エリア移動したので推奨bgm「勇者のためのマーチ」
この場合の勇者はハンターなのか、或いは兵士達か、それともラオシャンロン自身か…
先行して町を出たハンター達が安全を確保した街道を帝国軍は進む。
空を飛ぶ一匹の鳥が、隊列の先頭を進む皇女トレイシーの腕に止まる。
その脚にはハンターズギルドの象徴が描かれた小さな布切れが巻き付けられていた。
彼女が丁寧にそれを外すと、鳥は再び空に向かって飛び立つ。
(初戦は予定通り。一名が軽傷を負うが、作戦続行に支障なし……か)
その報告を書いたのはラオシャンロン撃退に向かった四人のハンターの一人、テレサだった。
トレイシー率いる帝国軍が目指すのは第二攻撃が行われるエリアの先の直線。隊列の中央を進む荷車に積まれた支援物資を仕掛ける為に向かっている。
支援物資の中身は、ブルックの町中からかき集めた爆薬とタルで調合した特製のタル爆弾。
対巨龍爆弾に比べて威力は低いが、破壊された部位に対しては一定の効果を上げられる。
問題があるとすれば頭上からのタル爆弾投下にハンター達が巻き込まれないかという事だが―――
先の展開を考えていたトレイシーの眼下、彼女を背に乗せていたイルシオンが急に足を止める。
後続で馬に乗るバイアスがそれを見て後方の兵に手で制止を促すと、数秒で全員がその場で止まった。「どうした?」と彼女がイルシオンに聞くよりも先に、答えは霧の中からやってきた。
―――ゴアァッ!
霧の中、街道の傍にあった大岩―――トレイシー達からは見えていなかったが―――から飛び降りた一匹の鳥竜種はイルシオンの真正面に立って吠える。
毒々しいまでの滑らかな赤い鱗と皮に覆われ、咳き込んでいるように聞こえる独特な低い鳴き声。
鼻先の瘤が異様な発達をして、リーダーの証である鶏冠の代わりをしている。
小型の鳥竜”イーオス”の親玉である”ドスイーオス”が帝国軍の前に現れたのだ。
もしこれが生身の人間だけで組織された軍隊であれば大混乱に陥っていただろう。
群れの姿はないが、相手は猛毒を使って執拗に獲物を襲うことで知られるモンスターだ。
しかし彼の眼前には人に飼われているとはいえ、夜鳥
―――ギュイエエエエエェェェッ!!
イルシオンが咆哮と共に内側が濃い青色の両翼を大きく広げて威嚇する。
咄嗟に耳を塞いだトレイシーは後ろに仰け反って、そのまま地面へと降りた。
近くにいた兵士達に動揺が走るも、勝負は既に始まっていた。
先制攻撃を仕掛けたのはドスイーオス。
大型の飛竜すら苦しめる猛毒が含まれた牙でイルシオンに噛みつこうとする。
噛まれる寸前で羽ばたきと同時に地面を蹴ったイルシオンが空中へと飛翔してそれを躱した。
攻撃が外れたドスイーオスの無防備な頭に向かってイルシオンは空中で身体の向きを変えて頭から突っ込むように、ドスイーオス目掛けて嘴を突き出した。
鶏冠の一部が裂かれて血が噴き出し、ドスイーオスは悲鳴を上げて後ろ下がる。
ドスイーオスの後ろに飛んでいったイルシオンは反転して、今度は背中に爪を突き立てた。
「―――よくやったイルシオン」
背後のイルシオンを振り解こうとしたドスイーオスの眼前で声がした。
腰から剣を抜いたトレイシーがいつの間にか距離を詰め、剣はドスイーオスの下顎を貫いて鼻先の瘤にまで届いていた。強制的に口が開けられない状態のドスイーオスの目が大きく見開かれる。
彼女はニィと笑って剣を持つ手に力を込めた。
ゴキャッ!と嫌な音が響いて、ドスイーオスの背骨がイルシオンの脚で潰される。
時間にして数分にも満たない戦闘の結末は分かり切っていたことだった。
群れていない群れの長と、長年闘争の中に身を置いたイルシオンでは格が違う。
トレイシーもハンター程ではないが、モンスターと戦える術を身に付けている。
戦闘の経験値の差、数的不利という条件で勝つべくして勝ったのだ。
「死体は脇に退けて、作戦終了後に回収しろ」
「―――は、はいっ!!」
散歩でも終えたかのように軽やかな身のこなしイルシオンの背に乗ったトレイシーが、後ろで呆然としていた部下の兵士に向かって声をかけると、彼はすぐ我に返って慌てる。
バイアスは当然だと言わんばかりに鼻で笑っていた。
彼はドスイーオスが現れてから終始その場で目を閉じて事が済むのを待っていたのだ。
「怯むな!一騎当千の兵士達よ。戦姫の旗の下に勇ましく進め!!」
「「「オオオォォォォッ!!」」」
トレイシーの鼓舞に、後続の兵士達が叫び声をあげる。
止まった分の時間を取り戻すべく、隊列は足早にライセン大峡谷を目指した。
この出来事が、第二攻撃地点でハンター達がラオシャンロンと戦っている間に起きた事である。
*
第二攻撃地点は時間経過で霧が少し晴れて見通しがよくなっていたが、雨の影響で地面が泥濘、ガンナー達は第一攻撃地点よりも低い位置から射撃を行う羽目になり、近接攻撃組であるテレサとロスマンは足場を気にしながら戦う事を強いられていた。
「せぃ!はぁっ!やぁっ!」
ラオシャンロンの懐へと潜り込んで殴り続けていたテレサ。怯みと共にラオシャンロンの巨体に押し潰されそうになるのを、バックステップで完璧に回避する。
「くっ……!?」
顔を殴り続けていたロスマンは斧状態で殴り続けていたが、運悪く命中したところの肉質が固かった為、切れ味の消耗が激しく後退を余儀なくされた。
「ハジメ!背中だ、背中の甲殻を狙え!」
「了解ッ」
匍匐の状態から狙撃竜弾で狙いをつけたアイクが叫ぶ。
炸裂音と共に貫通弾のような形状の特殊な弾頭がラオシャンロンの甲殻を貫いた。
背中の甲殻一枚と脇腹を少し掠めた弾頭から散布されたものが立て続けに爆発する。
返事をしたハジメも装填する弾を機関竜弾へと切り替える。
其の名の通り、マシンガンの如く多数の弾がばら撒かれた。
弾一つの威力は低いが命中箇所に継続して攻撃を当てる事でダメージが上昇する。
ガンナー二人からの攻撃を受けてなお、ラオシャンロンの背中には罅も入らない。
装弾数50発の機関竜弾が切れると、ハジメはアイアンアサルトⅢのカートリッジを取り出す。
冷却時間を与えて弾を再装填しなければ機関竜弾は使えない。
調合した徹甲弾Lv2を惜しみなく使って、ハジメは背中を狙い続ける。
何度目になるか分からない怯みの後、ラオシャンロンは反撃を行った。
狙いは眼下のテレサとロスマン。右の壁際に体を寄せてから重心を低くして、左の壁目掛けて自らの巨体を押し付けて潰そうとタックルを仕掛ける。
テレサは咄嗟に空中へ飛び上がり、左の壁へと空中回避を行いながら更に上へと壁を蹴って攻撃の当たらない位置まで移動したが、ロスマンは納刀に手間取ってもろに攻撃を受ける位置にいた。
ハジメはイチかバチかの賭けでアイアンアサルトⅢから手を離して地面に手をつける。
「対象の状態変化”錬成”!―――ロスマンさん!前に飛んで下さいッ!」
「あい分かった!」
詠唱と同時にハジメは一瞬視界がブラックアウトを引き起こす。
手をついた先の泥濘に頭から突っ込みながら気合でバッと顔を上げる。
ロスマンが目を向けた先の泥濘が岩のように固まり、踏み台に変化していた。
ロスマンはそこに足をかけて宙に大きく飛ぶ。
足の裏をラオシャンロンの鼻先が掠めたように見えたが、ギリギリ被弾を免れた。
ハジメは顔についた泥を振り払ってアイアンアサルトⅢを握り直す。
(何時もの錬成とは違う……全身が凍り付いたかと思った……!)
ライセン大峡谷では基本的に魔法が使えない。
原因は何らかの力が大峡谷地下から生じて、魔力を吸っているからだという。
余分に出力を上げて魔法を行使すれば発動は可能だが、かなり非効率的である。
ハジメもそれを知っていて錬成を使う事を躊躇っていたのだ。
(錬成は何度も使えない。今みたいなタイミングに取っておくんだ……!)
「ハジメ、助かったぞ!」
「―――はいっ!」
第二攻撃では部位破壊を達成できなかった。
しかし全員が無傷で帰還し、第三攻撃までに余力を残せた。
残るは第三攻撃地点で完全な部位破壊か撃退。
そこを越えた先にある崩落した旧砦での最終防衛戦である。
ラオシャンロン戦に話数を多めに割こうと考える実質原作再現(ゲーム未プレイの方でちょっと何を言ってるか分からないという方の為に簡単な説明となりますが、ゲームでラオシャンロン戦はソロでもマルチでも討伐or撃退までの流れが他のモンスターに比べて物凄く時間掛かるんです)
最後にちょろっと出した錬成ですが、実際に分類が技能の枠であり魔法とは別なんじゃね?って疑問は残りました。そこを考え続けていたら執筆が進まなくなるので一旦置いておくことにしました(ライセン大峡谷で起こる魔法使えない現象に関してはちゃんと考えていますので……)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡