モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 動画広告で映画の続編が決まったという銀河英雄伝説(新アニメ版と劇場版)を見続けていたら休日がいつの間にか終わっていた…
あれだけ多くの登場人物がいて物語が滞りなく動いてるのは凄い(小並感)
今回のお話、中間管理職メルドさんとメンタルブレイクなうのリリアーナ王女。


幕間の物語 黄昏は王国に光と影を齎す

 

 ハイリヒ王国の王都にヘルシャー帝国の皇帝ガハルド、皇子バイアス、皇女トレイシーが到着してから半日が経過した。

アンカジ公国の領主ランズィと二人の息子レイネルク、ビィズも王都へ着き、すぐに王城へ入る。

王城の守備兵達は緊張した面持ちで普段よりも警備を厳しくし、王都全体に三国会議が行われる間は民間人に夜間の不用意な外出を控える戒厳令が告げられた。

 

 神の使徒一行は二度目のオルクス大迷宮攻略失敗の責任を取るべく、独断で神山へ向かおうとした八重樫雫ただ一人が門前払いを食らって王城に留まり、その他の者達はそれぞれが心身の傷を癒すべく治癒院で日々を過ごしている。

 

 主戦力である王都守備の任に就いている王国軍本隊は警備にばかり気を取られ、国防の要である要所からの定時連絡が遅れていることに疑問を抱きつつも確認を後回しにした。

それが国の命運を分かつ致命的な見落としであるというのに…

 

「メルド・ロギンス、暫くだな!」

 

「!!バイアス皇子…其方もお変わりないようで」

 

 王城へ入った皇子バイアスは真っ先に王国騎士団長メルドの下へ向かった。

振り返って頭を下げるメルドが片目に眼帯を付け、服の片方の袖が肩の付け根辺りで玉結びにされているのを見て、バイアスは驚いた様子で話しかける。

 

「お前、片目と腕は…?」

 

「は、お恥ずかしい話…部下を失い、魔物に不覚を取り、このザマです」

 

 オルクス大迷宮で起きた事は公にはあまり知らされていない。

国民に知られれば王家と騎士団の権威失墜に繋がると判断した部下の進言で、国王エリヒドが他言無用と生還した騎士団と神の使徒、彼らの戻ってくる姿を見ていた王都の住人や城中の兵士、従者に厳命したのだ。

 

 特に大迷宮であった事、()()()()()()()()()()()()()()()だけは徹底的に隠蔽しようと王国側は躍起になっている。しかしメルド・ロギンスの名前でハンターズギルドに事後承諾で報酬が支払われた事実は既に一部の有力諸侯の耳に届いていた。

 

(…あのアマ、黙ってやがったのか。余計な気を回しやがって)

 

 帝国側の中ではハンターと密接な関係にあるトレイシーが王国内に潜伏させていた部下から既にその情報を掴んでいたが、ガハルドとバイアスには知らせていなかったのだ。

自らを戒めるように情けない笑みを浮かべて肩の付け根をギュっと握るメルド。

 

「国王陛下からも失望されてしまいました。…二度、同じ場所で部下を失う愚行を犯した私は、もう王国団長と名乗っていいやら…ハハ、耄碌しましたよ」

 

「…そうか…お前の剣捌きを、もう見れぬというのは残念な事だな」

 

 傍若無人を絵に描いたようなバイアスが認める数少ない男の一人、それが王国騎士団長メルド・ロギンスであった。

そこまで裕福な家で生まれたわけではないメルドは、兵卒からの成り上がりで士官になり、二十半ばの若さで騎士の叙勲を受け、先代騎士団長からの指名で次期団長としての立場を手に入れ、歴代で最も部下からの信頼厚き団長として一躍時の人となる。

 

 かつて側室の子として生まれ、皇子の立場を独占する為に腹違いの兄弟を様々な方法で抹消し、最後には武勇を持って皇子となるに相応しい証を立てたバイアスから見て、メルドは似た道を歩む者として一定の敬意を示していた。

 

 だがメルドは聖教教会の傀儡と成り果てた愚鈍な王家の下に仕えた結果、バイアスが戦場で活躍し、兵士達から将としての信頼を勝ち取る一方で部下の面倒を見ながらも王家や貴族、教会の人間に睨まれながら波風を立てないよう慎重な生き方を強いられる虚しい日々を送っている。

メルド個人の戦闘力を高く評価する武人という視点と、兵士とは違う堅苦しい形式を守りながらも職務をまっとうする騎士団を纏める指揮官という視点から見ても、彼ほど有能な人材を腐らせていた王国にバイアスは常々呆れていた。

 

「…申し訳ありません、騎士団長程度の私が帝国皇子に対しこのような…」

 

「気にするな。お前の苦労を察してやれないほど俺は馬鹿じゃねえさ」

 

「寛大な御心遣いに感謝申し上げます…では、私はこれで…」

 

 夕焼けの光が王城の廊下に立つメルドとバイアスの影を大きく見せる。

陽の僅かな傾きと、それを遮ろうとする雲が片方の人影を暗い方へと覆い隠した。

これ以上この場で立ち話を続けるのは警備に当たって場内を忙しなく行き来している兵士達の迷惑になってしまうだろうと考え、メルドはもう一度深く頭を下げてバイアスから離れていく。

 

 日陰よりも更に暗い廊下の奥へと歩いて行き、そのまま消えてしまいそうなメルドの背中を見続けていたバイアスはゆっくりと空を見上げながらため息を吐いた。

 

「…ハァ…もうお前と殺し合う口実が出来ねェなんて…本当に残念だよ」

 

 

 時を同じくして王城の一室、女の従者以外は身分の高い騎士すらもクゼリー以外は立ち入りをあまり良しとされない王女リリアーナの私室にて。

国王への謁見を済ませ、三国会議への()()()()()()を皇帝ガハルドに一任(丸投げ)した皇女トレイシーは暗い面持ちのリリアーナを見て何も言わずに来客用の椅子へ腰掛けた。

それから窓の外や背後の扉に軽く目を向けて、トレイシーは彼女に話しかける。

 

「人払いは?」

 

「…事前に済ませてあります。私が呼んでもこの部屋に来るのはクゼリーだけ…彼女も今は会議の準備で動いてますので…此処には私と貴女…()()()()()しかいないでしょうね、皇女殿下」

 

「いいだろう。今回はいつものような長話をするために来たわけではない。私の部下からここに来る途中で受け取った()()()()()()()()()()()()()()()()について確認したかっただけだ」

 

 トレイシーの言葉を聞いた途端、リリアーナは俯いたままビクッと肩を震わせた。

神の使徒とリリアーナが親しい仲であることは部下からの報告でトレイシーも知っていたが、()()()()は彼女にとってどうでもいい。神の使徒が数人、ついでに騎士も二人ほどモンスターの餌食になった等、彼女にとっては些事である。

それよりも重大なのは、救援に向かって行方不明となったハンター二人。

 

 トレイシーが信頼を置くハンターの中でも一、二を争う実力者ルゥム、元・神の使徒であり帝国に異世界の文明を伝えてくれた錬成師のハンター・ハジメ。

この二人が行方不明になったという事が彼女にとって大きな痛手なのだ。

ルゥムの存在は災害級モンスターの出現に対し大きな抑止力となっていた。

ハジメの知識は彼女が見据える戦争終結の未来に必要不可欠なものである。

 

 ルゥムの実力から考えても死ぬ可能性は低いだろうが、無事に戻ってくるまでにどれだけの時間を要するのか見当もつかなかった。

広大なアンカジ公国の砂漠や霧深いハルツィナ樹海、魔人族の領土と化しているシュネー雪原とは訳が違う。二人が潜っているのは前人未踏の大迷宮なのだから。

ルゥムが無事だったとしても、駆け出しハンターのハジメが死ぬ確率は高い。

 

(…今後の戦略に細かな調整を加える必要があるな…)

 

 あまり乗り気ではなかったが、トレイシーは王国内にいる人物に数人目印をつけていた。

それは今後の魔人族との戦争…()()()()が生き延びる為に揃えておくべき人材である。

トレイシーが思考の海に沈んでいる間、リリアーナは動揺から落ち着きを取り戻していた。

 

「…オルクス大迷宮で起きた事は私もクゼリーから聞きました。間違いないそうです。ご遺体は……回収、出来なかったと先日ハンターズギルドの方から手紙が…」

 

「そうか。…フム…」

 

 トレイシーはリリアーナに「当然であろうな」と言いかけた口を閉ざす。

帝国でハンターに深く関わってきた彼女からすれば、モンスターに襲われた人間が骨も残らずに死ぬなんて事案は珍しいことでもなかった。

ある時は平民が街道で、ある時は兵士が戦場で、貴族が森で、冒険者が山で、野盗が荒野で、頑丈なハンターですら武器と防具を残して中身が死ぬことだってある。

 

 親しいものを失って悲しみに明け暮れる者を数え切れないほど彼女は見てきた。

だから少しだけ同性のよしみで空気を読み、リリアーナの心が落ち着くのを待つ。

…という建前で、内心ぶっちゃけこの後の事をどうするか改めて考えていたのである。

 

「騎士団長メルド・ロギンスも深手を負ったそうじゃないか?今後の管理体制に影響を及ぼさなければよいが…国王エリヒドは既に何か手を打っているのか?」

 

「…いいえ、お父様も二度に渡る大迷宮攻略を教会に報告する事でかなり憔悴しています。今は辛うじて執政官たちが支えておりますが…暫くは…」

 

「…分かった。ああ、そういえば…今回は珍しくイシュタル教皇が会議に参加しないと聞いたのだが。寄る年波には勝てず、遂に気が触れて山籠もりでも始めたのか?あの老骨は」

 

 聖教教会の信者が聞けば怒り狂うこと間違いなしの爆弾発言をかますトレイシー。

リリアーナは理由を何も知らされておらず俯き気味に首を左右へ振った。

ただ教皇イシュタルに代わって、フォルビン司祭が出席するらしいと返す。

 

「フォルビン?………ん、そうか思い出したぞ。アンカジに赴任した男だったか。…私欲に走り、重い税をかけて、アンカジの領民が暴動を起こす手前までいったのは記憶に新しいな。…ククッ!小物が身代わり、辺境に飛ばされて最期がこれとは…運のない奴だ…

 

「…?」

 

「―――あぁ、気にするな独り言さ。では、私はそろそろ失礼するよ」

 

 椅子から立ち上がり、トレイシーはまだ落ち込んでいるリリアーナの肩にポンと手を置く。

冷酷非道な顔ばかりを見せてきた彼女が、まさか自分を慰めているつもりなのかとリリアーナは微かに目を見開いて顔を上げるが、既に扉を開けてトレイシーは部屋を去っていた。

 

 蝋燭の灯りだけが頼りの薄暗い廊下の途中、窓の前でトレイシーは立ち止まる。

眼下に広がる王都の街並みを眺め、反対側の方に映る巨大な神山と見比べた。

日没の関係で伸びる城の影に、神山は麓から徐々に闇へ飲み込まれているように見える。

奇しくもこの後に始まる歴史の転換点を物語っているかのようだった。

 

 偽りの神よご照覧あれ、これより始まるのは思い描いた盤上の遊戯に非ず。

崇め奉られるだけで導くことをしなかった偽神が、大地の支配者たる人に成り代わることはなく、人が人で在ろうとするための始まりの物語である。

かつて異世界で人が(まつりごと)から神の存在を引き剥がした事象、政教分離の歴史と同じように。

突発的にではなく、長い歴史の中で積み重ねてきた負債を…エヒト(おまえ)は回収する時がきた。

…もっとも、それを偽神が知るのは全てが終わった後だろうがな…

 




 ウィキ先生で政教分離の歴史のページを開いたら物凄い行数で目を回した。
余談ですが喩え話にメソポタミア神話のギルガメッシュを出そうかなと思ったけど、上手い言い回しが思いつかなかったので断念。
最後にファイヤーエムブレム風花雪月無双のPVを見て目からエクリプスメテオ。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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