・5行で分かる!第二章
少年南雲ハジメはハンターとして本格的に活動を始めるが、その最中に傷を負って記憶を失った兎人族の少女シアと出会う。樹海の中で彼女の仲間を探すハジメは、亜人族に襲われて、武器を奪われてしまった。時を同じくして現れる魔人族、ハジメはシアを守る為に強敵黒狼鳥イャンガルルガと戦うことになる。頼れる仲間達の協力を経て黒狼鳥を倒し、一連の騒動が此処に終結!
フェアベルゲンからゲブルト村までの帰り道、身体の自由を得たシアは前を進むアゥータから離れないようについていく。
恐る恐る背後を振り返っても、他の亜人族が追いかけて来る様子はない。
彼女は信じられないものを見るように彼の背をじっと見つめる。
奇しくも三種族が武力を用いずに繰り広げた舌戦。
その実質的な勝者は人間族、とっておきの切り札を使ったアゥータである。
フェアベルゲンは二つの勢力のどちらにも肩入れすることはなく、また樹海内で両種族が何をしていようとも専守防衛に務めて黙認するとを宣言。
これにより魔人族側の利としてモンスターの支配による戦力増強。人間族側はハンターや冒険者といった者達の活動が邪魔されることはなくなる。
フェアベルゲンはこの条件を受け入れる以外の選択肢がなかった。
過激派である熊人族、虎人族の長老ジンとゼルは支配種のイャンガルルガを人間が倒したという事実を聞かされて部下共々戦意を挫かれ、まともに考える力が残っていた森人族のアルフレリックが代表して話を進めたのだ。
アイリスは納得のいかない顔をしていたが、仲間や家族を守る為ならやむを得ないと下唇を強く噛みながら頷いた。
自分が支配下に置いたイャンガルルガを倒されたと悟ったダヴァロスは考え込む素振りを見せていたが、途中で何者かに魔法を使った念話を送られて「御心のままに」とだけ言って妥協する点を幾つか述べて去っていった。
最期にこの騒動の中でフェアベルゲンから追放される者達がいた。
忌み子として本来であれば処刑される筈だったシアは、魔人族が連れて行こうとして
魔人族を手引きした狐人族は既に樹海から姿を消している。
彼らの残した集落は、後に帝国側から返還される元奴隷の亜人達が住める土地として活用することをアルフレリックがその場で他種族の長老たちと話し合い決定した。
去り際、狐人族の長老ルアは意味深な言葉をアゥータに投げかけた。
「私達は根っからの
最期に…ハジメの狩りに巻き込まれ、集落を滅茶苦茶に壊された獣人族。
森人族の集落を荒らした挙句、人間を手助けしたことで他の亜人族から怒りを買った。
彼らも樹海を出て新しい住処を見つけなければならない。
*
「よっ、お二人さん。後始末は終わったのかい?」
アゥータがそう声をあげると、茂みの奥からルゥムとハジメが現れた。
二人は体中に血がついており、シアは小さく悲鳴を上げる。
きょとんとするルゥムに代わってハジメが苦笑交じりに言う。
「心配すんなシア。この血、殆どさっきのモンスターのだから(まぁ俺のは若干自分の体から出てるのもあるけど、余計な心配かけたくないから黙っとくか)」
「ほ、本当に……黒狼鳥を倒しちゃったんですか?」
「あぁ。……って言っても、殆どルゥムさんのお陰だけどな」
「……(ふるふる)」
「ん――――ハハッ、お前も十分活躍してるってよ」
「……(こくこくっ)」
素直に褒められることに慣れないハジメは頬を赤くして俯いた。
シアは改めて彼らの強さが規格外であることをを思い知らされる。
アゥータから血を拭くために布切れを渡されて、ハジメはレディーファーストだとルゥムが先に使うよう促しながら、イャンガルルガを倒した後のことを話す。
「ルゥムさんがアイツを倒して剥ぎ取りが終わった後、魔人族のセレッカって奴が来て……アイツの死体を回収したいと言い出したんです。ハンターが狩ったモンスターは、報酬以外ハンターズギルドに提出するってのが決まりなのは分かってたんですが……」
拒めば戦闘になる危険があった。
一騎当千のルゥムも魔人族に太刀を向けるつもりはなかったのか、あっさりとセレッカの要求を受け入れた為、渋々ハジメも従った。
「そこの判断はルゥムが正解だ。向こうの支配下に置いたモンスターが一匹だけとは限らんわけだからな。ギルドにはしっかりと此処で起きた事を説明すりゃ、罰せられるなんてことはねぇさ」
「ですか。……それで、亜人達のほうは―――」
アゥータとシアが拘束されずに歩いてきたことから、良い結果には終わったのだろうと察したハジメが詳しい話を聞こうとした。
不意にシアの背後で茂みが揺れて、三人は同時に反応する。
ハジメがハンターボウⅡを展開して矢を番え、シアを守るように進み出た。
アゥータとルゥムは武器を手に取らず、体だけ即動けるように構えを取る。
再度茂みが揺れて、そこから現れたのは――――――
「ニャ!お兄さん、ボクらを置いていかないで欲しいニャッ!」
「「「「ニャー!ニャー!ニャー!」」」」
「集落壊した弁償して貰うニャー!」
「「「「ニャー!ゴロゴロ、フシャーッ!」」」」
「チャチャッ!樹海で俺様達から逃げられると思わないことッチャ!」
「「「「ヂャヂャーッ!」」」」
「我々は貴君の提案に乗った、貴君は我々に償いをすると約束をした」
「「「「ニャーン」」」」
「我らの住む場所、食べるもの。我らはこれを強く要求する!!」
「「「「グギャラ、ギャァ!」」」」
大きな葉を風呂敷包みの代わりにした大荷物を背負うアイルーの集団だった。
続いてメラルー、チャチャブー、テトルー、ガジャブーの群れもやってくる。
ハジメは「あっ」と何かを思い出したように半口を開けて固まった。
「ハジメ~?こいつぁどういうこった……」
「あ、あはは……村に帰る道すがら、説明します」
ちょっぴり忘れていたなんて言いづらいハジメは視線を外す。
アゥータは半笑いで「やれやれ」といった風に肩をすくめ、ルゥムは目の前に飛び込んできた毛玉の天国に目だけ輝かせて無表情を貫いている。
*
「シア!!」
「父様ッ、みんな―――!」
アゥータが先導する道の先、彼とハジメがリオレイア、クルペッコと激闘を繰り広げた場所に兎人族全員が集まっていた。シアの姿を見て全員の顔が明るくなり、カムはシアを抱きしめた。
ハジメとルゥムは邪魔にならないよう川の水で血を洗い流す。
「よかった……本当によかった!」
「父様……みんなも、無事でよかった……本当に」
たった一人しかいない血の繋がった娘の無事を喜び涙を流す父の姿。
そんな父と仲間たちに自分のせいで巻き込んでしまった事を申し訳ないと思いながら、彼らが全員無事であったことに安心して父と同じように泣く娘。
遠目にそれを眺めていたハジメは、故郷の両親をふと思い出した。
地球と異世界の時間の流れが同じなのか定かではないが、同じと仮定した場合、もう何か月か経っている。集団失踪事件として大騒ぎになっているだろう。
感動の再会を自分のことのように喜び、内心で寂しそうにするハジメ。
傍らに立っていたルゥムは不思議そうに首を傾げて、指で彼の頬を突いた。
「んぁ……どうしたんですか、ルゥムさん?」
「……?(ツンツン)」
「……な、なんすか……?」
寂しそうにしていることを見透かされてるとは思わず困惑するハジメ。
カム達が歩み寄って来るまで、ルゥムは頬を突くことを止めなかった。
鼻頭を赤くして、目に涙を溜めたままのカムが勢いよく頭を下げる。
「ハジメ殿!娘と私達一族を救ってくれたこと、心より感謝しております!」
「俺は大したことやってませんよ。お礼ならこの事態を丸く収めてくれたアゥータさんと、あの黒狼鳥を倒したルゥムさんに……」
「何を仰いますか!娘からハジメ殿の活躍を聞いております。恐ろしい魔人族が我が娘を連れて行こうとしたのを、貴方が止めて 俺の傍にいろ! と言い切ったことを!」
「ぅえっ――――(俺そんなこと言ったか!?)」
正確には「俺の前からいなくなられたら困る」と「シアの傍を離れる訳にはいかねぇんだよ」なのだが、当の本人は自分が何と言ったのか覚えていない。
握り拳をつくって熱く語るカムに他の兎人族達も同意する。
シアだけ「あぅ……」と赤くなった顔を両手で隠し、兎耳が垂れていた。
何と返せばいいか迷い、照れ隠しに後ろ髪をボリボリ掻くハジメ。
「これから先も、娘のことを宜しくお願い致しますぞ!!」
「これから先も!?」
「はい!これから先も!!!」
「と、父様ぁ……」
そんなやりとりをしていると、見回りにいったアゥータ達が帰ってきた。
彼は獣人族の契約書に目を通して、嘆息交じりにハジメの頭を小突く。
「他所に迷惑掛けたんなら、真っ先に教えろっての」
「す、すいません……」
アゥータは居並ぶ兎人族、獣人族をざっと見渡す。
帝国領内であれば行き場は何処でもあるだろう。しかし隣接する王国の人間から彼らは迫害される可能性が高い。衣食住をまともに貰えるという選択肢は一つしかなかった。
フッと笑って一呼吸置いたアゥータは告げる。
「兎人族に獣人族、これだけの人数がいりゃあ
「―――アゥータさん。それじゃあ……!」
「全員ウチの村で働きながらって条件で良ければ、歓迎するぜ!」
その場で割れんばかりの歓声が沸き上がった。
両手を上げてその場で飛び跳ねる兎人族と獣人族。
彼らの住む場所は樹海の近くにあるゲブルト村となる。
喜び合う仲間達の間を通ってハジメの前までやってきたシア。
既に父カムはアゥータと今後について詳しく話し合うとその場を離れていた。
ルゥムが入れ替わるように村までの帰り道の安全確保へと向かう。
「ハジメさん。改めてお礼を言わせて下さい……ありがとう御座います」
「……おうよ」
*
地平線の向こう側から目の眩む陽の光が顔を出し始める。
鬱蒼と茂るハルツィナ樹海の霧を掻き分けて、ハジメ達は村へと戻っていく。
新しい村の住民達を、夜明けの風が優しく包み込むように迎え入れる。
遠目にそれを眺めていた魔人族達も、次の行動へ移ろうと去っていった。
狐人族は予め用意していた荷車をモンスターに引かせて大峡谷へと向かう。
樹海の中で亜人族達は自らの無知無力に嘆く中で、新たな考えが芽吹いていく。
話の発端となった兎耳の少女は、少年に大輪の花にも負けない笑みを見せた。
これから先、少年と少女を取り巻く日常は変化していくのだろう。
その背を優しく押す追い風もあれば、厳しい向かい風もある。
新しい話の始まりは、砂煙をあげて雨を伴い近づきつつあった……
微妙な終わり方かもしれませんが、とりあえずこれにて樹海編①終了です。
この後は幕間の物語「生き延びる道は西へ…」の時間軸から少し進んでのスタート。
担ぎ込まれる彼女、どんなリアクション見せるかハジメ君、どうなっていくのかシア
マジ空気の神の使徒、暗躍しまくり魔人族、イメチェンするのか清水君、そろそろ貴女の存在感が深淵卿並になってるぞメインヒロイン、死にそうだぞ幼女、死んだかもドM竜
ハジメの弓も暫くはお休みかも?次はどんな武器で戦うというのか……
次回 新章「苦悩・奮闘編」
感想、質問、ご指摘等お待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡