といってもまだメインキャラじゃないんですけどね。
皇女トレイシーの来訪は、商業都市の貴族達に衝撃を与えた。
ある者は彼女に媚びて取り入ろうと歓待の宴を開くも無駄の一言で一蹴され、またある者は彼女の目に触れると不味い自身の汚職を隠そうとして既知であると鼻で笑われる。
その中で、あっけない最期を迎える貴族一家がいた……
「ぎゃあぁっ!?」
ミン家の屋敷にて、主であるミン男爵が聞いたのは息子の悲鳴だった。
慌てて従者を呼ぶも返事はなく、彼は嫌な予感がして部屋を飛び出す。
すっかり陽が落ちて、普段なら従者が廊下に蝋燭の灯りを点けていく筈なのだが……
彼が嫌な予感を覚えたのは昼間のこと。
何の前触れもなくヘルシャー帝国の皇女が、商業都市フューレンに現れた。
ミン男爵家は商業都市が確立される頃に財政援助をしたことで正式に貴族と認められるも、その後はヘルシャー帝国とハイリヒ王国の間を取り持つ役目を仰せつかったのだが、近年、帝国の聖教教会に対する反抗的な姿勢が問題となっており、ミン家がその問題解決を任されてしまったのだ。
しかしヘルシャー帝国の王族達はミン家の言葉に耳を貸すことはない。
それどころか、彼らが貴族になってから権力を笠に着て私腹を肥やしてきたことを知られ、余計な口出しをしないようにと皇帝に釘を刺されてしまった。
ミン男爵が廊下の先、家族が先に食事を取っているであろう大広間への扉を開けると―――
椅子に座った妻と息子、二人の足元で従者が血を流して倒れている。
悲鳴を上げてミン男爵がその場にへたり込んだ、次の瞬間――――――
「失礼、貴方が最後になります」
「ひっ―――――――――」
突如、背後から聞こえた声に振り返ろうとしたミン男爵の胸から刃が生える。
ごぽっと血の泡を空きだした彼が倒れる瞬間、背後に回ったそれは彼の体を支えて床に倒した。
そんな光景を、大広間の暗闇の奥から現れた皇女トレイシーが見守っている。
「片付いたか?」
「男爵家の一族と従者併せて21名の抹消が完了しました。影武者の可能性はありません」
「ご苦労、遺体の処理はお前達に任せる。
「了解しました」
三人はテキパキと動いて死んだばかりのミン男爵を含めた家の者全員を運び出す。
トレイシーは椅子に座って驚き目を見開いたまま死んだプーム・ミンに哀れみの視線を送る。
このバカな御曹司がフリートホーフとの関係を持っていなければ、殺す予定はなかった。
ただ権力を盾に肥え太るだけの愚かな貴族の代表として家畜のように飼い殺しにされていたのなら、一族の血がこんな所で途絶える事もなかったというのに……
「愚かな事だ」
血生臭い現場を後にして、トレイシーはミン男爵家の一室に向かった。
そこは応接室、彼女が商業都市で会う予定だった者がそこで待っている。
扉を開けて中に入ったトレイシーに開口一番、席を立ったその少女は震えた声で問う。
「――――――男爵様をどうされたのですか……」
「殺した。殺す価値と生かす価値が釣り合わなくなったのでな」
「――――――っ」
少女、リリアーナ・S・B・ハイリヒは下唇を噛みしめて俯いた。
ミン男爵家の御曹司が裏社会の犯罪組織と繋がっているという情報は聞いている。
しかし確たる証拠もなしに貴族の一人を罪に問えば、王国内が揺らぎかねない。
よってこの件は慎重に事を運ばなければならない……そう彼女は考えていたが……
「ミン男爵家の馬鹿は、帝国がその法を敷いたばかりだというのにも関わらず、違法な奴隷売買に手を染めていた。殺す直前に部下が尋問したが、奴は有益な情報を持っていなかった。生かしておく価値のない貴族を処分するのは我ら王族の務め、世の常だ」
「………もっと他に、方法な無かったと思わないのですか………」
リリアーナとて、犯罪者と関係を持った彼らミン男爵家を許すつもりはなかった。
しかし罪人であると云うのなら、法の裁きの下に罰を受けるべきだろう。
それがこんな……まるでゴミを払うように殺されるというのは、あまりにも……
「なら貴様がもっと早くに動けば良かったのではないか?」
「………」
情報を得て、判断をするまでが遅すぎる。トレイシーは暗にそう言っていた。
王国と帝国の諜報機関では大きな差がある。王国を跨いで西方のアンカジ公国にも影響力を持つ帝国は、有能な人材を次々と手に入れて、日増しに力を付けている。
一方で貴族の腐敗や教会権力の横行が黙認されている王国では目に見えて人材が不足している。
両者の間に流れた沈黙を先に破ったのは、トレイシーの方だった。
「――――――まぁ、この程度の些事で時間を無駄にするのは止そうか。我々がこうして公の場以外で会う回数が増えては、後々に面倒な事になるのでな。予定通りに話を始めようか」
「………はい」
リリアーナにこれ以上、ミン男爵家の事であれこれ言い争う気力は残っていない。
ゆっくりと対面する形で彼女の向かいのソファーに腰かけて、話は始まった。
一部始終を見守っていた騎士クゼリーは、悔しさで握り拳に力を込めるしか出来なかった。
*
「そら、見えて来たぞ清水。フューレンだ」
ライセンの荒野を魔王アダムと清水幸利を背に乗せたモンスターが駆けていた。
黒を基調とした細身の牙竜”ギルオス”の群れを率いる”ドスギルオス”の一団である。
彼らは老山龍が這い出してきた地下を通って、魔人族の領地から王国領の此処まで来られたのだ。
「貴様はあの都市を見るのは二度目だったか?」
「あ、あぁ……しっかりと見るのはこれが初めてだけどな」
「そうかそうか!ならば楽しい
そんな事を話しながら、清水は自分の腕に視線を落とした。
今回の目的は表向き、人間族の市場調査だが……清水が首都バルバルスを出る際にアダムから与えられた
その内容を聞いた時は思わずぞっとしたが、後になってワクワクしている自分がいた。
(俺がこの手で……
清水の天職の事を詳しく教えてくれたのはアダムだった。
一応、闇属性の魔法は闇弾や精神干渉といったものがあるというのは王国で調べていたが、その対象が魔物にまで及ぶとは知らされなかった。恐らく外聞的な理由もあって伏せていたのだろう。
自分を救ってくれた魔人族の為に出来る限りの協力をしたい。
まさかその第一歩がモンスターの使役とは……清水は責任重大だと思ってしまう。
「貴様も知っていると思うが、あの町には魔人族と協力関係を結んだ人間がいる。奴らは奴隷売買の他にモンスターの幼体をペットとして調教し、貴族共に売りつける事業を行っていてな。そこで貴様にピッタリのモンスターを見つけて貰うぞ?」
「わ、分かった!」
「クハハハハハッ!待っていろ人間共、魔王の右腕が貴様等に絶望を送ってやるぞ!!」
(その痛々しい二つ名みたいなの辞めてええええ!!?)
*
商業都市フューレンのある場所にて、幼き少女は目を覚ました。
彼女が見知らぬ地に連れて来られて、一体どれくらいの時間が経過したのだろう。
まともな食事を与えられず、同じくらいの年の子達がどんどん増えて減ってを繰り返した。
「………ママ…‥…」
ぽつりと少女の頬から涙が零れ落ちる。
最後に見たのは何週間前だったのかな?どんな顔してるのかな?
……またあそこに帰れるのかな……?
そんな事を思っていた時、不意に自分を閉じ込める牢屋に違和感を覚えた。
普段なら見張りが立って鍵を持っているのだが……見張りの姿がない。
更に前の子どもが連れていかれた時の不手際だったのか、牢の鍵が開きっぱなしだ。
「グスッ………うぅ………っ」
逃げる事は出来るだろう。
しかし逃げた先は見知らぬ土地、見知らぬ水の中で……どうやって帰ればいい?
考えるより先に動くのが先決か?
少女は覚束ない足取りで、ゆっくりと薄汚れた水の中へと沈んでいった。
その直後、牢屋の周りで少女を連れ去った者達の怒号が響き渡った。
(誰か……ミュウを助けてなの……誰か、誰か……!)
ブタ貴族兄貴、家族・従者諸共に死す
魔王様+清水君の行く先はフューレン、ギルオスタクシー
海人の幼女、幸運ロールがクリティカル出して脱出の豪華三本立てでお送りしました。
商業都市フューレンは幸運ロールに失敗しました。試練のお時間です。
感想、質問、ご指摘等お待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡