書いてる途中に過去のトラウマ再発して胸が痛くなったり、変な笑い声と一緒にマジキチスマイルになったりと情緒が滅茶苦茶でしたが、無事ハジメ君が本作の最初に至る話の過程、その終わりがこちらになります。
「命に嫌われている」だけがこの話書く間の作業曲になるとは思いもせず…
ありふれ原作の第一章2話から4話までにちょっとスパイスを加えた結果がこれって…
作者のおススメとしましては、飛ばし読みでもいいので幕間の回想①と幕間の回想②を読んで頂いてプロローグ~最新話と繋げれば、ハジメ君の人格形成と心境の変化?が分かると思います。
異世界に召喚された時、僕は突然の出来事に戸惑うばかりだった。
勿論、僕以外のクラスメイトの皆や畑山先生も同じ気持ちだったんだろうね。
僕達を迎えたのは聖教教会の教皇を名乗る老人イシュタル。
そして彼らが崇めるエヒトという名前の神らしき巨大な壁画。
中世的な顔立ちに金色の髪を靡かせ、慈愛の笑みを浮かべて大地を見守る神。
ありきたりだが、礼拝堂なんかにはよくある壁画の一種なのだろう。
僕はそういうのがあまり好きじゃなかったから、内心気持ち悪く感じた。
教皇イシュタルは言った。
僕達を召喚したのは神エヒトであり、その目的はこの世界を救う事にあると。
この世界を救う…それは魔人族との戦争に勝つ事が最終目的であるという。
当然、畑山先生も僕達もそんな事を言われて了承する筈がない。
戦争をする…それはつまり、僕達に人殺しをしろという事だ。
だけど僕達の訴えも虚しく、元の世界には帰れない事実を突きつけられた。
僕はここでふと教皇イシュタルの言葉に疑問を抱く。
僕達を召喚したのは神エヒトであり、彼らに帰す手段がないことは分かる。
けど、他に帰れる方法があるかないか…その疑問に彼は答えなかった。
最初はクラスメイト達が口々に騒いでいるのを冷めた目で見下ろす狂信者のように見えた老人が、あえて騒がせることで触れられたくない何かを隠しているように考えられた。
可能性として僕が感じたのは一つ…神エヒト以外にも元の世界に帰る方法がある。
でもそれを僕達が見つけてしまっては、わざわざ召喚した意味がなくなるだろう。
だから敢えて「帰る事は不可能」と思わせぶりな発言をして選択肢を潰した。
そうすれば自然と僕達がパニックになる事も見越していたからだ。
結局、騒ぐクラスメイト達を静かにさせたのは天之河君だった。
この場で騒いで、教皇イシュタルを責めても何の解決にもならない。
それは間違っていない。騒ぐ僕らを見る目が、明らかに挨拶をした時の好々爺然とした雰囲気とは全くの別物だったのが記憶に焼き付いている。
でも僕はこの時、どうして勇気を出して彼の暴走を止めなかったのかと後悔する。
彼は何をトチ狂ったのか、戦争に勝利すれば帰れる可能性があると言い出した。
ここぞとばかりに黙っていた教皇イシュタルが彼を煽てて、もう後は流れに任せるだけ…
彼のカリスマが思わぬ方向に働いた結果、僕達は戦争参加を余儀なくされた。
彼を中心にクラスの中心にいる存在の男子女子が賛同していく。
その中には白崎さんや八重樫さんの姿もあった。
八重樫さんはもっと思慮深い子かなと思っていたんだけど…
結局はいつも学校に居る時と同じで、幼馴染の天之河君が暴走しても本気では止めない。
剣も弓も使った事がない素人の僕達に、一体彼らは何を期待しているのだろう?
これが異世界に召喚されて一番最初の不幸。
召喚相手はとびきり胡散臭い宗教団体のトップで、戦争を強要された。
クラスの皆も戦争参加に決意表明とかしちゃってるし…
畑山先生は情けない声で止めようとしてるけど、全く効果がない。
異世界で暫定的に僕達の保護者でなければならない人が、一体なにやってるのさ。
*
二番目の不幸は、僕の天職とステータスの話。
言わずもがな、天之河君は自分で強い力を感じるとか訳の分からない事を言っていたけど、調べてみたら彼には天職”勇者”が与えられたうえに、ステータスの数値が全部100だったらしい。
僕達に訓練をつけてくれるメルド団長が「頼もしい奴だ!」とか笑ってるけどさ…
それなら彼一人に戦争させて、僕達何もしなくても良くない?って言えたらどんなに楽か。
総スカン食らって最終的に虐められる未来しか見えてこないよ。
……まぁそれはさておき、僕の不幸とは天職が”錬成師”だったのと、ステータスが一般人並、数値が全て天之河君の十分の一だったことである。
天職とステータスの開示はクラス皆の前で行われた。
僕が最弱と分かるや否や、小悪党の四人が笑いものにする。
他の皆に笑われて、流石に僕は恥ずかしさと情けなさで顔を真っ赤にして俯いた。
それから畑山先生が遅れて彼らを叱り、僕を慰めるように自分の天職を見せつけた。
先生の天職”作農師”は数百年ぶりの逸材、今まで現れなかった貴重な生産職である。
僕がもっと落胆したのを見て先生はどうして僕がそうなっているのか分からないみたいだし、集まってきた白崎さん達が微笑ましく笑っていた。
……この時、僕は表情には出さなかっただけで少し怒っていたのかもしれない。
僕を見下し、ここぞとばかりに笑いものにするクラスメイト達と、それを止める気のない先生。
…いや、それだけじゃない。それを理由に、この場で逃げ出そうと考えなかった自分に。
みっともなく醜態を晒して逃げ出していれば、あんな目には遭わずに済んだのかもしれなかった。
*
「――――――ぅう…全然分からない…」
図書館で手に取った分厚い本を何ページか捲って中を呼んだ僕は呻きながらそう呟く。
異世界に召喚されてから二週間が経過して、僕達はハイリヒ王国で訓練をしていた。
天職に関係なく、剣や弓の扱い、果てには乗馬までやらされたけど…
ステータスが低い僕には散々な結果が続き、小悪党組はこれまた愉快だと笑う。
それを先生が止めようとして、逆に僕は惨めな思いをしての繰り返し。
(この、魔物は神の手を取らなかった卑しき存在ってどういう意味だよう…)
分厚い本の内容は魔物の図鑑らしいのだが、魔物の名前は殆ど分からなかった。
ただ魔物は聖教教会の教義によると、悪しき存在であり、いずれ滅ぼす必要があるとのこと。
どうして悪しき存在なのか、滅ぼさなければ何が起こるのかは具体的に書いていない。
歴史を紐解けば、大体が神エヒトの偉業とやらに直結する。
「――――――はぁ」
最初の一週間以降は訓練の時間を自由に使う権利が与えられた。
僕が訓練所で剣を振っていても、クラスメイト達の「お前は無駄だし邪魔だからどっか行け」という無言の圧力に負けて、今はこうして読書の時間が増えている。
けどそれを僕は悲観的に捉えることはなかった。
戦う事が出来ないのなら、せめて知識を貪ろうと考えたのだ。
幸いに錬成師は技能が上達すれば剣や鎧も作る事が出来るらしい。
だから僕は戦う事を半ば諦め、後方支援に徹すると決めた。
(決めたと言っても僕の中でだけ…なんだけど…)
僕が戦わないなんて言ったら、全員からブーイングが巻き起こるだろう。
メルド団長にも以前それとなくその話をしたが「大丈夫だ!」と根拠のない笑いと、軽くお説教をありがた~く頂戴して終わってしまった。
…あの人、平民出身で実力もあって、周りの人に好かれてるらしいけど…
うーん、僕みたいな卑屈で根暗なオタクとは多分そりが合わないかも。
まぁ別に積極的に話すことはこれから先もないだろうし、あれはあれでいいと思うけどね。
人との気が合う合わないで言ったら、今のところ僕はこの異世界の住人に前者はいない。
王国の貴族達は勇者を中心に実力があると見込んだ者を担ぐだけで、僕はオマケ扱いだった。
王様の娘、僕達より三歳年下のリリアーナは元々明るい性格だから、誰とでも仲良くする。
特別僕と話が合うとか、そんな事は全く無かった。
「―――おや、使徒様。このような場所で如何なされましたか?」
「あっ…司書さん。…こんにちは」
ちょっと本を山積みにして呼んでいた僕に、図書館の司書が話しかけてくる。
この人は普段から無口で表情も固いから、僕から話しかけるということがまずない。
鋭い目つきで僕が本を読んでいると知った司書さんはネットリとした口調で言う。
「他の使徒様は訓練場で剣を振っておられますぞ?貴方もそうするべきでは?」
「あ、はは……そ、そうですね―――」
(僕がここに居ると目障りだから消えろって事か…)
表情には出していないつもりでも、彼の目がそう言っていると僕は感じた。
そそくさと本を元の場所に戻してから、一応頭を下げて図書館を出る。
そんな僕に対して、司書はもうとっくに背中を向けていた。
*
幸いなことに訓練場に居たクラスメイトはほんの数人だけだった。
僕を毛嫌いはしているけど、危害を加えてはこない、ある意味人畜無害な人達。
訓練用の木剣を手に、僕は彼らの迷惑にならないよう隅っこへ移動する。
「ふぅ……っ!」
息を吐いて、全身に力を込めるイメージで構えてから剣を振る。
ブォン!と空気を裂く音がして、少しだけ僕に視線が向けられた。
クスクス、クスクス…と声が聞こえて僕は木剣を振る手を止めてチラと横目で見る。
三人の女子が談笑しているように見えたけど、僕はその時…彼女達が僕の情けない自主練の様を見て笑っているんじゃないかと思ってしまった。
(……はは…流石にそれは考えすぎだよね…)
異世界に来てから心身共に休まる暇がなく、僕は疲れ切っていた。
大好きなアニメもゲームも漫画も触れないのは辛いし、息抜きをしたくても誰かの目があるように感じて何も出来ず、夜は笑い声の幻聴で何度も目を覚ました。
出される食事に文句を言うつもりはないけれど、故郷とは全く違う味付けのそれを咀嚼して飲み込むのも、最初は受け入れていたけど、今は白米や味噌汁が恋しいと感じる。
何よりも…僕がいなくなって心配しているであろう、両親の様子が気掛かりだ。
二人は年中休む間もなく仕事に追われて忙しい日々を送っているのに、僕なんかのせいで余計な時間を割いてしまうのは申し訳なく感じる。
(故郷に帰ったら…いっぱい親孝行しよう)
まだ帰れる方法も、安全も保障されていないけど、ハジメはそう心に誓ったのだった。
その時、僕はちょっと力加減を間違えて木剣を無駄に大振りしてしまう。
つるりと手の中から柄がすり抜けて、訓練場の地面にカランコロンと音を立てて転がる。
クスクス、クスクス…また僕を笑う声が聞こえて、胸の奥が痛くなった。
さっさと木剣を拾って、もっと集中して、自分の訓練に取り組もう。
僕がしゃがんで木剣を拾おうと手を伸ばした次の瞬間――――――
「おっとぉ悪ぃ!足が滑ったぁ~」
「っあぁぁ…!」
横から伸びてきた誰かの足が、グシャリ!と木剣ごと僕の手を踏みつける。
痛みに声をあげて奥歯を噛み締める僕は、その声の主が誰なのかすぐに分かった。
…ああ、こっちに来てから…もう何度も聞いてるから、嫌でも分かるよ。
「なぁに地面に這いつくばってんだぁ南雲ぉ?」
「虫の真似かよ、きっもちわりぃ!」
「まぁキモオタの無能にはお似合いなんじゃねえの!」
「ぎゃはははっ、それ言えてるわ~!」
僕の手を踏んでいるのは檜山君、彼の後ろで笑っている中野君、斎藤君、近藤君。
クスクス、ケラケラ…!…ああ、酷い笑い声の幻聴が、もっと大きく聞こえるなぁ…
「―――ご、ごめん…木剣を落としちゃってさ…あはは」
「はぁ?バッカじゃねえのお前!手から剣を落とすとかさぁ~」
「こ、こいつ…!ありえねえ!ひゃははっ!!」
「無理無理!お前じゃ一生かかっても剣は握れねえってことさ!」
「剣がお前に握られるのを嫌がってんじゃねえの~?ぎゃはは!!」
僕は怒りたい気持ちも、泣きたい気持ちも抑えて苦笑いして彼らに同意するフリ。
そうしなければ彼らの反感を買って、また余計に虐められると分かっているから。
グリグリと彼の踏む力が強くて、手の痛みが痺れて感覚が無くなってくる。
退かして…なんて言えるはずもなく、檜山君の嗜虐欲求が満たされるのを待つ。
すると彼は唐突に「あぁ~っ!」と声を上げてから後ろの三人に話しかける。
その顔に浮かべた笑みは何時もよりも醜悪で、見上げる形の僕からは不細工に見えた。
「なぁ!良い事を思いついたんだけどよぉ!俺らでコイツに稽古つけてやんね?」
「おぉ、さっすが大介!ナイスアイディア!」
「優しいなぁ大介は!こんなキモオタに時間割いてやるなんてよぉ」
「おら、南雲!虫になってねえで、さっさと起きろよ愚図が!」
「…っぐ!?ケホッ、ゴホ…」
僕は近藤君に腹を蹴飛ばされて、吐きそうになるのを堪えて咳き込んだ。
幸い檜山君は足を退かしてくれたから、木剣を拾って立ち上がることは出来た。
踏まれた手は砂利の地面と実戦用の固い靴に挟まれた結果、汚れて皮膚が裂け、血が滲んで小石が食い込んでいる。
「ルールはとぉーっても簡単に、お前は俺らの攻撃を全部避けること!」
「いいねえ!」
両手を広げてもったいぶるように説明する檜山君に中野君が同意の声を上げる。
その間に斎藤君が自分と三人が得意とする武器を持ってきて渡す。
僕の手からは問答無用で木剣が奪い取られた。
「んじゃスタートぉ!」
「ま、待っ―――――」
「おらっ、よそ見してんじゃねえぞ!二刀流~♪」
「―――ごぁっ!?」
中野君が僕から取り上げた木剣と自分の木剣、二本を手にして僕の背中を殴る。
肩甲骨の横を抉るような痛みに呻き声をあげて、僕は前のめりに倒れた。
「ひっさーつ、兜割ぃ!」
「あがっ…!」
近藤君が上段で構えた木の槍を、僕の頭に向かって振り下ろす。
ドゴッ!という音がして、僕の視界は白黒に点滅、痛みは後から襲ってきた。
ニヤニヤ笑って武器を持たない手を突き出した檜山君が話しかけてくる。
「俺は優しいから不得意な魔法で練習してやるぜ!ここに焼撃を望む―――”火球”!」
「―――っ!!?」
ボロボロになった僕の背後から迫る熱を感じて咄嗟に横へ転がった。
僕の倒れていた場所を、サッカーボールサイズの火が焼き尽くした。
避けられた事に彼は少し意外そうな顔をして、直後手を叩いて三人と一緒に笑う。
「ぎゃはははははっ!!お、お前ほんとうに虫みたいな避け方するのな!」
「おもしれえ!さいっこうだよ南雲ぉ~!」
「~~っむ、りだ!腹いてえよ俺…ぶははッ」
「へへっ!俺は得意な魔法でやってやるぜえ?ここに風撃を望む―――”風球”!」
「うぐっ!?―――お、ぇぇぇっ…」
立ち上がろうとした僕の腹部に、風の球が襲い掛かる。
当たり所が悪かったのか、苦しくて膝をついた僕はその場でゲロを吐いた。
とっくに消化された朝食だったものと混ざった胃液がツンの鼻の奥を刺す。
「うっわきったねぇ!こいつゲロってやがんの!」
「キモオタじゃねえゲロオタだゲロオタ!!」
「ひゃはは!訓練になんねえなぁ!?」
「あっれぇ?加減してやったんだけどなぁ~!!」
ケタケタ、ケタケタ!…おかしいな、僕が聞いた笑い声は幻聴じゃなかったっけ?
これじゃまるで…ここにいる皆が、今の僕を見て
(―――痛い―――苦しい―――辛い―――もう、やめて―――死んじゃうよ)
吐いた跡で息をするがやっとで、気を緩めたら意識を持っていかれそうになる。
これが異世界に来てから僕の感じた三度目にして最大の不幸だった。
四度目の不幸は、三度目の直後なだけあってそんなに大したことは無い…と思う。
「―――あんた達っ!何やってるの!?」
「南雲君ッ…!」
(ああ…こんな時に聞きたくない声が、また増えた…勘弁してほしいなぁ)
訓練場に凛とした声が響き、小悪党の四人はビクっと肩を震わせる。
辛うじて地面に手をついたお陰で、吐瀉物の中に倒れることは免れた僕が、ゆっくりと節々が痛む体を起こして視線を向けると―――
「な、何だよ八重樫ぃ?俺達はただ訓練してるだけだぜ~?なぁ!」
「どこが訓練よ!四人で袋叩きにしてるようにしか見えないわ!」
小悪党のリーダー格である檜山君に食って掛かるのは八重樫さんだった。
白崎さんは僕のところへ心配そうに駆け寄ってくるが、正直やめて欲しい。
君達がいるってことは、彼もいるんだろう…?絶対にロクな結果にならない。
「大丈夫っ南雲君…?しっかり―――」
「……ケホッ……大丈夫だよ、白崎…さん」
僕の腕を掴んで引っ張り上げようとする白崎さんを手で制して自分で立ち上がる。
彼女の背後で八重樫さんと言い合いしながら僕を睨む檜山君が見えたからだ。
ようやく意識がハッキリした頃には話に決着が見えたらしい。
―――当事者である僕を抜きして、天之河君主体での決着だけどね。
「落ち着くんだ雫。檜山達もこうしてやり過ぎかもしれないとは反省してるわけだし、元はと言えば南雲が訓練をサボり気味なのが悪いんじゃないか。今回のことは良いきっかけになるだろう?」
「だからってお咎め無しって、光輝それは―――」
「いいや、光輝の言ってることは正しいぜ。檜山達がやらなきゃ、俺がそいつに喝を入れてやったところだぜ…へっ、これでちったぁ今後の訓練も真面目にやれんだろ!」
「そんな言い方……」
(―――あぁ、やっぱり…彼の中ではそういう風になっちゃうんだね…)
僕は内心、こうなるとは思っていたからそこまでショックを受けなかった。
ただ、八重樫さんが反論せずにどんどん言い包められているのを見て呆れる。
話には入ってこずに僕の方だけを見ている白崎さんがまた話しかけてきた。
「本当に大丈夫?わ、私が治癒を…」
「大丈夫だから、僕がちょっとドジっちゃっただけだから…本当に」
「で、でも――――――」
「香織、南雲もこう言ってるんだし。親切も度が過ぎると良くないぞ」
そう言って八重樫さん達との会話を切り上げてきた天之河君が割り込んでくる。
小悪党の四人はどうしているかというと、これ以上何かやると白崎さんに嫌われかねないからと訓練所からそそくさ逃げていた。
苦笑いを浮かべる僕が気に入らないのか、天之河君はムッとした表情で話しかけてきた。
「南雲も、これに懲りたらちゃんとする事だ。ここは学校じゃないんだぞ?強くならなかったら戦いには勝てないし、俺達は元の世界に帰れないんだ。一人でも足を引っ張らないよう努力するべきじゃないか?」
「…あはは、そうだね。うん…君の言う通りだよ、天之河君」
「……気に入らないな。そのヘラヘラした態度、まるで反省してないじゃないか」
「……そ、そうかな?…気を悪くしたなら謝るよ。――それじゃ、僕はこれで」
「あっ!南雲君っ訓練始まっちゃうよ?」
「ごめん。ちょっとだけ顔を洗ってくるから、メルド団長に伝えてくれないかな?」
「―――分かった。行こう香織」
「う、うん」
ギロリと僕を睨んで、天之河君は白崎さんの手を引いて訓練場の中央へ歩いて行く。
…やっぱり、僕のこと嫌いなんだろうね…白崎さんの近くに居る時は特に凄い形相だ。
(ハッキリそう言ってくれれば、僕も白崎さんを突き放す口実が出来るのにな…)
よたよたと覚束ない足取りで訓練所の外にある水汲み場まで歩いていこうとする。
そんな僕を八重樫さんが心配そうに見つめていたけど…正直それすら鬱陶しいと感じた。
四度目の不幸…こうして思い出すと、今に至るきっかけとなったのは絶対にこれだね。
*
水汲み場には幸い人の姿はなかった。
靴にベットリついた自分の吐瀉物と、血だらけの手についた土の汚れを洗う。
「……あはは、はは……」
桶に汲んだ水の表面が鏡となって、今の自分を映し出す。
ケタケタ、ゲラゲラ!…周りに人はいない筈なのに…笑い声が止まない。
僕の顔は普段のやる気のないそれに増してやつれて見えた。
目の下にうっすら隈ができて、顔面蒼白とはまさにこのこと。
死に装束なんかを着て棺桶に入ったら、死人だと言われても違和感がないだろう。
(大丈夫だ、こうして笑えば…きっと前と同じように…)
「ははっ、ははは……はは…」
(大丈夫、ダイジョウブ、だいじょうぶ)
「……は……」
(……い……。……たい…っ)
ぴちゃん!という水音がして、水面が揺れる。
歪んだ自身の顔が、クラスメイト達の笑った顔に見えて、僕はまた……
「―――ぅっ」
桶の中に吐くわけにはいかず、近くの茂みに顔を突っ込んでげぇげぇ吐いた。
とっくに胃の中は空っぽになっているから、出てくるのは酸っぱい胃液だけ。
お腹と背中がくっつくような感じがして、頭の奥がガンガンと五月蠅い。
(―――うるさい)
(うるさいっ!!)
「わかってんだよ…そんなこと…!」
僕の両目から涙が溢れると同時に、地面に突っ伏して嗚咽を零す。
髪が吐瀉物で汚れるけど、そんなのも気にならないくらい、感情が狂っていた。
文字通り全てに対する怒り、自分の中に抱えた悲しみ、周りから聞こえ続ける笑い、自分にしか理解できない嘆き、幻聴だと思っていたもの、幻覚だと感じていたものetc.
それから五分か十分か、僕はいつもと変わらい素振りで訓練場に戻る。
自分に向けられる嘲笑の類を右から左へ聞き流し、無我の境地に至った。
訓練の終わりにメルド団長が王都を離れるという話を皆に伝えてきた。
宿場町ホルアドにあるオルクス大迷宮というところで実地訓練をすると…
(――――――ああ、好都合だな)
既にこの時から心は
眠っても覚めない悪夢も、苦痛の日々も、これでおさらばになる。
胸のつっかえが取れて、笑い声の幻聴が聞こえなくなった。
そして時は進み、宿場町ホルアドで起きた最初の
逃げ出した俺は一度死にかけ、そして救われ、夢を抱き、自分を変えようと努力した。
変わらない事もあったけど、今の俺は悪夢を見ない。
(もう、必要ないんだ…そんなものは…)
現時点で判明しているハジメ君の心の内側(クラスメイトに対して)
1:勇者君、小悪党は絶対に会いたくないと思っている。(若干タヒねレベル)
2:上記の連中が絡むところに必ずいるので、白崎さんもNG
3:八重樫さんも騒ぐ割に対して役に立たないし話が拗れるのでNG
4:脳筋君は意識してなかったけど、向こうが嫌ってるっぽいのでこっちも嫌い
5:その他(永山パーティー、園部パーティー)あの笑い声は幻聴だったのか今では判断がつかないけど、自分を嫌悪していたのは覚えているので、顔を合わせる事はあっても他人のフリをすると決めていた(谷口・中村ペアもここ)
特別枠:先生がまったく先生らしいことしてないのでもう知りません(扱いは5と同列) メルド団長とか王国の人間も大体がこれに当て嵌まりますね。
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡