Devil May Cry -Russian Roulette- 作:パン粉
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◆◇◆◇◆◇
ゆっくりと慌てず、アルトレアとサーシャは西棟へと、瓦礫で散らばる道を歩く。足場はとても不安定で、いつ足を捻挫するかわからない立場だが、アルトレアはそれをも気にせず進んでいった。
辺り一面真っ暗闇。サーシャはどっちに進めばいいのかわからないが、アルトレアに着いていけば大丈夫だろう、と信じていた。この基地が広大な面積を有していることに、これほど苛立ちを感じるとは思わずにいた。
「軍曹、戦車とかはないんですかね」
「格納庫に行かねェとないだろうな」
「格納庫は……」
「中央棟の地下。そこにめちゃくちゃある」
格納庫よりも武器庫へ行く方が先だ。サーシャの持っているBIZONの弾は有限である。補給は必ず必要になるだろう。それまでに、弾が切れなければいいが。
「しかしまあ……。なかなか度胸のあるヤツがいたもんだ。この要塞染みた基地に襲撃なんざヨ」
「そうですね。でも、被害は甚大ですよ?あの兵舎にいた人達で、生き残りは私達くらいでしょうし……」
「気にしてるのか?お前がそいつらの分まで生きりゃいいじゃねェか。死なずに済んだことをまずは喜べ」
「そうですね……」
「そんで、今から殺るべきクズどもを殺らなきゃな?」
気がついたら、黒ずくめの装備をした兵に囲まれている状態。クーデターが、なにかか。だがアルトレアは、その者達から生気が感じ取れなかった。
「すいません、友軍でしょうか?」
「……」
「私はサーシャ・グスタフと申します。先程、あの崩れた兵舎から逃げてきたものです」
「……Kill them all!!」
「はっ?」
「殺してやる、って言われたンだ。用心しねェと……なっ!」
ガスマスクを被った黒ずくめの者達が、一斉にAK104を射撃してくる。アルトレアはサーシャに忠告し、彼自身もしゃがみながら、拳銃で撃ち倒していく。サーシャは身を倒して銃弾を避けながらBIZONを連射して敵を倒した。その時、一体のガスマスクが取れ、顔面があらわになる。殲滅した後、サーシャがそれを確認すると、それは人とは程遠いものであった。
赤い色に角が生え、口からは鋭い牙が剥き出し。毛髪は一切なく、だが眼だけは人間に近い。
「怪物、とでも言うんでしょうか……」
「異形だわな、誰がどう見ても。しかし、パーソナルカードは持ってるみてェだな」
アルトレアは、死体の服の内側から、白い特殊プラスチックのカードを取り出した。名前と所属部隊、階級など、個人情報が明記されている。いかにも、それはロシア軍兵士、しかもここの基地の兵であった。
「クーデター、だな」
「規模が違うこの基地で、ですか?」
「いくらデカいからって、内部からじゃ対処のしようがねェ」
亡骸にカードを戻し、AKを奪い取る。それをサーシャに渡して、マガジンも彼女に預けた。これが戦地に置ける戦い方、というものだろうか。サーシャは今の状況からも必死に学ぼうとした。
「それだけ武器がありゃ当分は大丈夫だろ」
「まあ、多少は」
サーシャはAKをベルトで肩に担ぎ、アルトレアの背中についていく。西棟へはあと5分もしたら着くだろう。だが、建物内での戦闘も待ち構えている可能性だってある。いつ何時も気を抜いてはいられない。
アルトレアはふと先程の死体からくすねた時計を見た。時刻は深夜1時。こんな時間だからこそ狙われたのだろう。だが、夜間哨戒の人間を出し抜くほどの勢力とは、どれほどの実力者だろうか。
「おかしなことばっか起こりやがる、ッたく」
「本当ですね。あっ、西棟着きましたよ。……入口しまってますけど」
「パーソナルカードで開くだろ」
裏口の自動で開くはずのドア。しかし今は閉まっている。試しにサーシャが自分のパーソナルカードを隣のカードリーダに通すが、ドアはうんともすんともしない。よく見てみると、電気が通っていないようだ。アルトレアは自室のドアと同じ様にそこを蹴り、無理矢理ドアを開けた。
ドアのシステムには電気が通っていないのに、中の照明はついている。そして、死屍累々としている通路。血で染められた壁や床。殆どが事切れている。
「酷い……」
「この集団をやったのか?大した奴らだ」
「ぶ、ブラックモア、か……」
「ソコラフ?お前もやられちまったか」
「ああ……。たった1体の化け物に、この有様だ……」
「なっさけねェ」
「っは、お前ならそう言うと思ったよ……。だが、お前らなら、ここから逃げられるだろうな……」
「逃げる?なァに寝ぼけた事言ってんだ。ブッ潰すに決まってンだろ」
アルトレアが本当にやるつもりだから、サーシャは困った。出来れば今すぐここから逃げたい。だが、自分はアルトレアの補佐だ。彼を見捨てるわけにもいかないし、彼から離れたら自分が死ぬ。
少しして、アルトレアの同僚が息を引き取り、アルトレアは涙も見せず、遺体から弾薬とパーソナルカードを抜き取った。
「軍曹のパーソナルカードは?」
「あるけどよ、万一折れたりした時の為だ」
「なるほど。ところで、軍曹の残弾はまだ余裕なのですか?」
「俺の銃は弾は切れねェ。心配すんな。それよりも、この事態の犯人ってのを殺そうかい」
アルトレアは背中の剣を抜いた。そして、いつ現れたのかはわからないが、仮面を被った、腕の長い猿のような生き物が、アルトレア達の視線にいた。それは、アルトレアを見た瞬間、驚異的なスピードで近付き、鋭く大きな爪を振りかぶり、アルトレアに斬りかかった。しかし、それよりもアルトレアの一太刀は速く、頭から縦に真っ二つにしてしまう。分かれた身体がアルトレア達を通り過ぎ、ぱたりと倒れた。
◇◆◇◆◇
サーシャが感じた恐怖。それは、間違いなくアルトレアから感じたものだった。彼の一太刀が、一体の怪物を殺した。何の躊躇いもなく、一瞬で。
――なるほど、これが剣の使い方か。
別のことを考えて、サーシャは気を紛らせようと試みた。だが、自分の軍服に着いた血は、紛れもなくアルトレアの強さの証拠である。
二人は裏口通路を通り抜け、1階のロビーに出た。近くには小倉庫があり、アルトレアがいうには、弾薬と非常用の食料があるらしい。彼女一人では流石に不安がり、アルトレアも同伴して倉庫に入る。カードリーダにパーソナルカードを通して扉を開け、サーシャがBIZONの弾を調達している間、アルトレアはこの棟にある通信室の鍵を手に入れた。ついでに、無線機も入手し、まずこの事態をペトロフに報告しようと周波数を合わせた。
「……繋がんねェ」
「軍曹、弾薬と武器を調達しました」
「おう、じゃ通信室行くぞ」
「はい!」
繋がらないものは仕方ない。アルトレアは、5階にある通信室に向かうべく、近くのエレベーターに向かった。少しこの場を奇妙に感じていたが、それを無視して。
いくら分棟といえども、要塞クラスの基地だから、この建物内部は広い。下手をすれば迷い、挙げ句先程の怪物に襲われて殉職、という未来が待っている。特にサーシャに対してはその危険性が高い。かと言って、エレベーターの中も危険だ。エレベーターのコンソールに着き、ボタンを叩くが、なにも反応しない。また電気が切れているのだろうか。その時、サーシャが先程の倉庫で取ってきたらしい工具セットを出し、マイナスドライバーでパネルをこじ開け、コードを繋いで通電させた。
「やるねェ」
「いえ。私の父がこういう職業なので」
「見て覚えたってか」
「そうですね」
エレベーターが降りて来るのを待つ間、二人はこの状況下で雑談し始める。裏口の通路には死体がたくさん転がっていたのに、ここは綺麗になにも無いことに気付かず。
エレベーターの扉が空いた。中には血飛沫が飛び散り、よくみたら、人体のパーツが残っている。そこでアルトレアは気付いた。この棟の危険性を。
「嬢ちゃん、まだ乗るな」
「ええ、了解しました!」
流石にサーシャも気付いたらしい。エレベーターの天井から先程と似た怪物が出て来た。しかし、こちらは口が大きく、また牙が鋭く生え揃っている。
「思い出した、サヴェージαか……」
「なんですそれ?」
「このサルの名前だ。さっきの爪の奴がβ」
「人為的な生物なんで……すか!?」
大顎でサーシャに食らいつこうとするその猿を彼女は見事に捌き、その隙に、先程の倉庫で手に入れたショットガンを近距離で放った。散弾が見事に命中して、その身体を吹き飛ばすが、まだしぶとく生き延びている。アルトレアはそれに追撃し、頭を思い切り踏み潰して破壊した。
「なんです、これ?」
「少なくともこの世の生き物じゃねェな。まだいるかもしれねェ」
「この空間じゃ対処仕切れないかもしれません」
「……リスクは承知だ。エレベーター使うぞ」
アルトレアは臆せずにエレベーターに乗り込んだ。サーシャもそれに従い、5階まで一気に登る。幸いにも、その間は全く攻撃は無かった。
5階に着き、サーシャを先に出すと、アルトレアはエレベーターの上に登り、ワイヤーを切ってエレベーターを落とした。敵にエレベーターを使用させないためだ。アルトレアが切ったワイヤーに捕まり、5階の床に飛び降りる。サーシャがすぐさま銃を構えて警戒態勢を保つが、アルトレアはなにも身構えずただ歩く。
「通信室まではすぐですか?」
「遠くはないが、近くもねェ」
「ますます不安ですね」
「そうか?」
アルトレアの余裕が更にサーシャを不安に陥れる。彼の力が強大なのはわかったが、自分は非力で、一撃が致命傷となりうるからだ。かわせる瞬発力と身体能力があれば、こんな心配しなくていいのだが。
その心配を現実にすべく、サヴェージβが6体ほど、自慢の爪を鋭く光らせながら二人に襲い掛かる。6方向から一斉に攻撃を仕掛けるが、アルトレアの反応はそれを上回り、サーシャの頭上まで飛びヴェルギリウスで回転斬りを放った。吹き飛ばされるもサヴェージβは受け身を取り、そのまま突進してサーシャを狙う。彼女は素早くAKとBIZONで前方の3体を撃ち倒し、その彼女の背後の敵をアルトレアはギリギリまで引き付け、一気にヴェルギリウスを横に凪ぎ、真っ二つにする。スリリングな攻撃もアルトレアならではのものだろう。
「ハハッ、お前もこんな短期間でやるようになりやがったなァ」
「指導者がいいからでしょうね。身体能力はまだまだでしょうけど」
「カラダなんざ幾らでも弄れるだろ」
ヴェルギリウスを背中に担ぎ、まだまだサーシャに余裕を見せ付けるアルトレア。こんな風にこの場を切り抜けられるようになりたい。
そして破壊的なその威力。やはりヴェルギリウスは、アルトレアの言う通り魔剣なのだろう。