ブルックの町、楽しみだなぁ……原作キャラも少し出てこれるし……!
ただ……そろそろハジメ君もソロで一狩りしよっか!(暗黒微笑)
エリセンの海、アンカジ公国の砂漠、ハイリヒ王国の大地を突き抜けた風はヘルシャー帝国領へと厚い雲と湿気を伴って向かう……トータスの大地に雨期が訪れたのだ。
雨期といっても日本の梅雨のように四六時中毎日のように雨が降るのではない。
不規則に、局所的な雨が所々で頻発する。それがトータスの雨期である。
畑を耕すものは天の恵みに感謝し、大地を征くモンスター達は潤いに身を震わせた。
*
ゲブルト村からブルックの町までの道なり、途中ライセン大峡谷に通じる分かれ道にて
旅の大荷物を詰め込んだリュックサックを背負ったリポディーが三人へ頭を下げる。
彼はゲブルト村以外の近くの集落や村を訪れてから商業都市フューレンを目指すという。
三人に見送られて、リポディーの姿はやがて小さくなって見えなくなる。
「よーし、目指すはブルックの町。いざ出発よ~優花ちゃん!」
「お、おー?」
妙にテンションの高いリンネに困惑しつつも優花は荷台の外にチラと視線を向けた。
ハジメは特別任務という形で随伴している為、いつまでも荷馬車に乗ってはいられない。
荷馬車に先行して道の先にモンスターの痕跡や気配がないか探り、必要であれば対処する。
しかし今のところモンスターに遭遇していなかった。
それ故に優花は馬より先に歩いたり走ったりを繰り返すハジメを見て少し心配していた。
そんなことをして体力は持つのだろうかという心配だ。
優花は一度思い切ってリンネにそのことを聞いたのだが、返ってきた返事は……
「ハンターは携帯食料齧ってりゃ不眠不休で二十四時間走っても元気一杯よ!」
……という優花の常識では理解不可能なものだった。
彼女が荷台からこっそり顔を覗かせて見ると、ハジメは高い丘の上に立って双眼鏡を覗いていた。
このまま何事もなくブルックの町に着けるのではないかと優花が思い込んだ瞬間―――
「………っ」
「優花ちゃん、ちょっと止まるから大人しくしててね」
ハジメが勢いよく丘を駆け下りて荷馬車の方へ近づいてきた。
それにいち早く気づいたリンネは手綱を引いて馬を一旦止まらせる。
優花が「はい!」と返事をして積まれた麻袋に身を預ける。
ガタゴトと荷台の荷物が揺れて、ハジメの駆け寄る足音が優花にも聞こえた。
「何か先にいた?」
「前方の丘を越えた先の水辺に草食種のモンスターが集まってます。道に居座る奴も何頭か……」
「草食種なら特に問題はないんじゃない?軽く誘導してやれば何も問題は―――」
「……アプトノスだけで40~50頭はいますけど……」
「ッ!?」
ハジメの言葉を聞いて息を呑んだ優花。
そんな数のモンスターを見て彼女が動揺をせずにはいられないだろう。
彼はそれを考慮してリンネに判断を仰いだのだ。
リンネは手綱を膝の上に置いて「うーん」と首を横に傾けながら悩む。
「アタシとハジメ君は問題ないとして、優花ちゃんは……あ、うん。その青褪めた顔を見ればわざわざ聞かなくても分かるよ……しょーがない、遠回りになるけど大峡谷側の荒野に迂回する道まで引き返して―――」
「だ、大丈夫です!最短ルートでいきましょう!」
思わずムキになって優花は言い切ってしまった。
モンスターが怖いのは事実だが、草食種という単語から容易に想像できる。
そのモンスター達が突然ヒトを襲ったりはしないのだろう。
であれば優花が怖いのを我慢して通り過ぎればいいだけの事。
リンネは苦笑交じりに振り返って口をキュッと結ぶ彼女に問いかける。
「……本当に?パニック起こして逃げたりしない?」
「絶対にしません!荷台で目を瞑って耳塞いでますから!!」
「そ、そう……まぁ優花ちゃんが覚悟決まってるんなら、アタシは進むつもりだけど……」
「俺も異論はありませんよ。極力荷台に近付かせないよう立ち回るんで」
こうして少し斜面に差し掛かった道を上っていく荷台の中で優花はぐっと目を閉じて―――
気付いた。自分はいま、片腕を骨折しているから耳を塞げても片方だけになってしまう事実に。
徐々に荷台の荷物の傾きで丘を越えたのが分かる。
と同時に片方の耳から牛のような低い唸り声と草原を掻き分ける足音が聞こえてきた。
(私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫――――――)
半ば無理やり
そんな彼女を気にかけながらリンネはハジメが判断を仰いだ理由を理解する。
数日前に振った雨は斜面から流れて、一番低いところにあった水辺の嵩を増やしていた。
0.45ヘクタール程のそれは生き物たちが優雅な一時を過ごす楽園の湖となっている。
ハジメの言っていたアプトノス何十頭ものアプトノスの群れに混じって、ケルビやガーグァもいるが……その中でも最も異色の存在は”リモセトス”だろう。
「何気に俺は初めて見ましたね、リモセトス」
「この辺りじゃ飛竜の餌にされやすいからねえ、群れの多くは樹海の中に引っ込んでるのよ」
近くに生える背の低い木々に巨躯で支えられた首をゆったり下ろして草を食んでいる。
優花が耳にしている唸り声は彼らが仲間同士の意思疎通で発する鳴き声だった。
草食種最大最長のモンスターとして知られるリモセトスは別名”首鳴竜”
不安そうに嘶く馬の背を優しく撫でて、リンネは近くを歩くハジメに話しかけていた。
「アタシも長い事ハンターやってたけど、こんな群れに遭遇したのは数回しかないね~」
「でも何度かは見てるんですね――――――っとっと……」
話している最中だが、先の道を横切ろうとするアプトノスの集団をハジメは見つけた。
早々に駆け出していく彼に「怒らせないでね~」と暢気に声をかけたリンネ。
優花は二人の会話も聞いているので興味は沸くが、未だ恐怖心が勝っている。
リンネもそんな彼女に陽気に声をかけて余計な刺激を与えない方がいいかと気に掛ける程度。
「よーしよし、良い子だなーこっちおいでこっちー」
ハジメは近くの草むらに生えていた木の実を草ごと掴んで束で持つ。
アプトノスがそれに釣られてぐっと顔を上げ、のそのそと彼に近づいて来る。
上手いこと道から湖の方へと誘導したハジメは手の中の束をアプトノスに差し出す。
しかしそこへ湖の方から近寄ってきた別のアプトノス達も顔を近づける。
「あーらら参ったな……お前らの分じゃないんだってこれは、ちょ、顔近い顔!」
ぐいぐいと人の言葉に表せば「餌を寄越せ」と催促するアプトノス。
ハジメ苦笑して群れに顔を寄せられるハジメは草の束をバサッと地面に落とした。
「分かった分かった!お前らで仲良く食えって、だから俺に顔を擦りつけんな……あぁっ!?」
もう遅かった。鼻水が出ていたアプトノスが一頭、彼の背にべったり顔を擦っている。
なるべく力を入れずにアプトノス達の群れから脱出してハジメは通過した荷馬車に追いつく。
一部始終を見ていたリンネは声を上げて笑いながら彼を迎える。
「あっははは!背中にアプトノスの鼻水がべっとりくっついてるねぇ!」
「……これ洗っておかないと不味いですよね……」
「そのまま町に入ったら嫌な顔はされるでしょうねえ~」
「ぐえぇ……」
そこでハジメはちらと湖の方を向いた。
ゲブルト村からブルックの町まではそんなに多くの荷物を積んでこなかったのだ。
今、荷馬車に積んであるのは殆どがハジメの私物である。
彼はそれをブルックの町にあるというハンターズギルドに全て預けるつもりだ。
食料に関しては携帯食料の他に木の実や穀類を幾つか麻袋に詰め込んである。
三人で食べても最低三日は持つ計算で、次の移動でまた食料を買い込むつもりだった。
飲み水もそれぞれ皮の袋の水筒に三人分用意されている。
リンネとハジメは真っ先に優花へ自分の水筒を押し付けた。
二人はハンターとして喉の渇きを潤す術を自然から学んでいるのだ。
ハジメが湖の方を見たのは、ちょっと防具を洗いたいと思ったから。
彼の様子を見て察したリンネは目を瞑ったままの優花へと振り返る。
「優花ちゃん、ちょーっと止まってもいいかしら」
「え゛っ!?」
「多分この湖を越えて少ししたらブルックなのよね~。だけどハジメ君の防具がご覧の通り―――って優花ちゃんは目瞑ってたから見てないか……まぁ兎に角汚れちゃったから、そこの湖で洗っておきたいのよ。ついでに馬も疲れてるみたいだし、一休み入れようと思うんだけど……」
この世の終わりみたいな顔をして優花。
通り過ぎて我慢すれば終わりと思っていたら、まさかの此処で休憩するという。
流石にリンネも後から言うのは可哀想かと考えたが―――
「わ、わか……りましたっ」
ハジメの防具を水洗いするだけなら猛反対したが、馬を休ませるのには賛成する。
いつの日だったか、移動の最中に馬の話をしてくれた畑山先生の言葉を思い出したのだ。
「馬という生き物は顔や行動に感情が表れるんですよ。嬉しい時は首を上げ尻尾を左右に振ったり、不安な時は視線があちこちに泳いだり鼻息が荒くなったりするんです。だからこうして移動の最中に馬の健康を考えて休む事はとても大切なんですよ」
優花の素人目で見て分かる通り、馬は耳と尻尾が垂れて鼻息が荒い……明らかに疲れている。
真剣な表情を浮かべて意を決した優花はリンネに頷いて訴えかけた。
彼女もそれを見てフッと笑みを浮かべ、その場に手綱を置く。
「それじゃあ今から30分くらい休憩!アタシは馬の面倒見てるから、ハジメ君は優花ちゃんの傍に付いて貰えるかな?防具を洗う水は後でアタシが汲んできてあげるから。警戒宜しくねー」
「了解です」
「はいっ」
(これは馬の為、草食だから怖くない。アタシはだいじょ――――――)
意気揚々と荷台から通り過ぎたばかりの湖へと振り返る優花。
しかし運悪くリモセトスが近くを通り過ぎようとしていた。
ハジメの「あっ」と制止しようとした声が遅すぎた。
目を開けたまま半口開けて石化したようにその場から動けなくなる優花。
「―――――――――ひぅっ」
喉を詰まらせたように小さな悲鳴を上げて後退る優花。
リンネは既に御者席から降りて馬を連れて湖に向かおうとしていた。
ハジメは何とも言えない微妙な表情を浮かべて彼女に一言だけ伝える。
「傍にいろと言われたけど……警戒したいし俺も此処から動くが――――――」
「待ってイヤッ!お願い!南雲ッ、ここにいてっ!!一人にしないでっ!」
「お、おう……分かった。とりあえず落ち着けよ」
(周囲の警戒とは言ったが……肉食が近づけば俺より先に草食種のモンスター達が動くだろう)
金切り声で叫び、手を伸ばす優花を見て若干引き気味のハジメ。
仕方ないと内心溜息をつきながら彼女が奥へ引っ込んだ荷台へと背を預ける。
そよ風が吹き抜けてフゥと気持ちよさそうに息をついたハジメは思わず口にした。
「なぁ園部。余計な事だと分かっちゃいるが……あれくらい見てビビるなよ」
「……む、無理よ。寧ろ南雲はどうやって見慣れたっていうの?」
「ん~村に来て暫くは俺もアプトノスとか見てはビビってアゥータさんに揶揄われてたけどよ……牛とか豚みたいなデケェ家畜って思えば怖くはないし、ハンターになるって覚悟決めた時からある程度デカい竜とかゲームに出て来る化け物みたいなのと戦う気でいたからな……」
「……あんたの経験を参考にしようとした私が馬鹿だったわ」
「酷ぇな」
ハジメがあっさりとモンスターを見慣れて対峙出来るようになったのは理由がある。
一つは襲われて二回も死にかけたことによる耐性が自然と身についたこと。
恐怖心をある程度の精神力で覆した結果、ハンターになった頃には慣れていた。
見たこともない巨大なモンスターを見れば流石に驚いたりはするが恐怖は感じない。
そんな事で一々足が竦んでしまっていては、ハンターになることは不可能である。
補足になるがハジメがモンスターを見て怖がらないのはオタク趣味のお陰でもある。
ある程度ファンタジーなゲームや過激な暴力表現のあるゲームをやっているとよく目にする。
神話的恐怖を人に感じさせる、異形という言葉では収まりきれない化物の数々。
それをゲームで幾度となく相手にしてきたハジメにとって、目の前の現実にそれが現れたとしても「そういうものが居るのは異世界の常識だ」となんとなく理解しているのだ。
ゲームのプレイヤーとなって画面の敵と戦う事、現実で武器を手に相対するのではその身に感じる恐怖は段違いだ。ゲームが心や記憶に恐怖を与えて来る存在であるなら、トータスのモンスターは命の危機を体と本能に直接教えてくれる。後は冷静に対処出来るか出来ないかの差だけ。
(未だに飛竜種とかは真正面から見たら顔怖ぇとは思うけどな)
ハジメの中で、
牙獣はパっと見で凶暴な見た目のゴリラみたいなものと思えた。
しかし竜はどれだけ現実の生物と結び合わせようとしても、超巨大化した蜥蜴に羽を生やして火を噴かせるという常人では理解の及ばない領域に足を踏み入れた存在となってしまうのだ。
つくづく架空の神話や伝説に語られる竜を倒した英雄の凄さを思い知らされるハジメだった。
(俺も何時かは英雄の仲間入り――――――ってのは流石に自惚れ過ぎか)
たかが飛竜一頭倒したところでハンターとしては一人前になれるかというレベルだ。
ある村では火竜リオレウスを倒せるようになってから一人前のハンターという風潮があるらしい。
ハジメはまだ
何時かはなんて曖昧な気持ちではいられない。
自分が納得いく形でモンスターを倒したいという気持ちがハジメの中には残っている。
「―――――南雲……ねぇ、南雲っ!」
「……おぉ、悪いな。ちょっと考え事してた。……なんだ園部」
「何か喋ってよ……黙ってたら不安になるじゃん……!」
「そんな事を俺に言われてもな……お前、俺のコミュ力がどれだけ酷いか知ってんだろ」
村での暮らしや訓練所での生活を経て、多少はコミュニケーション能力を獲得したハジメ。
しかしそれでも実際に意識して楽しそうに会話が出来るかと言われると難しい。
その例としてシアの一件*1がある。
ハジメのコミュニケーション能力にはまだまだ不安が残っていた。
「私にあんたのコミュ力を聞かれても―――――――ヒッ!?」
言い返そうとした優花が何かを見つけて小さく悲鳴を上げる。
ハジメも首の後ろで組んでいた手を離してそっとアイアンハンマーⅢに手をかけた。
荷馬車の近くの背の高い茂みがガサガサと動いている。
何かが近づく音がして、ハジメは鋭い空気を纏おうとしたが――――――
「……なんだ、ケルビの子どもか」
「……し、鹿?」
「まぁ近いようなもんだ」
がさっと茂みから顔を覗かせたのは人の足位までしか大きさがな子どものケルビである。
見た所深緑の毛は生えたばかりで、角はまだ人の指くらいの大きさしかない。
キュルルッと可愛らしい声で鳴く子どもケルビは好奇心旺盛に荷馬車へと歩いてきた。
「いきなり噛みついたりは……しないわよね?」
「草食だし子供だ。噛まれても平気だろ」
膝立ちになって子どもケルビに「おいでおいで」と手招きをするハジメ。
優花も驚きはしたが恐怖は感じないようで、荷台から子どものケルビを見ていた。
ハジメの手に近付いてすんすんと匂いを嗅いだ子どもケルビは不意に斜め上に……
優花が乗っている荷台の方へと顔を向けて歩き出す。
「え、えっ、えっ!?」
ぴょーんと勢いよく地面を蹴った子どもケルビは荷台の中に入ってきた。
混乱してどうすればいいのか分からない優花はハジメに視線でヘルプを送る。
しかし彼は「無理やり捕まえて親を呼ばれたら面倒だぞ」と首を横に振った。
子どもケルビは優花の包帯を巻かれた腕にすんすんと鼻を近づけてきた。
ハジメは「成程な」と納得したように頷いて子どもケルビに微笑む。
優花の包帯には痛み止めとして薬草のエキスを染み込ませた湿布が中にある。
その薬草が恐らくケルビの食べる植物と同じ匂いがしたから食べ物と勘違いしたのだろう。
子どもケルビはついに舌を出して包帯をぺろぺろと舐めだした。
「や、ちょっ!?ぅっ……くすぐったいってぇ」
無理やり顔を押し退ける訳にもいかず、優花は痛み半分擽ったさ半分で身悶えする。
しかし彼女の表情は次第に子どもケルビに対する恐怖心が薄れていた。
犬や猫を可愛がるように、ゆっくりともう片方の手でその毛並みを撫でる。
「……この子……嫌がらないのね……」
「子どもだからな。まだ人間って生き物が警戒する相手だって分からないんだろ」
「……そういうものなの?」
「あぁ。大人は臆病になってステップ踏みながら距離を取ろうとする―――こんな風にな」
とハジメは優花の前でぴょんぴょんと自前のケルビステップを披露する。
動く気配を感じて顔を上げた子どもケルビがハジメのそれを見て真似をし始めた。
優花はなんだか可笑しくて思わずプッと吹き出してしまう。
「くっ、ふふっ……!何それっ……!」
やがて優花の包帯が食べ物じゃないと分かった子どもケルビは舌を引っ込める。
優花も何時までも撫でるのは良くないと手を離して思ったことを口にした。
「……ハンターは、このケルビって生き物も?」
「必要であれば狩るな」
それを聞いた優花は少し鳥肌が立った。
日常生活を当たり前のように送っていたら深く考える人はいないだろう。
自分達が普段口にする肉や魚が元はどういう生き物で、どんな過程を経て食べ物にされるか等と。
ハジメは真剣な表情で荷台から降りてきた子どもケルビを撫でて話す。
「俺ら現代人ってのは売られている肉を買って調理して食うだけだからな。大抵の奴は今自分が口にしてる肉はどういう過程を経て切り売りされるかなんて普通考えねえだろ?トータスはそういう現代で見れなかった過程って奴を嫌でも目にするもんなんだよ」
「…………」
「それに食い物としてモンスターを狩るだけじゃない。この世界じゃ生活を守るためにモンスターと戦うことだって普通だ、王国じゃあんま教えられてないみたいだけどな」
ハジメの言っている事は間違っていない。優花もそういった事は教えられなかったのだから。
神の使徒としてこの世界の情勢はなんとなく教えられた。
子どもケルビが興味を失って去っていくのを見送ったハジメは更に言葉を続ける。
「帝国の……いや、俺達ハンターの考え方はこうだ……”モンスターが自然の一部であるように、それを狩るハンターも自然の一部である。故に我々は自然の繁栄と調和を乱してはいけない。自然の脅威を退けることはあっても、自然の脅威を滅ぼしてはならない。自然の恵みを貰うことはあっても、自然の恵みを独占してはならない。共に生きるのだ”……まぁ教官の受け売りだけどな」
「…………考え方ってこんなに違うんだね。王国と帝国って……同じ人間なのに」
(私達の近くにいた人達って………)
帝国の方が現代人に芽生えた共存という意識に近いものを持っている。
一方で教会の信者が大半の王国では排他的な考えの者が多い。
あの湖の町ウルで神殿騎士の隊長デビットが元ハンターであると名乗ったリンネに対して悪態をついたのがそういう背景があったからなのだと優花は今になって理解した。
暗い顔で俯いた優花を見て、ハジメはそっと荷台に乗り込んだ。
「………っ?」
「ん」
麻袋の中を漁ったハジメが手に取り、優花の前に突き出したのは果実。
農場長のニッカが良かれと思って麻袋いっぱいに詰め込んだゲブルトアップルだった。
食べろという意味なのだと理解した優花はそれを受け取って齧りついた。
シャリっと小気味いい音がして、甘酸っぱい汁が口の中に広がる。
懐かしい味だ。昔はよく遊びにいったお婆ちゃんの家で食べているような懐かしい気持ち。
頬を緩めた彼女の横を通り過ぎて荷台から降りたハジメはゆっくりと口を開く。
「……教会の全部を否定したりはしねぇけどよ……俺は気に入らねえってだけだ」
*
「フーンフフーン、フンフフフーン♪」
湖の傍で草原の上に寝っ転がっているリンネ。
馬は湖面に口をつけて落ち着いた様子で水を飲んでいる。
どうやら草食種のモンスターに害はないと判断したようだ。
鼻歌交じりに上機嫌だったリンネは、ふと気になったことを思い出す。
(普通、こんな数の大人しいモンスターが一気に集まったりしないのよねぇ)
長年ハンターとしてモンスターの生態を見てきたリンネだから分かる事だ。
アプトノス等の草食種のモンスターが群れで大移動をするのは大体が繁殖期の時だけ。
それもこんな荒野と樹海の板挟みになっているような場所ではない。
帝国北の森丘等の穏やかな場所で繁殖期を迎えるのだ。
それが何故こうして湖に集まっているのか……?
(……悪い予感っていつも当たるから、あまり考えたくもないのよねぇ………だけど………)
湖周辺に集まったモンスターに共通して言える
アプトノスであれば足元の爪や頭の角、尻尾の棘、ケルビは毛並みに角、リモセトスの巨体にも色々な箇所にライセン大峡谷の砂が付着している。
つまりこの集団は元はライセン大峡谷かライセンの荒野に生息していた。
それが何故縄張りを離れて危険の多いこの地までやってきたというのか……?
(――――――また
これまでの幸運が偶然ではなく必然だったと結論が出せる。
湖の町から村まで荒野を走り続けた馬と人間を襲わなかったモンスター。
滞在中も生き物の気配が極端に減り続けていた荒野側。
そして王国領を越えて帝国領の端まで大移動をするモンスター達。
鼻歌を止めてむくりと起き上がったリンネは大峡谷の方へ視線を向けた。
「………また、帝国は騒がしくなるわね………」
教官の受け売りがネトフリで公開されてるレジェンド・オブ・ザ・ギルドの一場面で主人公であるエイデンがあるハンターの手帳に書かれた言葉を読むシーンから着想を得て、モンハンWikiとか見ながらなんとなく書きました
ゲームでは銀行扱いだったり乱獲されてるとかは気にしてはいけない……
(MHW:IBミラボ討伐数が50超えて草)
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡