モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 ちょっとだけオリキャラの関係解説とギャグ?とシリアス
園部さんの評価が意外に高いので救済っぽいのを小さじ一杯ぶち込みました
ハジメ君vs勇者君の台詞書きまくってたらハジメ君が病みキャラになってて草
自分で読み返したらこれどう頑張れば救い見いだせるんだろうって頭捻ってました



空は晴れ模様、少女の心は曇り時々雨

 

 馬に跨り帝都からの帰り道を進むアゥータ一行。

そこにシアの姿はなく、彼女はハンターの訓練所に行っている。

シュヴァルツ教官に怒鳴られて今頃は涙目になっているだろう。

娘の成長を願うカムは清々しい気分で空を見上げていた。

 

「昨夜のひどい雨が嘘のようですなぁ、アゥータ殿」

「だなぁ……まだ空にそこそこ雲は残ってるが、土砂降りにゃならんだろ」

 

「村の方の建築工事は暫く中止ですかな?」

「安全確保を第一にしたいからな、戻って様子見だ」

 

 遠くに見えるゲブルト村の家屋を見つけたカムが大きく手を振る。

すると家屋の中から顔を出した兎人族の子どもが手を振り返した。

雨水をたっぷり吸い込んだ通り道に馬の足跡がズブズブと続いていく。

アゥータは一人意地悪い笑みを浮かべて呟いた。

 

「さーて……ハジメの奴ぁまた何かトラブルを持ち込んでたりしないだろうなぁ?」

「ハハハッ、アゥータ殿。そんな立て続けにトラブル等と……」

 

 ハジメが来てから偶然なのか村に色々な出来事があった。

数か月以上は姿を見せなかった火竜リオレウスの襲来、開拓作業中にシアを発見して保護に始まり兎人族と獣人族の移住受け入れ等々……大体のトラブルの中心にハジメがいる。

偶然とはいえそんな事ばかり起こった等とあまり知らないカムが笑って返す。

しかし――――――

 

「おや、アゥータ殿。何やら見かけない方がいらしているようですな」

「うっそマジかよ。俺の予想当たっちゃった!?」

 

 驚きながらも嬉しそうにしたアゥータがカムの指さす村の奥に目を凝らす。

そこは村の調理場で、何やらウマアジが親し気に髪の長い女性と話をしている最中だった。

 

「女か!?ハジメの奴、シアちゃんに続いて村に二人目も連れ込んだのか!」

「ま、まさかそんな訳が……!第一、ハジメ殿が連れて来たとはまだ決まって―――」

「ちょっと確認してくらぁ!!!」

 

 カムの言葉を聞かず、アゥータは馬から降りて調理場に向かって走り出した。

カムも馬を降りて自分のと彼の乗っていた馬の手綱を掴んでやれやれと息を吐く。

帝都では散々アゥータに振り回されて彼の性格をカムも大分理解してきたのだ。

 

 この時の行動をアゥータは数分後に激しく後悔するのであった。

何故、あの後姿を見た時に()()であることに気が付かなかったのか。

空色の長い髪をした女性なんて、そうそう見かけないというのに……

 

「へいへーい、そこの可愛い子ちゃーん!!」

 

「――――――へぇ~?アタシを可愛い子ちゃん呼ばわりなんて~……洟垂れアゥータ坊やが随分とまぁ見ない間に偉くなったもんだねぇ……えぇオイ?」

 

「――――――ァッ」

 

 ウマアジが奥へ引っ込んでいき、アゥータに声をかけられた髪の長い女性……

リンネは口が裂けんばかりの仄暗い笑顔でゆっくりと振り返る。

ピキッという音がして眉間に青筋が浮かんでいた。

 

 笑顔のまま硬直したアゥータは声を聞いた瞬間に自分の知る女性だと気づいた。

この世で決して自分が馴れ馴れしい態度を取ってはいけない女性である。

過去の恐怖体験がトラウマとして蘇り、嫌な脂汗が全身から噴き出た。

ツカツカと歩み寄るリンネはポンと彼の肩に手を掛けて――――――

 

「歯ァ食いしばれやクソガキ」

 

「い゛き゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!!!!??」

 

 

 村の中に響き渡ったアゥータの絶叫を聞いてハジメが早々に駆けつける。

何事かと調理場の入り口付近に他の村人達を掻き分けて進んだ先で……

地面に倒れたアゥータに関節技をキメていたリンネが顔を上げて口を開く。

 

「やぁ、ハジメ君。これがアタシの後輩ハンターであるアゥータだ」

 

「いや知ってます……この状況は何ですか」

 

「ちょっとヤンチャな後輩の指導さ。()()()()って奴……そうだよなぁアゥータ?」

 

「………グピィ」

 

 凡そ常人が出してはいけない声を上げるアゥータ。

片腕のリンネに組み伏せられて駱駝固め(キャメルクラッチ)をキメられていた。

彼の両頬には真っ赤に腫れた手形が残っており、往復ビンタの痕と分かる。

 

 白目を剥いて泡吹く寸前のアゥータを尚も締め上げるリンネ。

ハジメは直感した。これは自分が下手にアゥータの味方をしてはいけないパターンだと。

コメントに困る彼のところへ馬を戻してきたカムが駆け寄る。

 

「ハジメ殿!只今戻りましたぞ!」

 

「お帰りなさいカムさん」

 

「はい!………それで、此方の女性は?あとアゥータ殿のアレは……」

 

「あの女性(ヒト)はリンネさん。色々あって村に滞在中なんです」

 

 敢えてハジメは技かけ中の彼女と技かけられ中のアゥータには触れなかった。

カムも「は、はぁ」と困惑気味に頷くことしか出来ず皆立ち往生してしまう。

そこへ騒ぎを聞きつけたアボクがやってきて、二人の様子を見てすぐに察する。

 

「アゥータの奴め、女性にちょっかいをかけて何度痛い目に遭えば気が済むというのだ……」

 

「「あっ、やっぱそういうパターンなんですね、これ」」

 

 ハジメとカムは声を揃えて呆れる彼の言葉に頷いて納得する。

その後、満足した様子で技を解いたリンネだがアゥータは気絶していた。

リンネが渾身の下段突きで叩き起こして事無きを得たが……

 

「――――――よし、あの娘の事もある。ハジメ君の家で話をしようと思うのだが……」

 

「そうですね。そういう事なんでカムさん、よければ一緒に来て貰えますか?」

 

「はい勿論ですよ。旅の荷物はアイルーの皆様が運んで下さるようなので、すぐにでも」

 

「……えぇとリンネさんと……アゥータさんも」

 

「はーい了解よ、ハジメ君♪」

 

「……ぅぃ」

 

 拘束を解いてポンポンと服についた泥汚れを手で払ったリンネが歩き出す。

後からゆっくりと立ち上がったアゥータは青褪めた顔で腹を押さえながら歩く。

リンネとハジメが入れ替わるように彼女はカムへ、彼はアゥータへ話しかけた。

ハジメは既にリンネから先輩後輩の関係ではあると聞かされていたが、改めてアゥータの口から彼女の話を聞きたかったのだ。

 

「アゥータさん。リンネさんとはどういう……」

 

「……姐さんは俺が昔パーティー組んでたところの先輩ハンターでな。あのヒト、引退してからは多少マシになったが昔は超がつく程の戦闘狂で、俺は何度も酷い目に―――――」

 

「アタシが何だってアゥータ坊や~?言ってごらん~?」

 

「ヒィッ!?い、いやぁ~!姐さんにはいつも迷惑かけてたなぁーって!アハハ~」

 

「そうよね~?駆け出しだったアンタが雌火竜リオレイアに苦戦してたのを見つけて助けたのは誰だったかしらぁ。パーティーに入ってから日課の”大型モンスターの歴戦個体を一人で10頭狩るまで町に帰れません!”も達成できなくてアタシに何度も泣きついて来たわよね~?」

 

(……アゥータさんにもそういう(駆け出しの)時期ってあったんだなぁ……)

 

 片腕をアゥータの首の後ろに回して酔っ払いのように絡んでくるリンネ。

アゥータは亀のように首を引っ込めんばかりに怯えながら笑みを浮かべる。

先輩と後輩の圧倒的な力関係を見せられたハジメは自分は恵まれた方だと安心した。

 

 それからハジメのマイハウスが見えてきて彼が先頭に立つ。

ベッドで横になっていた優花も複数の足音に気が付いて体を起こした。

入り口に足をかけたハジメは家に帰ってきたら人がいるという安心感に、故郷の実家と同じ感覚で手を上げて挨拶を言ってしまう。

 

「よっ、ただいま」

「あ、えっと……おかえり?」

 

「何ィ!ハジメ、お前女の子を家に連れ込んでナニを―――ぷげァッ!!?」

「ちょっと黙ろうか坊や。―――ただいま優花ちゃん♪」

 

 優花も唐突の挨拶に戸惑いながら返事をして、そこへアゥータが茶々を入れようとする……

……がリンネの繰り出した恐ろしく早い手刀で頬を強打されて口を封じられた。

アボク、カムの二人が後から続いて入ると優花はオッサンの頭に可愛らしいウサ耳がついているという衝撃の光景を目にして唖然とした表情で固まってしまう。

 

「え、ハジメ……後ろのヒト?って……」

「まぁ今から色々と説明するからまずは落ち着いてくれ」

「う、うん……」

 

「?? アボク殿、彼女は私の何を見て驚いているのでしょうか」

「恐らく彼女は亜人を見るのが初めてなのではないかねカム君」

「成程」

 

 それから数分かけてハジメは亜人族、カムについて説明した。

王国では亜人は迫害されている事と、数年前まで帝国でも奴隷の扱いを受けていたという話を聞いてショックを受けた優花だがカムは笑顔を浮かべて変わった今の環境を語ってくれた。

 

 村での生活は兎人族に無かった農耕の技術を学べる絶好の機会を与えてくれた他、普通の魚や鳥などを捌いて食用に加工する術なども抵抗感はあったが覚えられた。

樹海で他の亜人から追われる身となって忙しい日々を送っていたのが一転して、今度は覚えることやするべき事が増えて良い意味で忙しい日々を送っている。

 

 その話の中でカムはハジメが娘シアの命の恩人であるとも語った。

優花はあのハジメがそんな凄いことをしたのだと意外そうに目を向ける。

しかしハジメ個人としては樹海での一件は自分がハンターとなって初めて倒せなかったモンスターに遭遇し、苦渋を舐める結果に終わった思い出もあって多くを語ろうとはしなかった。

 

 それから一呼吸おいて、リンネが優花の代わりに自分たちの事情を話す。

彼女が神の使徒であると聞いた途端にアボクは驚き目を見開いて優花を見る。

アゥータも「こんな華奢な子がねぇ…」と言いながらハジメを横目に見た。

彼らはハジメが元・神の使徒であることを知っていたからだ。

 

 湖の町ウルに訪れた神の使徒と、ハジメと同じように逃げ出した神の使徒。

その話を聞いて複雑な事情があるのだとアボクは優花の表情から察した。

過程を割愛して毒で身体をやられた優花を助けるためにリンネはゲブルト村を訪れたのだ。

 

 ハジメはすぐにアボクとアゥータに自分の正体が彼女にバレていることを伝え

既に彼女とは自分(ハジメ)が此処にいた事を他の神の使徒に伝えないと約束したことを話す。

この間、世情に疎い亜人のカムだけは神の使徒の意味が理解出来ずに首を傾げていた。

 

 お互いの自己紹介等が終わると、今度はアゥータが帝都での話を纏めて伝える。

帝国とフェアベルゲンは相互不可侵の現状を維持して、和平交渉は一時保留となった。

今は魔人族との戦争中であり、これ以上の結果は得られないだろうという判断によるものだ。

 

 ゲブルト村にアゥータが留まることは認めるが、徴収する税はこれまで通りの量に戻す。

更に村の男衆から若い者は何名か帝国軍への徴兵に出されることが伝えられた。

 

 これを聞いて優花は更なるショックを受ける。

アボクは深刻そうに俯いたが「皇帝の命令であれば従う他ないな」と受け入れた。

ハジメも悲痛そうに顔を歪めるが、仕方のないことだと頭では理解していた。

 

 優花のショックは自分たちの置かれた立場に因るものでもあった。

神の使徒としてトータスに連れてこられた自分達だが、なんとか故郷へ帰るために天之河に扇動されて勢いに身を任せたというのもあるが、戦争に参加して世界を救うつもりだった。

答えを求めるようにハジメに視線を向けると、彼は重い口を開いた。

 

「……これが戦争してる世界の現実だ園部。勇者だ神の使徒だなんて持て囃されて担ぎ上げられてる間も、前線で何十人、何百人もこの世界の人間の兵士が戦って、殺したり殺されたりしてんだ」

 

「……私達が……召喚された意味って……」

 

 王国の貴族達は言っていた「これで世界は救われる」「私達は助かる」と喜んでいた。

彼らが言っていた本当に救われる者は()()()()であり、他の国の人等は含まれていない。

絶望に満ちた表情で宙を見上げる園部の肩にリンネが静かに手を添える。

 

「あまり悲観的に物事を見ちゃダメよ、優花ちゃん」

 

「……リンネさん」

 

「そうとも。神の使徒と呼ばれていようと、君達はまだ子供じゃないか」

 

 リンネの言葉に同意したアボクが優しく微笑みを浮かべる。

優花には分からなかった、どうしてそんな顔が出来るのか?

あの時、聖教教会の教皇イシュタルが見せた表情とはまるで違った。

 

 優花達が戦争に参加することを拒絶した時、イシュタルは冷たい眼差しで彼女達を見ていた。

当たり前のことが出来ない子供を叱る親のように

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と憤るように。

 

 それが怖くて、畑山先生に縋るように護衛隊の名目で飛び出したのだ。

誰もその事を口にしない。神殿騎士であるデビット達がいたからというのもあるが……

それを思い出す事も恐ろしくて、口に出さなかった。

これがこの世界では当たり前の事なんだと自分に言い聞かせてきた。

 

「あまり大きな声では言えないがね。君のような若者に戦争をさせるなんて情けない話さ」

 

「……えぇ、えぇ!それだけは事情がよく分からない私にも理解出来ますとも!」

 

 アボクの言葉に同意してカムも拳を握って憤慨している。

優花にとって初めて見る反応だった。王国の何処へ行っても神の使徒であると知った途端に人々は歓喜の声を上げて彼女達を歓迎するだけだった。

 

 それが人知れず彼女だけに対してプレッシャーになっていた等と、誰に言えるのか……

きっと辛いのは自分だけじゃないから。我慢しなきゃいけないと思っていたのに……

気が付いたら目に熱いものがこみ上げて、優花は折れていない手の甲でそれを拭った。

 

「――――――あ、あれ?私、なに泣いてるんだろ……変だな……ッ!?」

 

 怖かった、苦しかった、辛かった、(ハジメ)のようにこんな事から背を向けて()()()()()()()()

けどそれ以上に大切な友達を見捨てられない。大好きな愛ちゃん先生を悲しませたくない。

だから本心を包み隠して、弱さを押し殺してずっと頑張ってきた。それが――――――

 

「辛い時には泣いてみるもんさ。恥ずかしい事じゃない、子供は泣くのが()()なんだから」

 

 その一言で、園部優花という17歳の少女の心に張り付けていた仮面が音もなく崩れ去った。

堰を切ったように溢れ出す涙と優花の悲痛な叫びによく似た泣き声。

リンネ、アボク、カムら大人達は優しく彼女を慰めていた。

 

 ベッドから距離を置いてマイハウスの壁に寄り掛かっていたハジメ。

手刀の痛みが引いて頬を擦るアゥータが静かに彼の隣に立った。

二人は黙っていたが、やがてアゥータの方から口を開いた。

 

「……神の使徒ってのは、何かと抱えてる奴が多いのかねえ?」

 

「どうでしょうね。個人的には無責任な奴と責任感を必要以上に抱え込んで潰れそうになってる奴の二種類に分かれてるとは思いますよ。園部(あいつ)は後者だったんでしょう」

 

「ふーん……んで、お前はどうなんだ?」

 

「聞かなくても分かるでしょう―――――――――()()()()()ですよ俺は」

 





 ハジメ君が無責任だと言った理由は後々の展開で説明するつもりです
園部さんが思っていた以上に責任感の強い女の子に仕上がっちゃいましたね
まぁその結果、行動が前のめりになって清水君の件があったということで……

 あとしれっと書いてますが、この世界の兎人族は生き物を殺す(料理的な意味で)くらいのことは出来るようになってます(そうしないと村で暮らしていけないから)
戦闘は一切出来ません(身体能力が低いとは言っていない)

感想、質問、ご指摘等お待ちしております

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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