モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 お久しぶりです読者の皆様。投稿遅くなって申し訳ございません。
投稿が遅くなった件につきましては、活動報告に書かせて頂きます。
あまり気分の良いものではないかもしれないので、読むことをお勧めはしません。



辺境最優の片鱗

 

 アゥータとルゥムが、ハジメの前に現れる少し前の時間の話。

森人族の集落の監禁場所で、アゥータは静かにその時を待っていた。

兎人族が騒がしい外に過敏な反応をする。それを見てアゥータは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()自由の身になる。

 

「なっ!?帝国の方、その縄をどうやって―――」

「どうやって?普通に自力で」

 

「そ、それならば何故先ほどは……」

「簡単だ。俺らがあの程度の拘束で逃げられると分かったら、最悪手足の筋を切られてたかもしれないからな。敵を欺くために演技は必要だろ?―――さぁて、さてさて」

 

 縄の切れ端を部屋の隅に放り投げて、アゥータは自分の体を漁って一枚の紙を取り出す。

それはアゥータが森人族達に没収されなかった唯一の持ち物。亜人族に襲われるかもしれないという危険を予め知っていた彼が取っておいた切り札。

 

 カムは恐る恐る彼の背後から中に書かれている内容を見た。

次第に驚きで目を見開き、カムは唇を震わせながら後ろへ一歩下がる。

 

「そ、れは……ッ!?」

「……ガッさんから出来るだけ穏便に事を済ませるようにって保険で渡されてた()()()を使うことになるとは思わなかった……やれやれ、我ながら先読みが甘かったかねぇ」

 

 その紙の中に書かれていたものをカムは言葉に出来なかった。

周りで彼の動揺に困惑する仲間達に、余計な心配をかけたくないという理由もある。

だが何よりも…目の前の男の存在が急に恐ろしくなったからだ。

 

 囚われてから少しだけの時間、シアの事を話し合った。

彼女の特異な能力、同族達と違う整った容姿と記憶を失う前の人となり。

それを聞いている間のアゥータは何処にでもいるごく普通の好青年。カムや他の兎人族達にはそういう風に見えていた。

 

 それが拘束を解かれ、カム達にとって恐ろしい内容が書かれている紙を取り出した時から浮かべているアゥータの微笑が……まるで、獲物を追い詰める肉食獣のように変わっていた。

知らない内に見えない牙を喉元に突きつけられたような恐ろしさ。

 

「貴方は、一体……」

「……ん?オイオイ、そんな顔するなよ。まるで俺が極悪人みたいじゃねえか。―――ま、こんなもん見ちまったら当然の反応かもしれねぇけどな。ハハハッ!!」

 

 

 時間は進んで現在。

森人族の看守を引き剥がしたメラルー達の協力もあって、アゥータは自分の武器(デゼルヴェント)を取り戻した。

ハジメが一人苦戦を強いられていた支配種の黒狼鳥もルゥムが相手をしている。

早ければ五分もしない内に決着がつくとアゥータは分かっていた。

()()()()()()()()、彼女が()()()()()()に苦戦することは無い。

 

「ニャ、ハンターさん。この先の広場から沢山の(にお)いがするニャ!」

 

「あいよ。―――お前らの嗅ぎ慣れない臭いはあるか?」

 

 アゥータの問いにこくりと頷いたメラルーの集団。

彼らハジメがイャンガルルガに追いかけられていた道を遡り、物の数分でフェアベルゲンの中枢ともいえる切り株の広場近くまで辿り着いていた。

 

「一つは……森人、熊人、虎人に混じって、変わった臭いのする兎人の雌がいるニャ」

 

「あらまぁ、美男美女揃いの森人にセットで血気盛んな毛むくじゃらが揃ってら」

(嬢ちゃんで確定。……()()()()()()()()()()()()()……大体想像はつくけどな)

 

「もう一つ……切り株の向こう側から狐人と……なんだか嫌な臭いのする雄が二人いるニャ。……鉄が錆びたような、生き物が腐って土に還るときの臭いにそっくりニャ……ハンターさん、これ何か分かるかニャ?」

 

「さてな……俺はそこまで鼻が良くないからなんとも」

(さっきの支配種を見て薄々そんな気はしてたが……魔人族……か)

 

 想像力を豊かに働かせて、考えられる限りの状況を頭の中で瞬時に組み立てる。

ハジメが支配種と戦っていた理由、シアが孤立している状況、亜人族と人族の両方を敵に回している魔人族の存在、魔人族の近くに寄っている狐人族。

凡そ当たっている考えを頭の中で固めるアゥータ。

 

(これだけ役者が揃ってりゃ隠れる必要もねえか……それに―――)

 

「そちらの茂みに隠れている方、お連れ様と一緒に出てきては如何でしょう?」

 

 茂みに隠れていたアゥータの接近を、魔人族ダヴァロスは気づいていた。

声をかけられた事で視線が彼の隠れる茂み一点に集中する。

毛並みを逆立てて穴を掘る態勢のメラルー達を見て、フッとアゥータは笑みを浮かべた。

 

「案内ご苦労さん。お前らは隠れたままでいいさ……あとは俺の仕事だ」

 

 リーダー格のメラルーが一礼して、彼らは土を掘って穴の中に消えていった。

茂みから立ち上がり、大手を振って広場へと突入していく。

森人が忌々し気に彼を睨み、シアが驚いた様子で目を見開いた。

 

「よぉシアの嬢ちゃんに美人な森人の族長さん!さっきぶり~」

 

「アゥータさんッ」

「貴様…どうやって出てきた?」

 

「さぁてどうやってでしょ。魔法か奇跡か、はたまた偶然か」

 

 陽気にひらひらと手を振るアゥータを、熊人と虎人の戦士達が取り囲む。

牙を剥き出しにして剣を突きつける戦士達に、彼は動じることなく笑いかける。

 

「そんな物騒なもんを挨拶代わりに突きつけないでくれよ~怖くて泣いちまうじゃねえか。確かにウチの国はお前さん達と昔は殺し殺される仲だったけど、今は手を出したりしてないだろ~?」

 

「黙れッ、卑しい人間め…!我ら亜人族の土地に土足で踏み入って、生きて帰れると思うな!」

 

 殺気を全開にする戦士達に物怖じすることなく、アゥータは手を伸ばして―――

突き付けられた剣の先端を掌で包み込むように掴んだ。

当然の如く皮膚が裂けて、あっという間に血が滲んで滴る。

唖然とする戦士達の前で、顔色一つ変えないアゥータが口を開く。

 

「俺はお前らの相手をしに来たんじゃねえんだ。……悪いが、通して貰うぜ」

 

「……ッ」

 

 剣の切っ先を掴まれた戦士が慌てて剣を手放し、その場から立ち退く。

アゥータの手を離れて、血に濡れた剣が地面にガチャリと落ちる。

誰もが言葉を失う中、アゥータの視線はダヴァロスに注がれていた。

 

「よう魔人族さん。面と向かって話をするのは、これが初めてだろ」

「えぇ、我々の間には面識がありません。―――貴方達という存在については、我々の仲間から色々な報告を受けていますが―――」

 

「アゥータ。帝国の田舎に住む、しがないハンターだ」

「ダヴァロス・レヴァナント。ガーランド軍の只の隊長です」

「ついでにセレッカ・エルンスト。隊長の部下でーっす♪」

 

 普通に挨拶を交わす彼らに、亜人族達の誰もが驚愕していた。

本来であれば戦争の真っ最中である敵同士、出会えば即座に殺し合うのが必然。

しかし両者に戦闘の意志はなく、張り詰めていた空気は緩んでいた。

 

「まさか特別任務の最中、亜人族に捕まったかと思えば魔人族とご対面とはね」

「私も少々驚かされましたよ。樹海の中で人に出会う等と……作戦前には考えもしませんでした」

 

「お互いに理由があって此処に来たって訳だ。差支えなけりゃ其方さんの事情をお聞きしても?」

 

 アゥータが何気なく放った一言に、その場の空気が凍り付いた。

敵対する魔人族が亜人族の国で何をしているのか。面と向かって聞くバカな人はいない。

居たとしてもソイツは殺される覚悟を持って聞くだろう。しかし―――

 

「構いませんよ。我々は亜人族を我々の側に引き込む為の交渉に来たのですよ」

「ほお~そりゃまた何とも……」

 

 ダヴァロスも落ち着いた様子で当たり前のように自分達の話をする。

彼の言葉にアゥータは何か言いかけて、顎に手を置いて笑った。

ダヴァロスの隣で目を細めて笑っていたセレッカが代わりに問いかける。

 

「それじゃお前の言う特別任務ってのはなーに?」

「ん?あぁ、俺の後ろに……今は森人族の連中に囲われてる兎人族の嬢ちゃん。家族とはぐれちまったっつーから、そいつを探しに後輩と樹海の中を駆けまわってたってのが特別任務だよ。――――――まぁ、会わせる事は出来たんだが…色々あって後ろの連中に捕まって今に至るっつうわけよ、ハハハッ!」

 

 ダヴァロスとセレッカの視線が、笑いながら話す彼の後ろへと向けられる。

森人族は族長アイリスと長老アルフレリックを除く全員が視線を逸らした。

目の前で起きている異様な光景に、誰もが言葉を発せなかった。

 

「成程。―――先ほど、彼女を我々の国へ招待したいと申し上げたところ、随分と血気盛んな青年が待ったをかけてきましてね。あれは、貴方の後輩でしたか」

「嬢ちゃんを魔人族の国へ?ほぉ~そりゃまた急な話で」

 

「あくまで亜人族達との交渉がメイン。彼女の勧誘はついででしたがね」

「ははぁん。俺の後輩が満身創痍で雑魚に苦戦してたのはそういう訳かぁ。……まぁ俺の仲間が助けに入ったから、もう終わるだろうけどな」

 

「おや、他にもお仲間がいらっしゃるので?」

「まぁな。――――――ところでよ、嬢ちゃんを勧誘した際に俺の後輩が待ったをかけたって話を詳しく教えては貰えないか?」

 

 亜人族達を蚊帳の外に追いやって、アゥータとダヴァロス達は話し合いを続ける。

次第にアゥータはハジメがああなっていた経緯を知った。

ついでに亜人族の苦しい立場と、狐人族の裏切りも。

 

 彼らが話を進める一方で、シアは妙なことに気が付いた。

先ほどから沈黙を貫いて会話を聞いていた狐人族の長老ルアの表情。

愛想のよい笑みを浮かべていた口角が、徐々に吊りあがっている。

面白いものを見つけたかのように、嬉しそうに、楽しそうに笑っていた。

 

「いや~聞けば聞くほど、俺の後輩が随分と場の空気を乱しちまったみたいで……悪ぃなぁ」

「お気になさらないでください。我々としても、強引に彼女を連れて行こうとした我々自身の立ち振る舞いに問題があったと考えさせられました。後ほど彼に感謝をとお伝えください」

 

「ん、任された。―――そうそう、急で悪いんだが森人族のお二人さん。()()()()()()()()()()

 

 突然振り返ったアゥータに話しかけられて身構えるアイリス。

アルフレリックが険しい表情で言葉の先を促すと、アゥータは懐から一枚の紙を出した。

筒状に丸めたそれを、アルフレリックの手元に放り投げる。

それを広げて一文に目を通した瞬間、アルフレリックの表情が固まる。

 

「…………な、に……?」

 

 不審そうに眉を顰めるダヴァロスとセレッカ。

アルフレリックは無言で紙に書かれた内容を、周りにいた他の亜人族の長老達にも見えるように広げた。それは偶然、後ろに立っていたシアの目にも入った。

 

「これは!?」

「そんな……これが本当だとしたら……」

「は、ハッタリだ!ありえん!」

 

 亜人族達の反応に満足したのか、再びダヴァロス達に向き直るアゥータ。

彼の浮かべた表情を見て、ダヴァロスは彼が何をしたのか予想がついた。

アゥータが先のことを考えて敢えて言葉を偽らなかったのをダヴァロスは知っていた。

だから此方も同じように嘘をつかずに彼の出方を窺った。

()()()()()()()()。彼に情報を与えた時点で、話の流れを奪われていたのだ。

アルフレリック達の手に渡った紙の題は、こう書かれていた……

 

 

 

 

 

 

【フェアベルゲンとの和平協議或いはフェアベルゲンの殲滅計画】

 

 

 

 

 

 

 




 この後、アゥータ兄貴の話すっ飛ばして樹海編終わりにしてもよかです。
(ぶっちゃけ主人公がそんなに絡まないから幕間の物語で書こうかなと……)

 今更な気もしますが、オリキャラ大量発生させると主人公を魅せる方法が難しくなりますね。他を魅せすぎると偶像劇っぽくなりますし……

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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