サブタイトルから分かる通り、忍殺フロムゲーをリスペクトしました。
推奨bmgはSEKIRO: Shadows Die Twiceのより「怨嗟の鬼」
紫炎を纏う鉄扇の袈裟切りを、ノイントは身体強化で硬化した手の甲で受け流す。
ティオは返す刀で、瞬時に畳んだ鉄扇による首元を狙った刺突を繰り出した。
「ッ!」
ノイントは身体強化を即座に手の甲から足へと切り替えてその場から飛び退く。
彼女の鼻先と前髪を火の粉溢れる鉄扇の先が掠めたが傷にはならなかった。
ティオはもう一方の鉄扇を持っていない方の手に無詠唱で火球を生み出しながら怒る。
「どうした!?かつて我らを羽虫のように殺し尽くした貴様らが、この程度か!!」
「くっ……」
火球と称されるそれは、もはや怒れるティオの制御下を離れて轟々と燃え盛る火の塊だった。
ノイント目掛けて放たれた火球、彼女はそれを水属性の魔法で障壁を展開して防ぐ。
しかし火球の威力を完全には抑えきれず、手を翳す彼女の足が地面へと深く沈みこんだ。
「辱めを受けた母上は、苦しそうだった……!矢傷を受けてなおも私を逃がさんと尽力してくれた父上は、辛そうだった……!貴様も、貴様もみんなと同じ目に遭エエェェェェッ!」
ティオは目元に皺を寄せ、泣き出そうな甲高い声で咆哮する。
鉄扇からは先ほどよりどす黒い紫炎が溢れ、もう片方の手からは4本の爪が炎を纏って陽炎を纏い膨れ上がった。
悲痛な表情で俯きながら、ノイントは今の彼女を止める術はないと判断する。
しかし彼女に攻撃を仕掛けること、魔法を撃つことを芽生えたばかりの理性が拒んでいた。
躱し続けるのは難しく、狙いを外した魔法が民家に当たらないよう防ぐのが精一杯である。
(此処よりは、空中なら――――――!)
ノイントは魔力操作、身体強化で背中に鳥のような魔力で作った羽根を生やした。
そのまま距離を詰めてこようとするティオを誘導する形で空へと舞い上がる。
眼下で立ち止まった彼女はノイントを見上げる形になった事で更に怒りを募らせた。
「また、そうやって……私たちをお前は見下すのかアアァァァァァァァ――――――!」
怒りに身を任せて鉄扇を開いたティオ、アッパーを繰り出すような腕の動きで4本の爪の形をした炎が迫り、更に彼女は紫炎纏った鉄扇を投げつけた。
空中なら避ける事に躊躇いは無い、そう考えたノイントは羽根を動かして4本の爪を躱し、続く第二撃の鉄扇を再び手の甲で無造作に打ち払う。灼けつくような痛みでピクリと眉を動かし手の甲を見ると、身体強化で硬化した筈の皮膚が裂けて血が滲んでいる。
「おまえたちはいつもそうだ!いつもいつも、そうやってわたしたちをみくだして、みくだして、ミクダシテ、ミクダシテ、ミクダシテエエエエエエェェェェーーーーー!!!!!」
(……っ!あれ、は……!?)
この時のティオは自分で気づいていなかっただろう、彼女の抱いていた怒りは怨敵である
数百年の孤独、血の繋がった祖父では到底癒せなかった、彼女と両親の死別が生んだ心の傷。
一族の長の娘であるが故に、残った同族を生き永らえさせるという責任を背負うしかなかった彼女の苦しみは、ゆっくりと…だが確実に、彼女の精神を蝕んでいたのだ。
―――あ、グッ、ルぅああああアアアァァァァーーーー!
彼女の周りを炎が包んでいく、豊満な体を包む美しい着物は燃え盛る炎に焼かれて灰となり、肌は蠢くように皮膚の間から生え変わった黒い鱗へと徐々に覆われて、身体はブクブクと急激に膨らんで形を変えていく。
―――コロシテ、ヤル……!
嗚呼、これが正しき歴史を歩んだ竜人族の女王の姿というべきなのか……
波打つ炎は怨嗟の声に哭き狂う死人のように、彼女の荒ぶる心内を表すかのように。
背中から翼が生え、腰から伸びた尻尾が苛立ち、足元の地面を叩いて砕く。
我ら己の本来在るべき姿を―――この身は―――であり―――である
全に答えを見出したれば―――――――――を極め全に至れ
魂――――――を見失うことなかれ
されど――――――時来たらば、その身は――――――堕ちる
憎悪と憤怒に――――――――――――――変わる
悪意を抱え―――――――――――果てる
欺瞞に眼曇らせ――――――――――
――――――と信じ、歩みを止める事なかれ
―――表裏一体、―――――――――我らこそは
星の行く末を見定めるもの―――であると心得よ
竜人族が押し寄せる人間の手によって蹂躙され、女子供が犯され、男が殺されていく狂気と混沌の中で、幼き竜人の少女が見世物のように母を吊るされた姿を目にし、怒りに呑まれて我を失う寸でのところを、父の言葉が止めた。
しかし数百年の時の流れが、在る筈のない怨嗟の声が、内に秘めた怒りが、忘れまいとしてきた父の言葉を、忘却の彼方へと追いやってしまったのだ。
そこにいるのはヒトに非ず、復讐を果たす為だけに己を見失った獣擬きである。
*
「………!!」
フリートホーフ殲滅戦が開始されて数時間が経過した。
矛砕ダイミョウザザミが下水道に現れたとの報告を聞き、救難信号を受け取ったハンターが到着後に交戦、数十分の戦闘の後、狩猟が完了する。
冒険者が焼け落ちた建物から遺体の他に盗まれた宝石など金目のものを集めているのを横目に見ていた彼は、突如都市全体に響き渡るような聞き慣れない咆哮を2つ耳にして目を見開いた。
一つは過去に何度も聞いたことがある、だが町中で耳にしていい声の持ち主ではなかった。
もう一つは、数百年身を潜めた
手に持っていた操虫棍を地面に突き立てて、地面を蹴って空中に跳躍した彼は木に登る。
周囲で一番高いと思われる木に登り、目を凝らして鳴き声のした方角を双眼鏡で確認した。
川を挟んだ向こう岸にある未開拓地域の闘技場から砂煙が、一方で近くの商業区から
「―――――――――なんという事だ……!」
前者は長い歴史の中で予測不可能な存在であることを知る者なら理解出来る。
しかし後者は、絶対に同族が侵してはならない領域に足を踏み入れていた。
眼下で町の異変に気付いた冒険者たちからも騒めきが起こり、皇女が指示を出している。
彼は自分にも下されるであろう指示を聞くより先に、木から飛び降りて近くの馬に飛び乗った。
その馬は集会所から此処まで彼が急ぎで来るために借りた馬だった。
甲高い嘶きと共に走り出す馬に気づいて皇女が制止の声を掛けるが彼は無視して走り出す。
自分がどちらを優先して、何をしなければならないのか、男はずっと考え続けていた。
木々の間を通り抜けて駆ける馬上で彼が最後に発した言葉は誰に向けたものか……
「無事でいてくれ………!」
しれっと文章の中で瞬殺される矛砕ダイミョウザザミ君……
あと途中で所々隠しているティオ父の言葉の下りですが、漫画版の過去の台詞に作者の独自解釈が盛り盛りで作られています。消えてる部分は後に彼が足してくれるので……
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡