「でっけードアだな」
目の前のドア、厳密にいうなら、雄英高校1ーAの教室。そのドアの大きさに思わず独り言を漏らしてしまった。雄英の入学式である今日という日にここにいるということ。それが意味するのは僕、兎山カオルがあの入試を合格したってことだ。
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やはりというか、入試の実技は、ロボ撃破とヒーローらしさの二点で評価されていたようだった。
実技成績だけでいうなら次席での成績での通過とのことらしい。筆記に関しては知った事ではない。底辺だなんてことは断じてないのだ。
ちなみに合格通知は封筒で届いた。封を開けると中には小型の投影機が入っており、コスチュームをまとったオールマイトが投影され、彼から先ほどの内容を伝えられた。さすが雄英。金の使い方が大胆だし、雄英教師になったとはいえ、わざわざNo1ヒーローを結果勧告のためだけに使うなんて誰が考えたんだろう。
映し出されたオールマイトを見て最初に思ったのは、老けたなぁってことだ。
記憶の中の、もっと言うなら幼少期の事件後に会った時の彼はもっと若々しかったというか、そんな気がした。
というのも僕は昔の事件の時、オールマイトと二回会っている。事件直後に一回。そして事件の犯人をオールマイトや姉さんらプロヒーローたちが討ち取った時に一回。記憶にあるオールマイトはいつ思い返しても本当にかっこいい。この人に任せれば大丈夫だと思わせるような、安心感を感じさせる。でもそれは今だって変わらない、多少の衰えはあるのかもしれないが、それでも目の前のナンバーワンヒーローは依然として圧倒的な存在感を放っていた。
話の中で、君が雄英に来てくれて、ヒーローを志してくれて嬉しいと、そういってくれた。僕だって嬉しい。一番の目標とあこがれは姉さんだ。それは昔っから変わってない。それでもNo1ヒーローとして、平和の象徴としてあり続けるオールマイトを見て、憧憬を抱かないヒーローの卵たちがどれくらいいるんだろうか。あるいはそんなやつはいないのかもしれない。
今考えればいくらでもある敵事件の中で、僕の元へ来て励ましてくれたこと。そしてその後の敵討伐にかかわっていたことを考えると、あの時の敵はオールマイトにとっても因縁のある敵だったのかもしれない。凶悪性が高かっただけってこともあるかもしれないが。
それはともかく合格通知を受けた僕は、雄英での学園生活を想像し、期待に胸を膨らませた。
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それなのに、楽しい学校生活が始まるはずだったのに、僕は絶賛不良から絡まれていた。不良もとい爆豪勝己。彼の言い分によると、どうやら僕が自分に次いでの次席だったのが不服だったようで、それだけで突っかかる理由としては十分らしかった。上昇志向が強いというか完璧主義というか。なんにしろクラスメイトからの視線が痛い。悪目立ちするからやめてほ「聞いてんのかクソチビ野郎が!!」
「うっせぇんだよ爆竹野郎が!!!」
そう言ってから、自分も不良の仲間として見られる危険性に気づいた。もう遅いけど。
ヒートアップしていく両者。優等生っぽい眼鏡の子が止めに入ってくれたり、周りにいた緑谷があわあわしたり、あわや手が出るかというぐらい熱くなったときだった。
「いつまで騒いでる、問題児ども」
声のした方向に目を向けた一同。そこにいたのは黒い芋虫だった。いや違う、人間だった。なんでもこのクラスの担任というその人物は、自らを相澤と名乗った。
「全く君たちは、合理性に欠くね」
芋虫もとい相澤はそう言いながら、体操着を取り出した。そうして合理性芋虫はこう続けた。
「早速で悪いが、君たちには体力テストをしてもらう」
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突然だが、皆さんが最後に体力テストをしたのはいつだろうか。
中学まででもなじみのある体力テストだが、このテスト、相澤先生の言葉を借りるなら、非常に非合理であるといえる。
個性によって身体能力が拡張される人が多い昨今、個性使用禁止という前提で行われるものは身体機能のすべてを使っているとは言い難く、また異形型の個性に関してはその前提には含まれない。そんな体力テストにどこまでの価値があるのだろうか。
そうした考えが皆頭のどこかにあったのだろう、個性使用許可での体力テストと聞いて誰かがつぶやいた。
「おもしろそう」
そんな言葉に反応したのか。相澤はこう言い放った。成績最下位は除籍処分だと。
驚きを隠せない生徒一同。そんな中、僕の内心はやる気に満ちていた。
「お前には負けねえよ爆竹ボーイ」
そんな一言で始まった対決は、言ってしまえば爆豪との体力勝負。どちらが高いスコアが出せるかの戦いだった。
もともと僕だって、こんな不良野郎に負けているのが気に食わなかったのだ。こんな人間爆竹野郎に。
その一言に対し爆豪は、売り言葉に買い言葉で、対抗心に速攻火が付き、勝負はヒートアップしていった。
ここで僕の個性「チャージ」をおさらいするなら、その機能の多くは身体強化。体にエネルギーを巡らせ超常的な能力を得る。
そうして出たスコアは、例えば50メートル走だけなら、爆轟を上回るほどのスコアをたたき出した。
しかし、ここからが爆豪の爆破とは対極的であり、使用が長引くほどギアが上がっていく爆轟に対して、我が個性はいうなれば貯水タンクのようなもので、蛇口を大きくひねるほど能力も上がるが、比例してガス欠も早くなる。
そうした二人の性質とともに対決は進んだいった。
そんな中の最終種目で、緑谷の順番が回って来た時のことだった。
ここまでの緑谷の成績は、一言で言って平凡。正直最下位であろうという予想もできた。
そんな緑谷の投げたボールは、40メートルやそこらといった記録に終わってしまった。
信じられないといった様子で自分の手を見つめる緑谷。そんな彼に話しかけながら歩み寄ってく相沢先生が言い放った言葉は、緑屋の個性を消したというものだった。
(個性を消す…?消すも何も緑谷は無個性のはず、しかし相沢先生の言葉が本当なら緑谷の個性は…)
その後行われた二投目。ボールを放つ瞬間。緑谷の指が衝撃を放ち、ボールをはるか彼方に放り投げた。
なんという規格外の能力だろうか。ボールを放った緑谷の指は大きく腫れていたが、それにしたってとびぬけたスコアを出していた。体に見合わないほどに強力な個性。それが理由で個性をひた隠しにしていた?
そうして緑谷の個性について考えてるうちに、僕と爆轟のボール投げも終わり、個性把握テストは終了した。
開示される全体スコア。発表と同時に相沢が言い放ったのは、除籍処分が嘘であるということだった。
そんなことは置いておいて、気になる僕と爆豪のスコア。その結果は…
「このクソ微生物が!!!!」
まさかの同率三位。それに気づいた途端にぶっ飛んでくる爆豪に、僕はハイキックによるカウンターを合わせた。
そんな僕らを見て相澤は、
「お前らほんとに除席するぞ」
苦々しくもそう言い放った。