モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 こちらは魔国ガーランド後編の続きになります。
魔王アダムに強襲を仕掛けた真・神の使徒ノイント。
傍観者になるしかない清水君を余所に……タイトルでお察し……南無……
あと、清水君もかなりヤバい事実を知ってしまいます。


幕間の物語 瞬殺の後……そうだ、偵察にいこう

 

 突如アダムに襲い掛かった銀髪美少女ノイント。

彼女の背丈と同じ長さ、彼女の細腕の横幅を軽く超える大剣。

ベルセルクにあんな感じの武器あったよなぁ……主人公が使ってるアレ。

 

 錆や汚れなど一切なく、神秘的な装飾の施された宝剣とも呼ぶべきそれを軽々と扱ってノイントはアダムの顔と心臓を交差して斬ろうと押し込むが――――――

 

「クハハハッ!この程度――――――軽いッ!!!」

 

「――――――ッ……ぁっ……!」

 

 大剣二振りの斬撃を、アダムは手を前に突き出して止める。

手で受け止めたというよりは、横から見ていた俺にはアダムが何かバリアーみたいなものを突き出した掌の先から展開して斬撃を受け止め、そのまま膂力で押し返したように見えた。

 

「ご慧眼、感服致しました清水様」

 

………いやナチュラルに人の心の声を読まないで下さいってエーアストさん。

さっきの衝撃波を食らって銀髪美少女軍団には怪我一つなかったって何気に怖いな。

というかアレ止めないで良いんですか!?誰か人を呼ぶとか――――――

 

「不要です。我が主が我々と同型機である彼女如き(ノイント)に後れを取る等あり得ません」

 

「……ど、同型機?」

 

 なんだかその言い方だと貴女達がロボットみたいに思えてしまうんですが……

そんなやり取りをしている間に、膂力で壁際に吹き飛ばされたノイントさんは体勢を立て直して再び大剣を構えて突撃を仕掛けようとする。

アダムはと言えば、ニヤニヤと笑みを浮かべるばかりで追撃をする気配がない。

……確かにあんな様子を見たら、奇襲されたってのに余裕そうだねアダム。

 

「ハッハッハッ!清水よ、魔王たる者この程度の児戯に付き合う余裕を持たねばならんのさ」

 

 ほらぁ……無表情貫いてるけど鬼気迫る勢いで大剣突き立てるノイントさんに対してアダムは笑みを崩すことなく、今度は指先から展開したバリアーで刺突を逸らしながら俺の心を読む。

先ほどの俺の疑問にエーアストさんがこほんと咳払いをして話し出した。

 

「先ほど彼女が仰った通り、今の私達は魔王アダム様を唯一無二の主として仕えています。しかし創造主は別の者なのです……神エヒト……と言えばお分かりでしょうか?」

 

「――――――――――――は?」

 

 え、神エヒトって……それ、ちょ、おい……どういう事だよ!?

俺の混乱を余所に激闘は続く。ノイントは突きを連続して行っていたが全て弾かれたうえに、反撃をしてこないアダムに対して明らかに怒りの感情をぶつけていた。

距離を取って息を整え、構えも取らないアダムの隙を窺っている。

 

「その様子では我が主より未だ真実の歴史を語られていないようですね……少し長い話になりますが、よろしいでしょうか?清水様」

 

「あ、あぁ……俺は大丈夫だけど……」

 

 言葉を濁したくもなるよ……

俺とエーアストさんが暢気に会話してる間も戦闘は続いてる。

ノイントは近接攻撃では有効打にならないと判断したのか、剣の先から光属性の魔法と思われるビームみたいなものをアダム目掛けて連射し始めた。

 

 アダムは「ほう?ならばこうだ」と眉を動かして再び手を前に突き出す。

先ほどまでアダムの掌サイズしかなかったバリアーが今度はアダムを囲うほどのドーム状となって広がり、ビームもどきは全弾バリアーに当たって霧散する。

 

「ではまず神エヒトの本当の名と正体から語らせて頂きます―――」

 

―――――――――それから5分~10分間、俺は驚愕で顎が外れるんじゃないかってくらい衝撃的な事実を、淡々と語るエーアストさんから聞かされ続けた。

聞き終えると同時に向ける先のない怒りが沸々と体から溢れて来る。

 

 あいつ等(天之河達)はどうでもいいが俺は……俺はそんな下らない事の為に召喚されたっていうのか!?

神エヒトっていうのは偽りの名で、本当はエヒトルジュエっていう名前の宇宙からやってきた奴で創造神を僭称してトータスを盤上遊戯に見立てて好き放題やってる筋金入りの屑……!

―――気のせいじゃなかったらエーアストさん、後半貴女の私怨入ってません?

あ、そういう風に言ってやれってアダムが言ったのね……うん納得した。

 

 そんな神エヒトに対してアダムは反抗的な態度を取り、彼の眷属である神アルヴ―――アルヴというのも偽りの名で本名はアルヴヘイト、魔人族の神として信仰される事で戦争に意識を向けるよう煽動していたとの事だが、現在はアダムが勢いを抑えているとのこと―――はこれに対処すべく当時エヒトルジュエの制御下にあったエーアストさん達を総動員して襲ったけど……

 

「我が主には色々な事を教えられました……」

 

 ぽっ///……と此処で初めて真っ白い無機質だった肌に朱色が差した。

エーアストさんが文字通り乙女の顔をして、現在は空中戦へと移行した天使の羽もどきを生やしたノイントさん相手に背中から竜の羽を生やしたアダムがドッグファイトを繰り広げている。

勿論、追う側はノイントさんでアダムは笑いながら逃げ回っていた。

 

「痛み、苦しみから始まり……敗北を知り……私に、自由と生をお与えになったのです」

 

 この時、俺は一瞬「生」を「性」と勘違いして内股になりそうだった。

エーアストさん曰くアダムに仕える銀髪美少女軍団の全員が同じらしい。

……あの、無理してその呼び方しなくていいですよ?あ、こっちの方が可愛いからいいですか。

 

 突き破られた天井から出て行ったアダムをノイントが追いかける。

屋敷の外が騒がしくなっているが、エーアストさんの傍らで話に聞き入っていたアインス・アルサークさんが事態の収束をしに行くとの伝達をして駆け出して行った。

物凄い速さで飛び回るアダムを見たエーアストさんが更に続けた。

 

「私達はこの体に生まれ、名を与えられましたが……生きる意味を持ちませんでした。アダム様は「なら俺の下で従者として働け。500人程度は雇わねば、屋敷の掃除も一人では大変だろう。体を動かして、暇な時は書物を読み漁り、この世界の歴史や文化に触れるが良い……そうすれば自然とお前達が生きる意味というものが見えて来る筈だ、それまで俺の傍に居ろ」……それを聞かされた時、私達は生まれて初めて涙というものを覚えました」

 

………アダムも、そんなヒーローみたいな事を言えるんだな……

いや魔王って肩書からして完全に人間側からはヒール扱いされてるんだろうけど!

あの湖の町での行いとかよく考えなくてもヒールの振舞いそのものだし!!

 

 そんな一人ノリツッコミをかましていると、決着がついたようだ。

再び天井から白い光が―――力尽き果てたノイントが屋敷の床へと倒れる。

……その、こんな状況で言うのもアレなんだけど……彼女と瓜二つのエーアストさんが隣にいるから物凄く言いづらいんだけど……壊れかけのドレス甲冑が、色々と隠さないと俺も彼女も不味い事になってます……ウッ。

 

「―――清水様の下腹部で血液の循環が速まる現象を確認。これは所謂―――」

 

「言わなくていいですからね!?気にしないで下さい!」

 

「―――了解です」

 

 アダムゥ!せめて真っ先にうら若き乙女に恥じらいを覚えさせろアダムゥ!

そんな俺の心の突っ込みを知ってか知らずか、上機嫌にアダムは空から戻ってきた。

竜の羽が消えて、服の埃をポンポンと手で払いながらアダムはノイントへ話しかける。

 

「勝敗は決した。その身体ではどう足掻いても勝てんぞ?」

 

「―――勝敗は何方かの生命活動が停止するまで。それが闘争の基本げんそ―――ぐっ!?」

 

 初めてアダムが仕掛けた。

大剣を手に荒い呼吸を繰り返しながら喋るノイントの眼前へと瞬間移動をする。

……うん、なんかもう……何でもアリだなあの魔王。

 

「そら喉を掴んだぞ。このまま俺が力を込めれば貴様は死ぬ」

 

「――――――フッ、クククッ……魔王アダム……油断しましたね……!」

 

 初めてノイントさんも笑ったが……それは何だか嫌な笑いな気がした。

エーアストさんが何かに気づいて動き出そうとするが、アダムは空いた手で制する。

……なんだなんだ……何が起ころうってんだ!?

 

「主ッ!」

 

「案ずるなエーアスト。()()()()()()()()()()()()()

 

「――――――ッ!?―――なぜ、どうやって―――!!」

 

………訳が分からない。アダムの余裕な笑みは変わらずとして、先ほど笑ったノイントさんは表情が一転して驚愕と動揺で目をギョロと動かしていた……ヒエッ、ますます西洋人形っぽくて怖い。

喉を掴む手に力を込めていないのか、アダムはノイントが喋れる状態のままにした。

 

()()()()……どうせあの偽神(クズ)のことだ、アルヴ(マヌケ)を除いて唯一残った配下である貴様にその程度の指示は出しているだろうと思っていたさ。―――全く追い詰められた程度でなんでも華々しく散らせればよいと思い込んでいる……前時代的、非効率的、非人道的。創世神が聞いて呆れる」

 

「我が―――主を―――侮辱ッ、するなぁっ―――!」

 

 残った最後の力で大剣を振るうノイント。

しかしアダムは最初の時みたいに手を突き出すまでもなく、チラと横目で迫りくる刃を見ただけでバリアーを展開して防いだ。

握る力も残っていないのか、大剣は彼女の手を離れて床をぐるりと回る。

だらりと垂れた両腕でノイントは悔しそうに表情を歪めながら言った。

 

「―――殺せッ!!貴様のような悍ましい者の手に触れられる屈辱を与えられるくらいなら、この場で惨たらしく死んだ方が、我が創造主の配下として仕えた名誉を汚さずに済むというものっ―――早く殺せ!!

 

………場違いな気がするけど銀髪美少女の騎士風くっころ場面、美味しく頂きました……!

ていうか自爆が出来ないなら舌を噛み切るなり何なり自決の方法って一杯ある気がするけどなぁ。

まぁそれをアダムが見逃すとも思えないけど……エーアストさん達の前例を聞いた限りは。

 

「フム……同型機という割には貴様は少々髪が長い気がするな……それに髪も肌も白いが、手足は生まれたばかりの赤子のように細い。……純真無垢は時として罪なものだな……」

 

「何を下らぬ妄言を吐いている!!早く殺せ殺せ!コロセコロセコロセコロセ――――」

 

 ひいぃぃぃぃ!?ノイントって奴がついにおかしくなったぁ!

壊れたラジカセみたいに殺せの連呼。その勢いたるやマシンガンの如し!

……とかふざけてる場合じゃないな、アダムなんとかしてあげなよ……

さっきからエーアストさん達は黙々と瓦礫の掃除に入っちゃってるし……

 

「――――――ふむ、ここまで壊れてしまっていてはエーアスト達のように教えてやるだけでは治るものも治らんか……あまりこの手は好ましくないのだがな」

 

「コロセコロセコロセコロセッ――――――!?」

 

 首から手を離したかと思えば、アダムは両手でノイントの頭を鷲掴みにした。

そのままグロいアニメのワンシーンみたいに握り潰すのかと思ったが違うみたいだ。

何やらブツブツと詠唱?みたいなものを初めて、アダムは真剣な表情になる。

 

「――――――を解除、根源―――限定使――――――対象――――」

 

「―――――――――――――カッ」

 

 アダムの指先から怪しげな光が出て、ノイントは白目を剥いてビクンと体を痙攣させる。

申し訳ないが洗脳リョナはNG―――とか馬鹿なこと思っていたらアダムは彼女から手を離した。

やがて数分の沈黙の後……ノイントはゆっくりと起き上がった。

 

「―――何を―――した―――これ、は―――」

 

「禁忌の代理人たる我が名の下に命ずる。()()()()()()()()()ノイントよ、是より先は貴様を縛るものは無い。貴様の意志で、貴様の好きなように生きるがいい」

 

「何を馬鹿げたことを……私は創造主の――――そう、ぞう……しゅ……?」

 

 気丈に振る舞ってぺたん座りの状態からアダムを睨みつけていたノイントの様子が変わった。

口をパクパクさせて、本来口に出すべき名前が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのように繰り返し何かを言おうと首を振るが……

 

「創造主……は誰……?ワタシ……は……何……」

 

「解せんかノイント。お前は今この瞬間から()()()()()()()()のだ。強いて言うならお前の生みの親に関する一切の記憶がなくなった程度だ……許しは乞わん。存分に俺を恨むがいいさ!」

 

「主……チガウ、私ノイント、ドウシテ、ドウスレバ、何をして、命令、受諾、記憶、復元不可、私、存在、変化、ワタシ、ワタシワタシワタシハ、ア、アアアアァァァァァッ!!イヤ、イヤイヤイヤいやいや、やああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!

 

 突然頭を抱えていたノイントは絶叫して、あの天使の羽もどきを生やして飛び立っていった。

白銀の長髪を振り乱しながら大粒を涙を零している姿は、まるで駄々を捏ねる赤子のようだった。

エーアストが落ちていた大剣を拾い上げて追撃しようとするが、アダムがそれを手で制する。

 

「宜しいのでしょうか我が主」

 

「よい。偽りの神の腹より産み落とされた機械仕掛けの天使が、根源へ至りて本来与えられるべき生を与えられたのだ。この後にアレがどう生きるかまでは俺が触れるべき事柄ではない」

 

「―――不可解(エラー)。我が主の言葉は時に元創造主(ウジムシ)よりも難解です」

 

フハハハハッ!解らずともよい!――――――さて、清水……あの女がああなった事で予定は色々と狂ったが、まずはこの国に来て初めての寝食を貰うがよい。……そして――――――」

 

 呆然としていた俺の肩に手を回して、アダムは陽気に屋敷内を歩き出した。

 

 

 屋敷の外の喧騒も収まり、バルバルスはすっかり夜の町へと姿を変えている。

掃除をしているエーアストさん以外の銀髪美少女軍団が料理を運んできてくれた。

どんなものを食べてどんな味がしたのか曖昧な状態で、俺は個室で眠れない夜を過ごす。

 

(色んな事があり過ぎたし、色んな事を知り過ぎた……どうすりゃいいんだよ……)

 

 肝心な事をアダムに聞けないまま、魔国ガーランドでの一日目が終わった。

―――この後に俺は、まさかとんぼ返りで人間族の領地に行くなんて……夢にも思わなかったが。

 

 

 

 

 

 

「そうだ清水よ。オレとお前が友となった記念に人間共の国へ偵察(遊び)に行こうではないか!」

 

「わっ、訳分かんねえよおォォォ――――――ッ!!?」

 

 俺、清水幸利の苦労に塗れた日々は終わらない。

だがクラスメイト達といた頃よりも……激しく、面白可笑しく……確実に何かは変わっていった。

 

 




 まさかの世界の真実を聞かされるのが主人公・クラスメイトを差し置いて清水君だったとかいう……原作で知ってたら絶望して自殺してたんじゃないかなぁ……
幼児退行記憶喪失系ドレス甲冑半脱げノイントちゃん爆誕
(あっ、今お空を飛んだらマズいですよ!と作者は小さな声で警告)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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