一言だけ、フューレンにようこそ大自然。
「アァ!?まだ餓鬼は見つからねえのか!!」
フリートホーフが潜伏している建物内に怒号が響き渡る。
ボスの男”ハンセン”は机の上を殴りつけて席を立つ。
ビクビクと怯える部下を見て更に苛立ち、彼の胸倉を掴み上げて腹を蹴った。
「げほぉっ!?す、いやせボス―――」
「謝罪なんざ求めてねえだろうがボケェ!!とっとと下の連中も動かして餓鬼を連れて来いや!!オークションまで時間ねえんだぞ!?テメェこれで見つかりませんでしたってなったらぁ、ウチの面子が丸潰れじゃねえか!どう責任取るつもりだオラァ!」
口から吐血して、シャツを汚した部下に対して更に怒りを募らせるハンセン。
他の者達は恐ろしくて後ろへ一歩下がり、乱暴される仲間を助けようとはしない。
そうすればハンセンの怒りを買って、今度は自分が痛めつけられると分かっているからだ。
蹴る、殴る、叩く、壁に叩きつける、また胸倉を掴んで蹴るを繰り返す。
「だ、がぁッ、アッ、やめ――――――!」
「うるせええぇぇぇっ!!」
最後に頬を思いきり殴り飛ばされた部下が痙攣して気を失い、ハンセンの暴行は終わった。
他の部下達は怒鳴っている最中の彼の言葉を命令と受け取ってそそくさ退出する。
彼の苛立ちは海人の子ども、ミュウが逃げ出した事のほかにもう一つあった。
数時間前、部下の一人がお得意先だった貴族ミン家のところを訪ねたのだが……
ミン家は強盗に押し入られて従者共々、全員が惨い殺され方をしていたという。
現場検証のために王国の兵士が辺りを徘徊していた為、部下も急いで逃げ帰ってきたのだ。
ミン家の支払いがフリートホーフ最大の収入源でもあった為、今後の収入が激減するのは目に見えている。更に貴族の後ろ盾を失った事で、フリートホーフの信用は落ち込む。
「―――クソっ、クソクソクソッ!!」
苛立って机の上から葉巻を取った彼はそれを口に銜えて部下に火を点けろと言いかけて―――
部下がさっきの暴行で一人残らず部屋からいなくなった事を思い出し、自分で火を点ける。
普通なら咽るほどの葉巻を胸いっぱいに吸い込んで、ようやく落ち着きを取り戻すハンセン。
(……活動拠点をフューレンから移すしかねえか……)
帝国は監視の目が厳しく論外である、王都、宿場町も今は厳戒態勢が敷かれている為に除外。
そうなると行き先は自然とアンカジ公国か海上都市エリセンに定まってくるのだが……
(公国のクソ領主が、貧乏野郎の癖にお高くとまりやがって……)
以前フリートホーフは内密にアンカジ公国の領主ゼンゲン家に取引を持ち掛けたのだ。
しかし彼らはあっさりとそれを拒絶するどころか、自首する事を促してきた。
その時のハンセンがどれほど怒り狂ったかは想像に難くない。
アンカジ公国で労働力は不足しているのは誰の目に見ても明らかだ。
素直に亜人か人間の奴隷でも雇えばいいものを、彼らは頑なにそれを受け入れようとしなかった。
善人ぶったところで国が苦しい事実から目を背ける連中などクソくらえだと彼は思っている。
そんな彼らに違法な取引を持ち掛ける自分達は間違っていないとも考えながら……
暫くの間、黙って葉巻を吸って吐いてを繰り返していたハンセンだったが……
突然、部屋の外から部下達の悲鳴が聞こえ始めたことで慌てて席を立つ。
(まさか王国兵の連中がここを嗅ぎつけたのか!?……いや、いいやあり得ねえ!教会のクソジジイとは話がついてんだ、俺達がここにいる事は貴族でもねえ限り知らねえ筈だ!……まさか、貴族共が裏切って!?クソ、兎に角バカ騒ぎを止めさせねえと、最悪はガキ共を人質にとって―――)
葉巻を銜えたまま部屋の扉を開け放ったハンセン。
廊下を行き来する部下の一人を鷲掴みにして状況を確認する。
「おいテメェ何があった!!?」
「ぼ、ボス!!やべぇですよ!急いで逃げましょう!」
「ヤベェのは分かってんだよ!!だから何があったか聞いてんだ!」
(あぁぁー畜生!学のねえチンピラはこれだから―――!)
等とキレ気味で、また暴れたら部下が逃げてしまうから流石に怒りを抑えて聞いた。
しかし次の瞬間、部下の口から出た言葉はハンセンの理解を越えた発言だった。
「ガキ共の牢の中に蟹のバケモンがいたんですよ!!牢ん中のガキがみんな食われちまった!他にも飼い慣らしてたバケモンの姿が消えてるし、外に出てた連中とは連絡がつかないしで……!!」
「なん、んだとおおぉぉぉぉっ!!!?」
*
以前、ミュウが入れられていた下水道にある牢の区画は地獄の様相を呈していた。
グチャグチャ、グチャリと
通常の個体よりも大きく、分厚く発達した左爪で器用に、
「――――――は、はは」
「ふへ、ヒヒッ」
「ふふふっ、うふふふ……」
牢の中にはまだ息のある子どもが何人かいるが、逃げ出す素振りを見せない。
寧ろ
それが自分達を餌と認識して襲い掛かれば、痛みを認識する前に死ねるだろう。
既に虚ろな奴隷として何度も
そこには嘗て、ミュウが逃げ出すきっかけを与えてくれた男の子の姿もあった。
あの時よりも頬は痩せこけて、顔の一部が腫れて、身体は汚物に塗れている。
他の子ども達が様々な感情を表すのに対して、男の子が浮かべているのは虚無だった。
生きるとか死ぬとか……もう関係ない……ただ自分の人生は此処で幕を下ろすんだ。
どうしようもなく救いのない、大人たちがよく使う言葉で言い表すならクソッタレな人生だった。
親に捨てられ、ゴミを漁っては雨風を凌げる場所を探して眠るだけの日々。
それが変わったかと思えば大人達に乱暴されるだけの苦しい日々の連続。
小奇麗にされたかと思ったらまだ知識もない性の捌け口に使われただけ。
使うだけ使って、返されたら苦しい日々に逆戻り。
あの可哀想な女の子は逃げられたのかとか、これからどう死ぬのかなんて考える力もない。
一言だけ……みんながよく口にする神様に対して、精一杯の罵詈雑言を投げかけてやるんだ。
蟹の脚が、死んだ子どもたちの死体からはみ出た臓物や骨を踏み砕きながら近づいて来る。
男の子は心の中で繰り返していた言葉を、最後に振り絞ってニィと笑って呟いた。
「ざまぁみろ」
その後、それはまだまだ空いた腹に入れる餌を求めて牢から出ていった。
牢の中から生き延びられた子どもは、ミュウを除いて
もー作者ったらすぐに台詞とか今期アニメに影響されちゃうんだ。
最後に出てきたのは生態ムービーでは穏やかな奴だったアレのヤバい方です。
もっとぶっ飛んで辿異種にしても良かったんですが、皇女様とその他も死にかねないので却下しました(まだ先に出番ありますし)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡