モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 サブタイトルが思いつかないからダジャレにした作者です…
しかしサブタイトルの意味は内容見て貰えれば完全に一致してるかと思います。
視点はイシュタル爺さんというより、聖教教会の信者っぽく…
最後だけ別の第三者視点になってます。


幕間の物語 教皇が強行して恐慌

 

 分からない…突然、エヒト様からの神託が途絶えてしまった。

神山の奥、聖教教会の聖職者たちでも一部の人間しか立ち入りを許されない神聖な場所で最高権力者である教皇イシュタルは焦っている。

 

 始まりは半月ほど前、神託の巫女であるノイントが消息を絶った。

 

「主の命により、是よりイレギュラーの抹殺に向かいます」

 

 それっきり彼女が神山に戻ってくることはなかった。

教皇イシュタルは何とかエヒト様から神託を貰おうと試行錯誤を繰り返したが、神の加護を貰うだけの只の老人でしかない彼には何も聞こえない。

日に日に焦りが増す中、ついに彼を狂わせる事件が起きる。

 

「フューレンの結界が敗れただと!?」

 

 怒りの籠った声が巨大な礼拝堂の中に響き渡る。

正面のエヒト様を崇める肖像画の前に教皇イシュタルはいた。

皺だらけの顔で眉間に青筋を寄せた彼に、震えながら神殿騎士の情報官が話す。

 

「お、畏れ多くも…黒い鱗を纏った龍が町中に現れた…空から赤い光が降ってきて地揺れが起こったとの報告も挙がっており…現在、確認中とのことで―――」

 

「そんな事があって堪るか!偉大なる我らが神、エヒト様が我ら人間族の繁栄の為にと与えて下さったアーティファクトだぞ!?たかが羽と鱗を生やした程度でいい気になっている下賤で卑しい魔物如きに、そんな事が出来る筈ないだろう!!」

 

「ヒッ!?……で、ですが……多くの目撃者がいて……門の防衛に参加した冒険者や兵士達にも、数人の負傷者が出たとの報告が―――」

 

「黙れ!!そのような嘘偽りの噂話、ワシの耳に入れるでない!下がれ、もう下がれぇっ!」

 

「は、はいっ…!!」

 

 今まで温厚だった彼しか見てこなかった神殿騎士は怯えて、神聖な礼拝堂の中である事を忘れて足音を立てるのも気にせず逃げるように出て行った。

怒りでゼイゼイと息を荒くした教皇イシュタルは、手にした杖を足元に叩きつける。

 

(何故こうもエヒト様の神託と食い違いが起こるのじゃ…!)

 

 異世界から召喚された神の使徒が、必ずや前人未到のオルクス大迷宮を突破し、何処かに隠されているであろう神の子を連れて来るだろうというのが最初の神託だった。

ところが神の使徒は伝説の魔獣に騎士数名を殺されて戦意喪失で王城に帰還。

同時に神の使徒一人が大迷宮に挑む前に行方を暗ましたと報告される。

その時はまだイシュタルの怒りも寛大なエヒト様の言葉で収まった。

 

 その後、神の使徒から数名が作農師の護衛へと異動を嘆願された。

元から激しく神の使徒を戦わせることに反対していた彼らの教師を名乗る女の抗議の声だけなら、その異動願を跳ね除ける事も出来た。

しかし他の国…特に今イシュタルが最も警戒している帝国や公国の人間達に睨まれた事もあって、異動を認めざるを得なかった。

 

 また神の使徒から1人が逃げ出した。

これを聞いてイシュタルは怒り狂ったが、彼に手出しは出来ない。

彼が下手に動けば帝国が弱みを握ろうとして動くからだ。

 

 トドメとなったのが神託を受けていた真・神の使徒ノイントの失踪。

エヒト様の神託という精神的支柱を失えば、孤独な老人の心なぞ濡れたちり紙に等しい。

それから数日が経過し、フューレンの結界が敗れたと報告があったのだ。

腸が煮えくりかえる思いのイシュタルは、ついに強硬手段に出る。

 

 

「―――使徒様達を大迷宮に…今すぐですか?」

 

「左様。今まではエヒト様の寛大な御心に沿って戦士の休息とやらを容認しておりましたが、些か最近の勇者様達は本来の在り方を見失っているように見受けられます」

 

 ハイリヒ王国の王城で、国王エリヒドの所へ来た教皇イシュタルの第一声である。

神託も何もない状態で彼に出来る事は、自らの立場を使ってエヒト様が望んでいた世界を戻すために本来の形に訓練所に籠ってばかりの使徒達を動かす事だった。

普段とは人が変わったように険しい顔つきの教皇イシュタルに国王エリヒドの顔色が青くなる。

 

「し、しかし随分と急な話で―――」

 

「我らが神は現状を憂いておられるのですよ国王。本来ならばとうの昔に大迷宮なぞ攻略し終えて、魔人族の将軍の首でも討ち取っているもの。…それを、騎士の死に悲しみ疲れた心を癒す等と悠長な事を言って…」

 

「…それは…メルド・ロギンス騎士団長の負傷もあったからで…」

 

「言い訳など今更エヒト様に向かって通用するとお思いか!?」

 

 突然の大声に驚いて目を丸くする国王エリヒド。

教皇イシュタルの目にはギラギラと強い意志が宿っている。

俗に云う狂信の妄想と欲望に取りつかれた野心のそれだった。

 

「神はやがて憂いが怒りに変わり!いずれ我らを見捨てるかもしれないのですぞ!!」

 

「―――っ!わ、分かった。私から彼らに急ぎ支度をするよう伝えるっ」

 

 言うや否や、席を立った国王エリヒドが従者に向かって神の使徒達を連れてくるよう命じる。

教皇イシュタルはそれでも興奮が収まらず、ギョロギョロと目が周囲を探っていた。

運悪くその場に通りかかった国王エリヒドの子、ランデルは以前の好々爺としていた彼の姿を知っていた事もあってショックを受け、従者に伴われて足早に自室へと戻っていく。

 

 程なくして神の使徒のリーダーである勇者、天之河光輝がやって来た。

従者の焦り様に何事かと慌ててきた彼は教皇イシュタルの顔を見て明るい声で―――

 

「イシュタルさん!来てたんですね!」

 

 と実家に来た孫のように近づこうとするが…

教皇イシュタルはその場でぐるりと不気味に首だけ向けて吠える。

 

「勇者よ!いつまで尻込みしておられるのですか!?我らが神エヒト様の肖像画と私の前で、この世界を救うと宣言した貴方が!何を訓練ばかりに現を抜かしておられるのですか!!」

 

「ッ!?…い、イシュタルさん…?」

 

「こ、光輝殿!話は私が――――――」

 

 教皇イシュタルの下へ王家の従者が近づき、落ち着かせようと椅子に座らせる。

流石の彼も衰えた体でいつまでも興奮しているのは疲れるのか、息を整えながら椅子に座って杖をつくが、目だけはギラリと光輝を睨みつけていた。

別人かと思うくらいに教皇イシュタルを凝視していた光輝は国王エリヒドから話を聞く。

次第に彼の顔は曇っていき、国王も言葉を濁し始める。

 

「…それゆえ、君達には早いところ…あの魔獣ベヒーモスを討って貰おうと―――」

 

「…わ、かりました…。俺は次こそ奴を倒すと自分に誓いを立てたので問題はありませんが、他の皆がどうするのかも聞かないと…」

 

「――――――勇者殿、一つだけ…エヒト様の忠実な僕である私から言わせて頂きますぞ」

 

「……な、なんですか?」

 

「エヒト様はこの世界を救おうとする貴方には感謝しています…が、貴方に付いて行くと宣言したにも関わらず、戦いに背を向けて逃げ出した者達が…果たして元の世界に帰れるかどうか…」

 

「そんなっ!?約束が違います―――「それは使徒様も同じではありませんかな?」っ」

 

 教皇イシュタルは内心、まだ子供の浅はかな考えしか持てない光輝を嘲笑っていた。

神の使徒に戦う以外の選択肢を与えないよう、元の世界へ帰れる手段を持っているのは彼らを召喚したエヒト様だけだと伝えれば、彼らは必然的に戦争する以外の選択肢は選べない。

今この場で戦う意志を見せなければ、帰れなくなると暗に言っているのだ。

 

 そして約束が違うと光輝が騒ぎ立てることも教皇イシュタルの予想通り。

返しは世界を救うと約束した使徒達が、その約束を先に果たしていない事を指摘してしまえば、何も言い返せなくなるのだ。

 

(所詮は子ども…エヒト様の前では駒の一つに過ぎんということか…)

 

 教皇イシュタルはエヒト様の忠実な僕であり、従僕が主神の思惑を読むなど造作もないこと。

悔しそうに顔を歪めて頭を下げるしかない光輝の前で、分かりきった答えを待つ。

 

「……分かりました。みんなと一緒に故郷に帰る為……オルクス大迷宮に向かいます」

 

「それでこそ勇者様ですぞ。天上に座すエヒト様も喜んでおられます…」

 

 恍惚とした笑みで、それ以上彼らと話す事はないと教皇イシュタルは王城を出ていく。

帰り際、彼は天道から見下ろす王都の町中に、嫌でも目立つ集団を見かけた。

その瞬間、明るかった表情は一気に歪んで集団に向かって聞こえない罵倒を浴びせる。

 

「魔物を狩って蛮勇を示すばかりの背信者共め…神託さえあれば皆殺しにしてくれるものを…」

 

 魔物の皮や鱗、地面に生える鉱石や、果てには畑から採れた変な植物なんかを鎧にして纏い、同じく魔物の牙や爪、地を這う虫や固いだけの魚などを武器にして魔物を狩る者達。

教皇イシュタルは帝国と彼らが大嫌いだった。

 

 向こうからすれば教義が自分達のスタンスに合わないだけで、聖教教会と敵対するつもりはなかったのだが、あまりにも王国貴族を通じての抗議の声や教会関係者からの勧誘がしつこかった為、今では向こうから聖教教会は敬遠されているのだ。

 

「何れ天罰が下る…その時になって懺悔してからでも遅いわ」

 

 吐き捨てるようにそう言った教皇イシュタルは神山の奥深く、自室へと籠った。

エヒト様とやらが何処にいるのかなぞ、ハンター達は知ったこっちゃないが、これだけは言える。

空にも大地にも水の中にも、アンタらが見下すモンスターが縄張りを持っているんですよと…

あんた等が信じるエヒト様とやらは、一体どこで今、何をしてるんですかね?




 使徒様御一行、オルクス大迷宮リベンジ入りまーす!
さぁて最初の幕間では省いちゃったけど気合入れるぞぉ~(腕ブンブン!)
という訳で…久しぶりにアンケート投下です!

 結界型アーティファクトはエヒト様がくれた~みたいなのはやや独自解釈です。
本当は王国で一番の錬成師ウォルペン・スタークさんが作った傑作かもしれません(彼に出番はあるのかと不安になる作者だった)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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