連休貰って久しぶりに実家帰り+続編の大まかなプロット構成思考中で筆が進まなかったという…
金ランクの冒険者アベル・ネイ・ベレジナのところに、三国会議に参加中だった彼の父から急ぎの手紙が届いたのは、商業都市フューレンに着いてから数日経ってからのこと。
内容は簡潔に一言「ベレジナ家の取り潰しが決まった」と書かれていた。
詳しい話を聞くために、アベルはフューレンより更に北方。
ハイリヒ王国で最大の穀倉地帯を誇るベレジナ領の屋敷へと向かった。
無人の関所を通り抜け、麦畑が広がる領地に彼の馬が入ると――――――
「アベル坊ちゃまだ!アベル坊ちゃまがお戻りになられたぞー!」
「坊ちゃま!ご立派になられてまぁ…!」
「兄ちゃんだー!おかえりー兄ちゃーん!」
畑仕事に精を出していた老夫婦や、畑の傍で遊んでいた子供。
領民が一様にアベルの姿を見つけると歓喜の声を上げて出迎える。
「アハハ…みんな、ただいま。それと、もう坊ちゃまはやめてくれないか…」
苦笑しながらもアベルは馬から降りて一人一人としっかり話をする。
彼がここまで領民から愛されているのは、彼の父が影響していた。
穀倉地帯が大半を占めるベレジナ領の租税は他と比べて多かったが、当主は革新的な政策を打ち出して領民に掛かる負担を減らすことに成功し、名君として愛されている。
貴族として教養ある子供に育ったアベルは、冒険者になる前から領地で領民の畑仕事を自ら進んで手伝うなど、貴族らしからぬ行いも進んでやれる好青年として領民から好印象を持たれていた。
…実は冒険者になってから改心するまで、アベルはそれを面倒だと思っていたのだが…
領民たちにもみくちゃにされながら、アベルはベレジナ家の屋敷に着いた。
庭で迎えた従者に馬を預け、着ているのは冒険者としての軽鎧姿のままだが、アベルは身だしなみを整えてから屋敷の玄関に足を踏み入れる。
「兄様ー!」
「テレジア!!」
屋敷に入ってきたアベルを出迎えたのは妹”テレジア・フォン・ベレジナ”
魔法の全属性適正を持ち、ベレジナ家始まって以来の才女として将来を期待されている。
まだ10歳のテレジアは、久しぶりの兄の帰郷に胸を躍らせた。
「よく帰ってきたねアベル」
「兄上!」
「兄様!」
二階の渡り廊下から声をかけられてアベルとテレジアが見上げると、そこには柔和な笑みを浮かべたベレジナ家の長男”ナルサス・ネイ・ベレジナ”が顔を覗かせていた。
他の貴族からは典型的な貴族思想の優男と言われるナルサスだが、ただ彼は自分が貴族の子として生まれたことを誇りに思っているだけで選民思想や階級差別といったものを嫌悪している。
親のコネで少しズルしたとはいえ、金ランクの冒険者に認められるだけの実力を持つアベル、魔法の才能があるテレジアと違ってナルサスには特筆すべき天職や技能がない。
しかし彼はそれを僻むことはなく、逆に自分は真っ新な状態から色々な事に挑戦できる良い機会に恵まれたんだと前向きな姿勢で周りを感心させている。
アベルもテレジアも、そんな兄を父に次ぐ素晴らしい人物だと尊敬していた。
アベルは実家の雰囲気に思わず飲まれてしまい、しばらく会っていなかった兄妹と和やかに話したいと考えるが、ナルサスが深刻な表情を浮かべているのを見てはっと我に返る。
「…兄上のところにも…手紙は…」
「…昨日届いたよ。父上は昨夜お戻りになられた」
「…ッそれでは…!」
「待った。…詳細は父のところで話そう。…テレジア、すまないが私とアベルは父上と少し大事な話をしなければならないんだ。しばらく自室で待っていてもらえるかな?」
「…はいっ、分かりました」
テレジアが去っていくのを見届けて、アベルはナルサスに先導されて当主の執務室に入る。
彼らの父”ギュスタヴ・ネイ・ベレジナ”は二人に背を向ける形で窓際に立っていた。
アベルの目には、一瞬父の背が以前見た時よりも小さく見えた。
「…三国会議で何があったかをお前たちに話す必要があるな…」
二人に背を向けたまま、ギュスタヴは自分の見てきた地獄を語る。
エリヒド国王の処刑から始まって、皇帝ガハルドの言葉に逆らった聖教教会のフォルビン司祭や他の王国貴族が数多く処刑された。
彼らの死を目の当たりにして、残った貴族は帝国に従わざるを得なかった。
そんな中、ギュスタヴは帝国の皇子バイアスに呼び出されたという。
彼らが何を目的に自分を呼び出したのかギュスタヴは見当がついていた。
開口一番、バイアスはギュスタウに対して取引を口にする。
「ベレジナ家が帝国に対し揺るがぬ忠誠を誓うというのなら、ベレジナ家に帝国貴族として侯爵の位をくれてやってもいい。無論、お前がこの申し出を断るのを承知の上でだ」
貴族としての誇りを重んじるギュスタヴは亡き国王の信頼を裏切って、帝国に鞍替えするなどと恥知らずな行いをするつもりは毛頭なかった。
バイアスの言葉に彼は迷うことなく頷いて、静かに目を瞑って死を覚悟する。
…だが、そんなギュスタヴを見てバイアスは愉快そうに笑う。
「ハハハッ!やはり貴様は此処で犬死させるには惜しいな!…だが、今ここで俺がお前を特別扱いすることは出来ぬ。…よって、これまで通りベレジナ家が王国貴族である以上は領地も領民も帝国の占領下に置かれる。貴族としてのベレジナ家は終わりだが、領民に余計な反乱を起こさせないためにも、お前にはまだやってもらうことがある」
「…私を殺さないのですか?他の貴族の方々と同じように…」
「死んでいい奴と死んだら困る奴。お前は後者だったというだけだ」
*
「…国王陛下が…どうしてそんなことに…」
ショックのあまりソファーに座り込んで頭を抱えるアベルだが、口から出た言葉とは裏腹に彼は心のどこかでいつかこうなる時が来るんじゃないかと思っていた自分がいることに気付いた。
王国貴族の子として不敬かもしれないが、彼は王国がこうなるのは運命だったと思う。
ギュスタヴが当主の座を譲れなくなったことに対しナルサスに謝る。
しかし彼は首を横に振って「父上のせいではありません。どうか気に病まないでください」と言った。
「ナルサス…」
「国王陛下の、そして亡くなられた他の貴族や司祭の方々の冥福を心よりお祈り申し上げます。…ですが、いつまでも悲しみに浸っている余裕はありません」
ナルサスの言う通り、ベレジナ家はこれから忙しい日々に追われるだろう。
貴族の地位を取り上げられたことを領民に説明し、これからの暮らしにいかなる変化が起こるのかを、領民より先に把握して適応する必要があった。
「帝国から使者が来るまでに出来る限りの手は打っておくべきでしょう。屋敷の使用人たちにも今後暇を出して、他で働いて稼げるよう手配をしなければ…それとテレジアにもこの事を伝えておかなければ…領民に反乱などを起こして無用な血を流さないように警告することも必要でしょう」
「領民への説明は私にお任せ下さい兄上」
「アベル…それはありがたいが、お前はやりたかった冒険者の仕事が暫く出来なくなるかもしれないんだぞ?本当にそれでいいのか?」
「…構いません。今は私個人の我儘よりも、家のことが重要です」
商業都市フューレンの復興作業はもうほぼ完了に近づいており、それが終わった後アベルは特にやるべきことを考えていなかった。
ならばいっそ、冒険者アベルとしての活動はしばらく休止して、元貴族の次男としてナルサスの仕事の手伝いをすることが今やるべことだと考えている。
「…少し見ないうちに、大人に一歩近づいたみたいだな…アベル」
金ランク冒険者アベル・ネイ・ベレジナとしての物語はここで終わる。
ここからは、最強と呼ばれた先祖を越える伝説の勇者の物語。
新生の勇者アベル・ネイ・ベレジナとしての第一歩が始まろうとしていた。
新生から始まって暁月のフィナーレ迎えそうな勇者のお話しもあるよ(外伝)
感想、質問、ご指摘などお待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡