モンスターハンター・トータス   作:綴れば名無し

99 / 240
 前回の後書きで登場を仄めかしていたアクアネキ(仮)は次々回出します。
今回は漫画版ありふれた職業で世界最強にて名前が出ていたキャラが出ます。
その辺りのページの下りを覚えている方なら先の展開が少し分かるかも……?



商業都市フューレンにて

 昨夜早くに宿屋へ戻ったハジメは特にリンネや優花とこれといった話をする事もなく宿屋の一室で眠りに着いた。……当然だが、1人部屋である。

しかし早々と眠ってしまった結果、陽が昇るより先に目が覚めてしまった。

 

 宿屋では決まった時間に朝食が出るという言葉を、朝早くから仕込みを始めていた宿屋の従業員に聞いて、ハジメはもし連れの2人が自分を探していたら外出している事を伝えて欲しいと伝言を頼んでフューレンの集会所に向かった。

 

 そして驚いた。

商業都市フューレンは前にいたブルックの町よりも集会所の規模が圧倒的に巨大だった。

にも関わらず、中に入るとギルドの名簿上に載っている―――つまりはこの町に滞在している―――ハンターの数がブルックの町よりも少なかった。

早朝出勤だった受付嬢の一人に声を掛けて理由を尋ねると、返ってきた答えがこれだ。

 

「あまり大きい声じゃ言えませんが王国領ですからね~……ハンターは歓迎されないんですよ」

 

「………そういう事ですか」

 

 気になってクエスト一覧を開くと、難易度の低いクエストという名目で低いランクの冒険者が最初の路銀稼ぎに受けるような雑用ばかりでモンスター討伐の依頼は殆どなかった。

帝国に比べてモンスターによる被害報告は少なく、素材などを生活に活かす事もない。

よってハンターの需要は殆ど無いに等しいのである。

 

「まぁ他にもこの辺りじゃ探索する場所が近隣の草原かライセンかに限られてしまうので」

 

「分かりました。ありがとう御座います」

 

 ここに配属される前は帝国領の集会所で激務に追われていた経験もあるという受付嬢曰く「ここに配属された職員は楽出来ていいんですよ~」だそうだ。

職員はそれでいいかもしれないが、ハンターにとってはあまり良い事じゃない。

 

(此処に滞在してる間は本業お休みかよ……萎えるわ)

 

 外見が立派で、商業都市と云うだけあって情報が集まり易そうな場所だが……

老山龍砲を使う機会を失った事でハジメのやる気があからさまに落ちてしまう。

受付嬢はそれを察して「元気出して下さいね~」と言い残して奥へ引っ込んでいった。

今から宿屋に戻れば朝食の時間に丁度いいだろうと踵を返したハジメ。そこへ――――――

 

「君は、此処に来るのは初めてかな」

 

 そう声を掛けられてハジメは振り返り、今まで無人と思われていた集会所の隅の席に座っているフードを被った男の存在に気が付いた。

壁に立てかけている操虫棍と猟虫を見て彼がハンターだとすぐに分かった。

 

「はい。……あ、俺は南雲ハジメって言います」

 

「――――――そうか、君が……」

 

「………?」

 

 男が何かブツブツ呟いているのに対してハジメは話しかけられた側としてどう言葉を返せばいいのか反応に困ってしまった。男は椅子に座ったまま懐から何かを取り出してこう言った。

 

「私の名は”カルトゥス”……君とは何れそう遠くない未来、また巡り会う事もあるだろう」

 

「は、はぁ……」

 

「――――――私もこれで失礼するよ。星の導きの下、良き狩人たれ」

 

 操虫棍を杖のように片手で持ち、猟虫をそっと外套の裏に隠したカルトゥスが席を立つ。

ちょっと独特な言い回しをする彼に困惑気味のハジメは先に入り口に立っていたにも関わらず、ゆったり歩いて来る彼に思わず恐縮して道を譲ってしまう。

まだ人通りも少ないフューレンの中に、彼は溶け込んで姿が見えなくなった。

 

(……なんか、変わった人だな……)

 

 決して自分のようななんちゃって中二病とか思ってはいない。

此処は異世界、魔法もモンスターも在って当たり前の世界だ。独特な言い回しをする人を偏見の目で見る事は失礼に値するだろうとハジメは自身を戒める。

 

 

「おっ早起き少年発見~!おはようハジメ君」

 

 宿屋に戻ったハジメがリンネと出会う。

片腕をグルグルと回して寝起きの体を起こしている最中だった。

 

「おはようございますリンネさん……園部は……?」

 

「あぁ~あの子、朝が弱いみたいで…‥ほれあそこ」

 

 苦笑したリンネが指さした方からふらふらと寝間着姿の優花が現れた。

宿屋の裏手にある井戸の冷水で顔を洗ってきたらしいが、彼女の顔は眠そうだ。

 

「ん、おはよ~南雲」

 

「おはようさん、飯食うか」

 

「ん~」

 

 事前に三人で朝食を取ると頼んでおいた彼と彼女らは別室に招かれる。

そこには焼き立てのパン、芋のスープに腸詰のソーセージが置かれていた。

飲み物はセルフ式だが、水やお茶、ホットミルクと選べる。

 

 リンネ、ハジメ、優花の順で席に着いて朝食が始まった。

各々朝は口数も少なく、静かな朝食の風景が小鳥の囀りをbgmに行われる。

少し多めに準備された朝食の食器が空になったタイミングでリンネが口を開く。

 

「それでお二人さん今日のご予定は?」

 

「私は特に……リンネさんが言ってた用事、ご迷惑じゃなければお手伝いしますよ」

 

「ホント~!?助かる、ありがとね~優花ちゃん。ハジメ君は?」

 

「俺はこの後、昨日の子……ノイントさんの見舞いにいきます。折角の商業都市ですから、俺も今後の旅を見据えて道具とかを買い揃えておこうかなと。……後は……そうですね、昨日の依頼主にこんな物を貰ったので、見に行こうかなと」

 

 そう言ってハジメは懐から夕べに年配の男から貰った招待状を見せる。

男一人で行っても虚しいだけかなぁと思い、かと云ってリンネか優花を誘う度胸等がハジメにある筈もなく、2人に用事があるということでその考えもふいになった。

親しくもない赤の他人に押し付けるのは流石に良心が痛む。

 

「踊り子さんに鼻の下伸ばしちゃダメよ~ハジメ君~」

 

「伸ばしませんって……向こうは真剣にやってるんですし、普通に楽しむだけですよ」

 

「そっかぁ~普通に踊り子さんの胸とかお尻とか見ちゃう訳だ~」

 

「……リンネさんなんか俺に恨みでもあるんですか?」

 

「いや別に~!アッハハッ、ごめんごめん……君の反応が面白くて、ついね?」

 

 彼女的には後輩の後輩を揶揄っているだけなのだろう。

しかしそれを聞いている第三者、優花からのチラチラという視線が気になる。

ハジメは内心頭を抱えつつ彼女の揶揄いを甘んじて受け入れることにした。

 

「――――――催し物にそういった意図が含まれてるのであれば、俺も意識せざるを得ませんよ。けど、あくまで見に来た人たちを楽しませる目的で歌や踊りを仕事にしている人に対して、男の邪な劣情を抱くのはその人に対して失礼にあたると思いますが……」

 

「も~ハジメ君ったら真面目なんだから。普通に楽しんできなさい♪」

 

「最初からそう言ってくれれば良かったんですけどね……」

 

 そんなこんなで三人の朝食は終わり、ハジメは彼女達と別の方へ歩き出す。

宿屋を出て真っ直ぐ医者のところを目指す……前に、昨夜少しだけ考えていたノイントへの見舞い品を買う為に、彼は生鮮食品が売られている市場へと足を運ぶことにした。

 

 歩いて数分もすれば賑やかな市場の姿が見えて来る。

商人達が馬車から下ろしたばかりの荷物を木箱の蓋を開けた状態で並べ、やれウチの品は鮮度が他より良い、ウチでは3個買ったお客にオマケをつける等……逞しい商売競争を繰り広げていた。

 

「あっ!おはよう御座います、ハジメ様~♡」

 

「この声は……エタノか、おはようさん」

 

 雑踏の中で声を掛けられたハジメが振り返ると市場で最も人が集まっている店の前に、特徴的な狐耳と尻尾を元気よく揺らしたエタノの姿があった。

よく見ると店で売り子を担当しているのは彼女の部下である狐人達で、それを何やら感心した様子で商人風の集団が後ろから見守っている。その中にはブルックから来た商人の男の姿もあった。

 

「昨日はお疲れ様でした~」

 

「あぁ、ちょっと問題はあったが何とか無事に壺を回収出来たよ」

 

「流石ですハジメ様♪それで、此処に足を運ばれたという事は……」

 

「そうだな、相談というか正に今言った問題のことなんだが――――――」

 

 ハジメはエタノに昨日の出来事の一部始終を語った。

彼女は興味津々といった様子で尻尾をフリフリさせながら話を聞いている。

話している最中、ハジメが尻尾に目を向けていたのを彼女は知りながら敢えて何も言わなかった。

流石に公衆の面前で尻尾を触ります?等と言いだせるほど羞恥心がない痴女ではないらしい。

 

「成程、怪我人のお見舞い……でしたら、私に良い伝手が御座います!」

 

 と言いながらエタノはハジメの手を取って店の奥へと促す。

周りの客が何やら凄い形相で彼女と手を繋いだハジメを凝視している。

どうやら本人が知らぬ間にこの店で人気の看板娘になっていたようだ。

 

「ユンケルさぁん、ちょっと今宜しいですかぁ~?」

 

「おやおや、エタノさん……どうされましたか?其方の青年は―――」

 

 店の裏にてエタノが話しかけたのは”モットー・ユンケル”と名乗る商人の男だった。

帝国、王国、公国の三国を股に掛けるユンケル商会の商会長を若くして務めているという。

ユンケル商会の名を聞いた時、思わずハジメはゲブルト村にいた行商人(リポディー)のことを尋ねる。

 

「あぁ、リポディーさんのことですね!ええ、存じておりますよ。彼は元々フリーの行商人だったんですがね、相方の男性が結婚を機に引退なされたという事で実績を見ても個人でやらせておくには惜しい人材だと思いまして、先代の商会長だった父がスカウトしたんですよ」

 

「そうだったんですね……リポディーさんは今この町に?」

 

「いいえ、二日ほど前に出て行かれました。次はホルアド経由でアンカジ公国の特産品を見て回るとかで……いやはや、あの人の健脚には驚かされてばかりです」

 

「ハハッ、確かにそうですね…!」

 

 遠い昔のように感じていたゲブルト村での生活を思い出して笑顔になるハジメ。

ユンケルもまさか自分が信頼を置く部下と交流のあるハンターと出会うとは思いも寄らず、2人は少しだけお互いの昔話に花を咲かせた。

 

 そうこうしている内にエタノから相談を受けたユンケル商会の人が歩み寄ってきた。

手には籠、籠の中には色とりどりの果物が詰め合わせされている。

 

「ご要望にありました見舞い品としては貴族御用達の物をご用意させて頂きました」

 

「あ、あ~貴族の………」

 

 ハジメはそう言ってちょっと目を泳がせつつ、内心焦っている。

貴族御用達ともなれば恐らく途方もない金額を提示されるだろうと―――

しかし彼の心配は杞憂に終わった。

動揺しているハジメを見たユンケルがクスクス笑ってこう言ったのだ。

 

「ご心配には及びません。貴方であれば通常の代金の半分で構いませんよ」

 

「は、半額って事ですか…!?流石にそれは―――いや、ありがたいですけど」

 

 商業の知識は両親の手伝い程度で損益計算等全く分からないハジメだが、売値の半分というのは明らかに売る側にとって利益を生まない、寧ろ赤字になる可能性だってあるだろう。

そんな心配をよそにユンケルはあっけらかんとしている。

 

「リポディーさんの知り合いで、エタノさんの紹介であるなら、この先も君が商会(ウチ)を利用する機会があるかもしれないだろう?名前を憶えて貰うという意味も含めての好意だよ」

 

「――――――そこまで言われたら、断る理由はありませんね」

 

 税込みで6200ルタの果物詰め合わせを、税引き半額の3000ルタでハジメは購入した。

ユンケルに対して感謝の言葉を述べていると、エタノがハジメの肩に腕を回して言う。

 

「ダメですよぉユンケルさんったら♪ハジメ様は私との専売があるんですからっ」

 

「ハッハッハッ!顧客の奪い合いも商人の仕事の内だよ、エタノさん」

 

(……すっげえ、見えないオーラみたいなのが2人の間でぶつかってる……)

 

 商人同士は直接手を使っての争いなどしない。それは所詮、二流のやる事だ。

法に触れず、汚れ仕事はプロに任せて、自分達は強かに客に媚びて儲けを得ること。

狐人商会とユンケル商会の競争が、この瞬間から始まったのだとハジメは確信した。

まだ絡んでいるエタノを引き剥がしつつ、ハジメは市場を後にする。

 

 医師の家の前で止まった彼はこの後のことを少し考えていた。

ノイントの見舞いが終わった後、フューレンを散策しながら例の催し物を見るつもりだ。

しかしペアでの招待状を一人で使うのはなんだか勿体ない気がする。

それで誰か誘う相手はいないかと考えていた矢先――――――

 

ボキッ!!

 

と医師の家の中から鈍い音が聞こえてきた。

 

 




 カルトゥスさんのイメージはMHWに出てきたある方を連想して頂ければ、フードを被って顔を隠してる時点でかなりヒントですかね……?
ティオの幕間の話を読み返して頂ければ「あっ、これかぁ!」って思うかもしれません。
 
 リンネ姉貴のダル絡みはまぁ、よくある学校とか会社の先輩の可愛がりみたいなもんです……原作ハジメ君なら眉間に一発ぶち込んでるな(確信)
さて……医者のところでノイントちゃんに何があったのやら。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております!

初期で構成していたプロットより大幅に話数が増えてしまったので、本作を第一部として続編(2nd的な)を作り本作を完結させようか迷ってます。(それで投稿ペースが遅れる等はありません)

  • 続編にして
  • このまま話数増やしてもいいんじゃね?
  • 打ち切りはヤメロォ!
  • もっと周りの話補完して♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。