また作者が思いつきでモチベーション維持の作品を走り書きしたので、気になる方は活動報告の方を見て頂いて、宜しければコメントお願いします。(並行して執筆投稿とか苦行はしません)
勇者パーティーのリーダー、天之河光輝は洞窟内で足音を立てて走る。
鉄のブーツと金属鎧の関節部が軋む音は暗い洞窟内によく響いていた。
坂上龍太郎は手に松明を持って彼の後を追走し、先の視界を照らす。
「光輝、龍太郎!二人とも先走り過ぎよっ」
後ろから追いかける八重樫雫は後衛の三人、白崎香織と谷口鈴、中村恵理がやや遅れ気味だがしっかりと付いて来ているのを肩越しに振り返って確認し、今にも洞窟の暗闇に消えてしまいそうな光輝と龍太郎を呼び止める。
しかし二人の耳に彼女の声は届いていても、返事をする余裕がない。
そんな勇者パーティーの後ろをヒイヒイ言いながら付いて来る四人の騎士。
彼らも兵士で、それなりに体力はある人間なのだが…いかんせん基準が神の使徒だ。
通常の人間の兵士の数倍は能力に恵まれた使徒の運動量を基準に大迷宮の攻略を行えば、不慣れな騎士達が息切れを起こすのも当然である。
本来であれば、その事に真っ先に気づくべき団長のメルドも、それを失念していた。
ただ王命を果たす為にひたすら地下へ地下へと潜り、どうやってあの黒い魔獣を倒すか。
具体的な案など何もなく、使徒に秘められた力の可能性に賭けていたのだ。
先頭を走る彼は危険な目に遭っているクラスメイトを必ず助けるという正義感から。
そんな彼の後を追う龍太郎も似たようなものだが、ただ前を走る彼に従っているだけ。
考え無しに先へ進んで、その後どうするかなんて具体的には考えていないのだろう。
魔物がいるなら、神の使徒でも一、二を争う実力者である光輝と龍太郎が戦う。
その間に雫や後衛の三人が檜山達を回収してタイミングを見つつ後退。
騎士四人の援護を受けながらあとから追いかけてくるメルド、永山パーティーと合流して、あわよくば魔物を倒して何処かで一度休憩を取ろう…くらいにしか考えていなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「はぁっ…えりりん、だ、いじょうぶ?」
「はぁ…はぁ…ッ!!―――大丈夫な、訳ない…だろ!」
身軽な恰好の鈴とは違い、恵理が纏っているのは魔法使用者が着るローブだ。
本来走る為の設計などしておらず、転ばないように一歩踏み出す度に神経をすり減らしている。
疲労と苛立ちがピークに達して、若干の素の口調が出かかった恵理は内心焦った。
しかし彼女の心配は杞憂だった。
「だ、よね…!天之河君も坂上君も…飛ばし過ぎ…だよっ」
(チッ…喋ってる暇あんなら、先に行って光輝君の役に立てよ…雑魚が!)
汗をかきながらにへらと暢気に笑って走る鈴に心の中で恵理は舌打ちする。
どうにも大迷宮に入ってから、暗闇と湿気、生臭い悪臭のせいか神経が苛立つ。
(あのゴミ共…戻ったら絶対に潰す…!)
大迷宮攻略を利用して光輝を自らの手中に収める作戦を立てる暇もなかった。
思考を切り替えて恵理は目の前を走る雫から目を離さないよう足を動かす事に集中する。
チラと横を走る香織の様子を窺うと、彼女も恵理と似たような恰好をして走り辛そうだ。
苦しい思いをしてるのが自分だけじゃないと知って少し気持ちが軽くなったのは此処だけの話。
*
「檜山ーっ!何処だ、何処にいる!!返事をしてくれ、檜山ーっ!!」
声の響いた場所に着くなり光輝は大声で大介の名前を呼んだ。
隣にいる龍太郎がギョッとした表情になるが、止めようとはしない。
メルドから不用意に大迷宮で物音を立てるなと以前、厳しく注意されていた事を思い出し、光輝の行動は大丈夫なのかと彼なりに心配したのだが…
(ま、まぁ…魔物の一匹や二匹くらいなら俺が相手すりゃいいか)
と勝てる根拠もなしに不安や疑問を思考の彼方へ放り投げてしまった。
少し経って息を切らせた雫や後衛の三人、騎士の四人が到着する。
「ちょっと光輝、大きな声はダメだってメルドさんに言われてるでしょ!?」
「どうしてだ雫!今は非常時で、一刻も早くいなくなった檜山達を探さなきゃいけないんだ!メルドさんの言う事に間違いはないかもしれないけど、これ以外に探す方法はないだろう!?」
「それは最後の手段!仮にその大きな声で檜山君達を見つけられたとしても、もし魔物まで一緒に出てきたら対処しなきゃいけなくなるでしょうが!」
「大丈夫だ!その時は俺と龍太郎が相手になってやるさ!なぁ龍太郎!」
「へっ…その通りだぜ光輝!」
「―――っっの馬鹿共が…!焦らなきゃいけない状況で、自分に酔ってんじゃないわよ…!」
ガシガシガシ!と頭を引っ掻き毟って雫は喉元まで出かかった怒りの声を限りなく抑えた。
後ろで心配そうに見守ってはいるが、何も言って来ない
(あぁぁぁ、もう…みんなして、好き勝手……っぁぁぁああ!)
実は精神的に余裕を失っている使徒は恵理だけじゃなかった。
此処最近の雫は香織の当てのない人探しに付き合い、誇大妄想が行き過ぎな光輝とそれに同調する龍太郎のブレーキ役をし、鈴を元気づける為に色々と世話を焼いたり、戦いに不慣れだった永山パーティーからその事で相談を受けて悩んだ末に当たり障りのない答えを出して、羽目を外し過ぎな檜山達を注意したり、心配するリリアーナの話し相手もした他、騎士を失って職務が回らなくなりかけた騎士団の手伝いまでしている。
使徒を辞めて何処かに消えてしまった南雲ハジメや清水幸利の事。
彼らがクラスメイト内で虐められていた事実を知っていながら、何も出来ずに傍観者でいてしまった自分に圧し掛かる罪悪感。
きっと彼らに自分が恨まれているだろうと思うと、昔のトラウマを思い出して苦しくなる。
湧き上がる怒りが、数秒の頭皮への自傷行為と興奮で収まる。
しかしこれはあくまで今がそんな事をしている余裕がない為の応急処置に過ぎない。
精神が瓦解しない為、理性を失って暴虐に荒れ狂わない為の最後のストッパーだ。
「―――とにかく、大声はダメ。手分けしてこの辺りを探索しましょう」
「手分けして…?駄目だそんなの、もしも雫や香織に何かあったら…!」
「悪いけどッ!!今、そういう心配要らないから。駄々を捏ねないで光輝、貴方と龍太郎は騎士の二人と一緒に、私は後衛の三人と残り二人の騎士、二手に分かれて探すのよ。いいわね?」
「…っ…あ、あぁ…それなら…」
見たこともない雫の有無を言わさぬ言葉の圧力に、光輝は初めて屈した。
彼女の後ろでは、息を整えたフリをした恵理が内心呆れた様子で(あーらら、優等生の化けの皮が剝がれちゃってる)と笑みを押し殺す。
恵理にとって光輝を手に入れる為の最大の障害となるのが雫の存在だった。
中身が乙女お花畑の癖に普段から変に頭が切れるから策略を練っても仕掛け辛い。
その理由が光輝の周りに常日頃から雫の存在がいるから。
「―――よし、行くわよ皆。もう息は整ったかしら?」
「う、うん…いけるよ雫ちゃん!」
「鈴もオッケーだよしずしず!」
「私…は、若干辛いけど…大丈夫!」
「…うん。そういう訳なので…騎士のお二人は彼らに付いて行って貰えますか?」
「ああ、私とクーパーが同行しよう」
「了解だマリオ」
こうして騎士マリオ、騎士クーパーの二人が光輝と龍太郎の方に付いた。
終始心配そうに雫を見つめる光輝に、彼女が振り返ることはなかった。
*
松明の灯りだけでは心許ないと、鈴と恵理が杖の先に炎を灯した。
本来は火を点ける為の魔法”種火”を杖の先端に維持し続けることで松明の代わりにしている。
探し始めて間もなく、先頭を歩く雫が異臭に気づく。
(……不味いわね……)
あまり嗅ぎ慣れないそれが何なのか、聡明な彼女はすぐに分かってしまった。
腰に提げた細身の片手剣を鞘から抜いて構える雫に後ろの騎士が尋ねる。
「使徒様…まさか…!」
「…この先、何かいます…警戒を」
雫の言葉を聞いて全員の背中に緊張が走る。
鈴と恵理は種火を維持する魔力を、何時でも攻撃に転じられるよう気持ちを切り替えた。
騎士の二人は正面に盾を構え、松明で洞窟の岩肌を照らしては周囲を警戒している。
真ん中にいる香織は戦闘に不向きなため、片手に杖、片手に松明を持っていた。
戦闘開始直後に周りの五人、誰かが突然怪我をしても治癒を掛けられるようにする。
ガサガサ、ガサガサ…壁か地面か、無数の小さな足が這っている音が六人の耳に届いた。
松明で周りの視界は隠していても、魔物が何処から飛び出してくるのかは分からない。
音が周囲の岩肌にある無数の穴に反響して、雫は位置を特定出来なかった。
鼻をツンと刺す悪臭、それは生き物なら体内に必ず流れている血の臭いだ。
重心を低く落として剣を構えながら一歩、また一歩と雫が前に進みながら辺りを照らす。
すると正面の地面と岩肌に微かに赤い液体、血が飛び散っているのが見えた。
「ヒッ――――――」
血を見て小さな悲鳴を上げたのは香織か、鈴か、恵理か、それとも騎士二人のどちらか?
誰にせよその声を聞いた雫の注意がコンマ数秒後ろに向けられたのは言うまでもない。
突然、暗闇から響く羽音に驚いて音のする方へ視線を移した彼女に―――
―――ジジジッ!
雫に襲い掛かってきたの小型モンスターの甲虫カンタロスだった。
既に何度か戦った経験がある為、このモンスターが弱点だらけなことを知っている。
背中を覆う甲殻は加工次第で金属にも劣らぬ強度を持つらしいが、その分関節部や剥き出しの内腹は柔らかく、人間が手足を使っても殺す事が容易な程であるという。
…とは言っても犬猫並の大きさがある
「ハッ!」
雫は声を上げて迫りくるカンタロスの二つの触覚の間に突きを繰り出す。
人間で云えば頭部に相当する箇所を串刺しにされて、カンタロスは宙で制止する。
刃から滴る緑色の体液を見て雫は顔を顰めながら、バッとそれを払い捨てた。
直後、周りを警戒していた香織が声を上げた。
「雫ちゃん前っ!」
「ッ!!」
―――ジジジ!
―――ジジッ!
―――ジジジ!
カンタロスが三匹、一斉に雫目掛けて飛び掛かろうとしていた。
さっきと同じような刺突攻撃では一体しか止められない。
だが避ければ後ろにいる香織が襲われるかもしれない。
雫は負傷覚悟でせめて一匹は確実に仕留めようと構えるが―――
「”聖絶”っ!しずしず、左右の敵は止めたよッ!!」
「ッ…助かるわ、鈴!―――ハアァッ!」
結界師の鈴が詠唱をカットして最低効果の障壁が雫の前に展開された。
メキャッと二匹のカンタロスが突進するも、半透明の白い障壁に阻まれる。
初手と同じように刺突で飛び掛かってきたカンタロスを細身の片手剣が貫いた。
その間に種火を消して火属性の魔法の詠唱を終えた恵理が杖を構えて叫んだ。
「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰と為りて大地へ還れ”螺炎”!」
人の大きさくらいはある炎の竜巻が、二匹のカンタロスを巻き込んで膨れ上がる。
火花が散った後に残ったのはひっくり返って足を痙攣させる二匹のカンタロスの死骸だけ。
手前に雫が剣を引き抜いたカンタロスが横たわり、戦闘は終わった。
騎士二人は活躍の場が無かった事にホッと一息ついて顔を見合わせようとして―――
「……ぁ……っ!?あぁ、ぁぁ」
片方の騎士が顔を合わせた一人の後ろ…岩壁だと思っていた
彼の尋常ならざる声に反応して雫達四人も青褪めた彼の視線の先を見る。
オルクス大迷宮の洞窟の岩肌は各階層毎に特徴があった。
大理石のような濁った白、コンクリートのような鼠色、苔の生えた黒、赤茶色…
この階層はその中でも大理石のような白濁色と鼠色が混ざったような色をしていた。
だから
偶然、騎士の一人が松明を照らした先の不自然な壁の膨らみだと思っていたそこには―――
「………え?」
「……うそ……」
「………ひッ!?ど、どうして……」
「―――――――――中野…くん…?」
口から出した舌と一緒に泡を吹いたまま白目を剥いて、糸に絡め捕られてピクリとも動かない。
影蜘蛛の怒りを買い、毒針に刺されて藻掻き苦しんだ後に死に絶えた中野信治の姿があった。
その直後、騎士マリオの叫び声と龍太郎の痛々しい絶叫が響いたのはほぼ同時だった。
*
ここは底無しオルクス大迷宮、勇ましいだけの目立ちたがりは立ち去れ。
知性なきものは生きる資格がなく、賢しいものに食われて骨の欠片も残らず。
愚か者は自ら死地に飛び込んで、気づいた時にはつるりと強者の腹の中。
けれどもここは生命の源が集う場所、求めるものあれば手に入る宝の山。
狩るものの願いは死力を尽くせば必ずや叶うでしょう。
狩られるものは現実を前に弱い心は砕かれるでしょう。
どうか忘れずに、分不相応な悪足掻きは、望まれた者にしか許されない事だから。
死亡が確定したのはこれで一人目ですね、原作だと引き篭もりになっていましたが…
カンタロス相手に原作でも鼠もどきの魔物を相手にオーバーキルの魔法ぶつけたのに、カンタロス君余裕で原型残してるというね…
八重樫さんはなんだかんだ精神的に限界が来てましたとさ。急な変化に思われるかもしれませんが、ダイスロールの結果なんですよ(これでも幸運な方とだけ)
最後の文章は完全にその日のノリとテンションで生まれた警句です。
前書きにあったモチベ作品を見て頂ければ分かると思いますが、ここ二日間クリアしてなかったFGO最新章をクリアするのに奔走してました。その影響でこのしれっと使徒さん達を小馬鹿にする文章が生まれたのです(パーさん当たらなかった…)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡