モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 以前書いてた奴を何となく修正無しで投下しました。
今回の話は第三章「雨の中、彼が選んだのは…」のIFから始まる話。
救いはなく、鬱々とした展開だけが続きます。


IFの物語 BADEND ①「どうして?」

 

 死に瀕したかつてのクラスメイト、園部優花を前にハジメは何もしなかった。

自分が此処に居ることが知られて、また元の場所に戻されることを恐れたのだ。

結果ハジメの協力を得られなかったリンネは一人で解毒剤の素材集めをしに樹海と湿地帯へ向かったのだが、モンスターの血に塗れて戻ってきた時には手遅れだった。

 

「――――――あぁ、そっか。アタシは――――――()()()()()()()()()()()()

 

 止まない雨のまま迎えた夜明け、ハジメのベッドの上で優花は既に事切れていた。

苦悶に歪んだ表情のまま死体の虚ろな目は脇で立ち尽くすリンネの姿を反射する。

彼女は悲しそうに目を伏せ、ただひたすらに自分を責めるように乾いた笑いを零す。

 

「は、ハハハッ……なんだ……アタシは、なにも……」

 

「―――――――――ッ」

 

 彼女の懺悔を聞いていられず、ハジメは身を翻して外へ飛び出した。

途中、心配で様子を見に来た村人の誰かとすれ違ったかもしれない。

何度か彼の名前を呼ぶ声もあったかもしれないが、彼は止まらずに走る。

やがて誰も来ない村の端っこにある岩場に寄り掛かって項垂れた。

 

(俺は、間違った事なんてしてない…筈だ…なのに、どうして…)

 

 どうしてこんなにも胸が締め付けられるような思いがするんだろう?

あれだけ嫌っていたクラスメイトだ、アイツが此処で死ぬのは運命だったんだ。

ちょっと特別な力を貰ったくらいで調子に乗るからこうなる。

 

(だから、お前らの自業自得なんだよ。俺は――――――)

 

「…俺は…悪くねぇ…っ」

 

 吐き出すように呟いた言葉が、胸の奥を更に締め付けるとハジメは気づけなかった。

その後、帝都から戻ってきたアゥータ、カムは一連の騒動を村長アボクから聞かされる。

アゥータは旧知の仲であるリンネの来訪に驚いていたが、顔を合わせた際に死人のような土気色の肌に虚ろな目で笑顔を浮かべる彼女の様子に余程の事があったと察した。

 

 その後、落ち着きを取り戻したハジメがマイハウスへ戻る。

カムは村を出る前に話した時とはまるで別人のようなハジメのよそよそしい態度に驚いて、そのまま彼が村を出ると言った際には引き止める言葉が出てこなかった。

 

 優花の遺体は本来ならウルの町で帰りを待つ神の使徒達の下へ連れ帰るべきなのだろうが、運搬しようにも遺体の腐敗や伝染病などの恐れからそれは難しいと判断されて、アボクがせめてもの慰めでゲブルト村に埋葬することになった。

 

 この世界の葬式というのは故郷(日本)のそれと比べて随分と簡素だった。

棺の中に花や果物を備えて蓋をし、燃やすこともせずに土の中へと埋める。

ハジメは何も言わず、ただ黙ってそれを見ている事しか出来なかった。

この日の夜半、リンネは誰にも別れを告げることもなく村を去った。

 

 後を追う様にハジメも淡々と村の人達に別れを告げて、宛てのない旅を始める。

…いや、それはもはや旅と呼ぶべきではないのだろう。

命を救えた筈なのに救おうとしなかった罪人の、虚しい逃避行だ。

 

 

「……っ、ぐ…あ、っ…はぁ…はぁ…!」

 

 村を飛び出した直後、ブルックの町を素通りしてハジメはライセンの荒野にいた。

今の彼は多くの人が行き来する町で寝泊まりすることも拒絶している。

町中ですれ違う、自分と同じくらいの歳の少女を見る度に見られているような気がするから。

 

 幸か不幸か、荒野での野宿はモンスターに襲われるだろうと思っていたハジメだが、荒野にはまるでモンスターの気配がなく、時折地響きのような音が鳴っているだけだった。

真夜中の冷え込む荒野で岩場の間に身を隠して簡素な毛布に包まっている彼は悪夢に魘される。

 

【ねえ、どうして?】

 

 真っ暗闇の中を歩いていたハジメの前に現れたのは、死んだ筈の優花だった。

トータスに召喚されたばかりの頃、学校の制服姿のまま光のない目で彼女は問いかける。

ハジメは自分が責められるのだと思い込んで咄嗟に耳を塞いでその場に蹲った。

これは悪い夢だ、自分は悪くない、夢なら覚めてくれ―――そう思いながら。

 

【私は、南雲に何か悪い事したのかな…?】

 

「…しただろ…!お前らは、一緒になって…俺を笑いものにしただろ…!」

 

 忘れもしない地獄のような日々、ハイリヒ王国で過ごした日々がどれほど辛かったか。

下に見られ、屈辱を浴びせられるハジメに、誰も救いの手を差し伸べてはくれなかった。

だから―――とハジメは怒りを露わに服装の変わった優花に怒鳴り返す。

 

「他人を虐めて喜ぶようなお前らなんか死んで当然だ!!俺の前から消えちまえ!!」

 

【……そっか……でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?】

 

「っ!!?」

 

 徐々に優花の顔色が悪くなっていく、健康的な肌色から血の気が引いていき口から血が滲む。

服の至る所から赤い染みが出来て、中には黄ばんだ汁もドロドロと流れていた。

 

「違う…俺は…お前らと一緒なんかじゃ…」

 

【違わないよ?だって南雲はさ―――】

 

「違う…!おれ、は―――」

 

【アンタは、私が死んだのを見て……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「黙れえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

 怒号と共に跳ね起きたハジメは全身汗まみれで辺りを見回した。

まだ夜は明ける様子もなく、空には厚い雲がかかって今にも雨が降りそうな様子だ。

肩で息をするように呼吸を整えながら目を見開いたまま、ハジメは自分の足元を見る。

そこには、さっきまで血まみれで笑っていた優花の姿は無い代わりに―――

 

「……クソッ!」

 

 餌を求めて寄ってきた一匹の野ネズミが彼の足に踏み潰されて、無残な肉塊となっていた。

 




 昔のプロットとか読み返すとかなりワロタな展開がありました。

・ユエ(アレーティア)が300年の孤独で幼児退行してる(この場合だと色々あってシアがオルクス大迷宮探索に同行します。教授とルゥムさんが居ませんが、一層毎に一人一乙が許される良心設計の大迷宮になってました)

・ライセンの荒野でアベル(原作寄りのギャグキャラ)がモンスターに襲われてるところをハジメが助けて奇妙な友情が生まれます(金カムの白石ポジと書いてあったのでイケメンが醜態を晒し続ける展開になってたのはお察し)
↑別展開でトレイシーとフラグ立てる可能性があったという>アベル

これはこれでギャグ路線として別の二次創作書くときに使えそうとか思いました。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡

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