モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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EXドラゴン装備と冥灯ライトで弾丸消費めっちゃ減る事実に気づいて狂喜乱舞の作者。
これは暫くライトボウガンで斬裂ばら撒き迷惑マン不可避ですわ……。

今回の話はハジメ君の足元を固めるお話。
頼りになるのは、やはり強い女(確信)


強い女には勝てない

 執務室という名前から、ハジメは王国で見てきた豪華な装飾が施された室内を想像した。

しかし扉を開けて入った瞬間、想像の斜め上をゆく光景に彼は言葉を失う。

 

 

「皇帝と皇太子は生憎と王国に出向いているのでな。少し散らかっているが、まぁ適当に寛げ」

 

(これが………少し……?)

 

 世の中で働くことに疲れたOLだってもう少しマシに見えるような執務机の上の書類(ゴミ)の山。

机の足元には様々な鉱石、モンスターの素材が幾つも転がっている。

客人をもてなす机とソファーの上には、武器や防具の設計図などが散らばっていた。

軍事用の重要な機密書類から、ハンター達が使う武器の試作品まで、探せば何でもありそうだ。

 

 トレイシーに向かって「片付けて下さい」とは面と向かって言える筈もないハジメは、言われた通りにソファーの上の武器と防具を押し退けて腰を下ろした。

 

 ちなみにイルシオンはどうしているかというと、城内までは入ってこれたのだが、執務室のドアは狭すぎる為「お前は少し、そこらへんで遊んできなさい」と彼女(トレイシー)に命令されて、城内の何処か暗いところを探して、スヤスヤと寝息を立てている。

 

 間もなく召使が盆の上に飲み物と菓子を持って現れた。

召使にとって執務室の惨状は日常茶飯事なのか、動揺する素振りもなく、ハジメの前に置かれた来客用の机の僅かな隙間と、書類だらけの執務机にそれぞれのティーカップと菓子を置いて、そっと両者に一礼をして執務室を去った。

 

「さて――――――改めて君の名前を聞いておこうか、錬成師」

「ハジメ――――――南雲ハジメ……それが俺の名前です」

 

 付け加えて「南雲が家名です」と答えるハジメ。

トレイシーは執務机の引き出しから一枚の羊皮紙と羽ペン、インクの入った小瓶を取り出す。

藍色の羽ペンはイルシオンから抜け落ちたものを使っているのだと、ハジメは一目見て分かった。

 

 彼女はハジメに見向きもせず「この世界に呼ばれた理由から話せ」と言う。

まるで事情聴取でも受けている犯罪者のようだと緊張した面持ちで、ハジメは一つ一つ答える。

 

「聖教教会の教皇イシュタルに、魔人族との戦争で人族を救う為、神エヒトが連れてきたと聞かされてます――――――俺達の意思は無視して」

「そうか……。――――――よし。では次にお前の情報をこれに映してくれ」

 

 言うや否や、机の中から無造作にステータスプレートを取り出して、ハジメへと放り投げた。

一応は身分を証明するためのアーティファクト(貴重な神代の遺物)なのだが……。

ハジメは右手の親指の先っぽを噛み切って、溢れさせた血の玉をステータスプレートへと落とす。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

南雲ハジメ 17歳 男

天職:錬成師

筋力:???

体力:???

耐性:???

敏捷:???

魔力:???

耐性:???

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+鉱物分離][+鉱物融合][+圧縮錬成]、言語理解

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(……ん?変だな、前は耐性から下4つはそれなりの数値で分かった筈なんだが……)

 

 この文字化けする現象を、ハジメは村のハンターであるアゥータやシュヴァルツ教官、同期達にも訪ねてみたが、全員が口を揃えて「分からない」と答えた。トータス中の優れた魔法やアーティファクトの研究者が数年以上も調べても、原因不明であるという。

 

「どうした?早く見せろ」

「あ、あぁ…すいません。――――――これです」

「ん――――――ほう、確かに他のハンター達とは違って天職がついているようだな……。それにこの”言語理解”という技能も、他の冒険者ではあまり見かけない」

 

 錬成師としての技能が増えて、これからの鍛冶仕事で役に立つと心の内で喜ぶハジメ。

暫くの間、トレイシーはステータスプレートの内容を羊皮紙に書き写していた。

ハジメは折角なので、使用人が淹れたお茶を頂こうと一言彼女に「いただきます」と言い、湯気の立つティーカップをそっと手に取り、一口飲んだ。

 

 

 

 

「――――――――よし、長い時間お前を拘束するのも悪いからな、本題に移ろうか」

「はいっ」

 

 羊皮紙を一枚筒状に纏めて紐で結んだトレイシーが顔をあげてハジメに向き直る。

ハジメもティーカップを机に置いて、彼女の言葉を聞く姿勢を取った。

 

「お前を此処に呼んだ理由はさっきも話したが、お前達”異世界の知恵”を借りたい」

「……具体的には?」

 

()()だ錬成師。お前達の文化、歴史、言語、学問、宗教、技術――――言葉でジャンル分け出来ないものでも、なんでもいい……お前が知る限りを教えてくれ」

 

 ハジメは異世界に来て、最もありそうな質問が今更来たなぁと心が浮き立つ。

テンプレではあるが、異世界に転生した現代人が現代知識をフルに活用して、異世界生活を満喫――――――実際には、魔物に襲われて死にかけたりと悲惨だったが。

 

 王国ではその手の質問が全くと言って良いほど来なかった。……あるいは、ハジメに話しかける貴族や王国の関係者が全くいなかったから、代わりにクラスメイト達の誰かがあっさり話しているのかもしれないが……。

 

「それを知ってどうするのか―――――――――って質問は無粋ですかね」

「当然、私達の国を豊かにする為―――――というのが建前だが、実際には魔人族との戦争を優位に進めたいというのが第一目標ではあるな。何年、何十年――――いや、下手したら何百年前からも続く馬鹿げた戦争だ。そろそろ決着をつけたいと私達は考えているのさ。……私達が手を血で染めたとしても、私達の子供が、同じような道を辿るのは……あまり考えたくないのでな……」

 

 話をしながら窓の外へと複雑な視線を投げかけるトレイシー。

南の方角、今も最前線では人族の兵士と魔人族の兵士がお互いに命を奪い合っている。

聖教教会が口にする「魔人族を全て滅ぼす」という過激な思想より、まともな人の心を持っている彼女の在り方に、ハジメは驚きで目を見開きながら、頭に疑問が浮かぶ。

 

 何故、ここまで優しい彼女が()()などと呼ばれているのか……?

そして戦争終結を願うのがトレイシー以外にもいるのかと、ハジメは聞いた。

 

「私達というのは……?」

「現皇帝に皇太子、それと数人の協力者さ。―――まぁ、あの皇太子(バカ者)は、魔人族との戦争よりも、帝国が主権を握る人族の国家統一を目論んでいるようだが……困ったものだ……」

 

 数人の協力者が王国関係者と貴族じゃない事だけは、以前に神の使徒を招いたパーティーの席で帝国の人間が呼ばれていなかった事から確かだなと内心思いながら、ハジメはトレイシーがさらっと言い放った、まだ見ぬ帝国の皇太子のとんでもない考えに背筋がぞっとする。

窓の外からハジメへと視線を戻したトレイシーは再び口を開く。

 

「お前が私達に協力してくれるというのなら、私達も報酬を出し惜しみするつもりはない。最初にお前が得るものは”ヘルシャー帝国における市民権の獲得”だ」

 

 最初にこれが来るだろうとハジメは予想していた。

彼が無言で頷いたのをトレイシーもニヤリと笑って返す。

幾らハンターズギルドや訓練所、その他一般の目を誤魔化せたとしても、彼女がハジメを神の使徒だと知っている時点で、身分を偽っている事などすぐに知られてしまうだろう。

 

 元から異世界での身分は、教会と王国の関係者がハジメ含むクラスメイト達を指して神の使徒であると言わなければ、家無し文無し職無しの浮浪者と同じような物だから。

 

 故に()()()()()()()()()()()()()()()()と覚悟を決めた時点で、戸籍は必要不可欠だった。

あくまでハジメの状況を知っていて、それを利用する彼女の強かさにハジメも冷や汗を掻く。

 

「二つ目は”お前が提示する別世界の知識に対する敬意の念も込めた報酬”だ」

 

 そう言ってトレイシーは懐から数枚の貨幣を取り出して、机に放り投げる。

少しお茶でも飲んで冷静さを保とうとしたハジメの体がビクッと大袈裟に反応した。

何故なら、目の前に置かれた貨幣は()()、この世界で最高価値の一万ルタ金貨である。

それが数枚、ハジメの動揺を見て笑みを深めたトレイシーがわざとらしく言う。

 

「あぁ、いま目の前に置いたのは()()だ。実際にはこの10倍を支払うと約束しよう」

「――――10倍ッ……!?」

「あぁ、10倍だ」

 

 そこそこ規模の大きな会社で働くサラリーマンの総支給額か、それ以上の金額。

ハジメの目に映るのは金貨だが、脳裏に思い浮かべるのは天下の諭吉さんが束になる光景。

 

 ハジメにも金銭欲は普通にある。村での生活に不便はないが、村への恩返しも兼ねた土産を買う資金稼ぎが、こんな形で叶うとは思わなかった―――ハジメは胸が高鳴る。

駄目押しと言わんばかりに、彼女は「あぁ」と言葉を付け足す。

 

「こういった形でお前の知恵を借りる事は今後もあるだろう。知識量、内容に応じて報酬も増えるだろうなぁ……?―――――フフフッ、答えは決まったようなものじゃないか」

 

 

 

「はい、是非、喜んで、元ではありますが、神の使徒でありました(わたくし)南雲ハジメが、トレイシー・D・ヘルシャー皇女殿下のまこと貴きお頼み事、お引き受けさせて頂きとう御座いまする。微力ながら、精一杯努めさせて頂きます」

 

 

 

「く、フフ、ッハッハッハッハッ――――!正直で良いなお前は!良い、実に良い!」

 

 異世界でも欲望には抗えなかったよ―――――のちにハジメはそう語った。

立ち上がって衣服という名の防具を正し、背筋をピンと伸ばしたハジメは一礼。

一人称まで丁寧にして、肩と口をわなわな震わせながら、目線だけが金貨に向けらた。

 

 トレイシーもここまでオーバーなリアクションを返されるとは思わず面食らったが、あまりにも馬鹿正直なハジメの態度に声をあげて笑った。執務机の上で、書類の山がバサッと崩れ落ちる。

 

 2人からは見えないが、廊下の外では通りかかった使用人や衛兵たちがギョッと驚いて、何事かと執務室のドアを見つめるが―――関わらない方が身のためだと足早に去っていった。

 

「ふ、フフッ!全く……!そこまで露骨に喜ばれては、裏がある等と疑う余地はなさそうだな?―――――さて、では三つ目だが……」

 

「なんと、これ以上の褒美を「その面倒臭い口調、もう止めて良いぞ?」アッハイ」

 

 改めてソファーに腰かけたハジメ。トレイシーに促されて、少し冷めた茶を飲み干した。

頭の中で買いに行くお土産と残りの使い道を考えるハジメ。

そんな彼を見て苦笑するトレイシーは真剣な表情で言葉を続ける。

 

「三つ目はお前の、少々厄介な立場を守るための、保険と考えてくれ」

「………保険……ですか?」

 

 自動車保険とか生命保険とか、そういう日本にありそうなお手軽サービスではなさそうだ。

少々厄介な立場というのは、神の使徒や教会絡みだろうとハジメは予想した。

トレイシーは崩れた書類の中から一枚の地図を取り出して、ハジメに見せながら話し出す。

 

「知っての通り、お前達をこの世界に呼んだ神エヒト、奴を信仰する聖教教会というのは、組織としては国の政に干渉出来るくらい巨大な組織だ。魔人族との戦争を始めたのは王国だが、その発端は教皇イシュタル。奴が絡んでいると見て間違いないだろう」

 

「……イシュタル……」

 

 初めてトータスに来たハジメ達を歓迎する等と口にした好々爺―――のようにハジメ以外の者達は見ていたが、ハジメだけは宗教のトップらしいというか、いかにも裏で何を考えているか分かりませんよーな狂信者地味た片鱗を見せたイシュタルを警戒していた。

 

 そんなイシュタルの口車に乗せられて、煽てられるがままに戦争参加を決意した天之河。

それに賛同したクラスメイト達を止める事など畑山先生や、ハジメに出来る筈もなかった。

その結果、ハジメは死にたくなるほどの生き地獄というものを味わったのだが……。

嫌な事ばかり思い出す自分に苛立ちを隠せないハジメは、視線を床に落とす。

トレイシーはそれに敢えて触れず、言葉を続けた。

 

「幸いな事に帝国は教会を黙認するだけで、その思想や理念に染まる者は殆どいなかった。――――仮にいても、此処では鼻つまみ者扱いされて、すぐに王国に逃げてしまうからな」

 

(だから此処(帝国)に来てから、教会の関係者と会わなかった訳だ……)

 

「私達は戦争に参加する一方で、教会や王国に探りを入れるようになった。――――今は同盟国だが、戦争が終われば明日にも我々を異端者と認定して次の戦争を仕掛けて来るかもしれんからな」

 

 と言ってティーカップを手に取った瞬間、トレイシーは不気味な笑みを浮かべる。

先ほどまでの穏やかな、品のある笑顔ではない――――まるで、獲物を前にしたモンスター。

ハジメの肌がピリピリとした殺気を感じ取った。彼女は静かに、一言付け足す。

 

 

 

「―――――仕掛けてくるのなら、私の手で1人残らず、皆殺しにしてやるがな」

 

 

 

(あ、こりゃあ戦姫って呼ばれますわ……ガチの狂戦士(バーサーカー)みたいな目してますわ……)

 

 モンスターと戦うなら挑戦的になれるハジメだが、対人戦闘は話が別。

というか、目の前の皇女と戦って勝てる自信が全くないハジメだった。

彼女の体の動かし方は、皇女というより戦い慣れた人のそれに近い。

もしかしたら無自覚で技能”威圧”とか使っているのか、この皇女…?

 

「……おぉ、話が逸れてしまったな。すまない。――――――王国と教会の現状を探る一環で、神の使徒という存在に触れた私達は、これを王国とは別に利用する事を考え、そしてお前を見つけた。……まさか皇帝が進めている開拓事業と関わりのある村で生活していると聞いた時は、流石の私も驚かされた。―――さて、此処からが重要だ。お前は今後、ハンターとして活動中に、教会と王国の関係者から目をつけられると面倒なことになる―――そうだな?」

「……はい……」

 

 見た目や口調を変えて、別人のフリをしていても目敏く気づく者はいるだろう。

それから逃げ回ったとして、ゲブルト村の親しかった者達や同期達に迷惑をかけたくない。

ハジメは重苦しい雰囲気で、グッと手を握り締める。

 

「三つ目の条件というのは”そんなお前の後ろ盾に私がなろう”だ」

「……それなら確かに……!……けどそれは――――」

 

 あなたを巻き込んでしまう―――そうハジメが口にするより早くトレイシーは動いていた。

何処から出したのか分からないが、片手に短剣を握り締めて椅子から飛び上がったトレイシー。

オリンピック選手のような跳躍で机を飛び越えた彼女の体はハジメの眼前に降り立つ。

 

 

 一瞬、着地の際に胸がぷるんと揺れたのを、思春期性少年なハジメは見逃さなかった。

しかし驚く間も与えられず、ハジメの首筋にトレイシーが手にした短剣を添えている。

半口開けたハジメに対して耳元で囁くように彼女は言う。

 

「そうして私の心配をしてくれるのは、女として純粋に嬉しい―――――しかし、よちよち歩きの赤子も同然のお前に心配されるほど私は弱い女ではない。……フフフッ、心配なんて必要ないぞ?お前は立派な後ろ盾を得る、帝国にとって利益になる者なのだからな、錬成師の小坊主?」

 

「……(コクコクコクコク!)」

 

 まるでルゥムのように無言で、首を縦に4回振ったハジメ。

トレイシーは最後に「お前は私の獲物だ」と言わんばかりに、彼の首筋をぺろりと舐めて、蠱惑な笑みを浮かべながら執務机と戻っていった。

 

(―――――心強い後ろ盾のはずなのに……。何故だろう、この飛竜に後ろから爪を突き立てられているかのような有無を言わさぬ圧迫感は……。―――女ってマジおっかねえ……)

 

「何か言ったか?」

「イエ、ナニモ」

 

(―――心の声も、控えめにしておこう……この人の前では特に……)

 

 再びハジメの前に羊皮紙の束を置いたトレイシーが隣に座る。

ハジメは必死に自分の記憶を手繰り寄せて、自分では「これ当たり前じゃん」と思うような現代の知識を余す事なく羊皮紙へ書き写していく。

隣に彼女がいるせいで、生きた心地がしなかったのは此処だけの話。

 

 




皇女様強い、これは主人公かヒロインですわ(※違います)
とりあえずハジメ君の身分と面倒事に対する後ろ盾確保ォ!

トータスの文明レベルがどうなってるのかいまいち分かりませんが、銃(ボウガン)を造れるくらいの技術力があるのなら、十分に現代の知識が役に立つ……かも?
(ハジメ君がそこまで専門的な知識を持っているかは不明)


感想、質問、ご指摘など待ってまーす!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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