執筆作業中に進撃の巨人 The final season Part2 のOP「The Rumbling」を聞いて妄想を膨らませてました(神撃のバハムート GENESIS のOPも好きです)
ヘルシャー帝国とハイリヒ王国の国境線、モンスターの出現率も低い街道上の王国側の関所。
中隊規模の兵士が万が一の事態に備えて監視の目を光らせる建物は常に人が動き回っている。
…しかし、太陽が青空の上に輝いている時になっても、関所に人の気配はなかった。
否、既にそこは
石の砦の上では二人の兵士が階段に倒れ伏し、血を流して事切れていた。
見張りの異変に気が付けば詰め所の兵士が動くはずだが、詰所の中も静かだ。
椅子に座ったまま背もたれに血を滴らせている兵士は驚愕の表情で死んでいる。
何かに怯えた様子で壁際に追い詰められた兵士は腰から剣を抜いているが、争った形跡はなく、首筋から血を垂れ流しにして座り込んだ姿勢で死んでいた。
食料品を保管する部屋では口から泡を吹いて青白い顔のまま倒れている兵士が数人。
寝床で横になったまま胸や首から血を流してシーツに染みを作る兵士が数十人。
他の部屋と比べ、豪華な装飾が施された部屋には死体が一つ。
恐らくはこの関所の最高責任者であろう老齢の男性は半口を開けたまま目を見開いて胸と首から血を流し、椅子から立ち上がろうとしたところで殺され、床に横向きで倒れている。
伝令の為に走ろうとした兵士が数人、厩舎の目の前で殺されていた。
厩舎の中でとっくに餌を与えられる時間を過ぎた馬だけが不満そうに嘶いている。
中には敏感に血の臭いを嗅いで不安そうにしている馬もちらほら見受けられた。
普通の人が見たら地獄絵図と呼べるハイリヒ王国の関所を、ヘルシャー帝国から来た馬車と護衛の帝国兵達が何事もなかったかのように平然と通り過ぎていく。
…いや、馬に跨った兵士の中にはやや引き気味に青褪めた表情の兵士もいた。
馬車の中で帝国の指導者である皇帝、皇女、皇子が三者三様の反応をしている。
「…フン、野盗に襲われたにしてはやり過ぎではないか?トレイシー、お前が子飼いにしている部下共の手綱くらいしっかり握れ。これでは俺の首にその凶刃が向けられるか不安になる」
「これでも抑えた方さ皇帝。厩舎に火を点けるという選択をせずに関所の雑兵を残らず始末した私の部下を、お前が直接労いの言葉でも掛ければ寝首を搔かれずに済むかもしれんぞ?」
「ケケケ、親父殿もご苦労様だ。まぁ、俺は面倒だから
皇帝ガハルド・D・ヘルシャーは外の景色を見て鼻息を一つ鳴らして背もたれに寄り掛かる。
齢50歳を迎える彼は、
実力至上主義の帝国で、親友と肩を並べて国の在り方を変えてきた男は自らに老いを感じていた。
ふと彼は眼前の席に座る二人を見比べ、三国会議の後どちらに皇帝の座を譲るかを考える。
皇女トレイシー・D・ヘルシャーが皇帝(この場合は女帝になるのだろう)になった姿。
彼女は平民達から慕われ、貴族や聖教教会の信者に恐れられている。
自分の改革の影響か、彼女は少々ハンターを過大評価していた。
確かに現状のトータスで非力な人々が安定した生活を確立する為にハンターの力は必要だろう。
しかし彼らにあまり自由を与えすぎるのも考え物である。
彼らは一人一人が百戦錬磨の強者、生存力というものに関して彼らの右に出る人類はいない。
万が一にでも彼らの武器の矛先がモンスター以外に向けられればと想像するだけで恐ろしい。
鉄よりも固い掟で縛られている彼らの自由に制限を設ける為の新組織。
これがどこまで効力を発揮できるかで今後のハンターの数を増やすか検討すべきだ。
「…お前にこの役目を任せなくて正解だった。この脳筋バカ息子が」
「ハッ!どうせ親父殿も俺と似たり寄ったりな考えしてた癖によく言うぜ。…まぁ、暗殺だ夜襲だ姑息な策を練るのはそこの戦狂いが適任なのは認めるけどなぁ?」
「…フッ、貴様もその誰彼構わず喧嘩を売る癖を少しは改めておけよ?でなければ貴様は王としての素質だけでなく、将としての器も小さい男だと評価されかねん。軍の士気に関わるのでな」
トレイシーの言う通り、バイアス・D・ヘルシャーは王の資質を持っていない。
だが軍に於いては戦狂いと評されるトレイシーをして、部下からの人望が厚い男である。
人間性に難はあるが、実力至上主義の帝国では重宝される逸材だった。
本人も皇帝の座をそこまで欲しておらず、ただ自分の力を誇示したいだけのようだ。
いっそ皇帝ではなく将の器に収まってくれるなら、彼ほど頼もしい軍の指導者もいないだろう。
帝国軍が戦線を維持するのも彼の現地での指揮と鼓舞に拠るところが大きかった。
彼に匹敵する人物といえば、王国で数少ない有能な騎士団長メルド・ロギンスくらいである。
そのメルドも教会に遜った王家の飼い犬でしかなく、騎士の矜持を保つのがやっとの現状と聞く。
(まだまだ俺も現役から降りるわけにはいかないってことか…)
自分よりも高齢でありながら、ハンターズギルドのギルドマスターで居続ける親友。
どれだけ老いても変わらず気の抜ける笑顔を浮かべながらも、戦いの時だけは周りを無意識に畏怖させるほどの覇気を放つ男の姿を脳裏に浮かべ、ガハルドは溜息をついた。
きっと彼の話を聞いても親友は「お互い頑張ろうじゃないか。生きている内は」と笑うだろう。
(ああ、お前はそうやってニヤけてりゃいいさ……俺は変えてやるよ……)
自分の在り方を変えようと思ったのは誰かに背中を押されたわけじゃない。
隣に立っていた親友の言葉を聞き、戦場で血と泥に塗れて皇帝の座を簒奪すると決心した時から…
ガハルドの目指すところにあるのは戦争の早期終結と、他種族を含めた大陸の統治である。
その為に犠牲を厭わず、外道になるのも止む無しというのであれば…
(元より人殺しの俺は外道。…何も躊躇ったりなんざしねえよ…!)
これから始まる帝国、王国、公国の長達が一同に会する三国会議。
人の世界の常識を崩して、終わりのない戦争を終わらせる道を作る為の最初の転換点。
既にその下準備として積み上げてきた亡骸の数は数え切れない。
時の針を巻き戻す術はなく、逃げる道は自分達の手で既に切り捨てている。
「お前ら……念のために聞いておくが、覚悟は出来てんだろうな?」
ドスの利いた声で問いを投げられ、鋭い目をしたガハルドに睨まれるトレイシーとバイアス。
常人なら恐怖で震えあがるそれを向けられても、二人は平然としていた。
寧ろバイアスは歯を剥き出しにするほどの強気な笑みを浮かべ、トレイシーも口元を釣り上げ、目には殺気ともとれる意志を宿している。
「やるんだろ?皇帝陛下、
「その言葉、そっくりそのままアンタに返すぜ老いぼれ。足引っ張んじゃねえぞ」
「……ケッ、可愛げのねえ義理の娘と息子だぜ」
*
アンカジ公国とハイリヒ王国の間に広がる砂漠の大海を迂回して、最北のグリューエン火山との境界線にある荒れ地を王都に向けて進む一団がいた。
彼らこそ今回の三国会議に出席するアンカジ公国の領主ゼンゲン一家とその従者たちだ。
落ち着かない様子で頻りに周囲を警戒する兵士の肩を一人の青年が軽く叩いて話しかける。
「そんなに力まなくても平気だ、この辺りは事前に兄さんと仲間のハンター達が調べてくれてるんだから。…というか、そんな調子じゃ王都に着いてからが大変だろ?リラックスしときなよ」
「は、はっ!!申し訳ありませんビィズ様」
「ちょ、様呼びは止めてくれよ!気軽にビィズって呼んでくれ」
青年の名は”ビィズ・フォウワード・ゼンゲン”
次期当主であるレイネルク・フォウワード・ゼンゲンの弟である。
歳は彼と二つしか離れていないが、ビィズはレイを偉大な兄と敬っていた。
そんな兄の真似という訳ではないが、彼も気楽に国民と接するよう心掛けていた。
今回はそれがやや空振りして、ビィズに話しかけられた兵士はタジタジである。
「そ、そんな畏れ多い…」
「いや、そんな畏れ敬うとかしなくていいって。次期領主は兄さんなんだし、俺の扱いなんて次期領主が不在の代理執政官くらいでいいんだから気軽――――――あいたっ!?」
「馬鹿者、部下を困らせるような事を言うな。…すまんな、戻っていいぞ」
「はっ…領主様、ありがとう御座います。では、私はこれで―――」
静かにビィズの背後から近づいてきて、後頭部を軽く叩いたのは彼の父親。
”ランズィ・フォウワード・ゼンゲン”アンカジ公国の今の領主である。
「ち、父上…」
「まったく…少しはレイの真似ばかりではなく、お前らしい振舞いをしてみよ」
「…そう言われましても、私はレイ兄さんのように立派なゼンゲン家の子として務めをしっかりと果たせているか不安で――――――あいたっ」
再びランズィの拳がビィズに振り下ろされる…が、今度はさっきより少し手加減していた。
父親としてランズィは、ビィズが兄のレイネルクにひっそり憧れているのを知っている。
だがビィズの元来の心優しい性格は、領主の息子としては少々やんちゃなレイとは真反対だった。
憧れて真似ても彼らしさを失ってしまうから、ランズィはあまり良い顔をしないのだ。
不貞腐れたビィズの頭にポンと手を置いてランズィは遠くに見えるレイの背を見つめて話す。
「此処だけの話だが、レイの奴は自分が次期当主に選ばれたことに不満なのだ」
「…え、それ…兄さんが父上に言ったんですか!?」
「ああ、ハンターになって国へ戻ってくるなり私と会って開口一番そう言われたよ」
「そんな――――――」
ビィズから見て、レイはアンカジ公国の民の誰もが認める立派な領主の器の持ち主である。
ハンターになる前から自警団と称して各地に点在する集落を、モンスターの被害から守る為に義勇兵を募って奮闘したり、ヘルシャー帝国との交渉の席に着いた時もまだ十代半ばのレイが病床に伏した父ランズィに代わって立派に役目を果たしたと聞いていた。
「…一体、どうして…兄さんはそんな事を?」
「…その理由だけは、どれだけ頼んでも教えてはくれなかったよ」
これだけの活躍をして、自ら身を挺して国を守る為の礎となるべきという信念の下、父に頼まれた次期当主になるのと並行してハンターになったレイの治世をビィズも望んでいる。
遠くに見える兄の背中にビィズは複雑な思いを抱かずにはいられなかった。
(――――――数は5…いや7か…?この先の水飲み場に集まってるな)
レイは頭防具越しに地面に耳を当て、遠くに聞こえる異音を拾っていた。
肩越しに振り返って父と弟、二人を守る従者たちの距離を確認する。
さっと前に向き直り、険しい表情でレイはぽつりと呟く。
「こんな所で立ち止まっている余裕はないんでな……悪いが死んでくれ!」
サッと駆け出して、斜面を駆けのぼった先に広がる泥水のたまり場。
水辺に僅かな緑が生い茂って、水や草を食みに草食竜アプケロスが集まっていた。
レイの姿を見るなり、群れのリーダーが威嚇するように尻尾を振り回す。
しかし彼はそれに怯む様子もなく、淡々とガンランスを構えて距離を詰める。
銃槍の先端に付いた刃で近くにいたアプケロスの脇腹を刺し、そのまま引き金を引いた。
ボォン!という爆発が刃の後ろにある砲口から巻き起こってアプケロスが倒れる。
それが戦い…否、ハンターによる狩りの始まりの合図だった。
「―――シィッ!」
倒れたアプケロスから刃を引き抜いて、サイドステップで頭の方へと回り込む。
掛け声と共にまた一突き、今度は確実に殺せるようレイはアプケロスの首を狙った。
倒れたアプケロスにそれを避ける術はなく、赤黒い血が飛び散って泥水を更に濁らせる。
―――オォォォッ!
リーダーのアプケロスが鳴いて、他のアプケロス達も戦闘状態に移行した。
一斉にレイネルクとの距離を詰めて、その硬い頭で頭突きを食らわせようとするが―――
「邪魔だ!!」
三方向から同時に詰めてきたアプケロス達をガンランスの刃で薙ぎ払う。
怯んだ隙を逃さず、真ん中の一頭の顔目掛けて重い銃槍を振り下ろした。
ゴキャッと嫌な音がしてその一頭は前のめりに体勢が崩れ落ちる。
そのまま引き金を引き絞ると、シリンダーの中に装填されていた全ての火薬が炸裂。
範囲を広くしたガンランスの拡散砲撃によって、三頭が一気に沈む。
三頭の死骸を押し退けるように他のアプケロス達が噛みつこうと突っ込んできた。
流れるようなステップ回避で二度、三度とレイは後ろへ跳んだ。
盾を構えながら縦に構えた銃槍のシリンダーに火薬を再装填する。
その僅かな隙に彼との距離をアプケロスが詰めたのが失敗だった。
彼は盾の構えを解いてボォン!と三回、立て続けに砲撃を食らわせてアプケロスを殺す。
そうして繰り返し、最後の一頭が死にかけで地面に横倒れとなって藻掻いている。
「……悪く思うな」
冷ややかな目つきでレイはガンランスの切っ先を最後の一頭の側頭部へと突き立てた。
それが一瞬、彼の目に映るアプケロスの虚ろな死に顔がこの先に待ち受ける王都で再会する最愛の少女と重なって、彼は苦悶の表情を浮かべた。
「………ッ!!」
目を瞑ってその幻覚を、軽く頭を振る事で打ち払う。
剥ぎ取る手間も惜しんで後ろの斜面で待っているであろう父達に安全を確保したと伝えに走る。
普段の明朗快活で飄々とした人柄の彼の姿が、そこにはなかった。
(……何があろうと、俺はお前だけでも助け出す。そう…誓ったんだ…リリアーナ)
今回行われる三国会議で何が起こるか、当主であるランズィと次期当主のレイは知っていた。
それが後に魔人族との長年続く戦争に終止符を打つための第一歩であると同時に、最愛の少女を悲しませる結果になることも重々承知している。
だから彼は
結果として、最愛の少女に嫌われてしまうのも覚悟の上である。
親帝国派閥である公国の立場を変えずに、国崩しの犠牲者筆頭である彼女を救う。
たとえそれが…自らの命を危険に晒す事になろうとも――――――
(お前の悪夢を……俺が終わらせてやる……!)
リリアーナ、雫のメンタル状態が割とマジの銃フェライナーに近い件。(美しい…)
優花さんがハジメさんのメンタルケアで徐々にそこから抜け出しつつあるのかな…?
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡