もしもミルコに義理の弟がいたら。   作:檸檬ソーダ

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姉弟対決

 雄英高校の入試は、筆記試験と実技試験に分かれている。そのため本来なら対人での調整というのは、しておいて損するものでもないとは思う。そう思いながらも目の前の人物見つめる。軽く体をほぐしながら好戦的な笑みを浮かべるのは自身の姉。トップヒーロー、ミルコ。 

 

 いや違うだろと。確かに調整はありがたいけども。一週間後に控えた入試。怪我をして支障が出る予想をするぐらいには僕と姉さんの実力差は離れている。当然ではあるのだが。かといって一度やる気になったら簡単に止まるような人でもないことも確か。

 

「やるしかないかぁ…」

 

 乗り気でないことこの上ないが、この際思い切り揉んでもらおう。そう覚悟を決め、姉さんに向き合った。場所は普段お世話になっている道場である。私有地につき個性使用可。いわゆるガチンコ勝負。まあさすがに手加減はしてくれるだろうけど。…してくれるよね?

 

「とりあえず攻めと受けで見てやるよ。さあ、どっからでもこい!」

 

 構えをとる姉。好きなタイミングで来いって話しだろうが、相変わらず隙が無い。ひとまず脅威なのは足技とそれによるリーチ差。身長差がないのがまだ救いだろうか。まあとりあえず…

 

「突っっっこむ!!」 

  

 体中にエネルギーをチャージする。出力は最初から身体許容限界まで。体には青白いスパークがはしり、身体能力を向上させる。今できる最速での肉薄。距離とられたら負ける。それを防ぐ突貫。

  

「最初から全力かよ!いい判断だ、でも…」

 

 向けた掌底に蹴り上げを合わせられる。当たれば体勢が崩れ主導権も握られるだろう。だがそれもあたればの話。

 

ーーリバーサルーー

 

 蹴り上げられた足が当たる瞬間、手のひらを合わせ衝撃を個性で吸い取った。そして逆の腕を姉の顔に向け、衝撃を返す。もろに食らったことで一瞬出来た隙。所詮はこけおどしで、ダメージにはならないことはわかってる。だから本命は別にある。

 

「出力100パーセント…」

 

 掌が青く光り、電気がほとばしるように力があふれる。

 

「インパクト!!」

 

 放たれた閃光。しかしそれが姉さんにあたることはなかった。あの一瞬に反応され、蹴りを合わされた。それで攻撃を上にそらされた結果、天井を吹き飛ばし、大穴を開けている。当てればあるいは勝負が決まってたかもしれない。それほどの出力。放った体は硬直していた。そしてこの人はそれを見逃したりはしない。腹部への強烈な衝撃。それによって腹を蹴り上げられたことを遅れて理解した。体が浮くことで足が地面から離れる。

 

「衝撃までのためとそのあとの硬直。まだまだ課題だな。初動の入りはよかったけどな!」

 

 追撃が入れられることはなかった。その代わり言われたアドバイス。大体考えた通り。そのために最初に視界を奪ったんだけどなあ。とはいえこれで終わりだろう。あとは入試までにそのあたりを煮詰めよう。

 

 そう思いながら帰ろうとしたときだった。姉さんが一言、構えろと。

 

「言ったろう攻めと受け。つぎは受けを見るぞー、ビシバシ行くからな!」

 

 本当の悪夢が始まる...

ーーー 

  

 結局、個性のエネルギー切れによって戦闘継続ができなくなり、稽古は終わった。体中痣だらけだし、なんなら何度か胃の中身が出た。一週間前にすることじゃないとは思ったが、その分課題もはっきりした。インパクトの際生じる隙。なくすことはできないだろうから、放ちどころを考えていかないといけない。それに受けた攻撃をそのまま返すリバーサルも、返すまでにまだまだラグがある。見せすぎたらラグを読まれることも考えるべきか。

 

「攻めはそんな感じだけど、受けはなかなかよかったぞ!!あとはエネルギー管理だな!」

 

 とは姉の言葉だ。受けの自信はかなりついた。そもそも普段からそっちメインで練習しているのもあるけど。そして後の課題のエネルギー管理。僕の個性はチャージ。名前からして吸収ありきの個性かと思われることもあるが、本質はシンプルな増強型が近い。あらかじめためておいたエネルギーを体へチャージすることで能力を底上げする。インパクトやリバーサルなどの体の外へ干渉できるのは両手のひらのみ。吸収したエネルギーはその形のまま使うことしかできない。

 

 そこまで整理したうえで、課題について考える。貯めておくエネルギーは体力みたいなもので、休息などで回復。貯められる量は肉体の強度に依存。例えば僕の体が姉さんみたいに強靭ならば、今よりたくさん貯められるだろう。そして一度にチャージできる出力にも同じことが言える。強すぎる力を振るえばその分反動が来る上、エネルギー切れも早い。最悪は反動で体がぶっ壊れるだろう。燃料切れが起こるのはこの際仕方ないとして、大事なのはペース配分か。必要な時必要な量、うまく使えば何とかなるとは思う。決して入試を楽観視しているわけ時じゃないが、ヒーローミルコと拳を交えた事実が僕の背中を押してくれている。

 

「ほんとに、いい姉さんを持ったよ」

 

 そうつぶやいた言葉は、耳のいい姉さんならあるいは聞こえたのかもしれない。

 

 




オリ主の個性は結構複合的な感じです。

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