Devil May Cry -Russian Roulette-   作:パン粉

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Mission 3 -Bloody Poison-
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◆◇◆◇◆◇

 

 

 中央棟に入った途端に、連絡橋のシャッターが下りて、戻れなくなったのだが、アルトレアは逆にそれが好都合だと感じた。あちら側の敵がこちらに来なくなる。だが、ここの敵だって、何がいるのかはわからない。更に、ここの基地で一番大きな建造物であるから、危険はそこかしこにあるだろう。尚更、サーシャが足手まといになるだろうが、アルトレアの思考はぶっ飛んで、いいハンデ付けになると楽観視していた。

 

 足元の合金の床と、壁に張り巡らされたケーブルなどが、この基地がいかに要塞染みているかがわかる。それでも、内側からの攻撃からは弱いのが欠点だ。このコシュマグラードに限らず、であるが。

 

 21階まであるこの中央棟を落とすのは流石に骨がいるだろう。だが、見た限りほとんど陥落したと言える。死屍累々。しかもそれは、胴体が泣き別れになっていたり、首が刎ねられていたり、腹部や背中から骨や腸が剥き出しになっている。傷口からサヴェージのものとは違うことが一目瞭然であった。

 

「まぁた、カスが新しく来たな」

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 地下2階まで階段を使って降りた二人は、アルトレアを先頭にして、大きなシャッターの前に立った。アルトレアのパーソナルカードを読み込ませて、コンソールのテンキーを叩く。ここの新入りのサーシャにはわからないのは当たり前であった。シャッターが開き、強固なドアがギシギシと音を立てて奥に割れる。

 

 念のため、サーシャは銃を構えた。何も身構えないアルトレアの背中をカバーするようにした。彼には必要の無いことかもしれないが、自分の身を守るため、自分の背中はアルトレアに任せた。

 

「嫌な静けさですね」

「そうでもない。ここはそこまでヤワな守りしてねェから、壁か地面突き破らねェ限りは敵はこねェよ」

 

 頑丈な内壁の中を進み、またドアを開ける。大量の弾薬や強力な武器が揃うそこは、まさにこの基地が要塞と呼ばれるのに相応しい理由であった。

 

 大量の弾のカートリッジをサイドパックやショルダーパックに詰める。また、M90-TwoやVSSなども調達して、サーシャの体勢は完全に整った。

 

 BIZONをアルトレアに返すと、彼は合金のロックドアを素手で壊し、中からライフルを取り出した。人が使えるギリギリの銃・ウェザビーマグナム。その威力は折り紙付きのものである。

 

「ペトロフの愛用品だぜ」

「そうなんですか?」

「コイツで狩りに行ってたからな」

 

 くるくるとライフルを回しながらサーシャに説明する。彼の手にあったそれは、新手の手品であろうか、どこかへ消えてしまった。

 

 グレネードやプラスチック爆弾、工具などをサーシャが漁っているときに、誰かがこの部屋に入った音がした。アルトレアが気になって入口にいくと、頭から流血しながらハンドガンを構えた同僚、ミハイル・ギブソンがいた。

 

「アルトレア!?」

「しぶとく生きてやがったか、ギブソン」

「ああ、なんとかな。お嬢ちゃんは?」

「呼びましたか、ギブソン伍長」

「お前も生きてたか。よかった。この際、最早階級は意味がない。そう畏まらなくていいからな」

「了解です」

 

 三人で生存の確認をしあう。アルトレアとサーシャがほとんど無傷でいるのは、今更驚くことではないと、ギブソンは割り切ったようである。

 彼も弾薬を補充し、そしてRPG-7や対物ライフルを入手すると、ポケットから鍵を見せる。

 

「ああ。お前、元パイロットだったか」

「そうだ。だからさっきヘリの格納庫の鍵を掻っ払ってきた。ヤバいぜ、異形の怪物がウヨウヨしてやがる」

「よく生き延びられましたね?」

「閃光手榴弾が効いたな。少し怪我しちまったけど」

「包帯ならやる――少し待ってろ」

 

 コートから包帯を取り出した途端、アルトレアは急に部屋から飛び出した。サーシャがそれを覆うとした時、先程のとは比べものにならない程巨大なサソリがいた。

 

「な、なんだコイツは?!」

「……貴様か。こちらに呼び出した挙げ句、俺のしもべを殺したのは」

「何を言ってるのかよくわかりません。英語でしょうか?」

 

 アルトレアは両手を広げて、その余裕っぷりをアピールする。そして、彼も英語で話しはじめた。

 

「あの小せェサソリなら、全部殺っちまったぜ?シモベの教育が足りねェ、ってこたァお前も大したことねェ奴なんじゃねェの?」

「冥府の守たる俺を愚弄するか、面白い。確かに、貴様は普通の人間ではないようだ。だが、その実力、果して俺に敵うものか、見定めさせてもらおうか」

「やる気か?この俺と。いいぜ、こちとら久しぶりに派手に暴れられそうでワクワクしてンだ!!」

 

 アルトレアの雰囲気が変わった。殺気を纏い、剣には先程の怪物の時と同じ様に、黒いオーラが添う。

 

 その剣の切っ先をサソリに向けた。ペロリと舌を出し、楽しさに身体を奮わせた。稀に見ない戦闘狂がここにいる。

 

「毒界王センチュリオン、いざ参る。殺す気で向かってこい」

「そのつもりで行かせてもらうぜ!!」

 

 剣を抜き、正面切って突っ込んでいく。恐れもなく、センチュリオンと対峙するアルトレア。その自信が、サーシャにもギブソンにも羨ましいものであった。

 

 援護射撃をしよう、と思い、サーシャはVSSを構える。だが、ギブソンはそれを止めた。下手をしたらこちらにまで飛び火しかねない。

 

「大人しくしていた方がいい、ここはアイツに任せておこう」

「了解です。では、私達はどこへ」

「ここから上に上がるハシゴがある。それを使って上に行くぞ。アイツはレシーバー持ってたよな」

「はい」

「上に着いたら連絡すりゃいい。この部屋の真上はメディアルームだったはずだ」

 階級は関係ない、とは言ったが、ここはギブソンに従った方がいいだろう。銃を収めると、すぐに二人はハシゴを上った。

 

「別の敵、ってことですよね。さっきから鳥肌が立ちまくってるんですがね」

「へえ、こんな短時間で危険を感じるようになったかよ」

 

 言いながら、アルトレアは剣を天井に突き出す。甲高い声と、黒い液体が垂れてきて、剣を引き抜くと、サソリの様な生物が地面に落ちてきた。巨大な図体と、サソリなら鋏である部分が、三又の鉤爪になっている。

 

「まぁた変わった生き物だな。見世物小屋になっちまったか、ここも」

「良く、存在が察知出来ましたね?」

「十八番だぜ、こんなモン」

 

 既に事切れているそれをアルトレアは放った。2回程地面を跳ねた途端、身体が燃えるように消え、火の粉が舞う。それを察知したのか、天井から沢山のサソリが下りてきた。

 

「サソリって、うめェんだけどな……」

「これは流石に食べる気はしないでしょう?」

「あァ」

 

 サーシャは、もう慣れた、というように、グレネードをその集団に投げ付けた。一気に大半が焼死するが、生き残りはその死骸を食っていた。みるみると生き残りの身体は大きくなり、先程一突きで殺した個体よりも一回りも大きなサイズになった。

そんなことはお構いなしに、サーシャはアサルトライフルを連射する。しかし、体躯だけではなく、甲羅も硬質化しており、銃弾では全くダメージが通らない。ヘェ、とアルトレアは思わず興味の声を漏らした。

 

 そして、目の前に迫って来るサソリは、自慢の爪で彼等を切り付ける。サーシャはバックステップでそれを躱すが、アルトレアはタイミングを合わせて、その爪を踏み抜き、砕いていた。

 

 まとめて大剣で斬り捨てては、増えていく無惨なサソリ。アルトレアの強さはもうサーシャには見飽きた。そして、サーシャ自身が、強くなりたい、という気持ちを持って、サソリ達に突っ込んでいく。アルトレアとの訓練で習得した身ごなしで、サソリの攻撃を避けては、ナイフで甲羅の隙間を突き刺していく。

 

「Hahaha,well done girl.」

「軍曹、ロシア語でお願いします」

「『やるねぇ、お嬢ちゃん』、って言ったんだよ」

 

 まだ名前では呼んで貰えそうにない。だが、これで少しは成長したことを認めてもらえただろうか。心に余裕が出来始めたサーシャは、更にスピードを上げて、ナイフで敵を捌いていく。毒針すらナイフで切り落とし、ついにはハンドガンで接射をし始めた。

 

「いいノリだぜ」

 

 最早剣を振ることすらせず、足でサソリと遊んでいるようにしか見えないアルトレアは、サーシャの調子の良さを見てそう言った。次第にその蠍を踏み潰しはじめ、毒針を斬り飛ばして片手に掴む。

 

 それを、針を先にして、ラスト一匹に突き刺した。瞬時にそれは生気が無くなり、甲羅が剥がれて、血みどろになって死んだ。

 

「強烈な毒だな」

「いいですね、それ。ナイフに馴染ませれば」

「ふゥん。んじゃ、これ全部くれてやるヨ」

「ありがとうございます」

 

 アルトレアは、ゴミを扱うかの様に、サーシャに切った毒針を渡した。いかにも毒であることを示す紫色の液体が垂れ、それをナイフで受けると、刃が一瞬で紫色に染まる。機転を利かせ出来上がった必殺の武器、ナイフを胸のカバーにしまって、サーシャは毒針を捨てた。

 

「さて、武器庫に行くか……」

「大丈夫ですかね。この調子じゃ、武器庫で戦闘になって、弾切れになって戦死になりそうな気もするんですけど」

 

 今、散々暴れ回ったのにも関わらず、慎重にサーシャが言う。先程AKのマガジンを交換していたから、それが心配の種であるのだろう。

 

 アルトレアは、フゥン、と関心がなさそうに言った。

すると彼は、コートの内側から、AKのマガジンを取り出した。それをサーシャに渡してやり、なんの心配もない、と言わんばかりに前を歩き出す。

 

「AKの弾が切れたら、遠慮なくBIZONをブッ放せ」

「了解しました、軍曹」

「そんじゃ行くぞ、それまで気張れ」

 

 彼なりの心遣いだろう。ぶっきらぼうだが、安心させてくれる。この男は、生き残ることを考えてくれている。

 

 こんなに頼もしい上官はいない。死骸を踏み付けながら、サーシャはアルトレアについて行った。

 

 

 一対一の真剣勝負、まず先に動いたのはセンチュリオンの方であった。口と思わしき所から、紫色の体液を大砲の弾の様な形で吐き出す。予想以上のスピードでアルトレアに向かってきたが、彼は後ろに飛んでそれを避けた。

 

 そのままセンチュリオンに向かって急降下しながら蹴りを繰り出す。その巨躯に似合わぬスピードで、爪でそれを防ぐ。先程のサソリとは偉い違いだ。そのスピードを活かして、アルトレアの身体を真っ二つに切り分けようとしたが、彼はそれも跳んで避けた。

 

「ほう、ただの人間ではないな」

「なんせ、親が化け物だからな」

 

 恐らく効かないであろうが、空中で花鳥風月を乱射しながらセンチュリオンと話す。しかし、意外にも硬い外殻を穿ち、血がたらりと出るが、ダメージは致命傷には至らないようであった。

 

 花鳥風月を収め、着地する。右手にはヴェルギリウスを握り、ニヤリと怪しげな笑みを顔に浮かべると、一気にセンチュリオンとの距離を詰めた。そのスピードに追随するセンチュリオンの毒針。しかしそれをもひょいひょいとすり抜けていく。

 

 複眼の前に達すると、右手のヴェルギリウスをセンチュリオンの口の中に突き刺した。毒液がダラリと垂れて来るが、ヴェルギリウスは溶ける気配もなく、逆にそれを浄化していく。アルトレアは片手で巨体を持ち上げ、頑丈な壁にセンチュリオンをたたき付けた。

 

「何という力よ……。それに、その剣は我が友、クラウスの剣か」

「オウヨ。俺はその息子だ」

「なるほどな。ならばその力は当たり前か」

 

 蹂躙されているのに、楽しそうにセンチュリオンは話す。剣を引き抜き、甲羅の隙間に沿って斬り付けるアルトレア。そこからは夥しい血の雨。

 

 センチュリオンとて手加減している訳ではない。相手が予想外の強さなだけである。しかし、彼にもプライドというモノがある。

 

 自ら飛んで、アルトレアをプレスしようとする。その時、鋭い複脚をアルトレアに一点集中した。下手をしたら串刺しの危険もあり、しかもそれらはすべて毒腺が繋がっている。

 

 落下スピードはとても速い。避けられるのならたいしたものである。しかし、それを避けるのがアルトレアであった。

 

「Hey,What you doing?」

「……その移動術か」

 

 瞬間的にセンチュリオンの頭上に移動していた。先程まで地面に、しかもセンチュリオンの真下にいた姿が、どうやってか、消えていたのだ。

「I was so boring,but you are a little interesting guys」

「……お見事」

 

 突き刺されそうになった尾針を斬り飛ばし、そのままセンチュリオンの爪ごと、兜をカチ割った。刃が散らばり、血だまりが出来る。そして、センチュリオンの身体が光りはじめた。

 

「中々、見事な腕前よ。流石はクラウスのせがれ」

「んま、アイツは大分前に死んだけどな。んで?何でお前はそんなにピカピカしてんだ?」

「フッ……。お前の力に心底惚れたのよ。俺の力、お前が使うといい」

「ほう?」

 

 センチュリオンのその言葉の後、アルトレアの両腕にはいつの間にか鈎爪の付いた、紫色の手甲が嵌められていた。そこからは、センチュリオンの気配がする。

 

 センチュリオンの言っていた力、とはこのことか。と、すると、これはアルトレアが良く知る"魔具"である。魔具とは、この現世のものではない。地獄とか魔界とか、とにかくこの世とは別の世界のものである。

 

「イカしたセンスだぜ」

 

 鋭いその爪を眺めながらアルトレアは言った。そのまま勢いを付けず、目の前に向かって横凪ぎすると、センチュリオンとの戦闘で崩れた壁を一気に吹き飛ばした。毒々しい紫色の液体が切り口から滴る。

 

 その恐ろしい威力に、アルトレアはニヤニヤする。新しい武器を手に入れて、しかもゲームの様なフォルムの爪が、少年心をくすぐる。

 

「ヘヘヘッ……。さらに楽しめそうじゃねェか」

 

 この力を存分に振るえる事態が起きているからこそ、こんなに楽しくいられるのだろう。センチュリオンの魂が腕からひしひしと伝わってきて、それが更に闘士を掻き立てる。戦闘狂たる彼だからだろう。

 

「さて……行くぜ」

 

 センチュリオンを付けたまま、武器庫の中に入る。中は既にボロボロになっていたが、銃火器は後でも入手出来るし、弾丸もアルトレアには心配ではなかった。

 

 西棟で手に入れた無線機に通信が入る。通信相手はサーシャであった。

 

『軍曹、終わりましたか?』

「ああ。余裕だったぜ」

『でしょうね。私達はメディアルームにいます』

「この真上か……。了解、今そっちにいく。それまで生きてろよ」

 

 梯子はぐにゃぐにゃに曲がって使えないし、また、メディアルームに続く穴も塞がっている。

 ここの壁は頑強である。ウェザビーでも傷ぐらいしか付かないだろう。

――ならば、大人しく自分の拳でぶち壊せばいい。

 

 アルトレアは、壁を蹴って跳び上がると、天井に向かって拳を思い切りぶつけた。一気に当てた箇所が真上に飛び、穴が出来る。メディアルームの光も見えた。

 

 飛んだ勢いのまま、アルトレアはメディアルームのスパコンの上に乗った。轟音に気付いたサーシャとギブソンはそちらを見ると、瓦礫の山とアルトレアがいるではないか。二人はその入り方に呆れた顔をした。

 

 

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