はさせて貰うわ~」

 

「はっ……!それと……門にいた兵士の報告によれば……我々やプリンセスが此処に来る少し前に、ハンターの青年が一足先に来ていたとの報告がありました」

 

「そう……うーん……私は見てないわ~」

 

「あそこに見えるドスゲネポス。兵士の報告では彼はあれを狩猟した後、モンスターの咆哮がする大峡谷の方角へ単独で向かったと――――――」

 

 話を遮るように彼が指さす方荒野の方からモンスターの咆哮が轟いた。

一瞬の静寂の後、応援に到着したハンター達から不安の表情を浮かべてどよめく。

今の咆哮はハンターであれば誰もが一度は耳にする轟竜のそれだ。

 

「プリンセス!!」

 

「――――――()()は私に任せて頂戴。貴方達は他のモンスターをお願いね」

 

 笑顔のまま、言葉だけは冷たさを含んだテレサベルは穿龍棍を抜刀したまま駆け出す。

応援にきたハンター達は首を縦に振る他なく、まだ迫りくるモンスター達を撃退する為に動く。

 

 

 轟竜ティガレックスは目の前の獲物が事切れたのを確かめていた。

先ほどまで威勢よく鎚を振り回していた銀毛の人間はピクリとも動かない。

飛び掛かってから数メートル斜面を転がって地面に倒れてからすぐに血の池が出来ていた。

 

 ティガレックスの怒りは度重なる急激な運動で収まりつつあった。

代わりに体は熱量の消費に比例して空腹を訴えかけている。

目の前の獲物は咀嚼する必要もなく一口で丸呑みに出来るだろう。

普段食べる草食竜や縄張りに踏み込んできた礼儀知らずの生き物に比べれば食べ応えのない生き物だが、次の餌を手に入れるまでの繋ぎにはなる。

 

 もう我慢出来ないとティガレックスの咢から涎が垂れていた。

ゆっくりと左右の前脚で獲物を囲むようにして、大口を開けた次の瞬間―――

 

「あらあら、ダメよ~その子は食べ物じゃないわ~」

 

 ティガレックスの背後から穿龍棍を構えたテレサベルが襲い掛かった。

それから数分後、テレサベルは東門まで重傷の青年ハンターを連れて戻ってくる。

青年は意識を失っているが命に別状はないとのこと。

 

 こうしてブルックの町防衛戦は兵士の犠牲を払いながらもハンター達の勝利に終わった。

モンスターの死体を回収したハンターズギルドの職員が見たのは……

前脚の爪と飛膜を破壊され、顔に無数の殴り傷を作って死亡しているティガレックスだった。

 

 




二つ名に苦戦した方が見たら「テツカブラ弱過ぎね?」と思われるかもしれませんが
この場合は穿龍棍がクソつよぶっ壊れ性能なだけなので、彼女以外のハンターが戦っていたらもう少し激闘が続いて、ハジメ君はティガレックスの腹の中に収まってしまっていたでしょう。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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