モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 サブタイトルが思いつかないからと適当な言葉を並べる作者であった(まる)
前回の話を投稿した直後に少し溜めるのもアリかなと思いつつ、投稿直後に沢山の感想が貰えたことに嬉しくなって調子に乗った作者はそんな後の事など考えずひたすら今のノリを忘れない内に話を進めるのであった(饒舌な酔っ払い)
今回の話は時系列で云うところの第四章「それぞれの夕食」の少し前くらいです。


幕間の物語 灯台もと暗し

 

「う゛……オエエェェェ」

 

 やぁ、みんな……清水幸利だ……みんなって誰だよ。

今の俺は夜のフューレン市街にて、路地裏で絶賛嘔吐(リバース)の最中である。

荷馬車の揺れも酷かったけど……モンスターの背中は比じゃなかったわ、二度と乗らねえ。

俺がゲロってる間、何処からかかっぱらってきた外套に身を包んだアダムはフューレン市内にある宿屋の一つに入って、そこで部屋を取っていた。

 

「清水よ、戻ったぞ……ってお前、まだ吐いているのか……」

「し、仕方ないだろ―――――ーオロロロロ」

 

 胃の中が空っぽになるんじゃないかと思うくらいに吐いて、ようやく収まった。

やれやれと首を振ったアダムが何処からか取り出した水の入った容器を差し出した。

俺はそれで口を濯いで、ふぅと息をついてからアダムについていって宿屋に入る。

 

 宿屋は高級感はそこまでないが、清潔的な民宿を思わせる雰囲気を漂わせていた。

アダムに手渡された鍵は一つだけ……二人部屋か……ちょっと緊張するな。

とか思っていたら、唐突にアダムが従業員の一人を呼び止めて何やら聞き始めた。

 

「教えろ。この宿に泊まっている者の名前をな」

 

「――――――はい、ただいま……リストを、お持ちしますね」

 

 うっわ、マジか……出来るとは思っていたけど、催眠術みたいなの掛けてるよアダム。

さっきまでハキハキしていた従業員が虚ろな目でゆったりと受付の中へ入っていく。

それから当たり前のように宿泊者の名前が書かれた名簿を持ってきて、アダムに手渡す。

 

「ご苦労、お前はこの後、無くしていた名簿を俺に届けて貰った……いいな?」

 

「……はい……」

 

 いいよなぁ……ゲスいけど、催眠術とか使えたら女の子に色んなことやりたい放題じゃん。

……いや、もうやりたい放題やってんのか……とエーアストさん達の事を思い出した。

あんだけ女を抱えてるとかハーレム主人公かよ、魔王なのに。

 

「クククッ……清水よ、そも主人公とはどの視点で、どのような物語に綴られる者のことを指しているのだ?―――仮にこの世界が勇者のためにある物語の世界ならば、主人公は勇者であろうよ。だがしかし、魔王(オレ)の為にある物語の世界であるならば、主人公は魔王(オレ)なのだ……分かるか?」

 

「……肩書が物語の役割を指すものではない……って言いたいのか」

 

「個の生にそれぞれの物語が在るのだ。王に、民に、獣に、星に、世界に、見方を変えれば生きとし生けるもの全てに役割を当てはめる自由が個に与えられる。それは時に主人公という正義であり、魔王という悪であり、民という中立でもあるのだ。……お前はどれだ清水幸利?」

 

「……俺……?」

 

 決まっている、天之河が勇者なんだから、あいつがこの世界にとっての主人公なんだ。

俺はそんなアイツの下に居るのが耐えられなくて逃げ出した、魔王の下にいる悪だ。

……けど、アダムの言葉を聞いて……それが絶対に正しい事と思えない自分がいる。

勇者じゃなくても、魔王の下についた小物(おれ)でも、物語の主人公に成る事は出来るんじゃないか?

 

「大ヒントをくれてやろう。()()()()()()()()()()()()()()()()……分かるか?」

 

「――――――ッ!」

 

 何気ない会話のつもりだったが、アダムの言葉は俺の胸に深い衝撃を与えた。

仮に自分が悪党だったとして、それでも自分の生きている世界では自分は主人公なのだ。

世界にどのような結果を齎し、どんな終わり方をしようとも、終わってしまえばそこで主人公の物語は幕を下ろす。ハッピーエンドかバッドエンドかは自分の考え方次第なんだ……!

 

 俺がここで腐って、自分は小物だ悪人だと割り切ってしまえば、俺の物語はその程度で終わる。

けど、()()()()()として開き直って生きるのなら……もっと違う終わりが選べるのか……?

人々に賛美されずとも、勇者に膝を折らせる……そんな考えただけで面白い景色が見れるって……

 

「あぁ、一応だが答えは聞いておらん。些細な日常の会話と捨て置け」

 

「……分かった……」

 

「それよりも面白い事が分かったぞ清水よ、これを見るがいい――――――」

 

 そう言ってアダムが渡してきた宿泊客の名簿一覧を見て、俺は凍り付いた。

()()()()()()()()()、前者は俺にとっていつかは会いたかった相手、後者は俺にとってもう二度と会いたくなかった相手の名前が、この宿屋に泊っている客の中にあったのだ。

というか何であいつ等が一緒の宿に泊ってんだ!?なんて心の中で突っ込んだ。

アダムはその隣にあるリンネ・ユキトの文字をなぞって愉快に笑っている。

 

「フハハハッ!よい、よいではないか!此度フューレンに足を運んだのはあのろくでなし共と縁を切る為と思っていたが、これは趣向を凝らした催しが開けるというもの!ククッ、清水よ、お前も丁度よい機会ではないか?貴様の物語を一度は阻んだ女が手の届くところにいるのだ。今のお前であれば―――――――――なぁ?()()()()()()()()()()()()……清水」

 

「―――ッ!!」

 

 文字通り、それは悪魔(悪の魔王)からの囁きだった。

けれど……復讐、復讐か……うーん……さっきの会話のことを考えると……なんだかなぁ。

復讐に燃える主人公って大体その復讐した後で後悔とか燃え尽き症候群になりがちじゃん?

確かに園部の奴に俺の逃走劇(笑)を邪魔されたことはムカついたけど……今更復讐なんて……

 

「……そんな小物みたいなこと、するわけないだろ」

 

 ちょっとだけムキになってアダムの提案を断った。

どうせ復讐するなら檜山とか天之河みたいな調子に乗った奴らがいいしな。

女相手にモンスターを嗾けて襲わせるのは……なんか嫌だった。

……別にアイツがちょっと可愛いからとか、そんなフェミニスト地味た理由はない、ないったら!

 

「――――――ククククッ」

 

「なんだよその笑いは、言いたい事あんならハッキリ言えよ」

 

「いいや?……この短期間でお前も随分と立派になったものだと感心しているのさ」

 

「けッ、どうだかな……」

 

 アダムの言葉には嘘の他にも色々な感情が含まれているんだろう。

けど俺は捻くれているから、悪態をついてアダムのそんな言葉を受け流す。

そんな俺に対して怒ることも、悪びれる様子もなくアダムは名簿を従業員に返した。

従業員は催眠術が解けたのかハッと我に返って、さっきアダムが言った通りの対応をしてから俺らを二人部屋へと案内して何処かに消える。

 

「さて――――――唐突だが、ここに来て色々と目的が変わった」

 

「……というと?」

 

「お前が王国を出る際に手引きした連中、フリー……なんだったか……まぁ人間共の悪性腫瘍みたいな連中だ。以前は王国内で諜報活動に役立つからと協力関係にあったが、現状は連中から得られるメリットは何もない。よってオレ直々に縁を切る事を伝えに来たのが当初の目的だ」

 

 哀れ、名前すら憶えて貰えないあの犯罪者集団。

……まぁ確かに子供を奴隷にしてたり、ちょっといけ好かない連中だったな。

ウルの町で離れちまった連中も今頃どうしてんのかな……死んでりゃいいけど……とか思っちまう俺も相当なクズ野郎なんだけどな……まぁいいか。

……あの時の子ども、まだ生きてたりすんのかな……

 

「連中が捕まって我々の情報が明るみに出るのはあまり良くはない。まだホルアドに潜伏しているカトレアの身に危険が及ぶからな。お前もそれは嫌だろう」

 

 それはいけませんね、褐色人妻おっぱいを守るために犯罪者連中には死んでもらいましょう。

俺の心の声を聞きとったアダムが大笑いして「奴の夫(ミハイル)が聞いたら激怒するぞ?」と冗談を飛ばす。

分かってますよそれくらい、普通にお世話になった恩人を助けたいだけです。

 

「そこでお前には、奴らが飼い慣らしているモンスターを数匹、お前の支配下に置いてから奴らが捕まる前に死ぬよう仕向けて貰いたいのだ。……あぁ、別にお前が手ずから殺しても構わんぞ?」

 

 自分の手を汚したくないので、アダムに貰った魔法とやらを存分に使わせて貰うよ。

しっかしいよいよ本格的にモンスターを使役するのか……一応なんだけど、失敗とかしないよね?

手懐けようとして暴れて俺が真っ先に食われるとか絶対に嫌なんだけど。

 

「クククッ…心配するな、あいつ等が飼い慣らす程度のモンスターであればお前が御せないということはあり得ん。それが終わってからペット代わりに持ち帰っても良いくらいだ」

 

「ペットて……」

 

 火を吐いたりする恐竜みたいなペットを飼い慣らす人間とか俺が歴史上初なんじゃないか?

けど、俺がモンスター嗾けて犯罪者連中を抹殺するのはいいとして……アダムはどうすんのさ。

 

「俺か?……ククッ、なに、物語を面白くする為に、魔王である俺は裏方に徹するつもりだ。……あとは……そうさな……お前にはもう一つ頼みたい事がある」

 

「頼みたい事?」

 

 拒否権は無いんだろうけど、まぁ別にアダムの頼み事なら断る理由はないな。

さっき言った園部に復讐するとかだったらちょっと考え物だけど……頼まれたらやるしか……

 

「あぁ心配するな、女の方には用はない。お前が抱くなり口説き落とすなり好きにしろ」

 

 好きに出来たらこんな苦労してねえよバァカ!!……って声を大にして叫びたいのを堪える。

それで女の方ってわざわざ表現するってことは……用があるのはハジメの方か。

 

「簡単な事だ、お前はその男に接触して……可能であれば此方側に引きこめ」

 

「……前にカトレアさんがやってたみたいに、勧誘しろってことか?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 確かに……それはちょっと俺自身やってみたい事かもしれない。

南雲の奴にも教えなきゃいけないんだ……この世界の真実と、さっきの物語のことを。

俺もアイツも世界を救う勇者って主人公にはなれなかった、天之河にそれを奪われちまった。

だから……一緒に勇者をボロクソに叩きのめす……悪の主人公にならないかって、そう誘うんだ。

 

「では動くぞ、善は急げ――――――ククッ!やっている事は悪だがな」

 

「えっ、今から動くの?」

 

 お外真っ暗でんがなアダムはん、貴方気は確かでっか?

アダムは「当然だろ?」みたいなキョトン顔してるけど、それしたいのはこっちだよ!

モンスターの背中に乗っかって死ぬほど揺らされて、町に着いてゲロったら即行動とか!!

 

 神の使徒だった頃はまぁ環境が最悪だったけど、労働みたいな事は殆どなかった。

こっちは環境は整ってるけど……労働基準法とかガン無視のブラック職場だこれー!?

まぁこっちの方が前者より百億倍マシだけどさ、楽しいし……俺はそう思って動いたのだった。

 

 




 ウッキウキで悪役主人公になりきろうとする清水君。
これまで読んできた読者なら分かりますが、ハジメ君とは……
……うん……残念ですが、みんな仲良しこよしならこんな風にならないですしね。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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