モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

192 / 240
 今回は第三章「夜半のコンファレンス」直後の話になります。
原作ではあっさりやられ役だった冒険者・レガニド視点のお話。
また作者がオリ要素出したくなったのでレガニドに過去を作りました。
なんというか……この世界なら沢山いそうな一人から実力で成り上がった人ですね。


幕間の物語 ある冒険者たちの話 2

 

「天閃のアレックスって奴は此処にいるか?」

 

 その第一声が聞こえた時、冒険者御用達の酒場が静まり返った。

呼ばれた当の本人は突然の名指しに困惑して立ち上がろうとする。

声の主はさっきの会議に参加していた、皇女サマお気に入りのハンターの餓鬼だった。

ちょっと気になった親切心で俺はアレックスについていく。

 

「なんだぁガキ、店に入るなりアレックスさんに会いてぇだぁ?」

 

 おいおいおい……あのハゲ性懲りもなくハンターの餓鬼に絡んでやがる。

詳しい事は知らんが、ハゲは餓鬼と一緒にいたお嬢ちゃん―――この場にはいねぇが―――と店でひと悶着起こしたらしい……血の気が多いから髪が抜けるんだよ。

威圧的な態度を取るハゲに対して餓鬼は冷静に対処した。

 

「用があって此処に来れば会えると聞いたんだ、会わせてくれないか?」

 

「あぁん!?ガキが誰に向かってクチ利いてやがんだぁ!!」

 

 おいコラちょっと待てやハゲぇ!!?

お前みたいにランク低い奴がイキって問題起こすから冒険者の評判悪くなってんだぞ!

慌てて俺とアレックスは二人の所へ駆け寄ろうとする。

餓鬼は胸倉を掴まれているのに毅然とした態度を崩そうとしない。

 

「……暴力沙汰はやめてくれ。俺は人に手を上げるつもりはない」

 

「舐めてんじゃねえぞ腐れハンターが――――――!」

 

「そこらへんで止めとけよ」

 

 アレックスより一歩早く酒場の中を通ってこれた俺がハゲの肩を掴んで振り向かせる。

ハゲは一瞬激昂して鋭くなった目を俺に向けたが、俺が誰かを分かった途端に怯む。

ちなみにだが俺とハゲのランク差は三つ離れている。

ハゲが暴れても俺なら一瞬で制圧できる実力があった。

 

「れ、レガニドさん……へ、へへっやだなぁ……じゃれてただけっスよぉ!」

 

「そいつは俺に用があってきたんだろう?お前が話す必要のない相手だ」

 

「今は老山龍の件で皆ピリピリしてんだ。逆撫でするような事してんじゃねえよ」

 

 俺の背後から追いついてきたアレックスがぴしゃりと言い放ち、俺もそれに続く。

ハゲは顔色が次第に赤から青へと変わり、そそくさと酒場を出て行った。

……仕事がなくて荒れるのは分かるが……町中で厄介ごとを増やすなっての。

餓鬼は皺の寄った服の襟を丁寧に払っている。なんともまぁお上品なことで……

 

「さっきの会議で見た顔だな。仲間の冒険者が二度も無礼を働いたようで、すまない」

 

「こんな状況だからな、アイツも不安で酒が回り過ぎてたんだ……」

 

 俺なりに出来る精一杯のフォローをしたつもりだが……思い返せば苦しい言い訳だな。

しかし餓鬼は「気にしてない」と一言でさっきの件を終わらせた。

はぁ~……大した奴だ、俺なら胸倉掴んできた相手を半殺しにはしないと気が済まないね。

 

「仕切り直そう。俺がアレックスだ……君は?」

 

「南雲ハジメ。ハンターだ」

 

 餓鬼……ハジメがハンターだと名乗った瞬間に酒場の雰囲気が変わる。

ある者は敵意を剥き出しにして今にも絡んできそうな勢い。またある者は仕事が少なくなっている現状の不満を彼にぶつけても仕方ないと分かっているからから、溜息を吐いて盛大に酒を呷る。

アレックスはすぐにそれを察して提案を持ち掛けた。

 

「用があるなら場所を移そう。君は此処じゃ歓迎されない」

 

「……みたいですね。分かりました」

 

 この時、俺はふとハジメに何の思惑があって真夜中にアレックスを呼ぶのか考えた。

皇女の指示……って感じじゃない。それなら皇女かお付きの兵士が呼びに来る筈だ。

会議でハゲに絡まれてた嬢ちゃん絡みの線も考えたが、それならあの嬢ちゃんも居るだろう。

ハンター絡みだとすれば奴らのところの職員が一人か二人ついてきているからそれもNoだ。

 

「俺もついていっていいかねぇ?アレックスのダチなんだが」

 

「構いませんよ、すぐに済む用事なので」

 

 咄嗟に俺が口を挿むと、アレックスは意外そうに目を向けてきた。

……ま、俺なりのダチへの気遣いって奴さ……恥ずかしいから本人には言わねえけどな。

それからアレックスの指定した人の迷惑にならなそうな裏路地へと移動する。

住人達の殆どは自分達の家に戻っているが、店などを持つ者はそっちに寝泊まりしている。

その裏路地は近くに見回りの兵士は居るが両側の家屋に人がいないのを知っていた。

 

「それで……俺に何の用だ」

 

「回りくどい言い方は嫌いなのでハッキリと聞きます。()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「――――――ッ」

 

 アレックスが息飲む声が聞こえた。

帝都の子ども……前にアレックスが自己嫌悪に陥っていた話に出てた奴か。

……まさかこの餓鬼、それの文句を言いに来たとかじゃねえだろうな……?

 

「おい餓鬼、まさかその帝都でのことの文句でも言いに来たのか?」

 

「違います」

 

「じゃあ――――――」

 

「レガニド、これは俺の問題だ……少し黙っていてくれ」

 

 そう言われて俺の肩を掴んで後ろへと下がらせるアレックス。

そんな苦しそうな顔して言われちゃ……引き下がるしかねえな……

ハジメはアレックスの様子からその事を覚えているのだと悟ったようだ。

 

「ある人に頼まれました。あの子はこの町に居ます、仲直りしてあげて下さい」

 

「……はぁ?」

 

 静観しろと言われた俺の口から思わずそんな声が漏れる。

ハジメもそう言われるのは覚悟していたのか少しだけ下を向く。

アレックスはと言えば……表情は固いが動揺を隠そうと奥歯を強く噛んでいた。

ある人ってのが誰なのか気になるが、ハジメは言葉を続けた。

 

「俺は貴方があの子どもを蹴った現場にいました。……その時はあの子を足蹴にする貴方に怒りを覚えました……けど、それから冒険者の事とか、貴方が本当は不当な暴力を振るうような人じゃないと聞いて……その事で貴方が苦しんでいると聞いて、それを――――――」

 

「待て、流石にいっぺんに言い過ぎだぜ……ちょっと落ち着け」

 

 さっきまで冷静に振る舞っていたハジメは少し興奮気味だった。

アレックスも衝撃の事実を聞かされて頭の整理が追いついていない様子に見えた。

俺が割って入るとハジメは「すいません……掻い摘んで説明します」と言い出す。

それから聞かされた話は、なんというかまぁ……青臭い餓鬼らしい話だった。

 

 一つ目はアレックスが受けなかった子どもの敵討ち。

それをやったのが目の前にいるハジメだということ。アレックスはそれを聞いて「ありがとう」と言っていたが、俺は思わず「多分お前の為にやったんじゃねえと思うけどな~」と突っ込みを入れちまったが、ハジメは否定も肯定もしなかった。

アレックスは俺の言葉に「分かってる。だが俺がやれなかった事を彼がやってくれた。それに対しての感謝を述べているに過ぎない」と言い切った。律儀というか、馬鹿真面目というか……

 

 二つ目はハジメがこの町に来て、冒険者の実情を知ったこと。

ある人から頼まれたとハジメは言っていたが、そのある人の名前を聞いて俺ら二人は驚いた。

”クリスタベル”あの百人もいない金色ランクの冒険者で五体満足に引退した俺らの大先輩だった。

 

 クリスタベルは引退後、ブルックの町で冒険者向けの服屋を営んでいる。

これが今までの冒険者の常識を覆すような画期的かつ機能性に優れた逸品が多く、その噂を知っているこの町の冒険者なら、まず装備を整えるならクリスタベルの店を勧めるくらいだ。

……あの男だか女だか分からん恰好の趣味と口調を除けば、常識人だ……俺は苦手だが。

 

 ハジメはそのクリスタベルの店にいき、帝都であった一件を話したところ、あのお節介焼きの元金ランク冒険者はアレックスの悩みを噂で知っていたようで、それをハジメに伝えたうえで悩みの原因となった子どもと仲直りをするよう仕向けたという。

驚いたのは、ハジメがその子どもと再会したのはクリスタベルから頼まれた後の事だった。

 

「話せる事はこれで最後になります。……別に俺は善意とか道徳とかで貴方にこの話をしに来たんじゃありません。……ただ物事を一方的な目で捉えて、感情的に貴方を……冒険者という職業に就く全ての人を心の中で罵倒した。その俺自身の失敗を……俺は拭いたいから此処にいるんです」

 

 失敗……ときたか。

ここで恥と言ってしまえば、誤解して受け取られかねない。

ハジメが焦っているように見えるのも、言葉がうまく出てこないからだろう。

……その歳の餓鬼が、んな事を気にしてるってのも末恐ろしいもんだぜ、ハンターって奴ぁ……

 

「………分かった。子どもの所に、案内してくれ」

 

「おいおい、良いのかアレックス?お前――――――」

 

「あれは俺の人生に於ける、最大の過ちだ……それを償う機会があるというのなら俺は償いたい」

 

 やれやれ……こうなっちまったアレックスは頑固で人の話を聞きやしない。

アレックスの真剣な表情を見てハジメも首を縦に振って、町のある方を指差した。

そこに子どもと、子どもの親がいる。……今度は俺ら二人がハジメについていった。

 

 

「――――――?」

 

「――――。―――――?」

 

「……。……!」

 

 どうやらギリギリ夜でも子どもは眠っていなかったようだ。

というか老山龍の被害のせいで、住民の殆どが眠れていない。

恐らくはあと数時間……空が明るくなり始めて眠気が訪れるだろうよ。

 

 ハジメは少し離れたところで「待っていて下さい」と俺らを止めて、子どもの母親らしき女に話しかけている。……ヒュゥ♪中々にいけてる女じゃねえか!

 

「レガニド、お前いま何かふざけたことを考えていないか?」

 

「さぁて何のことやら。―――ほれ、子どもが出て来たぞ」

 

「ッ!!」

 

 鋭い野郎だぜ……此奴と付き合ってると下手に女遊びが出来なくて困る。

家族もいない天涯孤独な俺は、言ってしまえばろくでなしとして人生の大半を過ごし、アレックスに会うまでは冒険者としてもあまり良くない評判が広まっていた。

それがハンターの登場による仕事が減った事と、アレックスからの助言で人前では多少お行儀良くしてなけりゃ仕事は貰えなくなるって事を教えられて、俺も処世術って奴を覚えさせられた。

 

 アレックスは両親共に早くに死んじまったが、子ども達にはまともな教育をしていたらしい。

荒くれ者ばかりの冒険者の中でアレックスは数少ない人格者と言える存在だった。

 

「―――?」

 

「――――――」

 

 ハジメがキョトンとした表情の子どもの前で屈みこみ此方を指差した。

子どもはあからさまに怯えてハジメの後ろに隠れようとする。それを見たアレックスが落ち込む。

お前子ども好きだもんな……いや変な意味じゃなく、普通に……

ハジメから色々な話を聞かされた子どもが納得したのか、一人で歩み寄ってくる。

俺は空気を読んですれ違うように、ハジメと母親の方へ向かう。

 

「随分と怯えてたみたいだが餓鬼に何て言ったんだ?」

 

「……あのオジさんが君を蹴ったことを謝りたいから、君も無理なお願いをしてごめんなさいって謝っておいで……って言っただけですよ」

 

「あ、あの……」

 

 俺とハジメが話していると、母親の方が恐る恐る俺に頭を下げた。

なんのこっちゃと聞けば、母親が子どものやった事を聞いて色々と思うところがあったらしい。

その謝罪は先にアレックスにしてやったらいいと思うんですがねぇ……ぶっちゃけ俺無関係だし。

 

 そうこうしていると、アレックスは屈んで子どもに深く頭を下げる。

色々な場面でアイツが頭を下げるところは見てきたが、あんなに丁寧なのは初めてだ。

子どもの方も目に涙を浮かべながら頭を下げた。

……っかぁ……なんつーか尻が痒くなってきやがる光景だぜ、なんともまぁ……

 

「なぁハジメよ……お前、仲直りってやった事は?」

 

「……数える程もありませんね、ここ最近だと」

 

「だよなぁ。俺ぁ生まれて一度もやった事ねーわ多分」

 

 そういう生き方しなきゃ食ってけない人生だったからなぁ……改めて振り返ると。

冒険者で博打みたいな稼ぎだった親父と娼婦のお袋の腹に生まれて、幼くしてすぐに捨てられた。

生まれは王都だったらしいが……その頃の記憶は曖昧で、気づけば孤児になっていた。

宿場町の浮浪者連中に混じってその日暮らしの生活を送り、腕っぷしの強さから傭兵紛いの連中に連れられて各地を転々とし、気づけば傭兵連中は壊滅。

生き残った俺は死んだ連中の懐を漁って、その金で冒険者になった。

そして今の今まで生き残れた。アレックスという最も信頼できる友を手に入れた。

……ハハハッ、なんつーか……ろくでなしって言葉がこれほど似合う人生もそうないだろうな。

 

 青臭い光景に、らしくもないが人生を振り返っていたら仲直りは終わっていた。

まだ完全には切り替えられないアレックスに対して、笑顔で手を握る子ども。

なんつーか子どもってのは単純だな……まぁ、奴さんの悩みを解決出来たんだから、良いけどよ。

 

「あの……ハジメさん、レガニドさん……色々と本当に、ありがとう御座いました!」

 

「いやいや奥さん、俺ぁなーんもしてない。アレックスの同業者ってだけですよ」

 

「俺も……人に言われて動いただけです……感謝されるようなことは何も―――」

 

 そうかぁ?と心の中で思った。

お前が動かなきゃ誰も変わらなかった。ずっと悔いを残したままだったんだぜ?

確かにそう仕向けたクリスタベルにゃ感謝するが……

お前が決心して動いてくれたから、こんな結末を迎えられたんじゃねえのか?

ありがとな……なーんて商売敵に言うつもりはねえけどな!

 

 しかしまぁ奥さん、お礼の言葉よりも俺ぁもっとその欲しいもんがあるんだけどな~

子ども一人産んで、貴族って地位から追い出されたってのにまぁお綺麗だこと……

この後、夜も物騒ですし……よければ個人的に俺が貴方の眠りに付き添っても―――

 

 

 

 おいアレックス、懐から短剣取り出しそうになるな、凄んで殺気放つなよ。

ハジメと子どもがビビって何事かとキョロキョロしてんじゃねえか……冗談だよ冗談!!

 

 

 そっから時は流れ―――つっても一日くらいだけどな!―――アレックスと酒場にて

 

「明日朝の馬車で町を出る。治療院に向かう」

 

「あいよ。俺も此処での稼ぎが少なくなってきたしな……途中まで付き合うぜ」

 

「あぁ。……そうだ、レガニド」

 

「あん?」

 

「……馬車にあの親子も同乗するらしんだ……その―――」

 

 珍しく照れ臭そうに頬をポリポリと掻いたアレックスが言い淀む。

ははーん……何を言いたいか分かったぜ?水臭ぇ野郎だな!そんくらい引き受けてやらぁ!

 

「道中の子守りはお前がやれよ。他は俺が多めにやってやらぁ」

 

「……すまん。報酬の取り分はお前が決めていいぞ」

 

「バーカ、6:4でお前が6に決まってんだろ。余裕出来たら一杯奢れ」

 

 こんなお人好し野郎だから、此奴との冒険の旅はやめられない。

いつか、お前に余裕が出来たら……二人で化物の一匹でも仕留めてやろうや。

ハンター共が何匹も色んな化け物を仕留めてんだ、俺らも伝説の冒険者が終ぞ成し遂げられなかった”魔獣”を倒すことくらいは出来んだろ!……期待して待ってるぜ、相棒。

 

 




 レガニドは女好きだけどアレックスが基本紳士なのでブレーキ掛けられてる。
そういえば原作だと嘗て最強の冒険者が65層のベヒーモスまで辿り着いたっぽいけどこっちでも辿り着いたって事は道中のモンスターも倒したんか。
きっと状況が違っていれば、名前も知られていない彼もハンターになれた逸材だったのかもしれませんね………

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。