モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 やっと書きたかった事に取り掛かれてご満悦の作者。
後書きでも書きますが、ぶっちゃけ作者の好きなアニメ・ゲームに影響されてます。

詳しくは後書きにて―――本編をどうぞ!


夜鳥と帝国皇女

 

「錬成師のハンター、此処に居るか!?」

 

 開口一番、ハンターズギルド向かいの工房に向かって叫んだ女。

自分の事を言っているのかとハジメは振り返って――――――驚愕で口が半開きになった。

 

 首元で短く切り揃えた紅い髪に青の瞳、右目の泣き黒子が女を可憐で優美な存在へと昇華させている。礼服と軽装鎧を継ぎ接ぎにした真っ黒な衣装は、見た目の良さと動きやすさの機能性、両方を兼ね備えているのだと、ハジメの素人目でも分かった。

 

(――――――オイオイオイ、これは何の冗談だ……?)

 

 

 キリッとした顔立ちに柔和な要素が加われば、人形のような完成された美を体現している女。

しかし女の注目を集めているのは当人の美しさだけではない。

 

(どう見ても()()()()()()は、草食種って(ツラ)じゃないだろ……!)

 

 女の背後には、フクロウのような顔立ちをした()()()()()()()()()()()()のだ。

ハジメが半口開けて女の後ろの鳥竜種を見つめていると、偶然にもそれと目が合ってしまう。

女はまだハジメの存在に気づいていないのか、キョロキョロと工房の中を見渡している。

 

 折り畳んだ翼は深い海のような青、丸みを帯びた胴体を覆う紺色の羽毛。首元の羽毛には金色の輝きが混ざっており、外の陽の光を浴びて煌めいていた。2本の脚は前に立っている女の腰回りと同じくらいの大きさがあり、鋭い爪が先端で二つに分かれている。

顔の部分だけが白い羽毛で覆われて、瞳は女の髪と同じ真っ赤な色をしていた。

頭部の天辺にある耳は鶏冠のようにも見える。

 

「居らんのか、錬成師!ギルドで此処を訪れる姿を見たと聞いたぞ!」

「――――――――あっ……」

 

(イカンイカン、見慣れないモンスターに気を取られて反応が遅れた……)

 

 条件反射で工房内に武器がないかと探してしまったハジメだが、目の前の鳥竜種は威嚇もせず、女の後ろで暢気に首を傾げては周りを見回していた。

工房内で働く者たちも、ハジメが思っていたより鳥竜種に驚く素振りは見せない。

それよりも彼らの視線は、女に集まっている。

 

「な、何であの方が此処に……」

「何時も連れて歩いているとはいえ、心臓に悪いぜ」

「はぁ~……いつ見てもお美しい……戦姫様」

 

(……戦姫……?なんか物々しい呼び名だが―――とりあえず……)

 

 ハジメは隣で固まったままの汗まみれの男に「ちょっと失礼しますね」と軽く頭を下げた。

ようやく群衆の中で1人動くハジメに気が付いた女が眉をピクリと浮かせる。

 

 

「むっ……貴様か、錬成師のハンターというのは?」

「多分、ほぼ確実に俺の事……だと思います。……昨日正式に登録されたばかりですけど……」

「ほう……お前がそうか……ほう、ほうほう……」

 

 カツカツと、金属板が入ったブーツで工房内にいるハジメに近付いて来る女。

後ろで立ち止まっていた鳥竜種も、狭い入り口で器用に体を捻じらせて入って来た。

ズシズシ、カツカツと1人と1頭の足音が響き渡り、ハジメは固唾を飲む。

 

 入念に、つま先から昨夜の宴で染めたばかりの白い髪の毛先まで見つめる女。

後ろで女の真似をしているのか、鳥竜種も首を上下に振ってハジメに視線を送った。

やがて女はニヤリと笑って、辺りを見ながら口を開く。

 

「都に来て観光したい気分のお前には申し訳ないが、これから私に付き合って貰う」

「…………は、はい……?」

 

「此処では見物人が多すぎる。私の部屋までついてきてくれ」

「いや、唐突にそんな事を言われましても……」

 

(というか自己紹介くらいはしてくれよ……)

 

 自分本位の考えで物を言う女に、流石のハジメもムッとしてしまう。

彼にはこの後、工房を見て回りながら見識を広めて、村でお世話になった人たちにお土産を買って帰る支度をするという大事な予定が入っているのだから。

見ず知らずの美人に付き合えと誘われても、大切な人達との約束を優先するべきだ。

 

 ところが、女が次に発した言葉で、ハジメの考えは中断されてしまう。

周りで2人の様子を見守る者達には聞こえない声量で、彼女は囁くように言った。

 

 

()()使()()、私はお前達という不可思議な存在に、深く興味を示しているのだよ」

「――――――ッッ!!!?」

 

「―――ふむ、そういえば自己紹介をまだしていなかったな。それでは戸惑うのも当然か。私の名は”トレイシー・D・ヘルシャー”このヘルシャー帝国で皇族に名を連ねている。よろしく頼むぞ?――――――あぁ、後ろの()()は私のペットだ」

 

―――クキョルルゥー!

 

 女、トレイシーが指したことに反応した鳥竜種が一声鳴いて、ハジメは思わず身構えた。

しかし心の中でトレイシーの身分と鳥竜種の扱いに対して、疑問がどっと湧き出ている。

 

(皇女……!?つーかペットって……それ……)

 

「……俺の常識がおかしいのか、念のために確認を兼ねてお聞きしたいんですが……」

「む?何だ、答えてやるぞ」

 

 ハジメの疑問なんてお構いなしに、鳥竜種はトレイシーへと頬ずりをする。

トレイシーも嫌がる素振りは見せず、優しい手つきでその耳を撫でていた。

 

「後ろの……ペット……。それ、鳥竜種……ですよね?それも、凶暴な奴……」

 

「中型の鳥竜種モンスター、夜鳥”ホロロホルル”という個体名でハンター達に呼ばれているな。――――フフッ、そう身構えなくても、こいつは雛として孵った時から私の傍で育てられてきた。私が命令しなければ、むやみやたらに人を襲ったりはしないさ。そうだよな?()()()()()

 

―――クォホル~

 

 撫でられる事がお気に召したのか、イルシオンはうっとり目を細めて体を震わせる。

その際に数枚抜け落ちた羽毛が工房の床へと舞い落ちる。

ハジメは遠目では分からなかった異様な羽毛の質感に気づいて、それが鱗である事を知った

 

(――――――って、冷静に分析してる場合じゃねえ!)

 

 何故トレイシーは自分が神の使徒だった事を知っているのか?

答えを聞いて、彼女が自分をどうしたいのか。不安と焦燥に駆られつつ、ハジメはゆっくり頷く。

 

「……とりあえず、場所を変えて話しましょう……()()()()()は、特に…」

「あぁ、お前はあまり他人に聞かれたくないだろうな。――――――ついてこい」

 

 「邪魔したな、店主」と数枚の貨幣を工房の机の上に置いたトレイシーが踵を返す。

それに倣ってイルシオンがまた、店の入り口で身を捩らせて退出し、ハジメはそれに続く。

後に残された工房の者達はハッと我に返って、床に散らばった羽鱗をそそくさと集める。

ホロロホルルの素材”夜鳥の羽鱗”は、とても人気のある素材だったからだ。

 

 

―――ホッ、ホッ、ホキョルルル~♪

「どうしたイルシオン?今朝はやけにご機嫌じゃないか」

 

 本来ならば、朝早くから商人達が珍しい品々を出し合って市場が賑わう。

しかし道のど真ん中を歩いて、イルシオンと親しく会話をするトレイシーに、人々は驚愕と歓喜の声をあげながら道を空けて彼女に平伏する。

 

―――クキョルルル~♪

「フフッ、そうかそうか。今朝の朝食はお前のお気に召したようで、何よりだ」

 

 ハジメはイルシオンを見て驚いたが、往来の人々は自然体でそのような素振りを見せない。

工房の者達と同じリアクションである事を知ったハジメは、これが普通なのかと静かに悟った。

……しかし、トレイシーを拝む人々の視線が向けられて、ハジメはとてもむず痒い気分だ。

 

―――クキョッ!ルルルゥーッ!

「いかん、それはいかんぞイルシオン。好きな物ばかり食べていては、ミン男爵家の馬鹿みたいにブクブク太って、お前の美しさが損なわれてしまうぞ?私はそんなお前など見たくないな……」

 

 やがて2人と1頭は東側の区画から、中央広場に続く大通りに差し掛かった。

トレイシーを見て拝む人の姿が増えており、中には兵士達の姿もちらほら見かける。

ありえないとハジメは思うが、こんなところをグリッド達に見られたら、それこそ村での生活にも支障をきたしてしまうのでは?と不安が募る。

 

「いや、待てよ?仮にお前が太っても羽鱗に栄養がいって、柔らかさが増すのではないか!?」

 

「……あの……トレイシー……皇女殿下?」

「どうした錬成師。それと、皇女殿下などと畏まる必要はない、トレイシーと呼び捨てにしろ」

 

「流石に皇族の方を呼び捨てになんて出来ませんよ……」

「ふむそうか……ならば民共と同じように、お前も私を”戦姫”と呼べばいい」

 

「……まぁ、それなら。…………戦姫……様…」

「様は要らんというのに―――まぁ良いか。そら、見えてきたぞ」

 

 トレイシーが指さす方角にハジメも視線を移す。

そこには皇族が執務などで使う立派な城が立っている。

数十人の衛兵が城の周りを歩いており、見張り台などには杖を持った術者らしき姿もあった。

明らかに自分には縁のなさそうな場所だと思ったハジメだが――――

 

「そこの衛兵!召使共に、3番の執務室を準備しておくよう伝えよ!」

「ハッ、直ちに―――!」

 

(……こんな場所とは、()()()から縁を切ったと思っていたんだけどな……)

 

 自分が異世界から来た勇者達の1人であるという事実だけは拭いきれなかった。

なかった事には出来ない過去からは逃れられない非情な現実を目の当たりにして、ハジメは陰鬱な気持ちを隠し切れずに、フゥとため息を吐く。

 

 耳をピンと立てたイルシオンが真後ろへと振り返ってハジメをじっと見つめる。

それに気づいたトレイシーがハジメの心情を察したのか、笑みを浮かべて言った。

 

「心配するな錬成師。私はあの愚鈍な王国の連中や神に縋る教会の老い耄れとは違う。異世界から来たというお前達を純粋に――――――いや、建前など抜きにしてハッキリ言っておこうか……。私達の世界の発展の為に、知恵を借りたいと思っているだけさ」

 

「……俺達の……知恵……?」

 

 ハジメが呟いた言葉に、力強く頷いたトレイシーは背を向けて歩き出す。

イルシオンに背を軽くトンッと押されて、ハジメも彼女についていった。

この出会いが、彼にとって大きな支えとなるのは―――――少し、先の話。

 





作者がやりたかった事「モンスター+姫」
どう見ても「うたわれるもの」のルルティエ様です、本当にありがとう御座います。
性格はムネチカとミカズチを足して2で割ったような感じになります。
原作のトレイシーさんはまだ読み切ってないので、性格が変わってるかもです。
名前だけ借りて外側「誰だお前!?」になるかもしれません……(汗)


感想、質問、ご指摘など待ってます!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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