先に書いておきます……
タイトルにするほどハジメ君、看病みたいな事してねえわ。
ただ二章でシアが先陣を切ってるので……後を作らねばと思い……
商業都市フューレンは、ハジメが今まで見てきた中では帝都の次に賑わっていた。
しかしそんな都市の景色を目にして楽しむ余裕など彼にはなく、手に抱えた壺を早々に依頼主へと返して「報酬その他はギルドの方にお願いします!」とだけ言い残して、彼の戻りを待ったリンネに急いで事情を説明し、瀕死だった少女を近くの医者のところまで担ぎ込んだのだった。
「この娘は生きているのが奇跡みたいなもんだよ……」
診察を終えて、ハジメの応急処置だけでは足りなかった傷の治療を終えた老人の医師が言うには致死量寸前の出血に加えて全身を雷に打たれたかのような火傷痕、足の骨折に肋骨も2~3本折れている。しかも損傷具合から
幸いにして老人の医師は商業都市唯一の天職・治癒師をその身に宿していた。
更には―――トータス基準だが―――最新の医学まで齧っていた老人の医師の処置は瀕死の彼女が小康状態を維持出来るまでに治したという。
「モンスターに襲われたか……惨いもんだ。……生きていただけ奇跡かもしれんがね」
老人の医師は休憩がてら、彼女の怪我の状態を話しながら昔の話をハジメ達に聞かせた。
今のように応急処置を身に付けたハンターは居らず、治癒師の存在も希少だった暗黒の時代。
モンスターに襲われた人間をまだ若かった医師は救う事が出来ず、大抵は安楽死させたという。
優花の脳裏には大迷宮で奈落の底へ落ちていった騎士達の最期が過ぎる。
ハジメは新しい記憶で、ブルックの町の駐屯兵が食い殺された後の姿を思い出す。
リンネは二人よりも多く、もっと理不尽で惨い死に方を嫌というほど見てきた。
「この子は君達の知り合いかね……?」
「いえ……近くの森で倒れているところを、俺が見つけました」
「そうか……。彼女が目覚めてから、詳しい話を聞くしかないな……」
そのまま老人の医師に後を託しても良かっただろう。
しかしハジメは自分が見つけて助けた責任を、せめて彼女が目を覚ますまで果たすべきと考えた。
「リンネさん、園部……先に宿で待っていて貰えますか?」
「――――――ん、了解。いこっか、優花ちゃん」
「は、はい……」
リンネは彼の考えを読み取ったのか、何も言わずに医師の家を出て行く。
優花もそれに従うが、少しだけ胸の奥にモヤモヤとした感情があった。
真剣な表情でベッドに横たわる少女を見つめているハジメを見ていると……
(………何考えてんだろ、私………)
あり得ないと頭を振ってハジメに「待ってるから」とだけ言ってリンネの方へ歩いていった。
ハジメは暫く老人の医師から勧められた椅子に座っていたが――――――
「――――――――――――うっ」
「ッ!?」
リンネ達が去ってから僅か数分後の事だった。
治癒魔法や薬の副作用で眠っている筈の少女の瞼が震える。
老人の医師は使用した薬草の補充をするといって部屋を出ていた。
少女は身動ぎしようとするが―――――――
「っ!ぁ……っ!!」
「おい、無理に動くな……!大人しくしてろ!」
なるべく傷に触れないように、痛みを与えないように少女の体を抑えるハジメ。
やがて少女の体は動かなくなり……パチリと目だけが開かれた。
「………此処は………何処ですか?」
「王国領にある商業都市フューレン。アンタは近くの森で倒れてたんだ」
「私が……?貴方は――――――」
少女は目覚めた直後というのもあって、息を整えながら質問をする。
横になったままの少女に対してハジメは椅子に座り直して答えた。
「俺は南雲ハジメ。ハンターだ」
「……ハンター……記録参照……確認。ヘルシャー帝国で近年その存在が確立された、モンスターの狩猟・捕獲することを生業とする職業……間違いありませんか?」
「お、おう……随分と丁寧な説明だな」
というかそういうのは名乗った側が説明するのがセオリーなのでは?
そう思いつつもハジメは少女に「あんた、名前は?」と尋ねる。
少女は暫く逡巡した後、ハジメの目を真っ直ぐに見据えて答えた。
「私の名前は”ノイント”……負傷した所を助けて頂き――――――」
「………」
「いただき………」
ノイント、そう名乗った少女は感謝の言葉を述べるのかと思いきや途中で言葉が詰まる。
ハジメは目を覚ました直後で喋り疲れたのかと思ったが、実はそうではなかった。
彼女の記憶領域に、ありがとうの言葉は存在しても、今まで使った試しがない。
魔王アダムによって在り方を変えられたとはいえ、そう簡単に切り替わるものでもないのだ。
少し躊躇うように口をモゴモゴさせて、ようやくノイントはその一言が出せた。
「――――――ありがとう、御座いました」
「気にすんな。……助かって良かったよ」
ハジメがそう言うと、ノイントは心の奥に奇妙な揺らぎを生じさせた。
今までの彼女に在って機能しなかった感情というシステムが動いた瞬間である。
優しく笑う彼を見て、心臓の鼓動が少しだけ早くなった。
「………心拍数の上昇を確認………」
「…………え、何だって?心拍数?」
「………………っ」
ゆっくり手を動かして掛かっていた毛布で口元を隠したノイント……照れているのだろうか?
それから薬草の補充分を持ってきた老人の医師が帰ってきた。
彼も彼女が予想より早く目を覚ました事に驚きながら、意識が戻ったことに喜ぶ。
「驚いた、もう目が覚めたのか……まだ起きなくていい。ゆっくり眠りなさい」
「……睡眠効果による自己再生機能を推奨する提案、承諾しま………す」
また奇妙な言い回しをする彼女に二人は目を丸くした。
しかし最後の一言を言い終えて、彼女はスゥスゥと寝息を立てる。
その後、老人の医師が「起きた直後で混乱しているのだろう」と言って納得した。
「直に陽が落ちる。彼女の看病は私に任せて、君も宿に戻りなさい」
「分かりました。また明日、朝一で様子を見に来ますね」
*
(ノイント……珍しいけど、響きが良い名前だな……)
そんな事を考えながらハジメは宿に向かう道を歩いていた。
朝一で見舞いにいった時のために、果物か何か持っていくべきかと考えながら……
するとハジメを呼ぶ声がして、彼は立ち止まって振り返る。
「ハンターの旦那!!待ってくだせえ~!」
「あ、さっきの………」
壺を渡したっきり放っておいた年配の男性だ。
ぜえぜえと息を切らした彼が息を整えるのを待って、ハジメは諸々を話し始める。
壺の回収を引き受けた時から、男が正規の手続きを踏んでクエストの報酬金を用意できないことをハジメは予想済みだった。彼が言いにくそうにその事を口に出した途端、ハジメは帝都で貴族の親子の敵討ちをしたのと同じ理由で探索のついでに貴方に頼まれただけという形に収めて、報酬金は無しでいいと言ったのだ。
「――――――という訳なんで、今回は特別ですよ。次から困っていても必ず助けられるとは限りません。何かモンスター絡みで問題が起きたのなら、正規の手続きを踏んで、ギルドに依頼を出して下さい……分かりましたか?」
ちょっと高圧的な物言いにも聞こえるが、仕方のない事だった。
ハジメがやっている事は簡単に言ってしまえばタダ働き。それを聞いた他の依頼主が勘違いをして「ハンターがタダで仕事を引き受けてくれる」なんて噂を流されでもしたら問題になる。
「それじゃあ俺はこれで――――――」
「あぁっ待ってくだせえ!大したもんはお返し出来やせんが――――――」
と年配の男に無理やり握らされたのは豪華な装飾がついた招待状の手紙。
これは何かとハジメが問いかけると、件の商業都市で開かれる催し物の招待状らしい。
後に判明する事なのだが、この招待状……時価総額で5000ルタはするとんでもないものである。
それを彼が知るのは、招待状を使ってしまった後なのだが………
「今年は水を操る歌姫様が踊りに出演されるんでさぁ!あっしが一人で見ても目の保養にしかならねえ。……へへっ、見たところ旦那は女連れのようでしたんで……デートにでもと……」
年配の男に支払える、彼なりの報酬のつもりなのだろう。
好意で受け取って、それを「要らない」と突っぱねる度胸がハジメにある筈もなく……
渋々といった形で彼からの催し物の招待状を受け取るのだった。
そろそろ優花の腕を治しても良さそうかなと投下した治癒師(まだ治してませんが)
それと最後の年配の男の下りは第一章で貴族の親子を助けてまぁ良しと終わりましたが、普通に考えてモンスターを狩るのが仕事のハンターがタダで引き受けたとか聞いたら同業者ブチギレ案件、ギルドも程度によっては制裁措置を取らざるを得ない事態に発展するのでは?と考えてこうなりました……反省はしている。だからハジメ君に(作者に代わって)念押しして貰いました。
水属性で歌姫で踊ったりする……はい、完全に作者の欲が出ただけです(FE)
まさかの幼女!?の可能性はないです。彼女はもう少し先に出す予定です……
ハジメ君は一体誰をデートに誘うのかなぁ~(すっとぼけ)
感想、質問、ご指摘などお待ちしております!
初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)
-
続編にして
-
このまま話数増やしてもいいんじゃね?
-
打ち切りはヤメロォ!
-
もっと周りの話補完して♡