ハンターとして護衛の旅を続ける南雲ハジメ。
巨大古龍ラオシャンロンを倒して新たな武器を手に彼はブルックの町を発った。
護衛の依頼主であり元ハンターの女リンネ・ユキト、クラスメイトの園部優花に加え、ある目的で商業都市フューレンへ向かう皇女トレイシーや商人、冒険者が旅の仲間に加わる。
神の使徒の出現に伴い、激化の一途を辿る人間と魔人族の戦争。表舞台に立って戦う者達を余所に、不気味な影がトータスの至ることろで蠢いていた……
少女は変わる、少年は落ちる、運命の針は重なるのを今か今かと待ち焦がれる!
モンスターハンター・トータス第四章「転落・邂逅編」開幕
目指すは商業都市フューレン
……ガタ、ゴト……ガラガラ……
ライセンの荒野を馬車が縦一列になって進んでいる。
先頭の馬の手綱を握るリンネは併走する偵察に向かって合図を送った。
兵士が乗る馬が二頭、蹄を鳴らして早駆けしていく。
荷台で待機しているハジメは新武器の調整を行っている。
優花は口元を綻ばせて珍しく上機嫌な彼の様子を向かい側から見守っていた。
ブルックの町を出てからずっとこの調子で、偶に話しかけても無視されてしまうが……
ハジメの膝に置かれた武器は今のような特殊機能が備わる前に発明された。
現実の銃火器で例えるなら
当時のヘビィボウガンの中でも特に火力に優れ、重砲の究極形態とまで云われた。
現在主流となっているカスタマイズ機能と特殊弾発射機構を取り入れた事により、扱い辛さは残るが使用出来る弾の少なさという点をカバー出来た。
時代が進化し続けても浪漫火力で愛され続けてきたその武器の名は”老山龍砲”
(アイアンアサルトⅢがお釈迦になった時はどうしたもんかと思ってたが……!)
工房で職人に診せたところ、アイアンアサルトⅢは修復にかなりの時間が要すると言われた。
アイクが一番おススメした武器種という事もあって、ハジメは老山龍砲を作ったのだ。
老山龍砲を胡坐をかいた自分の足に乗せると伝わってくる重み。
20~30㎏はあるだろう重量武器を足に乗せて笑顔のままでいられるのはハンターくらいだ。
新品の艶が残った砲身を撫でていられるのも今だけである。
使ったら最後、火薬の炸裂によって生じる煤がたっぷりついてしまうから。
「南雲、さっきから頬が緩みっぱなしだけど……」
「男の子ってのは幾つになっても浪漫溢れる武器が好きなもんなのよ」
クスクスと笑ったリンネが優花の呟きに振り向かず答える。
少なくとも理解は出来るか共感は出来ないかもしれない……優花はそう思った。
二人の会話も聞き流して、ハジメは老山龍砲を弄り回していた。
和気藹々とした馬車の旅が長続きする筈もなく――――――
先の偵察に向かっていた兵士の馬が一頭、先ほどよりも早足で駆け戻ってきた。
ハジメもスッと締まりのない笑顔を引っ込めて前への向き直る。
血相を変えた兵士の様子に緊張の空気が張り詰めた。
「前方、この先に見える背の高い岩の背後に蛮顎竜が一頭!動く気配はありません!」
「りょーかい。優花ちゃん、後ろに伝達宜しく!ハジメ君、出番だよ~」
「はいっ!」
「ウッス!」
ハジメは老山龍砲を肩に担いでアイテムポーチに必要なアイテムを放り込む。
優花が後ろの御者へ手で合図を送る間に、バッと荷台から飛び降りて駆け出した。
その足で走って向かうよりも効率的だろうと、偵察兵が馬から降りてハジメを呼んだ。
「ハンター!コイツを使ってくれ!」
「分かりました!隊列の守りをお願いしますッ―――!!」
彼は駆け足で馬に跨り、手にした手綱で馬を叩く。
甲高い嘶きを上げて駆け出す馬の背後でゆっくりと馬車の列が止まる。
まだ陽の高いライセンの荒野にて、新たな狩りの幕が上がった。
*
「――――――あれが報告にあった奴か」
報告にあった背の高い岩の少し前で馬から降りたハジメ。
馬の向きを馬車へと向けて軽く手綱を引いてやると勝手に戻っていく。
ハジメは周りを見渡して即座に地形を頭に叩き込んでいる。
こうしなければいざ狩りの時に地の利を生かした戦い方が出来ないからだ。
背の高い岩に向けて足音を立てないように近づくと微かな獣臭が鼻を刺す。
岩に手を置いたハジメは老山龍砲を展開したまま背を屈めて更に忍び足で先に進んだ。
彼の耳がくぐもったモンスターの吐息を拾う。
「スゥッ―――――――――ふぅ」
ハジメは鼻で長く呼吸して息を吐く事で全身にリラックスを促している。
ようやく丸みを帯びた岩の陰から先の景色を見ることが出来る位置に着いた。
その先にあった光景を見て「こいつか…」という心の中で呟く。
くすんだ桃色の鱗と背中から尻尾にかけて生える黒い体毛。
背中に生える巨体には不釣り合いなサイズの翼は飛行機能の為に生えているのではなく、獰猛さで知られるそのモンスターが威嚇の時や、今のように日光浴を行う際に体温調節の為に使われる。
大型獣脚類を生き映したかのようなそれの特徴は他にも幾つかあった。
執拗に獲物を追い回して、下顎に生えた大きな棘で荒々しく襲い掛かる。
獣竜種の大型モンスター”アンジャナフ”別名”蛮顎竜”
それが今、ハジメの目の前で暢気に背を向けて日光浴を楽しんでいるモンスターの名前である。
馬に跨ったままコイツを見つけた兵士の恐怖は想像も出来ないだろう。
もし見つかっていたら上記の通り執拗に追い回される事になり、隊列に戻ることも出来ずに荒野中を走り回る事になっていたのだから……
(不幸中の幸いか……こっちから仕掛ける事は出来そうだ……)
ハジメが選んだのは
この拡散弾という弾丸は今までのボウガンであれば直線で飛んでいき、着弾した先で弾頭が分裂、内蔵されていた小型爆弾が周囲にばら撒かれて立て続けに爆発をするというものだった。
それが近年のボウガンの仕様に変化が加わり、迫撃砲のような使い方が出来るようになった。
これは拡散弾が持つデメリットである射撃時に加わる反動を最小限に留め、モンスターと対峙した際に安全を確保しながら発射できるようにと多数のガンナーからの要望の声が上がって実装された機能らしい。余談だが一時期は拡散弾の威力を十分に発揮する為にヘビィボウガン専用の弾丸となる試みもあったそうだが、現在はライトボウガンでも使用可となっている。
アンジャナフが動かない事を確認したハジメは岩陰に戻って少し距離を取った。
死角の位置ですくっと立ち上がり、両足をがに股気味に開いて腰を落とす。
腰の位置で構えた老山龍砲を斜めに構えて狙いを定める。
透視能力等なくとも、ハジメにはどの角度で撃ったらアンジャナフに当たるかという計算を無意識で行えるハンターとしての能力があった。
「――――――ッ!」
ガチッと引き金を指で力一杯引く音と同時に重低音を含む発射音が辺りに鳴り響く。
何事かと寝そべらせていた首を上げたアンジャナフの頭上には弧を描いて飛来する丸い塊。
如何に視野の広いモンスターでも頭上から羽虫くらいの大きさしかない弾丸が飛んできていることに気づけるほどの冷静さを一瞬の内に取り戻す事は不可能である。
その翼に弾丸が触れた瞬間、黒い粒のような小型爆弾が辺り一面に散らばった。
―――ゴオォォォッ!?
ひと粒でも大タル爆弾にも匹敵するというLv3拡散弾の威力はまさに一撃必殺と呼べる。
絶叫したアンジャナフがよろめいて近くの岩に体を叩きつけた。
ハジメは「よし!」と奥歯で喜びを噛み締めて――――――そのまま二度目の射撃を行った。
唐突だが老山龍砲がガンナー達の間で不動の人気を保ち続けているのは何故か?
実は老山龍砲は出た当初、あまりのピーキー過ぎる性能に低い評価を受けていた。
それがある時、竜人の齎した加工技術によって武器自体にスキルが付与された。
”自動装填”後に革命とも云えるガンナー達の戦法を増やしたこのスキルの存在が老山龍砲を歴史に残る逸品の地位まで押し上げたと云っても過言ではない。
読んで字の如く、ボウガンが必ず要求される弾の装填を自動で行ってくれるスキルだ。
デメリットとして全ての弾の反動が大きくなるが、
拡散弾の曲射や属性弾の威力が高くなった現状のヘビィボウガンにおける最強の一角に自動装填を備えた老山龍砲……通称ラオートが挙げられるのは当然の事である。
ガチッと二度目の引き金を引くと当然のように拡散弾Lv3が発射される。
また弧を描いて着弾した岩の先で爆発音とアンジャナフの悲鳴が聞こえた。
巨躯を叩きつけられて岩には次第に罅が入り始めている。
発射の音からハジメが此処にいると奴が気づきのも時間の問題だろう。
その間にハジメは拡散弾Lv3から水冷弾へと弾の切り替えを終えていた。
―――グルオオォォォォッ!!
岩を砕いて姿を現したアンジャナフは既に臨戦態勢に入っている。
怒りによって畳まれていた翼は広がり、喉元に薄ら赤い光を灯していた。
この状態を炎熱蓄積状態と呼び、アンジャナフの攻撃に火属性が加わるのだ。
現に怒り狂ったアンジャナフの口元からは唾液の代わりに火の粉が漏れ出している。
「――――――押し通る!!」
そう叫んでハジメはアンジャナフの鼻先目掛けて水冷弾を撃ち込む。
しかし大口を開けて眼下の彼に牙を剥こうとしたアンジャナフの動きで狙いは外れた。
弾は翼の付け根、胴寄りの黒い体毛へと吸われるように掠めてうっすら血を滲ませる。
「―――っだあ!」
頭上から迫りくる咢を逃れようとハジメは右へ大きく転がった。
直後、地面が抉れる音と共に微振動がハジメの全身へと伝わってくる。
横目に見るとアンジャナフが少し前の彼がいた土をブルドーザーのように下顎で抉り取っていた。
(ちぃ!顎の一撃は轟竜並かよ……!)
アンジャナフというモンスターの脅威度は地域のハンターズギルドによって変わる。
森丘や樹海などに出現する通常の個体であれば強さの序列はリオレウスより下、ドスジャグラスより上という駆け出しハンター最初の難敵に位置する訳だが……
どういう訳か一部の地域ではアンジャナフがリオレウスよりも上、ティガレックス並に危険度の高い獣竜種として認定されていた。
これには諸説あるが、大陸全土における大雑把なアンジャナフの頭数がティガレックスよりも多く、一般人との遭遇率がリオレウスよりも高いという過去のデータからそうなってしまったのだ。
街道でモンスターに襲われた被害報告にもアンジャナフの名前が特定の地域では半分を占める。
その評価に違わぬ凶暴性を表しているのが、今使われた噛みつき等の攻撃だろう。
アンジャナフは下顎で抉り取った土を吐き出して、そこから両脚で交互に地面を蹴って前進する。
ジグザグ走行の大型掘削重機とでも表現すべきだろう。ハジメが冷や汗を掻いてる先でアンジャナフは更に地面を掘り進んでようやく狙いを外した事に気づいて止まった。
「何度も何度もパクパク食われて堪るかってんだ!!」
威勢の良い掛け声と共に水冷弾を撃ったハジメ。
今度はアンジャナフが振り返ったタイミングで水冷弾が鼻先へと当たった。
しかし一発だけで怯む様子はなく、次なる攻撃へと動きを進める。
ハジメは一瞬の判断の後、被弾覚悟で三発目の水冷弾を喉元目掛けて撃ち込む。
―――グギャアアァァッ!
「ッ……っしゃあぁ!」
自身の反動とアンジャナフの移動を予測して敢えて顔の下を狙った射撃は命中する。
アンジャナフは急激に冷やされた鼻先の痛みで後ろへと大きく仰け反った。
ピンク色の巨体が横へ倒れ込んだ事でハジメは更に追撃を仕掛ける。
水冷弾も例に漏れず自動装填されている。
我武者羅に引き金を引いて、ハジメは地面に倒れたアンジャナフの下顎を狙って撃つ。
(これで少なからず注意は俺に向いた……これなら!)
アンジャナフが起き上がるより先に弾を装填したままハジメは老山龍砲を担いだ。
そしてアンジャナフに対して
彼に対する怒りが収まる筈もなく、アンジャナフはすぐさま逃げた彼の背を追う。
「はっ、はぁ……はぁっ……」
自分の荒い息遣いと後ろから響いて来るアンジャナフの唸り声。
心臓の鼓動が高鳴るのを押さえながら、ハジメは考えていた通りに動いた。
彼はアイテムポーチを漁って”閃光玉”*1を空いた片手で掴み、間髪入れず放り投げた。
放り投げられて数秒の後、アンジャナフの顔の前で光を放った閃光玉。
予めハジメは片腕で目を覆って自爆を逃れたが、アンジャナフは呻き声を上げて一歩下がる。
内心焦りを覚えながらも彼は次なるアイテムを取り出してその場に設置した。
一時的に視力を奪われたアンジャナフが繰り出したのは破れかぶれの突進だった。
アンジャナフが追いかけていた
しかしその手前には大タル爆弾が二つ設置されていた。
「ぶっ飛べ」
匍匐で老山龍砲を構え、狙撃竜弾に切り替えたハジメが吐き捨てるようにして引き金を引いた。
狙撃竜弾は水平からやや上に飛んでいき、大タル爆弾、アンジャナフの胸の順に貫く。
爆発で吹き飛ばされて、体内を貫通した狙撃竜弾の小型爆弾が連鎖爆発を引き起こす。
口から大量の血を吐き出して悲鳴を上げたアンジャナフは前のめりに倒れ込む。
匍匐から起き上がったハジメは次弾を構えようとするが――――――アンジャナフは動かない。
「――――――ふぅ」
短く吐いた息と共に体の内側で生じた興奮の熱を冷ます。
高鳴っていた心臓の鼓動は徐々に落ち着きを取り戻して、五感が正常に戻っていく。
辺りに立ち込める火薬とアンジャナフの獣臭い血の臭いを嗅ぎながら老山龍砲を折り畳む。
剥ぎ取りナイフを抜いた彼はゆっくりと近づいて、躊躇うことなく刃を突き立てた。
(後で園部に気持ち悪がられるけど……まぁ、しゃあないか)
ハジメの獲得した素材一覧
・蛮顎竜の鱗3枚
・蛮顎竜の牙2本
・蛮顎竜の毛皮2枚
・蛮顎竜の鼻骨1個
・火炎袋1個
・竜骨【大】1個
・ドラグライト鉱石4個
特に本作とは関係ありませんが作者の記念すべきMHW初乙の相手はアンジャナフでした(初期装備で探索の最中に襲われて茂みに隠れたら大丈夫だろとか思ってたら頭突き食らって死ぬとかいう映画のワンシーンみたいな死に方)
おいでなすった老山龍砲もといラオート。
この世界の武器が原作モンハンの初期作から最新作までのヘビィボウガンに付与された様々な機能に対応しているせいで結構ぶっ壊れっぽくなってたり(MHWのカスタマイズだったり狙撃(機関)竜弾だったり、逆に前作まであった照準と倍率変更、ロングバレル等による威力補正も可)
老山龍砲の特殊弾を狙撃竜弾にしたのは作者がMHW見て「他のモンスの武器がこういう風に分かれてるし、こいつは狙撃じゃないかな~」と思ったからです。
あと例の如く唐突アンケートです。
ちょっと……いやかなりのキャラ改変が含まれるかも?
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
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続編にして
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このまま話数増やしてもいいんじゃね?
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打ち切りはヤメロォ!
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もっと周りの話補完して♡