もしもミルコに義理の弟がいたら。   作:檸檬ソーダ

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死亡フラグは突然に

 個性「チャージ」それが齢8歳にして知った僕の個性。それを知った時の喜びは今でも忘れない。ヒーローへのあこがれが現実に、ほんの少しだけ近づいたような感覚だった。元々僕は足の小指の関節が少ない個性が発現するタイプの人間だったし、発現してなかった方がおかしかったんだけど。4歳を過ぎてからの個性の発現。おそらく両親を失った事件の影響だろうとお医者さんには言われたものの、実際どうなのかはよくわからないっていうのが本音である。

 

 事件のショックも時間とともに薄れていった。というか、記憶障害やらなんやらであんまり当時のことを思い出せなかった。

 

 中学に上がってからは本格的にトレーニングへと取り組み、姉であるミルコのもとで修業に...励めればよかった。というのも姉さんはヒーロー活動で忙しくそんな暇はなかったのだ。まあ、言ってしまえば当然なんだけど。そんなわけで姉さんも昔稽古をつけてもらってたっていう道場にてしごかれてました。とりあえずそこら辺の話はまた今度します...

 

 なんでこんなこと語ってきたかっていうと、机の上にある進路希望調査の紙。全部これのせいだ。 

 

 当然ヒーロー志望でしょ?と言われれば、まあそうなんだけど。問題は学力。そう、学力なのである。何を隠そう僕は頭がよくない。いや決して悪いわけじゃないんだけど。

 

 雄英高校。偏差値80前後。

 

 頭おかしい。もう一度言おう、頭おかしい。第一志望の雄英、偏差値高すぎなんだよマジで。そこでさっきの自分語りに戻るんだけど、ほとんど肉体面のトレーニングしかしてないんだよね僕。

 

「マジでどうしよ...いけるか?あと一年もないぞ?」

 

 高校試験まであと一年足らず。その間偏差値を20近く上げる。考えただけで頭が痛くなってくる。

 

 そこでふとあることを考える。僕のなりたいヒーロー像。それはオールマイトでもエンデヴァーでもなく...ミルコ、姉さんなんだ。だから僕はよくこうやって考える。もし姉さんだったらどうするかって。そこまで考えて、僕は記入用紙にペンを走らせた。そこに書いた高校名は雄英。こんなところで、こんな障害で止まってられない。姉さんみたいな立派なヒーローになるために。

 

 そして記入用紙が回収された後、教師がその内容を声にして読み上げたのである。僕個人に対してではなかったが、雄英を受ける生徒を一くくりにして。めちゃくちゃ背伸びしたので正直やめてほしかったが、おかげで同じく雄英志望がいることが分かった。緑谷、そして爆豪。二人ともいろんな意味で有名である。言ってたらほら、始まった。

 

 個性の爆破で緑谷の机を吹き飛ばし、怒鳴り散らす爆豪。幼馴染でどんな確執があんのかしらないけど、中3なんだしもっと大人になった方がいいと思うんだよね。てか個性をこんな「てめえもだくそチビ!!」...あ?

 

「記念受験かなんだか知らねえが、受かる気もねえのに同じ土俵にくんじゃねえ!」

 

 そう言い残し席へと戻っていく爆豪。僕は、その背中を思いきり蹴り飛ばした。机に突っ込んで倒れこむ爆豪。怒りが頂点に達しているのであろう、顔がすごいことになっていた。しかしそれはこちらも同じ。やつは越えちゃいけねえラインをこえちまったのさ。人の身長を馬鹿にするという禁忌を...

 

 

ーーー

 

 結局、教師の仲裁、および受験に関しての脅しのような形で収まった喧嘩だったが、先に手を出した僕が悪いということで放課後職員室でのお説教。プラス反省文の提出という結果で終わった。あいつは反省文だけ。ゼッタイオカシイ。

 

 帰りの荷物を取りに行くために教室に戻ると、緑谷と爆轟。そして爆轟の取り巻きがいた。入るか迷っているうちに爆豪が緑谷のノートを爆破し窓から投げ捨て、緑谷に罵声を浴びせて教室から出てきた。そこで僕と目が合う。反省文をこれ以上増やしたくないのか、舌打ちだけを残して去っていく。目が怖い、ヴィランかよ。

 

 続けて教室を出ようとする緑谷。そこでこちらの存在に気づいたようで、こちらに軽く会釈して通り過ぎて行った。

 

 僕は彼らについて、お互いが幼馴染であるということぐらいしか知らない。だからなんて言葉をかければいいかわからず、その場から動けなかった。爆豪は明らかにやりすぎだと思うし、あれだけやられて避けようとしない緑谷のことも理解できない。だからこれからでも知りたいと思ったんだ。志望校同じだし、なんなら同じクラスだし。そう決めた後、自分の席に行き、急いで帰り支度をした後、緑谷を追いかけた。

 

 追いついた先で、緑谷は鯉を飼育している小さな池に落ちたノートを拾い上げていた。

 

「兎山君...?どうしてここに?」

「心配で。ノート貸してみ」

 

 そういいながら右手を差し出す。緑谷は少し戸惑いながら僕にノートを預ける。するとどうだ。みるみるうちに濡れたノートが乾いていく。そうして乾いたノートを緑谷に返す。

 

「乾いてる...それって君の個性、チャージだよね!水を吸収できるってことは制限が簡単なのか?生き物に対しては...」

 

 自分の世界に入ってしまった緑谷。オタクっぽいのは知ってたけど相当だな。

 

「爆豪は嫌な奴だし、乱暴だし口悪いし目つき悪いし嫌な奴だから、つらくなったら言ってよ。緑谷、そういうの抱え込みそうな感じするから」

 

 というか8歳まで無個性だったことの経験から言うなら、無個性のやつが毎日明るく過ごすっていうのはなかなか難しい。幼いころでそう感じたんだ。緑谷の年齢、ヒーロー志望ならなおさらだろう。だから同じ苦しみを知る者として少しでも力になってやりたいと思った。あの日姉さんがそうしてくれたみたいに。

  

 緑谷とはそこでわかれて各々帰路に着いた。その日あったヴィランによる事件。聞けば緑谷と爆豪の二人も巻き込まれたが無事だったそうだ。最後の別れみたいにならなくて本当に良かったと、とても安心した。

 

ーーー

 

 それから約一年、学校で勉強し、塾でも勉強し、たまに道場でしごかれるという生活を続けた結果。学力は向上し、雄英ももしかしたら狙えるかも?ぐらいにはなっていた。そんなある日のこと。珍しく姉さんは休みらしく、机で勉強する僕の反対の席でアイスを食べていた。この時点でいやな予感はしていた。しかしそれは気のせいだと言い聞かせる僕の気も知らず、姉は口を開いた。

 

「入試、実技あるんだってー?」

「そうだね」

 

 体から嫌な汗が出てくる。

 

「ちゃんとトレーニングも続けてんだろー?」 

「そうだね」

 

 ペンを握る手が震える。

 

「…仕上がり、見てやるよ」

 

 事実上の死刑宣告。これを受け、即座に後ろへとはねのいた。考えるより先に体が動いていた。それは生物としての本能だったのかもしれない。

 

 僕が一手打ったと同時、いやそれよりもわずかに早く、姉は次の一手を打っていた。追いかけるように跳躍し、こちらに飛びかかってきたのである。空中で、もっと言うならプロヒーローの本気の追撃。まだ高校生にもなってない僕が、それをさばけるはずもなかった…

 

 

 

ーーーBAD ENDーーー

 

 

 




続きます。
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