モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

50 / 240

 投稿する三十分前くらいは前編後編に分けて書こうとか思いましたが、なんとか次には戦いに持っていきたいので書ききりました。
所々不自然な箇所が多いかも知れません;
最初は少しだけ幕間の物語で登場した彼女の視点から始まります。


歴戦の黒狼鳥・意外な協力者(森人)

 

「姫様は此方でお待ち下さい。必ず戻りますので―――」

 

 ……そう言われて、私室に駆け込んできた兵士に武器庫まで連れていかれた。

私、アルテナ・ハイピストは不安を紛らわすために大きく息を吐く。

武器庫の扉は固く閉ざされているが、外で慌ただしく動き回る部下たちの音は聞こえる。

 

 耳が拾った会話を聞く限りでは、このハルツィナ樹海に魔人族がやってきたのだという。

凶悪な魔物を従え、にわかには信じ難い事だが…狐人族の内通者を引き連れて。

 

 お母さま達に許しを乞わなければ部族の暮らす木々の外を見て回ることも出来なかった私にとって、魔物は未知の存在である。知ってみたいという好奇心と、出会ったら襲われると聞いて生じた恐怖心に板挟みにされながらも、私は外の世界を知らずにいた。

……()()()も、そうだったのだろうか?

 

 ふと脳裏を過るのは、お母さま達に捕らえられた忌み子の姿。彼女に関することをお母さま達は詳しく私に教えてくれなかった。

遠目に見た限りでは、普通の兎人族と違って独特な髪と瞳の色をしている事しか分からなかった。……忌み子とは、どういった理由で恐れられているのでしょう?

…それと忌み子の兎人族と一緒に歩かされていた殿方。

 

 耳の形が私達と違う。他の亜人族のように尻尾が生えていない。

あれこそは噂に聞く、樹海の外に住む人族なのだろう。

かつて私達亜人を奴隷として狩っていた野蛮な生き物。

 

 決して心を許してはいけない。同朋が味わった屈辱を忘れるな。

奴らを同じ目に遭わせるまで……復讐の火が消えることはない。

……他部族の長老達が、怒りを露わにしてそういっていた。

お爺様も、お母さまも、言葉には出さなかったがそれを否定しなかった。

 

 …私には分かりません。

木の上から、ほんの僅かに横顔を拝見しただけなのです。

…ですが…何故でしょう?あの方の、熊人や虎人よりも鋭い獰猛な目つき。

それを見てからというもの…頬が熱くなって…お腹の奥が疼いているのです。

この感情が、私には分かりません。……一体、私はどうしたら――――――

 

 

 

「小賢しい獣人共め!こんな時に―――」「あっちに逃げたぞ、追え―――」

「北の見張りをこっちに連れて―――」「族長達の安否確認は―――」

 

(……よし。囮のメラルー達がうまくやってくれたみたいだ……!)

 

 木の根元、暗がりの中に息を潜めているハジメが隣に目配せをする。

暗闇の中でテトルーの黄色い瞳がぱちくりと瞬きをした。

今この場に彼らのリーダーはいない。既に森人族の集落を飛び出して、今頃は小川で小舟に乗りながら下流のゲブルト村を目指している頃だろう。

 

「……行くぞっ」

 

 ハジメに声をかけられて、テトルー達はこくりと頷いた。

慌ただしく駆け回っていた森人族の兵士達は、彼らの懐からありとあらゆる物を盗んでいったメラルー達を追って姿を消している。

武器庫の前の見張り番も飛び出していき、忍び込むには絶好の機会だ。

 

 しゃがみ姿勢のまま小走りで、周囲の警戒をするハジメ。

テトルー達が一匹、二匹と彼の背についていき、周りの臭いを嗅ぐ。

聴覚よりも嗅覚で、彼らは近づいて来る敵の気配を探るらしい。

 

 武器庫の扉の前まで辿り着くと、ハジメは扉の鍵が掛かっているであろう箇所に手を当てて―――小さな声で唱えた。

 

「俺専用鍵開け術―――”錬成”ッ」

 

 扉の中で、鍵がなければ動かない栓が形を変形させる。

金属を使っていると分かれば、ハジメの前では鍵など無いに等しい。

鍵で動く栓の部分を変形させてしまえば、簡単に開くからだ。

ガチャリと音がして扉が開くのを確認したハジメは、そっと中に入っていき…テトルー達もそれに続いた。最後の一匹は、何事もなかったかのように扉を閉める。

 

「よっしゃ、侵入せいこ――――」

「やあぁぁっ!」

 

 ハジメが立ち上がって武器庫の中を見渡そうとした瞬間、棍棒を手に殴り掛かってくる森人族がいた。少し前に兵士に連れてこられたアルテナだ。

彼女は扉が独りでに開こうとしたのを見て、兵士が声もかけずに入ってくる等ありえない―――つまりはやましい目的を持って武器庫に侵入しようとしている何者かだと察して、近くに置いてあった武器を手にして襲い掛かった。

……しかし、彼女は侵入者を奇襲をするにあたって致命的なミスを犯している。

 

「―――おっと!」

「きゃっ!?」

 

 彼の視界にギリギリ入る位置で、声を上げて武器を振りかざしたアルテナ。

戦いの基本など知らない箱入り娘の彼女が仕掛けた攻撃など、避けるのは容易だった。

ハジメは顔の先を通り過ぎた棍棒を持つアルテナの手を掴み、強引に引き寄せる。

内心、武器庫に可愛らしい森人(エルフ)の少女がいた事に驚いているが。

 

「―――ッ、んんーっ!」

「悪ぃな、ちょっと騒がないでくれ。―――()()()()()()()()?」

「……っ!!」

 

 力比べでハジメに敵う筈もなく、あっという間に両手を背後に回されて口を塞がれたアルテナは、抵抗しようとして耳元で囁かれた物騒な一言で黙らされる。

ハジメはか弱い少女に悪党のような台詞を吐いて実力を行使することに僅かな罪悪感を覚えつつ、足元で動揺しているテトルー達に指示を飛ばす。

 

彼女(アルテナ)は俺が抑えておく。お前らは事前に説明した通りの武器を持ってきてくれッ」

 

 再びこくんと頷いたテトルー達が武器庫の中を縦横無尽に駆け回った。

アルテナは訳が分からず彼らとハジメを交互に見て、拘束から逃れようとする。

彼女の抵抗を軽く押さえて、ハジメは頼み込むように口を開く。

 

「頼む、お前に危害を加えるつもりはない!俺達はあの鳥野郎と戦う為に武器を取り戻しに来ただけなんだ!シアと兎人族達を連れて、さっさと樹海を出る。二度とお前等の迷惑になるようなことはしない!」

 

 ビクン!とアルテナの肩が跳ね上がり、あからさまに動揺を表す。

それからすぐに…拘束を振り解こうとする力が抜けていく。

ハジメは彼女から抵抗の意思が薄れていくのを察した。

―――が、代わりに何かを言いたいらしく口元をモゴモゴさせる。

 

「んーっ!んむぅーっ!」

「っだから騒ぐなって…!」

「―――狩人さん。その森人族の娘、何か言いたいことがあるんじゃないか?」

 

 二人のやり取りに口を挿んだのは、武器の一つを取ってきたテトルーだった。

彼が手にしているのはハジメの使っていた剥ぎ取り用のナイフである。

鞘に収まったナイフを腰に差して貰いながら、ハジメはアルテナに問いかけた。

 

「……下手に騒いだら、少し気を失って貰うからな……!?」

「~~~ッ!(コクコク)」

 

 アルテナが抵抗を一切しなくなると、ハジメも手を掴む力を弱める。

ゆっくりと口から手を離すと、掌にほんのり湿った感覚が残っていた。

つぅ…と糸を引いたそれを意識しないように目を逸らすハジメ。

 

「んで、お前の言いたい事はなんだ?スマンが俺らはあまり時間に余裕がなくてな、手短に済ませてくれ」

 

「……わ、私は……!その……」

 

 話せるようになった途端、俯いて口ごもるアルテナ。

ハジメは外の様子が気になって焦りながらつま先で地面をトントン叩き、テトルー達に捜索の続行を急がせる。

今度はアイテムポーチを抱えたテトルーがやってきた。

中身を弄られた様子はなく、ハジメは内心ホッとする。

 

「……あの兎人族の女の子について、知りたいのです」

「シアのことか?―――知りたいと急に言われても、お前らの長老と族長ってのが俺らを処刑するつもりなんだぞ。知ってどうすんだ」

 

「私は、外の世界のことを何も知らずに育ったのです。……だから、同い年のお友達もいなくて。……シア……さんと、お友達になれたらと―――」

 

 ハジメはそれを聞いてほんの僅かに考えを巡らせた。

目の前の森人族の少女、アルテナが嘘をついているようには見えない。先ほどから会話をしていても、他の森人族達のようにハジメやテトルー達を見下すような態度も取らなかった。

 

 想像の域を出ないが、彼女はシアの処刑に乗り気ではないのかもしれない。そう思ったハジメは、()()()()()()()()()、まだ名前を知らない彼女に自己紹介を求めた。

 

「……お前名前は?俺はハジメ、帝国のハンターだ」

「私は、アルテナ・ハイピストと申します」

 

 ()()()()()。その苗字を名乗った者は先ほどハジメが口にした長老アルフレリックと族長アイリスだけだ。彼女は森人族にとって高貴な身分の者。

―――――使()()()()()()()()()

 

(ちょっと気は早いかもしれないが、ガルルガとの戦いを終えた後を考えるなら―――!)

 

 そんな中、テトルーの数匹が武器庫の奥からある物を引っ張り出してくる。振り返ったハジメはそれを目にした瞬間、ニヤリと笑った。

お互いに名乗ってすぐに会話が切れてしまった事で不安そうに彼の顔色を窺うアルテナ。ハジメは見向きもせずに告げた。

 

「悪いなアルテナ・ハイピスト、お前とのお喋りの時間はそろそろお終いだ……。……最後に一つだけ。シアと友達になりたかったら、そんな未来が訪れるように、()()()()()()()()()()()

 

「そ、それはどういう―――」

 

 ハジメの目の前に見慣れた防具と武器が置かれている。

素早く防具を身体に装着して、武器”ハンターボウⅡ”を背負う。

ずっしりとした重み、腰の矢筒を支える肩掛け紐の感触が、まるで愛しい人との再会を祝う抱擁であるかのようにハジメへ伝わった。

 

 ”ハンターボウⅡ”との感動の再会を一人だけで楽しむハジメ。

最後に一匹のテトルーが光る護石をそっと差し出す。

恩人からの贈り物を、今度は手放すまいと腕に巻き付ける。

 

 タイミングが良いのか悪いのか、武器庫の外が騒がしくなった。

扉越しにけたたましいイャンガルルガの咆哮が耳を刺す。

テトルー達はピンと毛を逆立てて威嚇し、アルテナは聞いたことのないモンスターの鳴き声に可愛らしい悲鳴を上げて目を瞑り、耳を塞ぎながらその場で蹲った。

 

(ようやく揃った。これで準備は出来た―――)

 

 ハジメはアイテムポーチをガサガサと漁り、携帯食料を一つ手に取って口に放り込む。乾燥しきった干し肉の、ポリポリとした食感に傷だらけの口の中を刺激する塩味。それがハジメのスタミナを全開にしてくれる。

 

「――――――反撃開始だ、イャンガルルガ!」

 

 




 主人公補正あるある1.いつの間にか増えるヒロイン枠
最初のうちに未定と書いたタグがとんでもない効力を与えてしまった……
やっと次からまともな戦闘が書ける……(描写が上手いとは言っていない)

感想、質問、ご指摘などお待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。