モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 前回の話で檜山君が大手を振って町中を闊歩していた件ですが、一応追記して教会が圧力かけて軟禁状態が解かれたという事になりました。
描写不足、よくない(自分に対する戒め)



一時の別れと副業

 楽しかった酒宴も終わり、騒いで疲れ果てた新米ハンター達はぐっすり眠れる夜を過ごした。

早朝、空が夜明けと共にうっすら青白くなっていく。ハンターズギルド本部の前には草食モンスター"ガーグァ"の牽引する荷車が何台も並んでいた。

 

「達者でなレイ」

「応よ。また何処かでな」

 

 荷車に武器や防具、アイテムを積んだレイの肩を叩いて別れを告げるハジメ。レイは振り返って朗らかに笑い、荷車に乗ろうとする。

次にいつ会えるか分からない。そして、彼が自分の知られたくない過去を知ってしまうかもしれない……ハジメは意を決して再び彼の肩を掴んで引き止める。

 

「――――――なぁレイ」

「ん?どうしたハジメ」

 

「公国に帰る途中……レイは王国にも寄るんだよな?」

「そりぁぶっ通しで走らせるのはガーグァに酷ってもんだしな。……王国はモンスター嫌いで有名だから、なるべく滞在は短めにしようと思ってるが……。ルート的にホルアドって宿場町に泊まるつもりだ」

 

 ホルアド、その単語を聞いた瞬間、ハジメの脳裏を忌まわしい日々がフラッシュバックする。しかし、レイに余計な不安をさせたくなかったハジメは顔には出さないように、平静を装って口を開いた。

 

「……多分ありえない……と思うが、王国内で俺の名前を尋ねてくる奴が何人かいるかもしれない。もし聞かれたら、()()()()()()()()()()()()()()()は言わないでくれるか…?」

「……なんか訳ありか……?」

 

「…悪ぃ、理由は答えられねぇ……」

 

 当然の疑問だろう。事情を聞いてくるレイの言葉に首を横に振るハジメ。レイは何も言わずに、彼の目をじっと見つめた。

 

「お尋ね者とか、そういうのじゃねぇ―――と言い切りたいんだが、今の頼み方じゃ後ろめたい事があるように思われても仕方ねえよな……。悪い、やっぱなんでも「無理に喋る必要なんてねぇよ」―――ッ」

 

 次第に自信を喪失したハジメが伝えた言葉を撤回しようとするのに対して、レイは振り返ってハジメの肩を掴み、撤回の言葉を遮る。

 レイの顔を見て、ハジメは驚かされた。彼はいつものように笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開く。

 

「誰にだって言えない事情の一つや二つあるもんだ。言わなきゃ幾らでも誤魔化しようはあったかもしれないものを、お前は俺に態々打ち明けてくれた……。話せないってんなら、無理矢理事情を聞こうなんて無粋な真似はしねぇさ。一時だが訓練所の同じ部屋で、地獄を見てきた相棒の頼み、聞いて首を縦に振らにゃ漢が廃るってもんさ―――――――――そうだろ、お前ら!」

 

ハジメの背後へと声をかけたレイ。その言葉でハジメが振り返ると、そこにはまだ寝ていた筈の同期達が集まって、笑顔を浮かべながら2人の様子を見つめていた。

 

「水臭ぇぞハジメ!」「そういうのは酒の席で言えっての!」

「ま、俺らバカだから?言われたこと忘れちまうかもしれねえけど」

「ハッハッハッ、お前と一緒にすんなバァカ!」

「んだとこの野郎!昨日の続きやるかオラ!?」

「上等だ!イャンクックの代わりに俺がお前の卒業試験の続きやってやらぁ!負けたらハンター辞めちまえ!」

 

「もぉ!みんな寝ても起きても五月蝿いんだから。―――ハジメ君」

「……なんだ、リーナ…?」

 

 レイの見送りに来たのだろうが、些細なことで笑顔を浮かべながらお互いの胸倉を掴んで額をぶつけ合う者、寝起きでありながら片手にジョッキを持って1人宴の続きをしている者、笑顔なのに立ったまま鼻提灯をぷくぅと膨らませたり萎めたりして寝る者……纏まりのない同期の姿に、2人は笑ってしまう。

 

 その中から一歩進んだリーナがハジメを見つめる。

普段は天真爛漫な笑顔が、珍しく真剣な表情をしていた。

思わずたじろいだハジメの前で、リーナは口を開く。

 

「ゴメンね。盗み聞きするつもりはなかったのに、今のレイ君に言ってたこと――――――少し聞いちゃった。だけど、私達の答えはレイ君と同じだよ。君にどんな事情があろうと、君の頼み事、私達も守るから!」

「リーナ……。――――――ありがとな」

 

 ハジメは感謝のつもりでリーナに何も言わず握手を求める。彼女はそれを見てクスッと笑い「君って時々感謝の仕方が不器用だね。……ま、私も人のこと言えないけど!」と手を握り返す。

 

 深い意味はない、同期に対する友愛の行動…だったのだが、それを見た同期ハンター達がピューピューと口笛を吹いて囃し立てる。レイも唇を震わせながら笑いを堪えて、背を向けるハジメには見えないようにリーナへとサムズアップを送った。

 

 リーナは「そんなんじゃないってばー」と苦笑い。

照れ臭い気持ちを隠す為、ハジメは少し怒ったように笑った。

 

 

「それじゃそろそろ―――――――――――じゃあな皆!」

 

「レイ!!元気でなー!!」「モンスターに食われんなよー!」

「次は公国で一緒に飲もうなー!」「勿論、お前の奢りでぇ〜!」

 

「レイ君、お互いに頑張ろうねぇっ!!」

 

 ガーグァが走り出して、揺れる荷台の上で大きく手を振るレイ。

同期ハンター達が手を振って見送りの言葉をかける中、ハジメも一時の別れに対する寂しさを押し殺して、手を振りながら叫んだ。

 

「俺より弱くなってたら、承知しねえからなあぁぁぁっ!!」

「抜かせ!手前こそキッチリ腕前上げとけよぉぉっ!」

 

 声が遠のいて、荷台の上に座るレイの姿も点のように小さくなる。

同期達は満足げに笑みを浮かべながら、1人、また1人と宿に帰っていく。

最後にリーナが「私はもうひと眠りしてくるね、おやすみっ」とハジメの肩を叩いてハンターズギルドの中に入っていった。

 

「……よし!――――俺は俺の目的に取り掛かりますか!」

 

 ハジメはハンターズギルドには戻らず、その足でハンター達が使う工房を見て回る事にした。

彼が帝国でハンターになることを決心したとき、村でヘファイに言われた事があった。

 

『お前さん程の錬成師なら、帝国の工房を外から見るだけでも良い勉強になる筈だ。それに、帝国が保管する資料館で、お前に足りない知識も補えるだろうからな』

 

(おやっさん……!―――――必ず此処で見聞きした物、村で生かしてみせますよ……!)

 

 ハジメは先ず、ハンターズギルドの向かいにあった一番大きな工房へと足を踏み入れる。

まだ朝日が昇ったばかりだというのに、工房の中から熱気と白い蒸気が入り口まで漏れていた。

ヘファイが鳴らす金槌の音より、もっと重厚な石や金属を削る掘削機械の動作音みたいな音を聞いて、ハジメは期待に胸を躍らせながら一歩を踏み出した。

 

「らっしゃあぃ!!――――――あん?見ない顔だな、新米ハンターか?」

「はい!昨日から正式にハンターランク1に登録されたハンターのハジメと言います!仕事の邪魔はしませんので、工房を見させて頂いても宜しいでしょうかッ!!」

 

 工房の入り口から入って来たハジメに気づいて声をかけてきたのは、上半身裸で首に手拭いをかけた汗まみれの男だった。初対面というだけあって口調に気を遣うハジメ。

 

「あぁん!?ハンターが工房見たって何も面白い事ねえだろ!」

「すいません!俺……いや、自分は錬成師の天職を持っているので、此処で色々と見た事を育ちの村で生かしたいと思って来ました!!」

 

 錬成師という単語に工房の奥からざわめきが起こる―――だが親方のような男が「手ぇ止めてんじゃねえ!ケツに熱した鉄を突っ込まれてぇか!?」と怒鳴り散らして、作業が再開される。

汗まみれの男は顎に手を当てながら暫く考え込む素振りを見せて……突然、ニヤリと笑った。

 

「へっ、そういう事なら構わねえよ!ハンターで錬成師たぁ珍しい奴が来たもんだ!」

「――――ありがとう御座いますッ!」

 

 汗まみれの男に手招きされたハジメは、普段はハンターが入らない工房の奥へと入っていった。

色々な道具が並べられている中で、彼の目を一番惹き付けたのが溶鉱炉。

ハジメが興味を持っていると視線で気づいた汗まみれの男が指さして語る。

 

「一昔前の高炉ってのは丈夫な石材を積み重ねて、低い温度しか出せなかったもんさ。しかしな、ご先祖様達の色んな試みが功をなして、石炭を燃料にしたり、液状化した銑鉄を流し込んで自由自在に形を変えられる鋳型を考えたり、今の俺達がこうしてハンターの武器だ防具だを造れるのは、数百年の積み重ねあってのもんさ!!」

 

「すげぇ……ッ。流石にここまで大規模な物を村に設置は出来ねえけど………これの半分くらいの規格でも、村の製鉄技術の飛躍的な発展が見込めるのは間違いねぇ……!」

 

「―――ま、あとはあんま使われねえが、魔力を動力源にして動かす魔力高炉ってのもあるぜ!」

 

 蒸気をあげて稼働する溶鉱炉から少し離れたところで、一切手がつけられていない高炉がある。

燃焼を促す為の鞴に不思議な紋様が刻まれており、そこから魔力を送る仕組みらしい。

これは流石に魔力が一般人並の自分には縁のないものだなとハジメは記憶の片隅にだけ留めた。

 

 次にハジメが目をつけたのは、足踏み式の回転する研磨機。

工房独自の試作品である(のみ)(たがね)、金切り挟、万力、手回し式のドリル。

宝物でも眺めるように道具の数々を目に焼き付けたハジメは、ようやく我に返る。

 

「……ハッ!?―――す、すんません!……つい、見惚れて……!」

「グァハハハッ!いーってことよ。さぁ、どんどん見てってくれ!」

 

 道具や施設を見る事から一旦離れて、ハジメは職人たちの作業を見つめた。

溶けた鉄を鋳型に流し込む者、固まった鉄を計器で測りながら図面と照らし合わせる者、他の者の動きを見ながら、次に取り掛かる作業に必要な道具を取りに動き回る者。

息の合った作業風景に、ハジメが息を飲んで見守っていると、汗まみれの男が声をかける。

 

「うぅーん……解せねえな。お前さん錬成師なんだろ?技能とやらでパパッと終わるものを………何でこいつ等の作業を見る必要があるんだ?」

 

「確かに錬成師の錬成は、皆さんが汗水流してやる作業に比べれば遥かに簡単に見えるかもしれません。……けど、仕上がり…完成度で言ったら、熟練の鍛冶屋が打ったものに対して、錬成師の作った紛い物なんて比べるまでもないんですよ。……錬成師の錬成に必要なイメージトレーニングの一環として、職人が磨いている熟練の腕前って奴を間近で見ておかないといけないんです……」

 

「ほぉー……天職の錬成師ってのも色々あるんだな~……」

 

 

 

 

 暫くの間、ハジメは工房の中を見て回っていた。

それ故に工房の外が騒がしくなっている事に気づかなかった。

 

「錬成師のハンター、此処に居るか!?」

 

 凛とした女性の声が、工房の中に響き渡る。

ハジメは自分の事かと振り返って、目を見開いた。

 





 錬成師という名の工具オタクに目覚めそうなハジメ君。
作者もこれを書くにあたって色々な工具の使い道とか調べてはいたんですが、ハジメ君の対勇者武器にスパナかバールを追加しようとか考えちゃったり……
ワールドにも炭鉱夫の必需品が太刀となって登場してましたね。

感想、質問、ご指摘など待ってまーす!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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