三国会議で革命が起きた直後の魔人族側のお話になります。
「―――――ほう、国王エリヒドが死んだか」
『間違いありません。王城より運び出される国王の遺体を私自ら群衆に紛れ、確認しました』
「…敵が此方を誘い出すための策にしては不自然。しかも国王だけでなく閑職に追いやられていた聖教教会の司祭に、有力貴族もかなりの人数が死んだとなると…」
「フッ凡その検討はついている。あの皇帝…いや帝国の三人か?ようやく自分達にとって一番厄介な存在が何か気づいたようだな。教会もあの愚神もこれで終わりだ」
やぁ久しぶり、清水幸利だ。
首都バルバルスで魔法の鍛錬に励んだり、新しい支配種の制御をしたりと色々忙しい日々を送ってたわけなんだが…
只今魔王城(いつも過ごしてる館とは別の立派な建物)で偉い人だらけの会議なう。
光属性と風属性、雷属性の魔法を複合して作り上げた立体映像で会議に参加するのは褐色人妻おっp―――もとい特殊工作部隊の指揮官であるカトレアさんが片膝をついてアダムに王国で起きた事を報告している。
死んだかーあの王様。
俺達の住む場所を提供してくれた人って印象しかないし、ぶっちゃけイシュタル教皇に頭下げてたから国王って肩書の割に大したことない人なんじゃないかって思ってたけど、まさかこんなにアッサリ死ぬなんて驚いたなぁ…人の命って言うほど重くないんだなー…
…一番驚いたのは、見知った人が死んだのに悲しいとも思わない自分の精神にだけどなー…
「どうした幸利、かつての仲間の身でも案じているのか?」
「まさか。いっそあいつ等も纏めて死んでくれないかなって期待してましたよ」
俺の指すあいつ等とは他でもない、友であるハジメを除いた
カトレアさんの話によるとあいつ等はまた性懲りもなく大迷宮に挑んで、ボロクソに負けて帰ってきたとか…死んでねえかなー主に天之河と檜山とその取り巻き共。
『―――死体の中にアンタと同じ年くらいの子供はいなかったね』
「そうっすか……わざわざありがとう御座いますカトレアさん」
『アハハッ、あんたの為にそれを確認した訳じゃないから礼なんていいんだよ。…っと、失礼しました魔王様。私の方は帝国から監視の目も強くなっているので、ホルアドで身を潜めようかと…』
「うむ、諜報活動の方もほとぼりが収まるまで控えよ。現地での破壊工作に関する作戦立案と実行のタイミングはミハイルと話し合い、詳細を俺の所へ持ってこい」
「『ハッ!』」
立体映像の中で頭を垂れるカトレアさんの隣で、ミハイルさんも同じように動く。
…あ、いまチラっとカトレアさんの方見たな…でもカトレアさんのが首を横に振った。
まぁいくら夫婦の共同作業とはいえ公私混同はダメってことだよな…
意外だけどそこらへんはミハイルさんのが緩くて、カトレアさんがしっかりしてんだな。
「魔王様、将軍としての立場から進言します。これは侵攻の好機かと…」
「ほう?お前はそう思うかフリード」
「人間共が互いに争い合っているのであれば、この機に乗じて湖の町までの戦線拡大を狙うのが宜しいかと。これまでのように首都から兵を出し、そのまま進軍するのでは非効率的でした。湖の町まで届かずとも、手前に横たわるシュネー雪原であれば前線基地を置くことは容易でしょう」
「…そうだな。人間共の余興に付き合って、これまで小細工を弄するに専念してきたが…そろそろ奴らの中にも、闘争の飢えに苦しむ者が出てくるだろう」
聞けばアダム、全力出せば単独で王国の占領くらいは出来るらしい。
なんでそうしないかって聞いたら「魔人族の優劣思想を増長しかねないから」だそうな…
フリードさんもそれを承知のうえでアダムに無理強いはしないんだとさ。
というか無理だろ常考、あのフリーダムな魔王に命令出来る奴なんていねーよ。
「フリード、お前の提案を聞き入れようではないか。シュネー雪原に前線基地を作り、来たる奴らへの大攻勢の橋頭保とするのだ。人員配置はお前に一任する」
「はっ!!」
「――――――と、そうだ。以前話していたダヴァロスの件だが…」
そう言ってアダムの視線が隣に座っている俺に向けられる。
……あ、これヤバい……なんかすげぇ面倒なことを俺にやらせようって顔だ。
「幸利を調査に同行させる。湿地帯で消息を絶ったダヴァロスとセレッカを捜索し、何があったのか調べて来るのだ。支配種はお前が選別したものとは別に、幸利の所有する支配種を同行させる…異論はないな?」
「ハッ!承知しました」
「…了解だ」
俺に拒否する権利は無い…というか拒否するつもりは毛頭ない。
こういう命令を受けて、魔人族の為に活躍するのが俺の望みだったからだ。
こんな大事な任務を俺にやらせて大丈夫かって思うけどレイスって魔人族も一緒らしいから、いざとなったらその人になんとかしてもらうさ。
…え?他人任せは良くないって?
いやぁ命あっての物種、こういう場合に使えるものは何でも使わないとな。
それがたとえ肩を並べて戦う仲間、仕事の上司だったとしてもな!
んで…湿地帯ってのはハルツィナ樹海って場所から近くて、人間も魔人も滅多に足を踏み入れない場所らしい。そこに棲むモンスターの強さは勿論、環境自体がヤバいとか…
近くに大昔の地殻変動で出来た地底洞窟もあるとか…そこはもうマトモな生き物が生きていられるような場所とは程遠い地獄だって本に書いてあったな…南無。
「―――おい貴様。魔王様が直々に指名して下さったのだ、しっかり任務を完遂するのだぞ!」
「……わ、分かってるさ。出来る限りの努力は、するつもりだ……」
「―――フンッ」
くっそフリード将軍、人間嫌いはやく直せよな…一々突っかかられる俺の身にもなってみろ。
流石に昔ほど嫌な気分にはならんけど、それでも心に針で刺されたくらいの痛みはあるんだぞ!
つーかアダムもふんぞり返ってニヤニヤ笑ってんじゃねえ!お前こうなるって分かっててワザとこの場で俺を指名しただろ!お前絶対に確信犯だろ!?
「―――あぁ、どうせなら幸利にも副官を付けてやるか。そっちは俺が選んでおいた」
「え、いや待ってくれアダム。副官なんて貰えるような立場じゃないだろ俺は……」
「フッ、馬鹿め!貴様が我々を裏切らないよう監視役として置くのだ」
(あーもう何かと喧嘩売ってくるなコイツ!一発殴りてえ!無理だけど!!)
「む?監視?いや、単に面白そうだなと思って付けるだけだが……まぁよい、そういう理由でお前が納得したのであれば、そういうことにしておこう。―――それで選んだ副官だが―――」
コンコンコンコン!と会議室の扉を四回ノックする音が響いて俺含め全員の視線が扉に集まる。
アダムの「入れ」という言葉に「失礼します」と返ってきたのは……女の子の声だ……
……ちょ、アダムお前……!!
扉を開けて入ってきたのはカトレアさんやフリードそっくりの紅い髪のツインテール。
カトレアさんより控えめの褐色で、背丈は俺と同じか俺より頭一つ小さかった。
青色の鋭い目は鋭利な刃物を彷彿とさせる…俺が苦手な気の強そうな女だ。
「魔王軍遊撃部隊第十三小隊隊長”フラウ・フォン・ニーベル”参上しました!」
「うむ、よく来たなフラウ。早速だがお前を小隊長の任から解く。新隊長にはお前が推薦した者を明日より配置する。お前はこの幸利の副官として仕事の補助をするのだ。異論はあるか?」
「―――異論ありません!副官の任、確かに承りました」
「よし!―――そういう事だ幸利、お前の副官になるフラウだ。宜しくやってくれ」
「………あ、あぁ………わかっ…た」
オイイイイイイイ!!おま、おまおまおまままお前ええええアダムゥゥゥ!?
確かに俺は使えるものは何でも使うって心の中で呟いたけど、これは予想外過ぎる!
使えるか!!こんな年端もいかない美少女を犠牲にするほど俺はクズじゃねえよ良心が泣くわ!
「あぁそれと一つ言い忘れていたが、フラウはお前の年下だ。副官としても、人生の先輩としても、仲良くするのだぞ?これは魔王アダムとしての命令である―――クククッ」
「~~~!り、了解」
(覚えてろよ鬼畜魔王ォォォォォォッ!!)
*
そんなこんなで俺の精神的負担がこの先爆増することが確定した会議は終わり…
自由奔放なアダムに連れられて、俺は魔人族が信仰している神アルヴを祀る教会に来ていた。
…あんま教会とかそういう場所は好きじゃないんだけどなぁ…あの頃を思い出すから…
「フッ、まぁそう気を悪くするな幸利。今度はお前に面白いものを見せてやる」
「…面白いもの?さっきの出来事よりか?」
「―――ああ、絶対に笑える。約束しよう」
言うや否や神官たちが頭を下げるのに目もくれずアダムは教会の奥へと進む。
巨大な灰色の水晶玉の前に立ってアダムはスッと息を吸い込み大声で叫ぶ。
「聞こえるか愚かな神エヒトルジュエの眷属アルヴヘイト!!貴様の仕える主人は既に力を失いつつある!!貴様が常日頃気に食わんとしているオレが直接出向いてやったのだ!!姑息な力で姿を隠すことなく、出てくるがいい!!」
「ちょ、アダムおま――――――!?」
突然、全身から力が抜けてその場で俺は膝をついてしまった。
…いや力が抜けたんじゃない。まるで頭の上から凄い力で抑えられているような…
辛うじて顔を上げると、灰色の水晶玉に赤い揺らぎが生じていた。
【―――貴様、私を愚弄するだけでは飽き足らず!我が主まで侮辱するか!!】
「フッ、当然だ。俺はお前が魔人族に広めてきた思想を良しとしていない。これまでは俺の寛大な心でその所業を大目に見てやっていたが、それももう良いだろうと思ってな?こうしてお前の前に生身で会いにきてやったというのに、お前は水晶玉に隠れて愚かな主人お得意の”神言”で姑息にも俺の精神をかき乱すつもりらしいが」
【貴様のような異分子はこのトータスにいるべきではない!即刻消え失せろ!】
「ぐ、お―――!」
あばばっばばば…!ぜ、全身に掛かる重みが…これ明日は筋肉痛不可避じゃね…!?
というかやっぱこんな攻撃食らってもアダムは平然と笑ってやがるし、相変わらず化け物だな…
水晶玉の奥からギリリとアルヴヘイトの歯ぎしりの音が今にも聞こえてきそうだよ。
「異分子?く、フハハハハハハッ!それは貴様等とて同じであろう?オレもお前達も、互いにこの星の意志とは関係のないところから飛来してきた、云わば似たもの同士だ。一つ、オレとお前達に明確な差があるとすれば―――
【図に、乗るな!!貴様如き、我が主が力を取り戻せば即刻処分して―――】
「ククククッ!その我が主が力を取り戻すのは何時なのだ?
わぁお☆お前数千年も長生きしてんのか、そりゃ大したもんだ、やっぱヤベーわお前。
つうかなんで数千年生きて見た目は二十代から三十代くらいの若々しい姿なんだよ羨ましい。
アダムは笑みをますます深めて、遂に水晶玉へと触れる。
その瞬間、水晶玉の中でアルヴヘイトの赤い揺らぎがビクッと震えた。
【ヒッ―――!?き、貴様何を―――】
「怯えることはない。お前を本来在るべき姿に変えてやるだけだ」
【や、止めろ…!それだけは、止めてくれ…!!】
「我が名に於いて命ずる――――――!」
【やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!】
水晶玉から響く絶叫を聞きつけて教会の信者や神官が集まって来る。
しかし俺達の立っている前にあった水晶玉の姿は無く、代わりに――――――
「ま、魔王様…?なんですか…
水晶玉と赤い揺らぎは、ピンク色の粘液質な物体に変貌していた。
どこからどう見ても神話的恐怖を感じずにはいられないショゴスですね、分かります。
後ろで神官が悲鳴を上げて後退ると、アルヴヘイトだったそれが声を上げる。
【
「ヒッ!?ば、化け物ぉ!」
「衛兵、衛兵を呼べ!!」
「魔王様危険ですお下がり下さい!!」
…あれ?この人たちにはアルヴヘイトの声が聞こえてないのか…?
まるで何を叫んでいるのか分からないって恐怖の表情を浮かべてるけど…
………あ、ひょっとして”言語理解”がないから分からないのか。
さっきアダムが何か魔法を使ってたみたいだけど、それが関係してるのか?
アルヴヘイトは俺やアダムにしか分からない声で叫ぶ。
【
「魔王様に近寄るな、化け物め!」
神官の一人が両手を前に突き出して火属性の魔法をアルヴヘイトに向けて放つ。
…えぇ…いや、えぇ…自分達が今まで信仰してた神様に対してこの仕打ちって…
轟々と燃え盛る炎に包まれて、粘液質な物体が暴れ回って苦悶の声が響く渡る。
【
「フッ、用は済んだ。帰るぞ幸利よ」
「あ、あぁ…」
神官や騒ぎを聞きつけた衛兵がアルヴヘイトを取り囲んで攻撃魔法を浴びせかける。
俺にしか聞こえない悲鳴ってのもなんか変な気分だなとか思っていると……
周りに他の人がいなくなったのを見計らってアダムが愉快そうに笑って話しかけてきた。
「どうだ幸利?何千年も神と崇められてきた超常の存在が、あのザマだ…」
「どうって、そりゃ………」
ふと後ろで苦悶の声を上げる奴が、俺達より優れてる筈の神様だった事を思い出す。
好き勝手に歴史をいじくり回し、天上にふんぞり返って俺達を駒扱いしてきた奴ら。
その内の一人が、こんな形で自分を崇めていた者に裏切られて死んでいく様は……
「は、ハハハ……ハハハハハッ…」
俺が笑っている横でアダムも満足そうにフフンと鼻を鳴らして教会を後にする。
それから何日か経って、アルヴの信者たちが騒いでいたそうだけど…
お前達が必死に呼びかけてる神様、お前達が数日前に殺したスライム擬きですよー…
…なんて言える筈もなく、暫くして俺はバルバルスを発つことになるのだ。
とりあえずこの任務で俺の上官にあたるレイスって魔人族と、副官のフラウ…そして―――
―――グエェッ、クェックェッ!!
フューレンの帰り道、初めて俺が完全な支配下に置いたクルルヤックを連れて。
原作では怒り狂ったハジメ君に瞬殺され、本作ではまさかの化け物扱いされて信者に袋叩きにされて死ぬとかいうかなり不憫な死を迎えたアルヴヘイトであった…
清水君の副官になった子はオリキャラとして、次作で掘り下げていく予定です。
感想、質問、ご指摘等をお待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡