モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

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 今回も内容的には短めに、エタノ回になります。
最近は暑かったり寒かったりと気温の変化が激しいですね。ノースリーブにパンイチでいる事もあれば、ジャージ上下だったりと……すっかり秋ですねえ。



夜半のコンファレンス

 

 意外にも長引くかと思われた老山龍対策会議はあっさり終わった。

ハンター達は夜明けと共に大峡谷へ、トレイシーが率いてきた第一連隊の帝国兵を護衛しながらの移動となる。彼らもラオシャンロンの撃退作戦には参加するのだ。

 

 ハンター達が出払ったブルックの町はバイアスの私兵と、残った駐屯兵に加えて、いざという時は冒険者達も戦力に加えて町の防衛に務めさせる。

住人達は暫くの間、商人も含めてブルックの町から出る事を禁止された。これに反対する者はいなかった。わざわざモンスターの餌になりにいく愚か者はいないだろう。

 

 そして問題となった狐人商会、エタノ達の処遇だが――――――

 

「彼女達が持ち込んだ品々は非常に興味深いが、取引相手はお前に限定されている。大役を任せたばかりで申し訳ないが……錬成師、お前の判断で彼女達を町に残すか連れていくか決めておけ」

 

 エタノ曰く「今はまだ、ハジメ様以外に商売をするつもりはありません!」との事で、ハジメは頭を抱えながらもエタノが持ち込んだという商品について説明を受けるのだった。

会議が終わってマサカの宿にリンネと優花を送る際、エタノが割り込んできた。

 

「初めまして♪()()()()()()()()()でエタノ・ママモと申します~以後、お見知りおきを」

 

「ど、どうも……?園部優花です」

 

「あらまぁ、早速牽制とは手回しの良いこと!」

 

 エタノがハジメのことを強調して名乗った事に優花はたじろぐ。

……が胸の内では「ハジメの~」と言われた瞬間、無意識にムカつきを覚えた。

当然、無意識の感情なので気づくことのない優花は困惑するばかりだった。

 

 既に自己紹介を済ませているリンネは意味深な笑みでエタノと優花を交互に見て、最後にハジメの方へとチラと視線を向けて「ちゃんと二人に向き合ってあげなさいよ?」と小声でアドバイスを送っている。

何のことか分かっているつもりだが分かりたくないハジメは渋々といった感じで頷いた。

 

「それじゃ俺はこの後もあるんで……おやすみなさいリンネさん。園部もおやすみ」

 

「はいはーい、アタシは健康優良児だからもう寝るわぁ~おやすみぃ~!」

 

「うん………おやすみ南雲。頑張ってね」

 

「おうよ」

 

 二人の背が遠ざかっていくのを見送って、エタノとハジメも移動を始めた。

行く先は決まっている。エタノの部下達が待機している荷車の傍に設置された簡易テント。

リーダーが戻ってきた事で部下達は忙しなく動き回り、荷台の商品を下ろしていく。

夜間で眠りにつこうとする住民もいる事を考慮してか、彼らは物音を立てないよう注意を払った。

 

「んで………念のためにこの町に来た理由を改めて聞いても?」

 

「勿論♡ハジメ様に会いにですよ」

 

「………」

 

「やぁん♪そんな百パーセント嘘だろ…みたいな顔しないで下さいまし!半分は本気ですのよ?」

 

 つまりもう半分は建前(ウソ)であると……?

ハジメは眉間に手を当てて将来、片頭痛に悩まれませんようにと祈りつつ話を続けた。

彼の真面目な表情を見てエタノも空気を呼んだのか、パチンと広げていた扇を閉じる。

 

「実のところ樹海を出てから先、荒野を抜けて王国の物分かりが良い貴族辺りに商品を押し売りにでもいこうかと考えていましたが、件の老山龍が現れたせいで我々も立ち往生。仕方なくこの町に避難しに来たというのが本音ですわ」

 

「成程な………それで、どんな商品を売る予定だったんだ?」

 

「あら、興味が御座いまして?」

 

「一応な」

 

 ハジメがそう答えるとエタノは頬を釣り上げて笑みを深める。

鴨が葱を背負って来たと言わんばかりの悪徳商人じみた笑い方だが、彼に特別な感情を抱いている彼女に限って阿漕な商売をするつもりは………多分無いだろう。

彼女が背後の部下に指示を出すと、荷車の中をさっと見やすいように広げる。

 

 籠に入れられた稀少な植物や鉱石、何処から拾ってきたのかモンスターの素材まで混じっている。何処から仕入れたのか、ハンター達が愛用するアイテム等も幾つか入っていた。

それが少し気になってハジメが聞こうとする前に察したエタノが答える。

 

「此方の品々、樹海を訪れていた狩人様の調合を見様見真似で作ったものです」

 

「見様見真似?そりゃ凄いな………」

 

 ハンターの作る物の大半はそれなりの知識がなければ簡単には作れない代物だ。

一般にも流通している事からハンターがそれらを調合して市場に流して商売をする事だって可能なレベルのアイテムが、荷台の中を半分以上占めている。

 

 まずハジメが手に取ったのは血のような赤い色の半透明な液体が入った瓶だった。

それは”怪力の種”*1”増強剤”*2を調合することによって生成される”鬼人薬”である。

飲んだ者はたちまち鬼の如き力を得ると言われているが、トータスにも鬼がいたのだろうか?

何となくそれが気になったハジメはまた本を読める機会があったら調べようと考えていた。

 

 鬼人薬があるならと彼が籠の周りに目を凝らすと、茶色の液体が入ったものが見えた。

それは”忍耐の種”*3と”増強剤”を調合することによって生成される”硬化薬”である。

飲んだ者は一時的に皮膚が岩の如く硬質化する。

また食べ物にも振りかけた際にも硬化が発生すると最近の研究で判明した。

 

「……これ全部お前らが作ったのか……?」

 

「はいっ♪数年間かけて純正品と寸分違わぬものを作ったと断言出来ますわ♡」

 

「………」

 

 ハジメは瓶を元の位置に戻して顎に手を当てながら暫し考え込んだ。

今回のラオシャンロン戦は何が起こるか分からない。

万が一の場合にも足手まといになる確率は少しでも減らすべきだろう。

チラと並ぶ鬼人薬と硬化薬を見た彼はエタノに視線を移して口を開いた。

 

「――――――そこの薬二つ、俺が買うとしたら値段は幾らだ?」

 

「こちらのお薬ですね?材料費は樹海で採れたものですし市場に出回っている物より格安に設定するとして~。人件費運搬費利益率をあれこれして………ふむ、おひとつ1000ルタでいかが?」

 

 ちなみにだが集会所で販売されているアイテムそれぞれの値段だが……

薬草は20ルタ、回復薬は66ルタ、解毒薬は60ルタ、クーラーorホットドリンクは300~250ルタ。

ピッケルは三段階のグレードで60、160、240ルタとなっており、虫あみはその半分の値段。

モンスターの生態等を記した報告書に関しては最低でも100、最高で500ルタ要求される。

ハンターの調合書は五段階のグレードで1000~15000ルタとなっていた。

 

 怪力/忍耐の種は滅多なことがない限り市場に並ぶことはなく、単価は常に変動する。

一時期は貴重な強化アイテムとして種一つに140ルタの高値がついたこともあったが、それで荒稼ぎするハンターが多く現れた後、単価が28ルタにまで下がったこともある。

エタノの提示する金額は種ににが虫とハチミツを足して彼女らの利益分を込みにしても少し高い。しかしハジメも諦めきれず、交渉へと移っていく。

 

「複数個買うとして、最終的な値段を下げられないか?」

 

「ほう値引き交渉ですか……そうですねぇ……では850で」

 

「あともう一押し欲しいところだな……ダメかエタノ?」

 

 少し恥ずかしいとは思ったが、ハジメは行動で彼女の心を揺さぶる事にした。

口元に微笑を浮かべ、眉は困った風に八の字を描き、目には懇願の色を滲ませる。

すると彼女は扇を手元から取り出してバッと開きながらそっぽを向いた。

若干だが耳と尻尾が嬉しそうにピコピコ動いたり揺れたりしている。

 

「―――では800ルタ。これ以上は何を言われても下げられませんよ?」

 

「800か……よし何とか買えそうだな。鬼人薬、硬化薬両方とも3つくれ」

 

「はい、どうもありがとう御座います♪」

 

 それからも並べられた商品をなんとなく眺めていたハジメ。

両手で抱えられるくらいの麻袋の中に詰められた6個の瓶をエタノから受け取った。

周りに人がいないのを見計らってエタノに近寄って小声で話しかける。

 

「今回の老山龍の件、魔人族は絡んでいるのか?」

 

「――――――それは情報として正確なものをお望みで?」

 

 勿論ハジメもタダで教えてくれ等と云うつもりはなかった。

懐を弄るとこれまでの買い物でルタの残りも少なくなってきた事に気づく。

ハジメは1000ルタを、エタノの掌に載せて言葉を続ける。

 

「これが今出せる情報料だ」

 

「――――――少なくとも樹海にいる間、彼らがそれほどの恐ろしいモンスターを従えているという話は族長から聞かされておりません。あくまで今回の件は自然現象の一種と考えるべきかと」

 

「なら老山龍の活動時期が短くなった事について心当たりは?」

 

「いえ全く。……というよりあんなモンスターがいる事も初めて知りました」

 

「分かった。今回はこれだけしか無くてスマンな」

 

「フフフ、お気になさらないでください。次は此方からハジメ様が飛びつくような情報をしっかりとご用意しておきますわ♡」

 

「期待しとくよ。それで、町に残るか荒野まで着いて来るかって話だが――――――」

 

「ん~………今回ばかりは町に残ろうかと思います。身を守る術は持っているつもりですが、それで狩人様達のお荷物になってしまったら今後の商売に響きますから」

 

「分かった。その旨を俺から皇女さんに伝えておくよ」

 

 こうしてハジメとエタノ、狐人商会の話し合いは一時間弱で終了した。

部下達を引き連れて兵士に指定されたテントへと入っていくエタノ。

背を向けた彼女の尻尾が左右に揺れるのをなんとなくハジメは眺めていた。

すると目敏くそれに気づいたエタノは悪戯っぽく笑い、振り返って聞いて来る。

 

「ハジメ様。ワタシの尻尾は少々お値段が張りますが……よろしくて?」

 

「………この後、大事な用があるんでな………残念だが遠慮しておく」

 

「そうですか……。ではハジメ様、おやすみなさいませ♪」

 

「あぁ、おやすみエタノ」

 

*1
植物の種の一種。飲んだ者の経絡エネルギーの流れが活性化し、使用者の攻撃力が一時的に上昇する

*2
にが虫とハチミツを調合して作る。薬物の効力を最大限引き出す他、状態異常系の弾丸の上位互換を作るために用いられることもあるという。余談だが増強剤単体で飲むことも可。味はハチミツよりも甘いが栄養などは特にない

*3
植物の種の一種。飲んだ者の肉体の強度を高める他、防御弱体化状態を打ち消す力を持つ




 ハジメ君おくすりキメるハンターに目覚める。
いまだに生焼け肉と増強剤で強走薬が出来る原理が謎過ぎて宇宙ネコになる作者です。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
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