Devil May Cry -Russian Roulette-   作:パン粉

6 / 17
Mission 2 -Death Puzzle-
1


◆◇◆◇◆◇

 

 

 ゆっくりと慌てず、アルトレアとサーシャは西棟へと、瓦礫で散らばる道を歩く。足場はとても不安定で、いつ足を捻挫するかわからない立場だが、アルトレアはそれをも気にせず進んでいった。

 

 辺り一面真っ暗闇。サーシャはどっちに進めばいいのかわからないが、アルトレアに着いていけば大丈夫だろう、と信じていた。この基地が広大な面積を有していることに、これほど苛立ちを感じるとは思わずにいた。

 

「軍曹、戦車とかはないんですかね」

「格納庫に行かねェとないだろうな」

「格納庫は……」

「中央棟の地下。そこにめちゃくちゃある」

 

 格納庫よりも武器庫へ行く方が先だ。サーシャの持っているBIZONの弾は有限である。補給は必ず必要になるだろう。それまでに、弾が切れなければいいが。

 

「しかしまあ……。なかなか度胸のあるヤツがいたもんだ。この要塞染みた基地に襲撃なんざヨ」

「そうですね。でも、被害は甚大ですよ?あの兵舎にいた人達で、生き残りは私達くらいでしょうし……」

「気にしてるのか?お前がそいつらの分まで生きりゃいいじゃねェか。死なずに済んだことをまずは喜べ」

「そうですね……」

「そんで、今から殺るべきクズどもを殺らなきゃな?」

 

 気がついたら、黒ずくめの装備をした兵に囲まれている状態。クーデターが、なにかか。だがアルトレアは、その者達から生気が感じ取れなかった。

 

「すいません、友軍でしょうか?」

「……」

「私はサーシャ・グスタフと申します。先程、あの崩れた兵舎から逃げてきたものです」

「……Kill them all!!」

「はっ?」

「殺してやる、って言われたンだ。用心しねェと……なっ!」

 ガスマスクを被った黒ずくめの者達が、一斉にAK104を射撃してくる。アルトレアはサーシャに忠告し、彼自身もしゃがみながら、拳銃で撃ち倒していく。サーシャは身を倒して銃弾を避けながらBIZONを連射して敵を倒した。その時、一体のガスマスクが取れ、顔面があらわになる。殲滅した後、サーシャがそれを確認すると、それは人とは程遠いものであった。

 

 赤い色に角が生え、口からは鋭い牙が剥き出し。毛髪は一切なく、だが眼だけは人間に近い。

 

「怪物、とでも言うんでしょうか……」

「異形だわな、誰がどう見ても。しかし、パーソナルカードは持ってるみてェだな」

 アルトレアは、死体の服の内側から、白い特殊プラスチックのカードを取り出した。名前と所属部隊、階級など、個人情報が明記されている。いかにも、それはロシア軍兵士、しかもここの基地の兵であった。

 

「クーデター、だな」

「規模が違うこの基地で、ですか?」

「いくらデカいからって、内部からじゃ対処のしようがねェ」

 

 亡骸にカードを戻し、AKを奪い取る。それをサーシャに渡して、マガジンも彼女に預けた。これが戦地に置ける戦い方、というものだろうか。サーシャは今の状況からも必死に学ぼうとした。

 

「それだけ武器がありゃ当分は大丈夫だろ」

「まあ、多少は」

 

 サーシャはAKをベルトで肩に担ぎ、アルトレアの背中についていく。西棟へはあと5分もしたら着くだろう。だが、建物内での戦闘も待ち構えている可能性だってある。いつ何時も気を抜いてはいられない。

 

 アルトレアはふと先程の死体からくすねた時計を見た。時刻は深夜1時。こんな時間だからこそ狙われたのだろう。だが、夜間哨戒の人間を出し抜くほどの勢力とは、どれほどの実力者だろうか。

 

「おかしなことばっか起こりやがる、ッたく」

「本当ですね。あっ、西棟着きましたよ。……入口しまってますけど」

「パーソナルカードで開くだろ」

 

 裏口の自動で開くはずのドア。しかし今は閉まっている。試しにサーシャが自分のパーソナルカードを隣のカードリーダに通すが、ドアはうんともすんともしない。よく見てみると、電気が通っていないようだ。アルトレアは自室のドアと同じ様にそこを蹴り、無理矢理ドアを開けた。

 

 ドアのシステムには電気が通っていないのに、中の照明はついている。そして、死屍累々としている通路。血で染められた壁や床。殆どが事切れている。

 

「酷い……」

「この集団をやったのか?大した奴らだ」

「ぶ、ブラックモア、か……」

「ソコラフ?お前もやられちまったか」

「ああ……。たった1体の化け物に、この有様だ……」

「なっさけねェ」

「っは、お前ならそう言うと思ったよ……。だが、お前らなら、ここから逃げられるだろうな……」

「逃げる?なァに寝ぼけた事言ってんだ。ブッ潰すに決まってンだろ」

 

 アルトレアが本当にやるつもりだから、サーシャは困った。出来れば今すぐここから逃げたい。だが、自分はアルトレアの補佐だ。彼を見捨てるわけにもいかないし、彼から離れたら自分が死ぬ。

 少しして、アルトレアの同僚が息を引き取り、アルトレアは涙も見せず、遺体から弾薬とパーソナルカードを抜き取った。

 

「軍曹のパーソナルカードは?」

「あるけどよ、万一折れたりした時の為だ」

「なるほど。ところで、軍曹の残弾はまだ余裕なのですか?」

「俺の銃は弾は切れねェ。心配すんな。それよりも、この事態の犯人ってのを殺そうかい」

 

 アルトレアは背中の剣を抜いた。そして、いつ現れたのかはわからないが、仮面を被った、腕の長い猿のような生き物が、アルトレア達の視線にいた。それは、アルトレアを見た瞬間、驚異的なスピードで近付き、鋭く大きな爪を振りかぶり、アルトレアに斬りかかった。しかし、それよりもアルトレアの一太刀は速く、頭から縦に真っ二つにしてしまう。分かれた身体がアルトレア達を通り過ぎ、ぱたりと倒れた。

 

◇◆◇◆◇

 

 

 サーシャが感じた恐怖。それは、間違いなくアルトレアから感じたものだった。彼の一太刀が、一体の怪物を殺した。何の躊躇いもなく、一瞬で。

 

 ――なるほど、これが剣の使い方か。

 

 別のことを考えて、サーシャは気を紛らせようと試みた。だが、自分の軍服に着いた血は、紛れもなくアルトレアの強さの証拠である。

 

 二人は裏口通路を通り抜け、1階のロビーに出た。近くには小倉庫があり、アルトレアがいうには、弾薬と非常用の食料があるらしい。彼女一人では流石に不安がり、アルトレアも同伴して倉庫に入る。カードリーダにパーソナルカードを通して扉を開け、サーシャがBIZONの弾を調達している間、アルトレアはこの棟にある通信室の鍵を手に入れた。ついでに、無線機も入手し、まずこの事態をペトロフに報告しようと周波数を合わせた。

 

「……繋がんねェ」

「軍曹、弾薬と武器を調達しました」

「おう、じゃ通信室行くぞ」

「はい!」

 

 繋がらないものは仕方ない。アルトレアは、5階にある通信室に向かうべく、近くのエレベーターに向かった。少しこの場を奇妙に感じていたが、それを無視して。

 

 いくら分棟といえども、要塞クラスの基地だから、この建物内部は広い。下手をすれば迷い、挙げ句先程の怪物に襲われて殉職、という未来が待っている。特にサーシャに対してはその危険性が高い。かと言って、エレベーターの中も危険だ。エレベーターのコンソールに着き、ボタンを叩くが、なにも反応しない。また電気が切れているのだろうか。その時、サーシャが先程の倉庫で取ってきたらしい工具セットを出し、マイナスドライバーでパネルをこじ開け、コードを繋いで通電させた。

 

「やるねェ」

「いえ。私の父がこういう職業なので」

「見て覚えたってか」

「そうですね」

 

 エレベーターが降りて来るのを待つ間、二人はこの状況下で雑談し始める。裏口の通路には死体がたくさん転がっていたのに、ここは綺麗になにも無いことに気付かず。

 

 エレベーターの扉が空いた。中には血飛沫が飛び散り、よくみたら、人体のパーツが残っている。そこでアルトレアは気付いた。この棟の危険性を。

 

「嬢ちゃん、まだ乗るな」

「ええ、了解しました!」

 流石にサーシャも気付いたらしい。エレベーターの天井から先程と似た怪物が出て来た。しかし、こちらは口が大きく、また牙が鋭く生え揃っている。

 

「思い出した、サヴェージαか……」

「なんですそれ?」

「このサルの名前だ。さっきの爪の奴がβ」

「人為的な生物なんで……すか!?」

 

 大顎でサーシャに食らいつこうとするその猿を彼女は見事に捌き、その隙に、先程の倉庫で手に入れたショットガンを近距離で放った。散弾が見事に命中して、その身体を吹き飛ばすが、まだしぶとく生き延びている。アルトレアはそれに追撃し、頭を思い切り踏み潰して破壊した。

 

「なんです、これ?」

「少なくともこの世の生き物じゃねェな。まだいるかもしれねェ」

「この空間じゃ対処仕切れないかもしれません」

「……リスクは承知だ。エレベーター使うぞ」

 

 アルトレアは臆せずにエレベーターに乗り込んだ。サーシャもそれに従い、5階まで一気に登る。幸いにも、その間は全く攻撃は無かった。

 

 5階に着き、サーシャを先に出すと、アルトレアはエレベーターの上に登り、ワイヤーを切ってエレベーターを落とした。敵にエレベーターを使用させないためだ。アルトレアが切ったワイヤーに捕まり、5階の床に飛び降りる。サーシャがすぐさま銃を構えて警戒態勢を保つが、アルトレアはなにも身構えずただ歩く。

 

「通信室まではすぐですか?」

「遠くはないが、近くもねェ」

「ますます不安ですね」

「そうか?」

 

 アルトレアの余裕が更にサーシャを不安に陥れる。彼の力が強大なのはわかったが、自分は非力で、一撃が致命傷となりうるからだ。かわせる瞬発力と身体能力があれば、こんな心配しなくていいのだが。

 

 その心配を現実にすべく、サヴェージβが6体ほど、自慢の爪を鋭く光らせながら二人に襲い掛かる。6方向から一斉に攻撃を仕掛けるが、アルトレアの反応はそれを上回り、サーシャの頭上まで飛びヴェルギリウスで回転斬りを放った。吹き飛ばされるもサヴェージβは受け身を取り、そのまま突進してサーシャを狙う。彼女は素早くAKとBIZONで前方の3体を撃ち倒し、その彼女の背後の敵をアルトレアはギリギリまで引き付け、一気にヴェルギリウスを横に凪ぎ、真っ二つにする。スリリングな攻撃もアルトレアならではのものだろう。

「ハハッ、お前もこんな短期間でやるようになりやがったなァ」

「指導者がいいからでしょうね。身体能力はまだまだでしょうけど」

「カラダなんざ幾らでも弄れるだろ」

 

 ヴェルギリウスを背中に担ぎ、まだまだサーシャに余裕を見せ付けるアルトレア。こんな風にこの場を切り抜けられるようになりたい。

 

 そして破壊的なその威力。やはりヴェルギリウスは、アルトレアの言う通り魔剣なのだろう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。