イナズマイレブン 転生したらホモだった 作:トツキトウカ
始めます。
「そこまでだ」
門の方から、厄介な客に対して待ったをかける声がした。振り返ってそちらを見ると、そこには何人もの黒服を従えた男がいた。全身紫の服装で、長い髪は後ろで一つにまとめてられており、楕円のサングラスをかけた厳めしい顔の細身で長身の男だった。
そして同じくそちらを見た厄介な客は突然現れたその人物を見て、驚愕する。
「な、なぜあなたがここに!」
「お前の部下から話は聞かせてもらった。才能溢れる若者を力ずくで己がものにしようとするとは。少年サッカー協会副会長として、見過ごす訳にはいかんな」
「んな、ち、違います! 私は、総帥のために「うるさい、もうその口を開くな、不愉快だ。おい、こいつをつれて行け」
そう男が命ずると、黒服たちは厄介な客をがっちりと捕まえて連行する。
「や、やめろ! 離せ! 俺に触るな! ぐおっ!」
厄介な客は拘束を振りほどこうと暴れていたが、黒服たちに強制的に黙らされた。
「お騒がせして申し訳ありません。あの男は以前から協会でも問題視されていたのですが、なかなか尻尾を出さなかったもので。しかし、今回のことでさすがの彼にも厳罰が下るでしょう」
男は、今回の事件を防げなかったのは自分たちの責任であると謝罪をしつつ、こう切り出した。
「高島有人君の件なんですが、彼は私に預からせて頂けないでしょうか。今回のような馬鹿が、まだ潜んでいないとも限りません。私のところであれば馬鹿共も迂闊に手出しは出来ないでしょう。さらに、私であればサッカーをするのに最適な環境も提供出来ます。如何でしょうか?」
「……とりあえず、今回のことも含めてもう一度中でお話を聞かせてもらいます」
「ああ、これは失礼しました。そういえば自己紹介もまだでしたね。私の名前は」
影山零治。男は、そう名乗った。
*
それから、院長夫妻と影山、そして今回の事件や影山の提案にも関係のある鬼道の四人で話し合いが行われた。おそらくこれで、彼は影山のもとへ行くことになるのだろう。影山の言うサッカーの為の環境も、鬼道にとって魅力的なはずだ。
しばらくすると影山は帰った。どうやら鬼道は答えを先延ばししたようで、また一週間後に来る、いつ来てもいいように準備をしておくと言い残していったようだ。
「……俺はどうすればいいのだろうか」
そう鬼道に問われた俺は、しかし答えることが出来なかった。
帝国で活躍する鬼道を知っている俺としては、影山のもとでサッカーをすることは正しい選択だと思う。転生した者として自分の知る通りに進んだ方が動きやすいというのもある。それに、断ってしまえば影山が鬼道に害を及ぼすという可能性が十分にある。
しかし、その選択は兄妹を引き離す選択でもあった。影山はサッカーに集中する為に、妹の春奈とは離れて暮らして、フットボールフロンティアで三年間優勝し続ければ引き取れること、それまでは連絡を取ることは出来ない、という条件を出してきた。どちらがサッカープレイヤー高島有人にとって良い選択であるかは分かっていたが、実際に問われるとそれを強く勧める気にはなれなかった。
だが、そうして話を聞いているうちに鬼道は自分の中で答えを出したようだ。それでも、まだ覚悟までは出来ず、決断しきれない様子だった。鬼道が決めたならもう口を出しても良いはずだ。そう思って俺は助け船を出すことにした。
「もし、有人の考え事が春奈ちゃんのことなら、心配しなくても大丈夫だと思うぞ。春奈ちゃんは有人が考えているよりも、ずっと強い子だ。あとは、いざとなれば俺もいる。有人の代わりにはなれないかもしれないけど、春奈ちゃんが寂しくならない様に頑張るよ」
「……そうか。ありがとう」
「それに、何かあれば俺に連絡すれば良い。春奈ちゃんと連絡するなとは言われたけど、俺と連絡するなとは言われてないだろ? たまたま俺と話していて、たまたま春奈ちゃんの近況を有人が聞いたり、たまたま春奈ちゃんに有人の話をしたりしても問題ないはずだ」
「!? ……ふふふ、そうだな」
「ああ、だから有人は自分のやりたいことをやれば良い」
「……なあ、お前は影山さんのもとへ来たいとは思わないのか? 少年サッカー協会副会長というのも本当らしいし、確かにサッカーをするのに最適な環境を用意してくれるだろう。あれだけサッカーに真面目に取り組んでいたお前には、理想の環境じゃないか?」
確かに魅力的な提案だ。鬼道有人の幼なじみが、彼と共に影山のもとへ行く。最高の環境で成長して、帝国学園で活躍する。正直、心はかなり揺れている。そもそも今考えている雷門中には、行けるかどうかも分からないのだ。
「もしお前が望むなら、俺から影山さんにお願いしてみよう。春奈は許されなかったが、お前ならダメということもないだろう。俺がお前の実力を保証すれば、これからも一緒に練習出来るかもしれない」
「……いや、いい」
だが、俺は鬼道の提案を断った。
「なぜだ?」
鬼道は聞き返したが、最初からなんとなく断られる気がしていた。自分でもよく分からないが、こいつはそういうやつなのだ。
「……まだ、有人には一度も勝っていないからね。勝てないからって有人についていくのは気にくわないし、自分の力で貰われる訳でもなく、有人のおかげで行くのも気にくわない。それに」
「それに?」
「俺がよそで活躍すればあのおじさんも驚くでしょ? あの時有人と同じ場所にいたはずのに、この私が気付かなかったなんて! って。俺は、俺の実力を見抜けずに、有人だけを連れていくあのおじさんも気にくわないんだ。だから、俺のことはあのおじさんには内緒にしといてほしい」
「ふ、ははは、おもしろい。そうだな、それは確かに影山さんも驚くことだろう。ならば、お前のことは秘密にしておこう。……お前なら、必ず強くなって俺の前に現れることだろう。お前と戦うその日を、楽しみに待っている」
「ああ、俺もだ」
そうして、二人は別々の道を歩むことに決めた。
主人公は偉そうなこと言ってますが、要するに帝国ではなく雷門が良かっただけです。鬼道にはそれっぽい理由を並べて、上手く影山から隠れました。一応、断った理由の悔しい(気にくわない)うんぬんは嘘ではありませんが、それだけでは主人公の中で断る理由としては弱いので、結局雷門に行きたかったというだけの話でした。
努力が実ったのか、諸悪の根源である影山からは未だにノーマークです。このまま本編開始まで、ある一件を除けば影山さんは出番無しの予定。(別に作者が影山と絡ませるのめんどくさいとか思っているのは関係)ないです。
キャラクター紹介のコーナー
影山零治 帝国学園総帥。少年サッカー協会副会長。何かと黒い噂のある人物。全ての悪事はだいたい影山のせい。