やっとまともにハンターらしいこと出来るハジメ君……
今更な気もしますが、ちょっとだけ今回グロ多めかも?
あと他作者さんリスペクトで推奨BGM「真紅の角」(モンハン)
「――――――はぁ、はぁ!」
軽く息を整えながら、東門の近くまで走ってきたハジメ。
大型のモンスターが門の向こう側で咆哮を上げて、人の怒号も混じっている。
周囲に目を向けたがハジメ以外のハンターはまだ到着していない。
東門近くの住民は既に兵士が誘導してくれたお陰でいなくなっていた。
アイアンハンマーⅢのグリップに手を掛けて東門へと到達する。
兵士の詰め所の扉は開け放たれたまま、中は散らかっていた。
武器の類が消えていることから恐らくは東門の外に出て応戦しているのだろう。
(――――――ッ近い!!)
門の外から聞こえる金属の弾かれる音、兵士が戦っている。
ハジメはアイアンハンマーⅢを両手に構えて暗い門を一気に駆け抜けた。
光差す出口付近には机や荷車などの門近くに置かれていたものを積み上げた即席のバリケードが張られていた。その隙間を通り抜けたハジメの眼前で兵士達とあるモンスターが戦っていた。
薄い黄緑色と薄い橙色を混ぜた独特な迷彩柄の鱗を纏い、頭部には”オレンジウィング”と呼ばれる発達した一対の鶏冠と神経性の麻痺毒が付着した牙を持つ鳥竜種”ドスゲネポス”
既に部下である”ゲネポス”は兵士達の奮闘によって倒され、長である奴だけが生き残っていた。
ハジメの視界の端で倒れるゲネポスに混じって、数人の兵士が息絶えているのが見える。
奥歯を強く噛み締めて、ハジメは怒りを露わに吠えながらドスゲネポスに突撃した。
「これ以上、死なせてたまるかぁぁぁーーーっ!!」
後ろからハンマーを構えてきた彼に気づいて、数人の兵士達はドスゲネポスから距離を取る。
ドスゲネポスも今の怒鳴り声を聞いて、その牙と爪をハジメに向かって突き出した。
「オオオォォッ!」
二度の溜めを意識して後ろに構えたハンマーを振り上げるハジメ。
対するドスゲネポスも大口を開けて牙を彼の頭上へ突き立てようとする。
金属の塊と鋭利な牙の先端が擦れて小さな火花が散った。
初撃、ハジメのアッパー攻撃がドスゲネポスの顎を強かに打ち上げた。
悲鳴を上げて仰け反るドスゲネポスはバックステップで距離を取る。
「俺がコイツを食い止める!あんた等は門の守りを固めてくれ!!」
ハジメは負傷した仲間を助けながら後退する兵士に振り返らず呼びかけた。
返事を待つことなく駆け出して、ドスゲネポスとの更なる戦いに向かう。
彼がハンマーを構える前にドスゲネポスが仕掛けた。
「チッ!」
地面を蹴って数メートルの高さから飛び掛かろうとするドスゲネポス。
ハジメは舌打ちをして体を傾けて右へ転がった。地面へと着地したドスゲネポスに再度ハンマーを叩きつけようと顔を上げたハジメの眼前で――――――
「ッ!?」
既にドスゲネポスは着地の硬直が解けて、回避したハジメに向かって牙を向けていた。
攻撃に転じていたハジメは完全な回避が間に合わずその牙を左肩に突き刺される。
「ぐ、ぎぁ―――――ッ!?」
牙が肉を裂き骨にまで届こうかという痛みにハジメは呻き声を上げた。
しかしそれと同時に噛まれた左肩から腕、指先、全身に何かが突き抜けていく。
ドスゲネポスが牙を抜いて後ろに軽く下がった。
ハジメはまだハンマーの届く距離だと攻撃をしようと足を……踏み出せなかった。
「か、ぁ……くっ……」
(……やられた……
ビクンビクンと体を痙攣させて、口から血に混じった泡を吐き出す。
最後の抵抗でハジメはハンマーを握る手だけは開くことなく握り締めたまま。
ドスゲネポスは獲物が麻痺にやられたのを察して追撃を仕掛ける。
ガブリとハジメの脇腹にドスゲネポスが噛みついた。
麻痺で口も動かせないハジメは絶叫することもままならず、ただ口から血を垂らすだけ。
ドスゲネポスはそのままハジメの体を銜えたまま持ち敢えて、ブンブンと振り回す。
「――――が、ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!?」
ハンターとして得た状態異常からの自動回復によってハジメの全身は自由を取り戻した。
だが同時に今まで体に駆け巡っていた痛みの信号が一気に脳へと伝わり、彼は絶叫した。
常人であれば軽く失神してしまう痛みも、ハンターは意識を保っていられる。
「あああぁぁぁ――――ンのヤロォ……ッ!!」
叫んでばかりで状況が好転する筈もなく、ハジメは再び奥歯を強く噛み締めた。
獲物が身体の自由を取り戻したと知ったドスゲネポスは口を開けて放り投げる。
地面に背中を打ち付けたハジメだが、途中で手をついて再び倒れ込むのを免れた。
「はぁ……はぁ……!」
幸いにも脇腹の出血は見た目ほど酷くはなかった。
意識がハッキリとしている今なら出血多量で気を失う可能性は低い。
他のハンター達はまだ現れない、ハジメは再び交戦を開始した。
「っらあ!」
今度はハジメが地面を蹴って宙に躍り出た。
本来なら40~50センチの段差を利用して行う地面への叩きつけ。
それをハジメは応用で地面に埋まった石を利用して行ったのだ。
十分な威力は出ないが頭に当たれば眩暈を引き起こせる。
しかしドスゲネポスも間抜けではない。
バックステップで距離を取って、ハジメが地面にハンマーを叩きつけた瞬間に合わせて噛みつこうと襲い掛かった。
「っああぁぁぁ!!」
地面に叩きつけたハンマーを力一杯に持ち上げるのではなく、そのまま引っ張る勢いに任せて噛みつこうとするドスゲネポスの下顎に
これはハンマーの戦い方として教わっていない。大剣が段差を利用して縦斬りを行った後に力任せで斜め横へとブン回す技術をハンマーの技として彼がオリジナルで編みだした戦法である。
無防備に下顎を殴られて、ドスゲネポスは再び仰け反り……ついには昏倒する。
奴にとっては運悪く、下顎を殴られた際に牙の一本が破壊されていたのだ。
神経の通った牙の破壊による痛みと二度目の頭部への打撃が脳震盪を引き起こす。
ハジメは間髪入れずハンマーの溜め姿勢でゆっくりドスゲネポスに歩み寄った。
「――――――お返しだ!」
最大溜め攻撃によるハンマーの叩きつけ。
ドスゲネポスの歪んだ視界を覆い尽くしたのは灰色の鉄の塊。
ぐしゃっと肉と骨が潰れる音と共に血が辺りに飛び散った。
*
「………くそっ………」
ドスゲネポスの潰れた頭部からハンマーを引いて、ハジメは悪態をつく。
戦闘が終わり、周囲に目を向けて……より正確な兵士の犠牲を目の当たりにした。
首をドスゲネポスの牙で裂かれて血溜まりに倒れて目を剥いて絶命している者。胴体に無数の爪痕を刻まれて岩に叩きつけられたのか、腸を地面へとぶちまけている者。戦いの最中にも関わらず、部下のゲネポスにやられたのか体中を啄まれて原形を留めていない者もいた。
辺りに漂う死臭に顔を歪めたハジメは自らの無力を嘆く。
(俺がもっと早く動いていれば――――――)
地震が起きた時、モンスターがどうなるか考えることも出来た筈だ。
あの場で子どもと母親を優花に託し、リンネに伝言を残して動けた筈だ。
兵士の死はハジメの責任ではないが……それでも彼は
(――――――町は必ず、俺が守ります……!)
一人一人の死体に歩み寄って、見開いたままの目をそっと閉ざす。
可能な限り安らかに眠れるような体勢に変えて、暫くの間ハジメは黙祷を捧げる。
彼に許された時間はこの僅かな死を悼む時間しかない。
スッと顔を上げたハジメは大峡谷の方へと顔を向ける。
まだモンスター達の咆哮は聞こえている。遠くには移動時に生じる砂煙らしきものも見えた。
それらがこうしてブルックの町に近付けば……兵士の犠牲は必ず増える。
「――――――させるかっ!!」
ハンマーを背負い、まだ到着しないハンター達の応援を待たずハジメは駆け出す。
その瞳には彼らの死を無駄にしない為にも、絶対に町を守るという決意が宿っていた。
*
「………ッあれは!?」
東門から少し離れた荒野でハジメは新たなモンスター達を発見した。
黄色の外殻に青の縞模様が入った巨大な体躯、空中への飛翔ではなく地上での移動を主とした前脚には進化の名残である飛膜と、太く鋭い爪が生えていた。
胴体と変わらない太さの尻尾の付け根に鳥竜種のそれと酷似したくの字の後ろ足が生えている。
獰猛な顔つきに見合う牙を持つ”
ハジメは気づかれない内にさっと近くの岩陰に身を隠して様子を窺った。
ティガレックスは先ほど彼が狩猟したドスゲネポスとは体の大きさも強さも段違いだ。
ましてやハジメはダメージを受けてから自然治癒だけで此処まで来た。
アイテム一つ持っていない今の彼が真正面からやり合って勝てる相手じゃない。
(………地震の影響か……キレてやがるな……)
ハジメが読んでいたモンスター図鑑曰くティガレックスの怒り状態には特徴があるという。
普段からその凶暴性を余すことなく発揮するティガレックスの興奮がピークに達すると体の末端部分から血管が拡張し、充血することで頭部や外殻の一部に赤い波模様が浮かび上がる。
その反動なのか全身の肉質が軟化するものの、身体全ての動きが加速して凶暴性が跳ね上がる。
新米ハンターが命を落とす、負傷で引退を余儀なくされる例として最も多いのがティガレックスに単身で挑むことだ。
そんな怒り状態のティガレックスと相対するのはドスゲネポスとそう変わらない大きさの鳥竜。
体の殆どが鮮やかな緑色の体毛と鱗に覆われながら、鋭い牙を剥き出しにした顔だけは薄い赤色が差して黄色い鶏冠が後頭部に生えている。
最大の特徴は全体重を支える足よりも一回り巨大な幅広の尻尾だろう。
棘の生えた尻尾の内側には衝撃を吸収する肉球があり、このモンスターは尻尾だけで全体重を支えられるといった特徴の他に、巧みな尻尾の使い方で相手を攻撃することも出来る。
その姿を見た一部のハンターからは群れを率いる生態も含めて”跳躍のアウトロー”と呼ばれている。別名”
この二頭が興奮した怒り状態で偶然出会い、一触即発の状況にハジメは現れたのだ。
幸運なことに二頭ともハジメの存在には気づいていない。
平時であれば聴覚や嗅覚で気づかれるが、争いの最中にその余裕はないのだろう。
(これは明らかにドスマッカォが不利だ……)
ドスマッカォが何をどうしようとも、絶対にティガレックスが勝つ。
統率力がドスランポスやドスジャギィに劣るドスマッカォの部下”マッカォ”はこの場にいない。
恐らくはティガレックスの出現に恐れをなして長を見捨てて逃げたのだろう。
しかし怒りで頭に血が昇ったドスマッカォに逃走の考えはない。
いや、仮に今この瞬間に背を向けて逃げ出そうとしても無駄だった。
ティガレックスがその牙を剥き出しにして飛び掛かったら、避けることは不可能だからだ。
ならば万に一つの可能性に賭けて、ドスマッカォがやるべきことは――――――
(……あいつ、仕掛けるか……ッ)
無謀であろうとも目の前の敵に立ち向かうこと……!
ハジメはドスマッカォが少しでもティガレックスに手傷を負わせることを祈った。
………が、弱肉強食の関係性が揺らぐことはない。現実は常に非情である。
(ッ!!?)
助走をつけて尻尾を棍棒のように叩きつけようとしたドスマッカォ。
尻尾が振り回されるより先にティガレックスが突き出した前脚で身体は吹き飛ぶ。
地面に倒れ込んだドスマッカォに容赦なく飛び掛かったティガレックスは、その牙を真っ先にドスマッカォの首筋へと突き立てた。
悲鳴をあげて藻掻く時間も与えられず、ドスマッカォは絶命した。
「―――――――――ぁ、ぅっ」
ハンターとして凄惨な場面は見慣れている筈だったハジメも狼狽える。
ティガレックスが興奮で鼻息を荒くしながら獲物を貪る様が、あまりにも衝撃的だったからだ。
モンスターの捕食に品性等というものは存在しない。獲物の肉へと突っ込んだ鼻の先と血肉を咀嚼する口周りが赤く濡れて、肉片や血が周りに飛び散る。
ハジメはモンスター図鑑に書かれていたある一文を思い出した。
ドスマッカォが跳躍のアウトローと呼ばれるように、ティガレックスにも呼び名がある。
自然の生態系における頂点の一角に数えられる奴の異名、それは――――――
”絶対強者”
まさかのハジメ君初見ソロティガレックスとかいう……
ただ、あくまでこいつも
ドスジャグラス君に引き続き大型の犠牲にされたドスマッカォ君に合掌
個人的にハンマーでティガはキツいっす……せめて近接なら盾ある奴じゃないと
あと恒例の作者気まぐれアンケートを実施します(書きながら気になってたので)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡