ハジメが奈落の底へ潜っている間、地上で起こるほんの僅かな人達の動きについて。
神の使徒によるオルクス大迷宮攻略失敗から一週間近くが経過した。
何の成果も得られず、遂には神の使徒と騎士団の両方から死者を出す結果となった。
天之河光輝、坂上龍太郎、白崎香織、斎藤良樹、近藤礼一の五名は治療院送り。
メルド・ロギンスも片腕片目を失い治療院送りになるところを、本人が断った。
「王国騎士団長として、負わねばならない責任がある」
そう言って彼は光輝の代わりとしてリーダー代理の八重樫雫と共にエリヒド国王と謁見した。
丁度フューレンから戻ってきた王女リリアーナは彼らの惨状を聞いて言葉を失う。
リリアーナの弟、王子ランデルは好意を抱いていた香織が未だに目覚めていないと聞いて泣きそうな顔で従者を引き連れて治療院へと向かい、リリアーナも彼の後を追いかけた。
唖然とした表情で玉座に座ったままのエリヒドの体が震え、徐々に額に脂汗が滲む。
「……どうすれば……イシュタル教皇になんてお伝えすればよいのだ……!」
「陛下、此度の責任は全て護衛に付いた騎士団の団長である私が負います。生還した騎士達には、どうか寛大な処置を頂きますようお願い致したく――――――」
「お前一人に責任を負わせて済む問題ではない!思い上がるなメルド!」
「ッ…申し訳御座いません…!」
メルドが深く頭を下げて、またエリヒドは呻き声を漏らして頭を抱える。
大迷宮を突破することも出来ず、挙句の果てには
イシュタル教皇が知れば烈火の如く怒り狂い、エリヒドも誹りを受けることは免れないだろう。
その時、意を決した表情で雫は顔を上げて口を開いた。
「……陛下、私から進言したい事が御座います」
「な、何だ!?申してみよ!」
「今回の一件、元より私達神の使徒が果たすべき役割を果たせなかったことがイシュタルさん…いえ、イシュタル教皇の不興を買ったのだと聞いております。…であれば、然るべき裁きの下、罰を受けるのは私達だけでしょう…違いますか?」
「確かにそうだが…!勇者殿は今それどころではないのだろう!?」
治療院送りとなった面々で、一番の重傷者が光輝であることはエリヒドも知っていた。
此方から神山の頂上にある聖教教会の建物まで馬車を使って回り道をしなければならない。
以前イシュタル教皇が使っていた技能”天道”は使用者が教皇のみに絞られているため不可能。
重傷者を連れて山道を向かうのは危険過ぎると少し考えれば分かる事だろう。
しかし雫は真剣な眼差しを向けたまま、エリヒドの言葉に頷いてから答えた。
「光輝…いえ、勇者が今は動けないのもまた事実。この場合、使徒の纏め役を務めている私が、彼に代わって全ての罰を受けるというのが当然ではないでしょうか?」
「「なッ!?」」
*
雫の提案はエリヒド国王からしてみれば願っても無い提案だった。
子供にそんな重荷を背負わせるわけにはいかないとか、雫達の故郷なら普通に出る言葉が彼らの口から一度も出てこなかったのはそれほどまでに彼らの立場が悪い方向に傾いているからだ。
元はといえば世界を救うなんて安請け合いした光輝に責任があった。
しかし今までそうした暴走をする彼のブレーキ役だった雫がまともに機能しなかったことにも責任の一端はある。彼と彼女の関係を知る者達なら口々にそう言うだろう。
謁見の間を後にして自室に戻った雫はぼんやり天井を眺めている。
思い返せば異世界なんてとんでもない所に来て、見知った顔が何人も死ぬ光景を目にし、十代半ばにして重い
この後彼女は王国が用意してくれた馬に一人跨って神山を上ることになる。
他の神の使徒達には何も知らせないつもりで、彼女はメルドにも口止めをした。
彼は悲痛そうに顔を歪めながらも彼女の覚悟を踏み躙ることをしてはならないとその意図を汲んで、また無駄に死なせてしまった部下の遺族への謝罪へ向かうために去っていった。
「……私、死ぬかもなー……」
自然と口から出た言葉に対し、反射的な恐怖は生まれてこなかった。
短い間に色々なことがあり過ぎて、感情の処理をする余裕もないのだろう。
(私って、何時からこんな皆の纏め役みたいな生き方してたんだっけ…)
神山に向かうまで、まだ時間に余裕がある。
雫はベッドの腰掛けて天井を眺めたまま自分の過去と向き合うことにした。
原作同様に雫の過去を少し掘り下げ予定(独自解釈込み)
他の神の使徒(特に皆さん気になってる例のアレ)も追々書き上げようと思います。
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡