強いて言うなら、やっとハンター出てきますが、一瞬だけです。
「―――ッシャァッ!」
「ひぃっ!?」
ライセン大峡谷の何処かで小型の肉食恐竜みたいな魔物に襲われたハジメ。
大口を開けて飛び掛かってくる魔物に対して、ハジメは恐怖に耐えられなくなった膝から力が抜けたのか、ガクリとその場で尻もちをつく。
それが魔物と出会った最初の不幸中の幸いだろう。
魔物の牙は虚しく空を噛んだ。ハジメは身体に命令した、動け、動け!と
(今のを避けられたのは奇跡だ……!餌になる草食動物が、肉食動物の一撃目を本能で避けるのとは違う……。僕の恐怖心が、たまたまアイツの牙から逃れただけ……!)
奥歯をぎりっと噛み締めて、足の指先まで力を込めたハジメは座り込んだ状態から跳ねるように体を起こして魔物の脇を擦り抜けた。
首を傾けて再び噛みつこうとしたが、走り出したハジメの方がコンマ一秒の差で動きが速かった。彼の頭の真後ろでガチッと牙が噛み合う音がする。
(直線で逃げちゃダメだ―――!あの足は確実にさっきの猫より速い!)
何かの本で読んでいたのか、はたまたゲームの豆知識だったか、ハジメは知っていた。襲ってきた魔物の足が鳥のようなくの字に折れていること。
それが走る為に特化している他、とてつもない跳躍力を秘めているということを。
走って開いた程度の距離なら、飛び掛かるだけで零にする事も容易である。
そしてハジメは咄嗟に考えた「逃げる先を読まれないようにする為にジグザグに走ればアイツから逃げきれるのではないか!」と―――だが事態は急変した。
「―――――ギャァ、ギャァ、ギャァ!」
「……えっ……?」
突然、天を仰いで叫ぶ魔物に困惑するハジメ。それを見た途端、嫌な予感しかしなかった。
ジュラシック・パークのヴェロキラプトルが「仲間を呼ぶシーン」とよく似ている。
そして―――嫌な予感ほどすぐ当たってしまうものだ。
「「「「ギャアッ!グエグエッ!」」」」
(……嘘……だろ……?―――
見た目は全く同じ―――青い鱗に這う黒い斑点模様の位置や牙、爪の長さが少し違うくらいの差しかない―――魔物の個体が四体、近くの岩陰から飛び出してきた。
ようやくハジメは理解した。此処が彼らの
「シャアッ!」
先頭を走る一体が跳躍してハジメへと飛び掛かる!
鋭利な爪がハジメの背中を捉えるが、僅かな差で横へ飛んで直撃は免れた。
「い、ぎ――――あああぁぁぁぁぁっ!!!」
地面へと転がりながら背中に走る痛みで絶叫するハジメ。
完全には避けきれなかった。服の背は切り裂かれ、血がにじみ出る。
それは彼の今まで受けてきた仕打ちとは比べ物にならない、想像を絶する痛みだった。
人に殴られ、蹴られて、魔法で軽く吹き飛ばされた程度なら鈍い痛みで済む。
しかし魔物の爪で背中の肉を抉り取られる痛みは、一瞬でも気を抜けば意識を失いかねない。
歯を食いしばって痛みに耐えるハジメはよろよろと立ち上がり、再び逃げ出そうとする。
それを追いついて来た魔物が待っている筈もなく―――五体は一人の身体へと牙を剥く。
「い、いだい!痛いイダィ!!!やめ、がぁ!?やめて!やめてくださあがあぁぁぁ!おねガ、お願いだからぁ”ぁ”っ!?ぎあぁぁっ!う゛ぎや゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっっっ!!」
傷になった背中を庇って仰向けに地面へと転がったのが最悪の行動だった。
腕を出せば鋭い牙が突き刺さって骨ごと噛み砕かれるような痛みに絶叫。
腕を擦り抜けて顔を突っ込んだ一体の牙は下腹部の肉へと齧り付いて咀嚼する。
足はもう逃げられないようにするつもりか、太腿に爪を刺して動きを封じている。
噛まれる、噛み切られる、踏みつけられる、切り裂かれる、血が出る、血を吐く。
ハジメの意識が遠のいていく―――ここで、終わってしまうのだろうか?
(やっぱり、無理があったのかな……無能な僕が異世界を一人で歩くなんて)
遅すぎる後悔は自らを嘲笑う声となって、短い人生の記憶に焼き付いた光景が浮かんでは消え、まるで白黒の映画フィルムを直接見ているような感覚に陥る。
趣味に人生を捧げると決めた時から、周りから嫌われる覚悟はしていた。
クラスメイト達から嫌われた理由の一つ目はそれだったと今でもハジメは覚えている。
何時からだろうか?学校の生徒たちから人気者の白崎が自分に話しかけるようになったのは。
それがクラスメイト達の敵愾心を強くさせる原因になっていたと、彼女は知っていたのか?
彼女の友人、八重樫はハジメを「心の強い人」だと思っている。
しかしそれは心が強いのではなく、
一年、二年の間を耐えれば心を傷つけられる日々から逃れられると信じていたハジメは、弱い自分を決して見せないように振舞っているに過ぎなかった。
あまりに大きすぎる負の感情は、心を壊して人格を歪めてしまうだけなのだから。
そしてそれは―――異世界に召喚されてしまった時から、徐々に抑えが効かなくなっていた。
趣味の時間を失い、毛ほどの興味もないクラスメイト達とほぼ一日中行動を共にするなんて、普通の人間なら耐えられる筈がない。南雲ハジメは普通の人間だ。
(何で僕はこんな目に遭っているのかな……?天之河君が魔人族との戦争をしようなんて意気揚々と宣言したから、その気がなかった僕はあんな惨めな思いをしたんじゃないのか?)
(そもそも異世界に来る前からだ、白崎さんが僕に話しかけてさえこなければ、ちょっと檜山君が絡んでくるのを作り笑いで耐え忍べば他のクラスメイト達は関心を持つことがなかったんだ)
(八重樫さんも僕が耐えているって知ってたのなら止めてくれればいいのに。―――ううん、彼女はきっと僕を助けてなんかくれる訳ないよね……思い上がりだった……)
(畑山先生に相談したってクラスメイト達に丸め込まれるか、
正常な思考回路が壊れていく。
感情を制御する理性が溶けていく。
継ぎ接ぎの記憶が悪意を誘う。
悪意が狂って殺意に変わる。
(………死ぬ前に………魔物の一匹くらい、
普通の人間、南雲ハジメは―――――ここで終わりを迎えた。
*
白目を剥いて口から血を零すハジメはまだ辛うじて生きている。
しかし魔物たちに食い散らかされた傷と出血を放置すれば、長くは持たないだろう。
更に魔物たちは気を失った彼の身体をまだ捕食しようとしていた。
「――――見つけた」
―――ふわりと風が吹いて、魔物の一体がハジメの身体から離れていく。
正確には魔物一体の身体に食い込んだ鋼の刃が、鱗を切り裂き肉を断って骨を砕きながら、魔物の身体を宙に吹き飛ばしたのだ。
突然の仲間が攻撃を受けたことに驚いて顔を上げた魔物たち。
次の瞬間―――ギィンと金属の刃が振りぬかれる音と主に、魔物たちが吹っ飛ぶ。
地面に倒れた瀕死のハジメの傍らに、いつの間にか一人の少女が立っていた。
雪のように白い髪のポニーテールに蒼い角が生えたカチューシャ。
白い毛の肩当てと黒のインナーに隠れた豊満な胸が揺れる。
胸から臍のラインまで健康的な素肌を晒すが、寒そうな素振りを見せない。
腰に巻いた黒いベルトに白毛皮の前掛け、尻を隠す白い毛は生き物の尻尾さながら。
ムッチリとした太腿を露出して、膝から下を白い毛皮のグリーブで覆っている。
白毛皮の籠手。黒いチョーカー。手に握られた青白い刀身の太刀。
魔物たちを瞬く間に殺したのは、少女の細腕で振りぬかれたこの太刀の一振りである。
「…………」
少女はハジメの傍らにしゃがみ込んでハジメの口に掌を当てる。
既に意識はなく、残った命も風前の灯ではあるが―――奇跡的に彼はまだ生きていた。
傷の具合を確かめながら、自分の白い毛皮装備が血で赤く染まるのも気にしない様子で少女はテキパキと応急手当の準備を始める。
「だ、
少女がハジメの応急手当に集中していると、近くの土が盛り上がって一匹の猫が飛び出る。
それはついさきほどまでハジメを追って、殺された魔物の気配を察知して逃げた二足歩行の猫と体毛の色が違うだけの魔物だった。
地球で言う三毛猫カラーのその猫は脇に緑のドングリを模した鞄を斜めかけにして、背中には魔物の骨か何かを加工してつくった
「………」
「ニャ?だんにゃさん、その死にかけの男の子助けるニャ?」
猫はそれだけ見て「じゃあ僕はギルドの荷車を呼んでくるニャ!」と言って、再び地中へと潜る。
暫くのあいだ、静寂に包まれた荒野の一角で、武器を背にした少女によるハジメの救命措置が行われた。
その後、日が傾きかけた時になって地平線の向こうから荷車がやってきた。
先ほど少女に話しかけた猫の他に、数匹の猫が後ろから荷車を押している。
少女は出血を止めて、包帯を巻いたハジメの口に
「ニャ!キャンプへは向かわず、村に運びますニャ!」
「「「ニャ、ニャ、ニャーッ!」」」
荒野には一人、太刀を背にした少女が取り残されていた。
荷車に揺らされて再び地平線の向こう側に消えていくハジメを見送った少女は、ゆらゆらと歩きながら首を左右に揺らして、荒野を歩き回る。
彼女は魔物―――――モンスターを狩る者。
瞬殺されるランポス、太刀を背にした美少女ハンター、死にかけハジメ君
いよいよオリジナルのハンターが出てきます。
描写が下手くそなので伝わりづらいかもしれませんが、ハンターの彼女が身に着けている装備と武器は同人誌界で人気のアレと太刀なら2ndくらいからお世話になっている名前がカッコいいアレです。
ほぼ勢いで書いたのを軽く修正加えて出しただけなので、ところどころ文章がおかしいと思います。ご指摘、宜しくお願いします!
感想もどんどん待ってまーす!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡