モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 おや―――シア・ハウリアの様子が―――?



兎人族の少女

 

「おいアンタ大丈夫か!しっかりしろ!!」

 

 武器を背負いなおしたハジメは兎耳の少女に駆け寄って抱き起こす。

額から流した血が固まって、少女の目は閉じたままだ。

ハジメは手を伸ばして少女の青白い髪を掻き分けて傷の具合を確かめる。

 

(……額の表面が僅かに裂けてやがる……。顔についた分は派手だが、出血量は多くねえ)

 

 少女の体を軽く横にずらして地面の状態を確かめたハジメ。

距離が近かったからか、少女の体から嗅ぎ慣れない獣臭と()()()()()()()()()()()()()()()が鼻腔を刺して、ハジメは少しだけ顔を顰める。

 

 地面には血の跡がない。

代わりに少女が歩いてきたと思われる足音が、樹海の奥から点々と続いていた。

 

「―――――すまんな、ちょっと失礼して……」

 

 ハジメは気を失ったままの少女に謝り、彼女の衣服を剥ぎ取り用のナイフで切り離して裸にする。そのままずいっと身を乗り出して、少女の胸の谷間へと耳を押し当てて心臓の鼓動を確認した。

 

――――トク、トク、トク――――

 

 弱弱しい鼓動だが、少女の心臓は周期的に動いている。

安心して短く息を吐いたハジメは少女の足元へ視線を移す。

 

 健康的な肌色の太ももには、幾つもの擦り傷が出来ていた。

まだ少し治りかけで表面がグジュグジュのもの、瘡蓋で塞がって周りが赤く腫れているもの。

ざっと見て、これくらいなら治せると確信したハジメはアイテムポーチから薬草を取り出す。

 

「少し染みるが、我慢しろよ……」

 

 掌に乗せた薬草を強く握りしめると、傷を修復する身体の機能を促進させる効果がある汁がじわぁと溢れ出る。ハジメはそれを少女の額の傷、足の擦り傷へと絞った薬草ごと押し当てた。

 

「―――――ぅ、あっ……!ひ、ぅ……!」

「薬草が落ちる……じっとしてくれ……!―――――しゃあねぇ、非常時だ……!」

 

 気を失っている少女が痛みに反応して小さく悲鳴を上げて震える。

ハジメは両手ともに塞がっていたので、少女が暴れて治療が邪魔されないようにと馬乗りの姿勢になって、特に傷などが見受けられない脇腹を膝で挟み込むようにして少女の動きを封じた。

 

 見方を変えれば傷だらけの気を失ったナイスバディのうさ耳少女を、武器を背負った長身の青年が馬乗りになって襲っている危ない絵面になってしまうのだが、これはあくまで治療行為である。

 

 

 それから暫くして―――――傷口が塞がったのを確認したハジメは体を退かす。

少女はか細い息で呼吸を繰り返していたが、閉ざされた瞼はゆっくりと開いていく。

 

「――――あ、れ……?わ、たし……は……」

 

「目を覚ましたか。―――――っと、まだ起き上がるなよ?傷に障る」

 

 ハジメに言われて、少女は目線だけ彼に向けて暫く口を閉ざしていた。

少女に色々と聞きたいことがあったハジメは、ふと気づく。

先ほどまで必死になって治療をしていたが、彼女は今素っ裸に近い状態。

顔が赤くなったのを少女に悟られないように立ち上がった。

 

「―――っと誰か呼んで、手を貸してもらうか……」

 

「――――ぁ……!待って……!」

 

 ハジメが立ち去るのではないかと、少女が起き上がろうとした。

しかし次の瞬間、少女の体を刺すような痛みが走り抜けた。

少女は地面から首だけ起き上がる寸前で脱力して、その場へと倒れる。

 

「おいおい動くなって―――安心しろ、離れたりしないから」

「―――……は、はい……」

 

 ハジメは不安そうな目で見つめてくる少女へと笑いかけた。

少女は心の中で、不思議と彼の言葉は信じられると思ったのか、こくりと頷く。

彼は作業地域の方に顔を向けて、スゥと息を吸い込んだ。

 

「誰か、手を貸してくれ!!!人が倒れてるんだ!!!」

 

「ひっ!?」

 

 ハジメの大声を聴いて、遠くの方からざわざわと村人達の声がする。

しかし少女は兎耳をピンと立てて体を震わせた。

ハジメはしまったと口元に手を当てて気づかされる。

兎耳であれば聴力は人よりかなり高い。故に一般人がちょっと五月蠅いくらいに感じる声量でも、彼女にとっては耳が痛くなってしまう程のダメージになってしまうのだろう。

 

「悪いな。前もって大声出すから耳塞いでくれって言うべきだった……。耳、痛かったよな?」

「―――っ……へ、平気……です……」

 

 若干怯えた様子の少女を見て、ハジメは胸を抉られるようなショックを受けた。

こういう場面に出くわすのは何気初めてだった為、適切な処置を行う事ばかりに気を取られて、肝心な少女に対する気遣いが足りなかったと心の中で猛省する。

そこへ、村の若者が数人スコップを担いだままやってきた。

 

「どうした―――ってハジメ君じゃないか!!」

「すいません急に大声で呼んで……。―――彼女が怪我をして倒れていたので」

 

「―――ッ彼女は……亜人族の中で、兎人と呼ばれる種族じゃないか?」

 

「――――あっ!……ぅぅっ」

 

 村人の指摘を受けて少女は体を震わせて、曝け出した肌を隠すべく両手で胸を覆い隠す。

流石に村人達も傷だらけで一糸纏わぬ少女を見て慌てふためく場合じゃないと、その場で1人が上着を脱いで少女へと差し出した。

 

「すまないね……こんな汚いものしかないが、とりあえず何か着た方がいいだろう」

「い、いえっ!……あ、ありがとう……御座います」

 

 恐る恐る少女は服を受け取って袖を通した。

ハジメは村人達に担架を作って少女を運んで貰う力持ち達と、村まで先に戻って村長に事情を説明する足の速い者達にそれぞれ指示を出した。それから彼は起き上がれない少女の傍に座って、不安そうな面持ちの少女を安心させようと話しかける。

 

「目を覚ましたばかりで聞くのアレなんだが……君の名前は?」

「―――……私……名前はシア……兎人族の”シア・ハウリア”……です」

 

「シアか……良い名前だな。俺は南雲ハジメ、ハジメって呼んでくれ」

「……ハジメさん……ですね」

「あぁ―――それでシア、何でこんな所で倒れてたんだ……?」

 

 ハジメの問いかけに対して、少女―――シアは沈黙を貫いた。

何か言えないような事情があるのかとハジメは横目で彼女を見つめる。

しかし彼女から返ってきた予想外の言葉に衝撃を受ける。

 

「……分かりません……」

「分からない?」

 

「ごめんなさい。私、どうにも記憶が曖昧で……自分の名前と、家族の名前は覚えてるんですが。樹海の中で何があって、今こんな状況に陥っているのか……全く覚えていないんです……」

「……まさかとは思うが……()()()()()()()()()()()()()……のか?」

 

「……多分、そうだと……思います」

「―――――――」

 

 しばらくの間ハジメは言葉を失う。

記憶喪失というものを知識の範疇で知ってはいたが、実際に怪我が原因で前後の記憶を失った者など彼は初めて見たのだ。

どんな言葉をかければいいのか悩んでしまった。

その沈黙に何を感じたのか、シアが申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「……ごめんなさい。助けて頂いたのに、そんな事すら答えられなくて……」

「―――ッ!……シアが謝る事じゃないさ……すまない。無理に聞いた俺が悪いんだ」

 

「いえ、私が悪いんです……」

「いや俺が悪いって」

 

「そんなことはありません、私が―――」

「いやいやいや俺が―――」

 

「「……………」」

 

 また少し気まずい雰囲気で、お互いに言葉を失ってしまう。

ハジメとシアはじっとお互いの目を見つめ合っていた。宝石のルビーを思わせる赤い瞳のハジメと対照的に、シアの瞳は宝石のサファイアを思わせる青い瞳。

……ハジメの赤い瞳はあくまでイメチェンした結果のカラーコンタクトみたいなものだが……。

 

「「――――――あ、あの(なぁ?)ッ!?」」

 

 意を決して話しかけようとしたら、お互いにタイミングが被ってしまう。

もう気まずい雰囲気にさせてなるものかと、ハジメは会話の順番をシアに譲る。

 

「―――お先にどうぞ」

「い、いえ……!私よりもハジメさんが」

 

「あー……俺のは大した事じゃないから、シアからで」

「わ、私だって大した事じゃありません!ハジメさんから先に……」

 

(―――――その耳が気になるから、触っていいかと聞こうとしただけなんだがな……)

(――――私の裸見ましたかって。……うぅぅ……聞き辛いですよぅ……)

 

 村人達が担架を持ってくるまで、2人はまた口を閉ざしてしまう。

若干、シアの頬が赤くなっていたことに気付いたのは、ハジメ以外の村人達だけだった。

ハジメは担架に乗せられたシアを見てから、作業者全員に伝達を送る。

 

「今日の作業は一旦中止にしたほうがいいかと。――――詳しい事情は分かりませんが、彼女……シアを襲った奴の正体が分からない以上、作業地域も安全とは言えません。―――村長とアゥータさん達に判断をして貰わないと……」

 

 ハジメの言葉に作業者達は頷いて、早々に作業地域から撤収した。

新米とはいえハンターであるハジメの話を聞けば、樹海にいたシアを襲ったのはモンスターである可能性が高いと考えられる。故にシアを襲ったモンスターが、近くを徘徊しているかもしれないという危うい状況に対して、作業の続行は出来ないと誰もが結論づけたのだ。

そして―――――彼らの判断を後押しするかのように、樹海から咆哮が響き渡る。

 

 

グルガァッ、ゴオォォォォ――――ッ!!

 

「ひうっ――――!?」

 

 最も聴覚が敏感なシアがブルブルと震えて目を瞑った。

ハジメは彼女の手を取って優しく握り、周りの作業者達に叫ぶ。

 

「シアの担架を一番前に、なるべく固まって動いて下さい!俺が最後尾で警戒しますので!」

 

 開拓作業地域の見回りは―――作業者達がモンスターに襲われるかもしれなかった状況を未然に防げたという意味では達成なのかもしれない。

だが今のハジメは、それを気にする余裕など微塵もなかった。

手を握ったシアが怯えているのを、ただ黙って落ち着かせる事しか出来ない。

 





 何という事でしょう。
原作の残念な元気ハツラツ脳筋ウサギ娘は何処にいってしまったのか……。
ハジメの前に現れたのは記憶喪失系の臆病なうさ耳美少女でした。
これもう残りの2人がどうなってるか作者自身想像もつかねえな……。

感想、質問、ご指摘など待ってます!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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