三章はあと一話、次章に繋げる形で投稿します。
ついでに止まっていた幕間の物語も徐々に動かしていこうかなと……
(今のところ動かすとしたら例外達、原作ヒロインズ、神の使徒、魔人族、未登場の原作キャラとその他勢力ってところですかね?)
あ、今回は戦闘とかありませんが
本文最後の一文に合わせてある曲を聞くことを推奨します。
エド・シーランの「I see Fire」(指輪物語を映画でしか知らない作者ですが、曲とか世界観はファンタジーの原点として記憶に残っていました)
空を覆う厚い雲の隙間から顔を覗かせた光芒がブルックの町並に降り注ぐ。
東門から徐々に大きくなる勝鬨に、住民達は次第に結末を知って明るい表情を浮かべる。
老山龍の進行による危機は去ったのだ。
先頭を歩くイルシオンと、それに乗ったトレイシーが大きく手を振った。
馬に乗ったバイアスが駆け寄ってくる町の有力者達に勝ち誇った笑みを浮かべて後ろを指差す。
住民達は兵士の隊列に混じって運ばれてくるそれを見て驚き、目を見開き口をあんぐり開ける。
「ろ、老山龍の――――――」
「頭だ……!」
「おぉ……ついにやったのか!」
巨大な荷車に載せられたラオシャンロンの頭部。
あの巨体から頭だけを切り離して引き上げ、帝国軍は町まで運んだのである。
ギルドの規定に基づき、残りは自然の養分となる。
……もっともあれだけ大きな死体が時間をかけて啄まれながら腐っていくというのは常人には耐えがたい光景が広がっているだろうが……完全な骨になるまで何か月かかるというのか。
ラオシャンロン討伐の一報を受けたハンター達は既に町の中で休んでいた。
早朝からモンスターと戦い続けた彼らの疲労は凄まじく、殆どが宿で眠っている。
歓喜の声に沸き立つ住民の声でも起きないくらい眠りは深いようだ。
「戦姫ちゃーん!」
「リンネ、戻ったぞ!!」
道を開ける住人達を掻き分けて現れたリンネ。その後ろに優花もいる。
優花は昨夜の会議では目にする機会がなかったイルシオンを初めて目にして驚いた。
しかしトレイシーを背に乗せて悠然と闊歩している様子から比較的あっさりと受け入れた。
梟のような見た目で、恐ろしいと感じなかったのも理由の一つだろう。
何よりもイルシオンよりも圧倒的存在感を放つモンスターの頭部がすぐ後ろにあるのだから、彼女は先ほどからそちらに視線が吸い寄せられている。
「ラオシャンロン討伐かぁ。現役以来久しぶりに見たわね~……」
「フッ……いつもの事だが、
「ッ――――――あ、あのっ……南雲は……!?」
リンネとトレイシーの会話を聞いて優花は思わず聞きたかった事を口にする。
トレイシーの言う
実は優花。昨夜からあまり眠れず、明け方にハジメ達を見送ってから心配で宿の部屋の中でずっとそわそわしっぱなしだった。
それを知っているリンネはニヤッと意味深に笑って伝える。
「多分あの頭の後ろで休んでるのよ。前から皆そうしてたし」
「あぁ、それで間違いない。――――――まったくお前らの謎の風習は未だに理解出来んな」
リンネの予想にトレイシーは頷き、あきれた様子で風習とやらについて軽く触れた。
ハンター達はクエスト終了時に皆一様に肘を曲げながら両腕を上に広げるガッツポーズを取ったり、捕獲したモンスターを荷車で移送中は一緒の荷車で小睡眠を取ったりと奇妙な行動を取る。
これについて元ハンターであるリンネ曰く「なんかやらないと落ち着かない」らしい。
彼女らの会話を聞いてどんなリアクションをすればいいか分からない優花は半笑いで「わっ、私…南雲の様子見てきますね!」と前進する隊列の端を逆走してラオシャンロンの頭部がある荷車へと向かった。
優花の背を見送りながら、トレイシーはリンネに問いかける。
「あの娘は錬成師と深い仲なのか?」
「うーん……なんか元々は仲が悪かったみたいなんだけどさ、少し前から吊り橋効果で彼女の方がハジメ君に無意識に好意を抱いてる……のかな。ハジメ君の方は……どうだろ?好意的な態度には気づいているみたいだけど、異性というよりはまだお友だち感覚なんじゃない?」
「ほう……それは随分と興味深い話だ」
「あらっ!戦姫ちゃんが他人の色恋に興味を持つなんて珍しい~」
「フフッ、血生臭い戦いの後はどうにも昂ってしまってな。普段の私ならそのような事に現を抜かすなどあり得ぬのだが………後で暇があれば聞かせてくれ」
「いいわよ、勿論!」
*
(南雲……どこ……?どこにいるの……!?)
名前を呼んで探してもよかった。
しかし大勢の人がいる前でそんな事をする度胸が優花にはなかった。
何よりもそれで揶揄われたら堪ったもんじゃない。
(………あれが、老山龍………!)
遠目で分かるくらい巨大だったラオシャンロンの頭は、その口が開かれてしまえば人ひとりなど簡単に飲み込んでしまえる大きさであると理解して、優花は内心ブルリと震える。
視線を数秒間彷徨わせた後―――
「あっ……!」
彼女の目は荷車の中で揺れる兵士達とは違う装備を着た人を見つける。
兵士達にお願いして列の間を通して貰いながら近づくと、そこには蛮炎剣斧ロギンシスカの手入れをしながら馬に牽かれる荷車に腰かけたロスマンがいた。
ちなみに彼は町中でも防具を被ったままであり、常人なら話しかけようとは思わない。
それでもと優花は覚悟を決めて彼女に気づいて視線を向けたロスマンに話しかける。
「あ、あの――――――南雲はここにいますか?」
「む?ナグモ……あぁ、彼か……いるにはいるが―――」
そう言って言い淀むロスマンは兜越しに俯いた。
優花は嫌な予感がして「まさか…」と声を怯えた表情で聞いた。
「な、南雲に何かあったんですかっ!?大きな怪我をしたとか―――」
「……うむ、ちと詰めを誤ってな。彼は老山龍の尻尾に叩きつけられて―――」
「―――ッ!?」
彼の説明と同時に視線を巡らせていた優花はハジメを見つけた。
銃身が捻じ曲がり使い物にならなくなったアイアンアサルトⅢと無理やり脱がされた防具、それらが置かれた荷台の脇に横たわっている彼に優花は駆け寄った。
よく見ると防具には血がべっとりこびり付いており、ハジメ自身も血を拭った後がある。
「―――あ、ぁ……!な、ぐも……南雲ぉっ!」
彼女の目から涙が溢れる。
恐怖で歯をカチカチ震わせて、目を閉じたハジメの腕に手を置いて叫ぶ。
そんな優花の様子を見たロスマンが頭に疑問符を浮かべて声をかけようとするが―――
やり取りの一部始終を見ていたアイクがニヤリと笑って彼の肩を掴んで引き止める。
「な、南雲――――――っ!!」
「――――――――――――い゛ッ!!?……急に耳元で叫ぶなよ……園部……」
「……っ!?」
不意に目を開いたハジメが鬱陶しそうに表情を歪めて体を起こす。
周りの兵士達が「何だ何だ」と視線を向けるが、テレサが微笑み「大丈夫よ~ちょっと勘違いしてるみたいだから~」と流している。
涙で顔を濡らした優花がじっとハジメの顔を見つめた。
「………だ、大丈夫なの?」
「――――――あぁ?見りゃ分かんだろ、平気だよ」
おかしい。では体についてる血の跡は何だというのか?
それに明らかにハジメの持ち物らしき武器は壊れている。
鋼鉄の武器が壊れるほどの激しい戦いをして、防具を脱がされて半裸に近い状態で荷車に寝かされていたら、大怪我をしたか死んだかと勘違いもしたくなるだろう。
この時、優花はトレイシーが平然としていたことも忘れて焦っていた。
肩を回して荷台に両手で手をつきながら平然としているハジメ。
動揺収まらないうちに優花はロスマンを指差して話す。
「だ、だってさっきあの人が尻尾に叩きつけられたって……」
「はぁ?確かに尻尾でぶっ飛ばされたし、アレと瓦礫の下敷きになりはしたけどよ―――」
アレというのはラオシャンロンの事である。
更に衝撃の事実を聞いた優花はハジメの言葉を遮って叫んだ。
彼女が何故そんなにも取り乱しているのか、寝起きのハジメには理解出来ない。
「が、瓦礫の下敷きに!?」
「あぁ。けどまぁ幸いにして防具と武器、それに奴の死体が良いクッションになってくれたお陰で大した怪我はしてない。尻尾の傷も帰りに回復薬飲んで治ったしな」
「―――――――――」
あまりに常識外れな彼の答えに優花は絶句する。
ハジメはラオシャンロンが倒された直後、自身で錬成を使いながら仲間達に引っ張り出される形でラオシャンロンの死体の下から這い出してきたのだ。
その後の剥ぎ取りには当然の如く参加したし、荷車で眠るまでは
眠っていたのは単に緊張の糸が解れただけで、何処か体に異常があるとかは無いのだ。
優花が固まっているのに対して、ハジメは口元をヒクつかせて震え声で話す。
「つーか園部よぉ、そんなにベタベタ触られんのは流石に恥ずいんだが……!?」
「……?――――――あっ!?」
片腕はまだ折れたままの優花だが、無事な片方の手はハジメの腕を掴んだままだった。
そして今の彼はインナーで大事なところを隠しているとはいえ半裸の状態に近い。
勢いよく飛び退いた優花は勘違いのことも含めて顔を真っ赤にして俯いてしまった。
ハジメは何と声をかければいいか迷い、ボリボリと無造作に後ろ髪を掻くことしか出来ない。
「ご、ごめん!なんか色々と―――」
「あ~……うん、気にすんな……俺も気にしない」
そうこう話している内に隊列が止まる。
荷車も止まって、ハジメは壊れかけのボーンメイルとランポスレギンスを装備した。
イルシオンから降りた代わりに積まれていた木箱の上に立ったトレイシーが叫ぶ。
「聞け、町の者達よ!!我ら帝国軍とハンター達の奮戦の甲斐あって、老山龍は倒れた!!」
「犠牲となった駐屯兵の葬儀を終えた後、鎮魂と勝利の宴を皆で盛大に開くぞ!!」
つい半日前まで老山龍の出現に驚き、怯えていたブルックの町の住人の姿はそこにはない。
トレイシーの言葉に町中の者が歓喜に震えながら叫んでいる。
雲の隙間から光芒に続き、青空が人々の喜びに応えて顔を出す。
この時、彼らは気づかなかった。一時の安寧を取り戻して、気づけなかった――――――――――――――――――天高くに赤い星が現れ、雲海を突き抜けていったことを。
トゥインクル♪トゥインクル♪(絶望の襲来)
次の話は短めにスパっと終わらせたいので、ぶっちゃけ話を此処に書きます。
次章タイトルは「転落・邂逅編」(順番に深い意味は多分ありません)
商業都市フューレンから宿場町ホルアドの話になります(敢えてホルアドと書く)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡