そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。

今回から新章「梅の精霊とクールド天然」が始まります。
どうぞ。


梅の精霊とクールド天然
先生の自宅でラブコメするんじゃありません!


母さんがまだ普通で、元気だった頃。

俺…轟焦凍が思い出せる、朧げでいて、それでいて「楽しかった」と思い出せる光景。

 

そこに至るまでの経緯を語っておこう。

冬姉と夏兄が友人と遊びに行って、クソ親父は仕事。

母さんとテレビを見ていた俺は、酷く退屈していた。

 

 

「焦凍。お母さんとお出かけしましょうか」

「…うん」

 

 

そのことを悟った母さんが、俺を助手席の子供用シートに乗せて、車を運転した。

暫くの間、母さんと話しながら、目的地への到着を待つ。

 

 

「着いたわ。ここからちょっと歩くけど、大丈夫?」

「…うん」

 

 

着いた場所は、梅の花が綺麗な場所だった。

舞い散る花弁は、桜の花びらに勝るとも劣らない美しさがある。

幼い俺の心は、すっかり梅の花に釘付けになっていた。

梅の花に見惚れながら、歩くこと十分。

途中でお母さんに抱っこしてもらった俺が見たのは、二本の梅の木だった。

 

 

「母さん、この木なに?」

「この木はね、『万年開花』っていう、不思議な梅の木なのよ」

 

 

曰く、超常黎明期以前からここにあった。

曰く、双子の梅の精霊がいる。

曰く、一度も枯れたことがない。

曰く、万年、花を咲かせている。

 

 

聞けば鼻で笑うような、そんな与太話。

俺はその話を夢中で聞いていた。

 

 

「この梅の木はね、お母さんのお友達なの」

 

 

お父さんは知らないけれど、と付け足し、母さんは梅に目を向けた。

 

 

「焦凍。あなたも、この子たちの友達になってくれる?」

「…うん」

 

 

その日の母さんの顔は、忘れられなかった。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

未来人を撃退した後の話を、少ししておこう。

 

 

平和の象徴は、ぐっすりと寝てたので、貧血で倒れた病人として病院に押し付けてきた。

緑谷くん曰く、「治ったらまた筋肉ムキムキになるかと」らしい。

治った途端にマッスルになった気がしたけど、無視した。

有り体に言えば、面倒そうだから逃げた。

 

 

結局、僕の車は直らなかった。

『巻き戻す個性』で戻せ、と提案はしたものの、あかりさん曰く、時間関連の個性は細かい調整が難しいらしい。

ただ高火力をブッパする個性は、構成が楽でいいとのこと。

それでビッグバン並みの爆炎を生み出すあたり、個性ってのは本当にデタラメだ。

 

 

 

「…で。この消し炭、なんですか?」

「フレンチトーストです!」

 

「白米炊いてんのにフレンチトースト作るバカがここに居た」

「罵倒が直球!!!」

 

 

最後に。

彼女らの戸籍を東北さんのハッキングやらクラッキングやらでなんとかでっち上げ、京町セイカは僕の親戚、そして同居人となった。

 

あかりさんは「イズクくんの側じゃなきゃ嫌です」と駄々を捏ね、緑谷家で暮らしている。

彼と同じクラスに編入するそうだ。

 

 

「…で。受かりましたか?」

「はい!水奈瀬さん考案のドジっ子の矯正、やって良かったです!」

 

 

流石に無職を養う気はなかったので、京町セイカ…セイカさんは、スーパーのパートに入ってもらうことになった。

ポンコツ故にとんでもない失敗をしないよう、一週間をかけ、寝る間も惜しんで彼女のポンコツ具合を緩和させた。

何故、夏休みにこんなに疲れなければいけないんだ。

明けたら、「読書感想文地獄」が待ち受けているというのに。

 

 

「ほんっと…。なんで僕はコレとの同居を許可したんでしょう…」

「水奈瀬さんって、内弁慶ですよね」

「パワハラとかセクハラとか殺伐要素が無いだけマシでしょ」

「まぁ、確かに」

 

 

僕が言うと、セイカさんは消し炭になったフレンチトーストをばりぼりとむさぼる。

柔らかい食べ物のはずのフレンチトーストが、バリボリ言ってる時点でもう異常だ。

コレに家事はさせないでおこう。

戦時中に兵器一つをおシャカにしたポンコツだ。

家の物が破壊されそうだ。

 

 

「…なんか壊したりしました?」

「いえ、まだ!」

「まだってことは、壊すことは確定してんですね」

 

 

ほんっと、なんでコレ引き取ったんだろう。

そんなことを思いながら、何気なしにテレビをつけてみる。

 

 

『鎌倉山の超常現象から1週間が経ちました。

痕跡を調べるも、いまだに原因は不明。

宮城県知事は「新しい観光地として展開することを計画している」と…』

 

 

 

うっわ。まだやってた。

 

 

 

あの時の光景やら、あかりさん…ただし皮膚なしバージョン…の出現は、「超常現象」として片付けられた。

超常社会で「超常現象」ってのもおかしな話だ。

 

だが、あかりさんを倒しに行ったオールマイトが、いつのまにか、病院前でぐっすり寝てたこと。

それに相まって、鎌倉山に火柱が上がり、亀裂が走り、放たれた光によって一度月が消し飛び復活し、あっという間に元どおりになったこと。

 

 

個性のせいだと片付けるには、少し無理がありすぎる光景。

それを理由として、そう言う現象として片付けられたらしい。

 

 

『オールマイトさん、この超常現象を実際に体験した身として、どう思いますか?』

『うーむ、狐に摘まれた気分だよ!

クライシスオーガも、粉砕骨折が数日寝ただけで完治したらしいからね!

まぁ、怪我がないのが一番なんだけどさ!』

 

 

クライシスオーガの怪我は、あかりさんが治した。

彼女が彼に襲い掛かった理由は、彼の煽り言葉である『こいよ、バケモノ』が琴線に触れたから。

 

自分の見た目がどれだけおそろしかったか、人にとって見た目がどれだけ重要かを僕が必死に説き、渋々ながら納得してもらった。

その結果、彼女はこっそりと、クライシスオーガの傷を治したのだ。

 

 

「まさか、未来人とただの中学生が戦ってたー…なーんて、誰も信じませんね」

「ターミネーターもびっくりですね」

 

 

僕らのあの戦い、藤子作品でありそう。

そんなことを思っていると、インターホンが鳴り響いた。

 

 

「あ、僕が出ますんで、余計なことしないように」

「わかりましたー!」

 

 

一抹の不安を抱えながら、僕は玄関へと向かい、その扉を開く。

そこには、黒こげになったあかりさんと緑谷くんがいた。

 

 

「失敗作の爆発で汚れて、お風呂入ろうと思ったら壊れてたんで、貸してください」

「同じくです」

「…そこで銭湯って選択肢出さないあたり、だいぶ馴染んできましたよね」

 

 

取り敢えず、彼らを家に上げ、「好きに使え」と許可を出す。

彼らは元気よく返事すると、共に風呂場へと歩いていった。

 

 

 

「…ん!?」

 

 

 

いや、ちょっと待て。今、なんかおかしかったぞ。

 

 

 

 

慌てて更衣室の扉を開くと、そこには人は居なかった。

代わりに、地面に服が散乱している。

おそらく、脱ぎ捨てられたのであろう服は二人分。

片方は緑谷くん愛用のツナギ、もう片方は女の子用の可愛いらしいフリルのワンピース。

風呂場には二人分の人影。

 

 

「君ら何やってんですか!?」

 

 

「え?一緒にお風呂に入ってるんですよ?」

「何かおかしいですか?」

 

 

緑谷くんが毒されてる!!

ってか、慣れてる!!

扉一枚隔て、僕は声を張り上げてツッコミを入れる。

 

 

「いや、中学生同士が混浴ってまずいでしょう!!君ら絶対余計な知識ついたときに、歯止めが効きませんよ!?」

「セッ○スのことですか?

私は、イズクくんが相手だったら、いつでもばっちこいですよ?」

 

「世間はばっちこいじゃないんですよ!!」

 

 

既に余計な知識ひっついてた。

なんだこのラブコメの一幕。

 

 

僕が心の中でそう叫ぶ最中、向こうの影が一つに重なる。

シルエットから見るに、緑谷くんの背中に、あかりさんが抱きついているのだろう。

ごめん。なんてエロ漫画?

 

 

「あかりさん。そういうのは、もう少し待ってほしいな。

君に普通の恋を知ってもらいたいから」

「…?イズクくんに持ってるこの気持ちが、普通の恋なんじゃないですか?」

 

 

緑谷くんはその問いに、楽しそうにこう答えた。

 

 

「僕も、恋なんて経験がないからわかんないや。

でも、一つアドバイス。

普通の恋が知りたいんだったら、そんなに急がなくてもいいんだよ。

告白とか、デートとか。そういうのを目一杯楽しんでからでも、遅くはないと思う」

「……わかりました」

 

 

緑谷くん、大人!!

大人よりも大人な対応してる!!

 

 

結局、それ以降何事もなく、彼らは普通に風呂から出てきた。

一応確認したが、それっぽい匂いは無かった。

なんだ?僕がおかしかったりするのか?

 

 

「先生って大変ですねぇ。…あ」

「そんな『これもどうぞ!』っておまけ感覚で皿割るんじゃありません」

 

 

これだけは言っておきたい。

僕の日常は、以前にも増して混沌度合いが増し、プライベートなど無くなった。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですか、サー?」

 

珍しく仕事をオフにした日。

私…こと、『サー・ナイトアイ』は、椅子から転げ落ちていた。

別に座り損ねた…という、よくありそうな間抜けな話ではない。

椅子から転げ落ちるほど、驚きの光景が見えたのだ。

 

 

「バブルガール…!今すぐ!政府に連絡を取れ…!」

「さ、サー?政府に連絡って、一体…」

「くそっ…。こんな形で、私が見ていた未来が変わるとは…」

「えっ!?サーの見た未来が、変わったんですか!?」

 

 

良かったじゃないですか!、と私に詰め寄るバブルガールを、私は睨みつけた。

 

 

「良いものか…。寧ろ、最悪な方向に変わったぞ…!!」

「へ?」

 

 

私がモットーとするユーモアをかなぐり捨て、バブルガールの顔に目線を近づけた。

 

 

「政府に連絡しろ…!

 

 

 

『この世界は、保ってあと二、三年の間だ』と!!」

 

 

私が見た未来。

それは、以前見た、オールマイトが殺される未来ではなかった。

だが、確実に悪い方向には向かっている。

予知の感覚で言えば、二、三年…下手すれば今年に訪れてもおかしくない光景。

予知が外れる…ないし、予知が変わることは、私がひどく望んでいたことだ。

だが、こんな形で変わるなど、私は望んではない。

 

 

「さ、サー!?一体何を見たんですか!?」

「私の考え得る限り…いや。

私の想像力など足元にも及ばないほどの、最悪の未来だ…!!」




オールマイトがおまけ感覚で復活してしまった。何故こうなった?(書いたの自分だけど)
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