Devil May Cry -Russian Roulette-   作:パン粉

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「アルトレア!?大丈夫なんですか?」

「あ?ピンピンしてらァ」

 

 戦車の上に飛び乗ると、ハッチから顔を出したサーシャが話し掛けてくる。先程見た傷はいつの間にか無くなっていて、創龍も彼の言葉通りであった。

 

 機銃の代役の為に、先程と同じように上でしゃがむ。サーシャやギブソンは、今何が起こったのかを仲間として聞く権利があるとして、創龍に問うた。

 

「そうだな……。まず、俺は"アルトレア・ブラックモア"っていう、イギリス国籍の偽戸籍と、"神威創龍"っつゥ、地球上のどこにも存在しない戸籍の本名があるンだ」

「……聞いたことあるぞ、"悪魔も泣き出す裏稼業の便利屋"、"不可能を可能にする男"って」

「そう言われてるらしいな、俺ァ」

 

 ギブソンから聞いた、裏世界からの評判に、創龍は鼻でフンと笑った。ここから北棟への道は塞がれ、南棟から回り込んで行くしかないこの状況。今は何が出てきてもおかしくないのだが、創龍は平然と胡座をかいている。

 

 花鳥風月をくるくる回して遊びながら、創龍は続けた。

 

「親父がよ、悪魔っつゥ生き物なんだ。お袋は人間だけど」

「……魔剣士クラウス、ですね。子供の頃、母にクラウスの絵本を読み聞かせてもらっていました。人の情と心を知り、弟のスパーダと魔帝を封印した、と」

「俺も、クリスマスプレゼントに子供にその絵本を買ってやったが、ノンフィクションなのか、それ……」

 

 意外にも、クラウスの名は"創作物"として知られていた。その"絵本"に書かれていない詳しい内容は、創龍が勿論把握済みであった。

 

 だとしたら、とサーシャは創龍の背中にあるヴェルギリウスを見た。絵本の絵と、ほぼ同じデザイン。そして、軽くて鋭い切れ味、という全く同じ説明も絵本にあったことを思い出す。

 

「2000年前に魔界を封印した親父の血を強く受け継いだ俺は、殆ど悪魔と言ってもいい。人間の血もあるがな」

「その血を使い、ペトロフ中将はあれほど強大な存在になった、と」

「らしい。結構な量の血を取られてたからな、毎朝」

「だから、いつも朝はいなかったんですか」

 

 なるべく起床時間を合わせていたサーシャの疑問が解けた。彼の行動は、意識せずにペトロフの計画に荷担していたことになるのか。

 

 はぁ、と創龍が溜め息をついた。それには、後悔と自戒の念が込んでいた。

 

「気付いときゃ良かったンだ、俺は。インペリアルカレッジ卒業して、

まだ便利屋が"Devil May Cry"って名前だった頃に、あいつにハメられたってェのもあったが……」

「ハメられた?」

「ここのセキュリティやサーバを作ったのは、俺なンだよ。アイツに依頼されて、仕事した時にセキュリティ機密を知ったとかで無理矢理入隊させられた」

 

 だから、創龍は武器庫に続く防御ドアのセキュリティロックや、サーバの居場所が出来たのだろう。パスワードを入れていた時の手も素早かったし、セキュリティロックの弱点も知っていたのか。

 

 離している途中に花鳥風月を抜き、落ちてきた瓦礫を乱射して弾き飛ばした。この連射速度も、悪魔の血を引く者にしか出来ないだろう。

 

「だからこそ、だ。ペトロフを殺してでも、俺はアイツを止めなきゃならねェ」

「出来るのか?お前が親しくしてた中将に手をかけるなんて」

「出来る出来ないじゃねェ。やらなきゃならねェンだ」

「……お供しますよ、創龍。イチ補佐として」

「ありがてェ。が、死ぬなよお嬢ちゃん。んで、ギブソンは早く帰って子供に顔見せてやれ」

「いいのか?俺だけ逃げて」

「ああ。お前が死んだら、俺がお前の嫁さんにも子供にも会わす顔がねェ。南棟にヘリがあったろ。それで逃げろ。あとは俺達に任せな」

 

 中身は悪魔でも、創龍の心は人間だ。非常に人間くさい一面があり、それがギブソンの背中を押してくれる。

 

 南棟まで辿り着くと、戦車を降りて、ギブソンの護衛の為に二人は付き纏った。ドアをこじ開け、魔力の侵食を受けはじめている南棟に足を踏み入れる。

 

「今更ですけど、気味悪いですね、ここ」

「ああ。だけど、俺がいるんだ、死なせやしねェよ」

「頼りにしてるぜ、アルトレア――いや、創龍」

 

 素早く非常階段を駆け登り、10階のヘリポートに辿り着いた時、創龍はドアを蹴破り、青に塗装されたヘリに近付く。ヘリのドアを開け、エンジンを動かして、ギブソンに乗り込ませた。

 

 そんな中、サーシャはヘリ内の弾薬をサイドパックに詰め込んだ。ついでに、と、かけてあったミサイルランチャーを1丁調達し、創龍に渡す。

 

「達者でな、ギブソン」

「すまない。……死ぬなよ」

 

 誰にモノを言ってやがる、と創龍は軽口を叩いた。飛び立つヘリを見送ると、サーシャに話し掛ける。

 

「お嬢ちゃん。こっから正念場、最終試験だ。俺の補佐なら死なずについてこいよ」

「死にませんよ。死にたくないですし」

「その意気だ。んじゃ……」

 

 創龍の口が止まる。どうかしたのか、と創龍にサーシャが聞くが、彼は何も喋らず、サーシャに向けて花鳥風月を放った。

 

 その狙いは正確ではなく、サーシャの髪を霞め、ドチュンと爆発音を立てながら、サーシャの後ろの何かにぶつかった。振り向くと、長い舌と無知のような腕をした緑色のサヴェージがいた。αでも、βでもないとすると、γか。

 

「こいつらと一曲踊ろうぜ」

 

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