モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 次作に向けて、キャラクター達の動きを明確に表記していくスタイル。
前半と後半で空気の重さに差があり過ぎるのはお察し(もっとゆるゆるな空気で異世界エンジョイ勢みたいな振る舞いする奴が出てくるから…)


幕間の物語 それぞれの進む道

 

 湖の町ウルが帝国軍に占拠されてから半日が経過した。

武装した帝国兵が中隊規模で押し寄せたことで住民は混乱に陥ったが、町の用心棒であるリンネが「住民に危害を加える気はないってさ~」と伝えたお陰ですぐに静まった。

 

 聖教教会の神殿騎士デビットと部下達は町の役場に拘禁されている。

町長が中隊長から聞かされたのは、三国会議で起きた一連の騒動と国王の死。

突然自分達の国の王様が死んだと聞かされてショックを受けない筈もなく…

 

「そんな…」

 

 町の役場、町長が普段使っている執務室。

体を預けていた椅子に深く沈み込むようにして、話を聞き終えた町長は言葉を失う。

町長の顔色を気遣いながら、中隊長は机の上で手を組んだまま次の話に移る。

 

「先ほど申し上げました通り、暫くは帝国兵二個小隊を町中に配置します。王都が陥落した今、王国各地で妄信的な反帝国派閥が生まれるでしょう。ですが我々は内側の敵よりも、外から攻めて来る敵に対処しなければなりません」

 

「―――と、いいますと?」

 

「山頂の観測班が、魔人族の軍隊を発見しました」

 

「なっなんと…!?」

 

「シュネー雪原から魔人族の都市に通じる広い街道上に、少数ですが大型の支配種を数体連れているとの報告もありました。恐らく狙いは――――――」

 

()()()()()()()…ってところかしら?」

 

 執務室の扉を開けながら口を挿んで部屋の中に入って来るリンネ。

扉に背を向ける形で座っていた中隊長は立ち会がって敬礼し、町長は安心した表情で迎えた。

 

「おぉリンネちゃん!」

 

「やっ、町長。皆に説明するついでに見回り終わったよ~。…んで、さっきの質問だけど…」

 

「―――はい。我々も貴女と同じ結論に至りました」

 

 王国の歴史上、未だ一度たりとも行われない魔人族の大攻勢。

支配種のモンスターを数多く従えた今なら、戦力的には魔人族が勝っている。

しかし彼らは支配種を嗾けて哨戒中の兵士を襲うばかりで本格的な攻撃をしない。

戦力の温存を理由として捉えてきたが、どうやら十分に戦力は集まったようだ。

 

 魔法技術の高い魔人族であれば、前線基地一つ設置するのに一週間も要らないだろう。

都市から補給路を延ばして雪原を越え、雪山と帝国軍の関所さえ破れば後は進軍あるのみ。

破壊した関所やウルを足掛かりにホルアド、王都と一直線に攻められれば終わりだ。

 

「……え、えらいこっちゃ……!」

 

 普段は丁寧な言葉遣いを心がける町長が、不安と混乱のあまり素の喋り方でそう呟いた。

執務机の椅子に座る町長と、お客様用のソファーに座る中隊長の間、上着掛けの傍にあった椅子をズズズ…と引っ張ってきたリンネは中隊長と対面、町長に背中を見せる形で座る。

 

「もう手は打ってあるのかしら?」

 

「詳しくはお話出来ませんが…我が軍も関所から先に新たな見張り台を建て、敵を牽制する策を既に実行しています。後は本国からの増援が間に合えば、互角の戦いに持ち込めます」

 

「流石、本職さんは仕事が早いねえ。―――それで?」

 

「…貴女がお聞きしたい事は、使徒様の今後について…ですね」

 

「そっ。あの場ではウチのお客さんって扱いだから手出しさせなかったけど、そちらさんとしても神の使徒をこのまま野放しって訳にはいかないんでしょ?」

 

 ウルに居る神の使徒、愛子達は水妖精の宿でリンネの帰りを待っている。

勝手に外を出歩く自由は許されていないが、それはウルの住民も同じであった。

特に逆らう様子もなく従っている彼女らの今後について、リンネは中隊長から話を聞く。

 

「…トレイシー皇女殿下からは、貴女の意見を尊重するようにと言われております…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…と」

 

「………はぁ、アタシの考えなんてお見通しって訳か」

 

 どっこいしょと声を上げて椅子から立ち上がってリンネは部屋を出て行こうとする。

中隊長は再び彼女に対し敬礼で見送ろうとするが、彼女は手でそれを制した。

 

「アタシから話しておくわ。…ま、先生には悪いと思うけどさぁ…」

 

 執務室を出て目の前にある窓から、ウルディア湖の奥に聳え立つ雪山と青空を見上げる。

その瞳は極小の点にしか見えない渡り鳥の群れが飛んでいくのを捉えていた。

 

()()()()()()()()()()()()()って言われたら、アタシは()()しか選べないのよねぇ」

 

 

「――――――ってな訳で畑山先生にはこれから帝都へ発ってもらうわ」

 

 水妖精の宿へ戻ったリンネは開口一番、集まった愛子達に淡々と告げた。

名指しされた愛子は驚き目を見開いたが事情を察して頷く。

しかし優花達が二人の間に入り、待ったの声を上げる。

 

「そんな!?リンネさん、どうして急に…」

「水妖精の宿のお客さんには手は出させないって言ってたじゃないですか!?」

「愛ちゃん一人だけなんて危なすぎるよ!」

 

「うーん、やっぱりこういう反応するよねえ…」

 

 たはは~と乾いた笑い声を零し、自分の口からは内容を言い辛い様子の愛子を気遣ってリンネは一つ一つ順を追って説明する。

 

「んっとね~…まず君達、今置かれてる立場って理解してる?」

 

「…そ、それは…!」

 

「ウチのお客さんである以前に神の使徒、聖教教会の関係者なんだよねえ君達。…んで、同じ聖教教会の関係者である神殿騎士が帝国軍に拘束されている以上は、キミ達も本来同じ目に遭うところなんだけど…帝国の皇女様は君達の扱いを神殿騎士とは別にしたいっぽいんだよねぇ」

 

「…愛ちゃんが作農師だから、帝国で同じように働いてもらうために…?」

 

「大正解!優花ちゃん察しが良くて助かるわ~」

 

 明るい口調で答えるリンネの瞳からは嘘偽りない真剣さが感じられた。

奈々達がどうすればいいかと頭を悩ます中、優花は顎に手を当てて考える。

 

「――――――これまでと同様、私達が先生に同行することは可能ですか?」

 

「ッ…園部さん!?それは―――」

 

「可能だね~。畑山先生は作農師としての能力は高いけど力仕事に向いてないから。いざって時にそれを補助してくれる人が周りにいるなら、帝国側も余計な人員を割かなくて楽出来るし」

 

「で、でもそれはっ…!帝都までの道中、また危険な魔物に襲われるリスクが―――」

 

「…私達の心配をしてくれるのは嬉しいけど、襲われて命が危ないのはどこにいたって同じなんだよ先生?それに先生と離れちゃったら、私達はこれからどうすればいいの?」

 

 優花の言葉に愛子はハッとして、不安と寂しさが入り混じった表情の奈々達と目が合う。

滞在期間が延びて、水妖精の宿の代金はこれまで神殿騎士(デビット達)が教会名義で払っていた。

しかしその彼らがいない今、愛子抜きで奈々達は高級宿の宿代を支払わなければならない。

 

 ちょっと畑仕事を手伝ったくらいじゃ一日分の代金すら支払えないだろう。

彼ら彼女らもそれ以外に出来る仕事はこれまで村や町に滞在してきた間、個々の得意分野を生かして見つけてきたかもしれないが、それをこなしても足りないのは明らかだ。

更に優花が襲われた一件を含めても、ウルが魔人族との戦争の最前線に一番近い町であることから、何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性がある。

 

 では王都にまだ残っているかもしれない他のクラスメイト達と合流するのはどうか?

それでも偶にモンスターが出る街道を経由して、王都までの道のりを護衛無しで行くことになる。

革命の影響で町中や街道上で野盗などに襲われる確率もかなり上がっている。

 

 愛子も奈々達も考えが纏まらない中、愛子に着いて行って帝都へ向かう意思を固める優花。

そんな彼女の様子を見たリンネは内心初めて会った時とは随分様子が変わったなぁと思う。

彼女を変えたのはこれまで巡ってきた環境か、壮絶な経験か、それとも――――――

 

(…君の影響…かな、ハジメ君?)

 

「…先生。行くなら皆で一緒に、帝都まで行こう」

「そ、そうだよ愛ちゃん!」

「優花っちの言う通りだよ…私達は先生についていくから!」

「俺達の事なら心配すんなって!自分の身くらい自分で守るさ!なぁ?」

「お、おう…!多分!!」

「多分じゃねえ、絶対だ絶対!」

 

「………皆さん」

 

 愛子は目に涙をうっすら浮かべて優花、奈々、妙子、昇、明人、淳史を順に見つめる。

大人だから、保護者だから、自分がなんとかしなきゃいけないと思い続け、言い聞かせ、誰にも悩みを打ち明けず、苦悩を抱え込んできた彼女の胸にこみ上げるものがあった。

これまでロクに面倒を見てあげられなかった彼ら彼女らに、こんなにも慕われることが嬉しい。

そんな事すらこの瞬間まで愛子は忘れかけていた。

 

 その様子を眺めていたリンネは「うーん青春、青春」と一人達観して目を細める。

…と、その直後に宿の入り口から近づいて来る足音に片方の眉毛をピクっと動かした。

 

「―――おっ?もしかして向こうからお迎えを寄越してくれたのかしら」

 

 彼女の声に愛子達も扉の方から近づく気配に気づいて顔を向ける。

内側に扉を押して入ってきた一人の男が陽気に声を上げた。

 

 彼は全身を防具で覆い隠し、背中には巨大な朱色の大剣を差している。

後ろからもう一人、暗殺者風の装備と青色の片手剣を腰に差して、左腕に盾を装備した女だ。

物騒な恰好の二人に愛子達は狼狽えるが、優花はブルックの町で教えてもらった事を思い出して、目の前の二人が彼と同じハンターであるとすぐに気づく。

 

「よう、そんなに久しぶりでもないか、元剣聖?…っと、そちらさんが護衛対象?」

 

「お初お目に掛かります神の使徒。私達は帝国皇女の依頼で参りました」

 

 サー・ミッドガルとマリアンナ・ベスタは皇女トレイシーの依頼を受け、ウルに居た神の使徒を帝都に移送する道中の護衛役として派遣されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 下でリンネ達が話し合っている間。

ノイント、ティオ、ミュウの三人は部屋を一つ借りて休んでいた。

ハジメに起きた事態を察している二人は如何にしてミュウに気づかれることなく、彼の帰りまで興味を逸らす方法を考えている。

 

「ミュウ、私達は今…重大な危機に直面しています」

 

「みゅ?」

 

「うむ。ミュウよ、心して聞くがよい」

 

 少し前まで竜人族の長だった事もあり、その時の身の振り方を参考にしたティオは重みのある声で深刻そうな表情を浮かべながら窓の外をキッと見つめる。

不思議そうに首を傾げていたミュウに向かって二人は声を揃えて言った。

 

「「このままだと宿代が払えない(のじゃ)」」

 

「ええ~っ!?」

 

 嘘である。

実際はリンネに「ホルアドから此処までの道中、ハジメ君は居なかったけど二人に夜の火の番とか周囲の警戒をして貰ったから、報酬代わりに彼が戻って来るまでアタシんとこの宿使いなよ~」と言われ、支払いの義務は発生していないのだ。

 

 しかしミュウの心をハジメから逸らし、考える時間を与えないようにするための策として二人は宿代がない風を装い、宿を使わせて貰う代わりに三人で働く作戦を考えた。

 

…とはいえ体が成長してもミュウはまだ幼い子供。力仕事や事務仕事など出来るはずもなく、適当にそれっぽいことをやらせてノイント、ティオがそれをカバーして小銭を稼ぐのが現実的である。

今は帝国と王国の件でむやみに出歩けないから、手始めに水妖精の宿でお手伝いをさせて貰えないか、ティオがリンネに交渉する予定だ。

 

「今日も美味しいご飯と温かいベッドで眠る為にも、ミュウ…この宿屋でこれまでのように料理のお手伝いなどをしましょう。全てはハジメが戻って来るまでの辛抱です」

 

「り、了解なの…!」

 

「うむ。―――となれば善は急げ!妾がリンネ殿に話を……む?」

 

 不意に窓の外、宿屋の入り口で動くものを捉えたティオ。

そこにはホルアドでリンネにハジメの事を伝えに来た男と彼のパートナーと思われる女。その二人に連れられて宿を出ようとする愛子達の姿があった。

 

「あれは…ホルアドで見た…」

「ハジメと同業の方のようです」

「優花お姉ちゃんも後ろの小さい女の人と一緒にいるの」

 

 ミュウに言われてノイント達も愛子達に混じる優花の姿に気づいた。

短い時間だが彼女が遠く離れていくのを、ノイント達は複雑な心境で見送る。

すると部屋の扉がノックされて、リンネがひょこっと顔を出す。

 

「ノイントちゃん達、ちょい話あるんだけど今大丈夫?」

 

「リンネ殿、問題ないぞ。寧ろ妾達も話があったのでな」

 

「はいはーい、そんじゃちょっとお部屋に失礼してと…」

 

 部屋の中に入ってきたリンネは椅子にストンと座ってから話し始めた。

帝国が起こした一件と優花達のこれからを、ミュウは難しい話を聞いてもキョトンとした顔で首を傾げるばかりだったので、聞かれても特に問題は無かった。

 

「…では優花達は帝都へ?」

「ん、早ければ今日の夜にでも出発するわね。今はあの神殿騎士さん達に色々お世話になりましたって御挨拶しにいくみたいよ?」

 

「…あの騎士達はどうなるのか…というのは聞かずとも分かる」

「さて、どうなるかしらねえ?流石に何のお咎めも無しで野放しに出来るような人達じゃないって事だけは確かでしょうし」

 

「…みゅう…お姉ちゃん達、難しい話ばっかりなの~」

「ごっめんねえ~ミュウちゃん。お詫びに今日の夕飯のシルニッシは大盛にして、ミュウちゃんにだけスペシャルトッピングしちゃう!お姉さんの奢りよ~!」

 

「え、いいの~!?」

「モチのロンよ!スペシャルトッピングにオマケのデザートまで付けちゃうんだから~」

「わーい!」

 

 こうして3人は暫くリンネの所、水妖精の宿で厄介になるのだった。

 




 ハジメが中心のモンスターハンターが進行する裏で、銀河英雄伝説みたいな軍記物語とファイナルファンタジーみたいな冒険譚?が展開される(予定)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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