ミュウの一人称視点を頑張ったけどダメでした。
サブタイトルで丸分かりだと思いますので残りは後書きで……
あと特に意味もなくミュウの家名とか適当に付けました(メインキャラにとりあえず家名つけなきゃ気が済まない不治の病とでも思って下さい……)
元ネタはアイルランド民話・伝承の人魚、半魚人から。
本編の「海人の子ども」前後の話になってます。
海人族のミュウ・メロウは母子家庭で育った五歳の女の子である。
生まれる前に父親が流行病で亡くなる以外の不幸を知らず、当たり前だと思っていた幸福に満ちた生活を母”レミア・メロウ”と送っていた。
海上都市エリセンの人々は彼女に優しく接し、代わりになることはないと分かっていても父親の与えるべきだった温もりを彼女に捧げていた。
きっと彼女が大きくなって、お婿さんを貰える歳になってもこの幸福は続くのだと――――――
――――――そう思っていた。
砂漠の国アンカジ公国から海に流れる川辺で遊んでた母子を、怪しげな風貌の一団が襲った。
彼らはフリートホーフという王国で騒がれている犯罪者集団で奴隷売買に携わる構成員である。
母レミアの足を彼らの投げた銛が貫き、血を流して悶絶する彼女に駆け寄ろうとしたミュウは急激に眠気を誘う薬品を染み込ませた布を口に押し当てられて眠らされた。
最後に彼女が聞いたのは……我が子の名を叫んだ母の声だった。
*
「お前はこれからウチの商品になる」
目が覚めた時、ミュウが居たのは地下の薄暗い牢屋に置かれた木箱の中。
まだ眠気が覚め切らない彼女に業を煮やしたフリートホーフの頭らしき男が箱を蹴飛ばして、その衝撃に驚いたミュウは目を覚ましたのだ。
「逃げようなんて考えるんじゃねえぞ……?逃げたらテメェも
この時、彼が言った言葉の意味を理解したミュウが、どれだけ夜も眠れないほどの恐怖に苛まれたか想像もつかないだろう。幼い彼女は
ただ、中途半端に考える力が残っていた子どもに対して、心の拠り所である親に命の危険があると思い込ませる事で逃げる気力を喪失させるのが狙いだった。
現に彼女はそれからずっと……真実を知るまで逃げようとはしなかったのである。
牢屋で絶望に打ちひしがれて、体育座りで隅に蹲るミュウを見て満足気に笑った男たちは牢屋に鍵をかけて去っていく。下品な笑い声に混じって会話が聞こえてきた。
「ボス、
「あぁ…会場のオーナーとは話がついてる。売れる商品を選んで
「へへっ!エヒト様様だぁ、教会の生臭坊主に使い古しの女一人宛がうだけで会場費が浮くんですから!―――まぁ帝国のクソ共のせいで帝都のはダメになっちまいましたけどね」
「けっ……戦う事しか能がない老いぼれ皇帝に青二才の餓鬼2人が調子づきやがって」
「連中と教会のアホが水面下で争うもんだから稼ぎもしづらくなりましたしねぇ……」
「なぁに心配要らねえさ、俺達にゃ魔人族と奴らの
エヒトの名前は聞いた事はあるが、他は何を言っているのかミュウには分からなかった。
よしんば分かったとしても考えるだけ無駄な事だ。今の彼女は牢屋から出られないのだから。
声を上げて泣けば見張りの男が「うるせぇ!」と扉を叩いて怒鳴り、あまりにも五月蠅いと扉をあけて腹を蹴り上げてくる。決まって最後に「あんまりうるせえと、母親を殺しちまうぞ?」という脅し文句をつけて、ミュウは泣くことも出来なくなった。
(……ミュウ、なにかわるいことしたの……神さま……?)
彼女の家は敬虔な信徒ではないが、建前上は聖教教会の教義に従っていた。
彼女に限らず海人族全員がそうだった。人間以外を下に見る聖教教会にとって海人族も例外なく下の存在である事は確かなのだから。ただ海産物などの特産品を王家、教会に献上する事で例外的に迫害の対象からは外されている。
自分が怪我をしたり、病気になったり、不幸なことが立て続けになった時には神様の罰が当たったのだと彼女の周りにいた一部の者は言っていた。
日頃の行いは神によって常に見られているから、罰が当たる人間は悪いことをしたから神が罰を下したのだと……幼い彼女はそれを信じていたのだ。
(わるいことしたらあやまるから……ミュウ、いっぱいはんせいするから……だから……)
故郷に帰りたい、自分がいなくなって心配しているであろう母親の下に帰りたい。
言葉にならない懺悔を胸の内に渦巻きながら、彼女はずっと暗闇で目を瞑る。
何度も何度も、ごめんなさい……ごめんなさい……謝り続けた。
けれども苦しい日々は変わらない、辛い今は終わりが見えてこない。
無垢で幼い心は自我を崩壊させる一歩手前までいき……そして
「ねえキミ、キミって……海人族だよね?」
「っ!?」
朝か夜かも分からない松明の灯りしかない薄暗い牢屋の外から声が消えた。
ミュウは初めて、一方的に話しかけてきたフリートホーフの人間達以外でその声に反応する。
エメラルドグリーンの髪はボサボサに伸びっぱなしで、痒いと髪を掻けばフケが零れた。
木箱の中からすくっと体を起こして牢屋の外に視線を向ける……そして知る。
ミュウが入れられた牢屋から向かいの方にも同じような牢屋が一定間隔であり、そこには彼女と同じ年か少し年上くらいの子どもが何人も入れられているのだ。
声を掛けてきたのは正面の牢屋にいた、10歳くらいの年の男の子だ。
彼の問いかけにミュウは恐る恐る、コクリと頷く。
「良かった……ずっと起きなかったから、死んでるんじゃないかと心配したんだ」
「……お、おにいちゃん……だぁれ?」
「ボク?……うーん……なんて言えばいいのかな。ボクは名前がないんだ、生まれてすぐに親に捨てられてから、ずっと貧民街で生きて来たから……大人達は僕を
孤児の意味が分からない子どもには、それが個人の名前なのかと思ったのだろう。
ドブネズミは分かるようで半笑いで「僕は髭も尻尾も生えてないのにね」とミュウに笑いかける。
感情というシステムが既に枯れかけていたミュウは、口をパクパクさせる事しか出来ない。
「それよりも、さ……キミ、そこに入れられた時にあいつ等に色んな事を言われただろ?逃げるなとか逃げたらキミのお母さんを殺すとかなんとか――――――」
「……うん……」
逃げたら
そもそも此処が何処なのかも分からないのに、逃げて何処に向かえばいいかも分からない彼女にはその選択肢が最初から無かったのかもしれない。
しかし男の子が発した次の言葉を聞いて、ミュウの心に少しだけ光が差す。
「
「……ッ!?ほん、とう……?」
「うんっ!ボクも攫われてきて暫く経つんだけどさ、前に貧民街であいつ等のところから逃げてきた子どもが居たんだよね。ソイツに話を聞いたら、あいつ等は決まって親のいる子どもにだけ逃げたら親を殺すぞって脅し文句を言ってるみたいなんだ。――――――でも攫われた子どもの親って大抵は普通の民家とかに暮らしてるから、あいつ等がそこに現れたら、兵隊さんとかに掴まっちゃうんだよね。だから嘘だってボクは思うんだ」
見張りが居ないかを確かめながら、男の子はやや早口でそうまくし立てた。
ミュウは彼の言っている言葉の半分も理解出来なかったかもしれない。
しかし人の言葉を疑う事を知らない彼女は、自分を攫った人達が言っていた言葉が嘘であるという男の子の言葉を信じた。段々と、彼女の体に熱が戻る……
「此処から逃げ出したら、キミは真っ直ぐお母さんの所に戻ればいいんだ」
「………うんっ……うんっ!」
それから数日後、あの脅し文句を言ってきた人達が部下を連れて牢屋に来ていた。
ミュウは怯えて木箱に入り顔を埋めていたが、彼らは彼女の牢屋の前を通過薄する。
ガチャンという扉を開ける音と共に「とっとと歩け!」という怒鳴り声と、子どもの悲鳴が周りの牢屋から聞こえてきた。
少し怖いけれど、自分が何かされる訳ではないと分かったミュウは恐る恐る外の様子を窺った。
そして見た……あの話をしてくれた男の子が、首に鎖を繋がれて連れていかれるのを…………
男の子は淡々と彼らの指示に従っているようだが、最後にミュウの牢屋に向かって何かを伝える。
声を出せば殴られると知っているから、口パクで……ミュウにしか分からない言葉を言った。
(
それからまた数日経って――――――
「………っ!」
――――――ミュウは開け放たれた牢屋から逃げ出した。
逃げた先に走るより得意な泳ぎが出来る水があったから、そこに飛び込んだ。
しかし水の中は彼女の暮らしていた海や遊んでいた川とは全くの別物。
息をすれば生臭い刺激臭が全身を貫き、苦しみで悶えたミュウは水面に上がりそうになる。
だが上がればまたあの人達に見つかって牢屋に連れ戻されてしまう。
もう残っていない体力と気力のありったけを振り絞って、水の中を進む。
彼女は気づいていなかったが、水の中を彼女以外にも動き回るものがいた。
決して温厚ではない水棲の生き物たちがミュウを襲わなかったのは、彼女と同様に慣れない環境で視界が悪かったから、水中とはいっても浅めのところを泳いでいた彼女に気づかなかったのだ。
*
そうやって水の中を右へ左へ、時に石の壁にぶつかりながら逃げていたミュウに限界が訪れる。
泳ぐ足に力が入らず、水から上がって陸で息をする力も失われた。
汚れた水の中を掻き分ける小さな手の片方を、石の縁へとかけて意識を失う。
暗闇の中で夢か現実か分からない空間でミュウは懸命に手を伸ばす。
「たすけて……たすけて……!」
手を伸ばした先に眩い光が差し込んだ。
その先に何が待ち受けているのか、考えもせずにミュウは光に向かい――――――
「………ぁ………」
目を開けたミュウが居るのはまた見知らぬ場所。
今度は石の壁や牢の中ではなく、何処かの家の灯りがついた部屋の中だった。
温かい水に自身の体が浸けられていることで目を覚ましたのだ。
「―――――――――っ!」
そして気づく、自分の横から声をかけて心配そうに手を伸ばす青年の姿。
彼があの怖い人達と同じ人間なのかもしれないと思い込んだミュウは恐怖で胃がひっくり返りそうになり、自分が居られている桶の中から脱出を図った。
(怖い、怖い怖い怖い怖い………!!)
「やっ……!こないでっ……!」
必死に暴れていると、桶が倒れてミュウの体も床に放り出される。
すぐに立ち上がって目に見えた扉の方へと懸命に歩き出すが――――――
「ぴゃっ――――――!?」
突然、気配もなく背後に立っていた女性に抱き上げられるミュウ。
彼女の肩や腕を叩いて暴れようとするが、石像のようにその場で女性は固まり、ミュウは怖くなって泣き出しそうになる。
それをまた別の……年老いた男が優しくミュウの頭を撫でてくれた。
撫でられるのが、彼女にとってどれくらい久しぶりだったのだろう。
母親が嬉しい時や楽しい時は撫でてくれた、挨拶をした時に近所の人たちが撫でてくれた。
温もりと優しさが心にまで伝わり……ミュウは今まで泣けなかった分も含めて声を上げて泣いた。
それからまた桶にお湯を張ってもらい、ミュウは老人の手で綺麗に体を洗って貰う。
タオルで頭や体を拭いてもらうと、柔らかい良い匂いのする毛布で体を包まれる。
老人に抱えられてベッドにちょこんと座らされて、ミュウは彼に話しかけられた。
「さっきのお兄さんは、君を助けてくれたんだ。ちょっと怖いかもしれないけど、君の話を聞かせてあげてくれないか?あと、君を抱えてたお姉さんには謝って貰えないかな?君が暴れた際に少し怪我をしてしまったみたいだから……ダメかな?」
一つ一つゆっくりと話を聞いて、ミュウは老人の言葉にこくりと頷く。
老人が声を掛けて部屋の外に出ていた先ほどの青年と女性が部屋に入ってきた。
2人とも銀色の髪だが、目の色だけは対照的に青年が赤、女性が青である。
珍しい、綺麗な色……そんな風に思いながらミュウは先ほど言われた通りに謝った。
青年はハジメ、女性はノイント……そう名乗った。
2人―――主に話を聞いてくれていたのはハジメ―――にミュウは今までのことを話したが、話す途中で段々と辛くなっているのを見かねたハジメに抱きしめられて、ミュウはまた泣いた。
それから「お爺さんと話をしてくるから、お姉ちゃんと一緒に待っててくれるか?」と言われて、老人のハジメは部屋の外で何かを話している。部屋にはミュウとノイントの2人だけ……
「………ハジメお兄ちゃん………」
抱きしめられた時の熱を思い返して、ミュウは自分をそっと抱きしめる。
ノイントは何も言わずにハジメがいた所に代わって腰掛けていたが、突然口を開いた。
「彼は不思議な男性です」
「……ふぇ?」
笑いもしない、怒りもしない……感情が全く読めないノイントの言葉にミュウも目を丸くする。
彼女の目は真っ直ぐと扉に、扉の向こう側にいるであろうハジメに向けられていた。
「見ず知らずの私を助けて、私に食べ物をくれた。私に人としての営みを教えてくれた。お互いの名前を知って一日も経っていない相手に、此処まで尽くす人間というのは初めて見ました」
「………お姉ちゃん?」
「理解不能な
どうやらミュウに向けられた言葉というよりは、誰かに聞いて欲しい独白の類のようである。
しかし言葉の意味は分からずとも、何となくハジメに向ける感情はミュウにも理解出来た。
その言葉に感化されてか、毛布の中で足をぷらぷらしながらミュウはさっきまでの事を思い出す。
そして遠い昔のように感じていた故郷でのある言葉を思い出していた。
それはミュウが寝ぼけて服を着ずに外へ出そうになった事で母に叱られて、その場に偶然居合わせた近所の人が言っていた言葉だった。
『結婚してない女は男に裸を見せちゃあいけないよぉ!』
『どーして?』
まだ今よりも幼かったミュウがそう疑問を口にすると、その人はこう言った。
『昔の習わしでねえ、裸を見せた相手とは結婚しなきゃいけないってのがあるのさ!』
『けっこん?』
『ミュウちゃんのパパとママみたいになるって事さ!』
どうして今更そんな事を思い出したのか、ミュウは自分でも分からない。
けれども脳裏に過ぎるのは、服を着ていない自分を見ていたハジメの姿。
老人にも見られていたが、彼はどちらかというと父親に近い人に見えた為、かなり年が離れている彼をミュウが異性として特別意識することはなかった。
先ほどから胸が苦しいのは、空腹が限界に来ているからだけではないのかもしれない。
ミュウはノイントに抱っこされながら、少し騒がしくなった部屋の外へと向かう。
(お兄ちゃんに裸みられたから……お兄ちゃんと
不思議と、そう思った時にミュウの心中に不快感は無かったという。
ミュウはその後、怖い顔をしたお姉さんや片腕がないお姉さん、耳と尻尾が生えたお姉さんと、片腕を包帯で隠したお姉さん、老人とノイントに連れられてご飯を食べに町の外へ出た。
フードを被って町の周りは見えなかったが、夜空には赤い星が煌々と光り輝いている。
おや、原作とは違う方がヒロインレースに出走するようです。
しかし年齢制限もあるこのレース、彼女はいったいどうするというのか?
作者はやっとこさバルファルク倒して何も考えられないようだ。
というかMHXXに銀髪ショタがいた事実に今更発狂している!
感想、質問、ご指摘等お待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡