モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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モンスターハンターライズの新映像で新モンスに銜えられるアオアシラを見た作者
思わず「アオアシラが何をしたんだよぉ!」と叫んでしまいました……。



帝国観光と思いきや…?

 2人が執務室でソファーに隣り合って話を挟みながら、知識共有を進めて6()()()が経過した。

既に太陽は真上から傾き始めており、大通りや市場は人とモンスターの行き来で賑わっている。

 

 生き生きとした表情で仕事に精を出す人々とは打って変わって、執務室のハジメは口から白い靄のように生気を吐き出しながら、ようやく終わりを迎えた作業を前にぐったりしていた。

隣ではハジメと同じように作業をしていたトレイシーが、興奮した面持ちで羊皮紙に書かれた内容に目をギラギラと輝かせている。

 

「面白い――――!お前の世界は実に面白いな、錬成師!何なんだ、この世界の広さは!?あるかないかも不明瞭なこの世界の果てに比べて、理路整然と記されたお前の世界の広さときたら!」

「……ぁ~……世界は……広いっスから……宇宙に至っては未知のエリア…」

「ハハハッ!心が躍るじゃないかっ」

 

 トレイシーが注目するのは地球の規模。トータスの何倍も広い大陸や幾つもの島があり、そこには百を超える国が存在しているという世界が、宇宙という広大無辺な未知の領域における無数の星の一つでしかないという事実。

 

 トータスでは、まだ夜空の向こう側が宇宙であるとまでは解明されていないようだった。

真面目に答えたくても、首の痛みと手の痛みに身体が悲鳴をあげるハジメは心ここに在らず。

トレイシーは別の羊皮紙を手に取り、そこに書かれたイラストを指して声をあげる。

 

「そして兵器だ!なんだこの戦車というものは!?この長い砲身から、石造りの家一つ粉々に出来る砲弾を短時間で何発も撃てるというのか!この戦闘機というのも恐ろしいな!鋼鉄の翼で飛竜よりも速く飛ぶことが出来るうえ、戦車並かそれ以上の火力を出せる等と―――――私の予想なんて遥かに超えていた。お前の世界は私達にとって知識の宝物庫だ!!」

「……戦争の歴史の、副産物っスね……」

 

 ハジメに言われて「あぁ」とトレイシーは納得したように、また別の羊皮紙を取る。

そこには世界中で誰もが知っているもの―――第一次、第二次世界大戦の概要が書かれていた。

オタクなハジメだから分かる、戦争の発端や戦争中に発展した技術や戦法、兵器の数々。

そして――――――戦争で犠牲になった人の数。

最初にそれを目にしたトレイシーは目を疑った。

 

()()()()()()()()()1()0()0()()()()―――これだけ犠牲を出したのであれば、戦争放棄も頷ける。――――――しかし皮肉なものだ、人というのは。それだけ恐ろしい戦争で、悍ましい兵器を生み出してきたにも関わらず、より強い兵器を作り出そうと考えてしまう」

 

「………矛盾ですかね、平和の為に戦う力を保持するのは……」

 

「……この世界ではそれが当たり前だと答えるだろうな。力がなければ何も守れない。他人の平和を奪おうとする奴らはお前達の掲げる人権の保障に、署名(サイン)していなかったのだろうさ」

 

 「私は武力もなく、平和な方が好ましいとは思うがな」と付け加えたトレイシー。

ハジメは暫く天井をぼんやりと眺めながら、懐かしい気持ちに浸っていた。

こんな風に、異世界に来て故郷で学んだことを他人に教えるとはまるで教師のようだ。

トレイシーは1人頷くと、またまた別の羊皮紙を手に取る。

 

「お前の世界の食事というのも中々興味をそそられるな。―――この…なんだ?きゃ、かぅりー…りえす…?「カレーライスですか」それだ!トータスにも似たようなものがあってな……」

「へぇ……そりゃ一度食ってみたいっスね」

 

「”ニルシッシル”という。―――王国南方にある湖の街ウルの郷土料理らしいぞ」

「あ、王国だったら俺いかねーっス。絶対に」

 

「ハハハッ、王国嫌い過ぎだろうお前」

「嫌いっスから王国。教会はその数万倍大大大嫌いっス、八百万の神万歳」

 

 

 半日近く、隣り合わせで話し合っている内に、2人は打ち解けていた。トレイシーが皇女だからと変に肩肘張っていたハジメが砕けた口調になっているのがその証拠。

彼女もそれを咎める事はなく、和気藹々と会話に興じていた。

 

「お前の世界も宗教は物凄いのだな。キリスト、イスラム、ヒンドゥー、仏門、ユダヤその他大勢―――さらに宗派で分かれてるのだから、ややこしいのではないか?」

「実際ややこしいっスね。休日の真昼間にインターホン鳴らしての勧誘とかマジ勘弁っス」

「ふむ―――――この世界では、そういった行為は慎むよう条例を制定すべきか……」

 

 信教の自由、それ自体は悪くないとは思うが、何事にも限度というものがある。日本然り、トータス然り……共通でそれらの問題がややこしいというのは、ちょっとした親近感が湧くものだ。

 

 

「……さて、私は午後から軍議があるので、そろそろ出る」

「それじゃ、俺も一旦ギルドに帰るとしますかね……」

 

 残ったお茶菓子を半分ずつ分け合って、その場で食べ終えた2人がソファーから立ち上がり、凝り固まった筋肉を解す。

トレイシーのスケジュールを把握しているのか、執務室の扉の前に、ズシズシと足音を立てるものがいた。イルシオンだ。

 

「ではな錬成師、次も面白い話を期待しているぞ」

「うっす」

 

 イルシオンの背にトレイシーが飛び乗ると、小走りでイルシオンは城の廊下を駆けていく。

少し間を置いてから、ハジメは廊下で見かけた使用人に声をかけて、城の出口まで案内される。

建物から出ると、晴天から降り注ぐ陽の光の眩しさに目を細めた。

 

(座りっぱなしだったとはいえ、普段そんなに使わない頭を使ったせいか小腹が空いたな………)

 

 ハジメはハンターズギルド本部への道を歩きながら、出店が並ぶ大通りを見回した。

手を叩いて、商品を掲げる等の気を惹く工夫を凝らして客を呼び込む出店の店員。

木の樽いっぱいに水を溜めながら、大通りの脇道で草木や花に水をやる人。

前が見えないくらいの荷物を抱えた人を支えようと、オロオロしているアイルー。

 

(ちょっと故郷(むこう)にいた頃やってみたかったんだよな~……食べ歩き!)

 

 雑踏の中に足を運んだハジメは鼻腔を擽る食べ物の匂いに胸を躍らせる。

大通りで幾つか出来ている人だかり。その中でも焼き物から生じる白い煙がぼんやり漂う食べ物の出店こそがハジメの求めているものだ。

 

 ほんのり赤く熱を帯びた木炭の上で鉄串に刺された肉がジュウジュウと油を滴らせる。

見ただけで食欲をそそられる光景に、串を上下ひっくり返しながら周りに叫ぶ店員。

 

 

「いらっしゃーぃらっしゃーぃっ!今日獲ったガーグァの新鮮な胸肉を使った串焼きだよー!1つ250ルタ。5つ纏め買いで700ルタ!無くなり次第、終了だよ~っ!」

 

 行列というほどではないが、出店の前には貨幣を手に購入を決意した客が並んでいた。

ハジメは最後尾に並ぶ男へと軽く頭を下げて列の最後尾に立つ。

手際のよい店員は注文をした客から貨幣を受け取るより先に、良い具合に焼き上がった串焼きを、大きな葉っぱを包み紙の代わりにして渡す。

 

「へいお待ちどうさん!幾つですかい?」

「2本頼む」

 

「あいよっっ!―――――へい、どうぞ!500ルタでさぁ!」

 

 言われた金額通りの白色の500ルタを1枚、店員の手に置いたハジメ。

入れ替わりで差し出された串焼きから香ばしい香りが漂ってきて、口の中で唾液が溢れる。

手に取ると、鉄串の熱さが葉を通して伝わってくる。

 

 軽く店員に頭を下げて道の端に足を運ぶハジメ。

彼と同じように、店で串焼きを買った人々が、建物の壁に寄り掛かったり、何処かの出店で使われているであろう木箱や樽の上に腰かけて、ガーグァの胸肉に舌鼓を打っていた。

ハジメは包む葉をずらして、熱々の串焼き肉へと齧り付く。

 

 鶏より脂身が多い分こってりしているガーグァの肉は、豚や牛にも負けない歯ごたえのある食感に、塩や僅かな香辛料だけをふりかけられた味付けが絶妙に合わさっている。

一口目で串の肉を1つ口いっぱいに頬張ったハジメは少し興奮気味に咀嚼した。

 

(これで白米あったら神だろ)

 

 時間にしてほんの4、5分の軽食だった。

食べ終わる頃には口の周りが肉の油でテカテカしているのを、ハジメは袖で拭う。

 

「ふぃ~……美味かった、ごちそうさん……っと、そろそろ行くか」

 

 出店側がわざわざ用意してくれた食べ終わった物を捨てる為の木箱。

ハジメが鉄串の両端を持って軽く力を入れると、パキン!という音と共に串が折れる。

それを包んでいた葉に纏めて、木箱の中へ放り投げた。

 

 また道行く人々に串焼きを売る出店の店員にもう一度小声で「御馳走様でした」と声をかけて、ハジメはハンターズギルドに向かおうと東区に続く道へ足を運ぼうとした―――その時だった。

 

「だから無理だって言ってんだろクソガキ!!」

 

「―――――ん……?」

 

 あまり穏やかではない男の罵声がハジメの耳に聞こえてきた。

周りも何事かと顔をあげて声の方角へと視線を動かす。

 

 そこには身長2メートルはある筋骨隆々な大男が、斧を背に仁王立ちしていた。

ハジメは一瞬「ハンターか?」と思ったが、男の背にした斧が大剣やスラッシュアックス、チャージアックスのどれにも該当しないような規格の武器であると気づく。

 

「……冒険者……か?こうして生で見るのは初めてだな……」

 

 トータスにはハンターとは別に”冒険者”という職業が存在している。

ハンターがモンスターの狩猟などを主とする帝国発祥の職業。

冒険者は対人関係の仕事を分け隔てなく引き受ける王国発祥の職業。

貨幣に合わせて冒険者には青から金までのランクがあるらしい。

 

 眉間に青筋寄せて不機嫌そうな顔を隠そうともしない大男が睨む相手。

それは、男の足くらいしか身長のない子供だった。

大の大人が子供を怒鳴りつける光景―――理由はどうあれ、あまり気分の良い物ではない。ハジメは穏やかな食後の時間を邪魔された事もあって、ムッとした顔になる。

 

「お願いだよぉっ……。おじさんしか、頼れる人がいないんだよぉ……」

 

「けッ。身なりの良い餓鬼だから報酬もたんまり用意してくれるんだと期待して俺様が直々に話を聞いてみりゃあ()()()()()()()()()()()()()だぁ?バカも休み休み言いやがれ!」

 

「うぅ、ぅうううぅぅっ!」

 

 大男が言ったように、子供はかなり良い素材を使った服を身に纏っていた。

しかし泣き腫らした顔から零れ落ちる涙と鼻水が、服へと染みを作って台無しにしてしまう。

 

 大男の言葉をそのまま受け取るなら、子供は大男にモンスターを倒して欲しいと頼んだが、報酬を出せないと知った男は激怒して子供から離れようとした―――そして子供が大男から離れずに頼み込んで、今に至る―――そういった感じだろうとハジメは考える。

 

 

「―――――いい加減、しつけえんだ―――よぉ!」

 

ドゴッ!

 

 次の瞬間、業を煮やした男が子供を足蹴にした。

小さな悲鳴が雑踏の中から聞こえて、ハジメは思わずギリィ!と歯噛みした。

 

(……ッの野郎……子供相手に大人気ねえだろうが……!!)

 

 確かにタダ働きでモンスターを倒せなんて無理を言われたら、冷やかしと思って怒るだろう。

しかし子供の尋常じゃない様子には、何か報酬を出せない理由があるかもしれない。

 

 大男は「二度と話しかけんじゃねえ」と地面に転がった子供をひと睨みして去った。

子供を心配そうに見守る人々の中から、ハジメが一番早く飛び出して子供へと駆け寄る。

 

「大丈夫か!?――――――クソっ、酷ぇことしやがる……!」

 

 「冒険者ってのは無礼なのが売りなのかよ!?」と大男をぶん殴りたい怒りの衝動を抑えつつ、ハジメは子供の蹴られた箇所に異常がないか確かめる。

子供は苦しそうに呻いているが、特に痣や傷などは出来ていなかった。

まだ安心は出来ない。念のために医者のところに連れて行こうと考えたハジメ。

そんな彼の手を―――子供はぐいっと掴んで口を開いた。

 

「……お願い……だよっ……!お父さんの仇……!取ってよぉ…!」

 





 モンハンあるある・激重クエスト依頼主
今作では未だ出番のない冒険者の皆さん、あまり良いイメージが無いという。
原作でもヤベー貴族の護衛やってたり、劣化版勇者だったり……うーん、この

感想、質問、ご指摘など待ってまーす!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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