そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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水奈瀬コウ少ないなー…。
そうだ!自分で作ろう!

となってこうなりました。
続きません。


水奈瀬コウは先生。異論は認めん。
思いつきで先生やってます


早速言おう。

僕…『水奈瀬コウ』は、所謂、『転生系主人公』というヤツらしい。

生まれ変わる前の僕は、自慢にもならないのだが、高学歴自宅警備員とフリーターの間をブラブラしてるような人間だった。

 

 

 

 

 

ただ一つ。ボイスロイドというソフトを使った動画が一時期バズった程度の、探せばそこらに居そうな凡人。

 

 

 

 

 

 

 

そんな僕が死んだ理由は、トラックに轢かれそうな子供やら猫を助けようとしたって訳じゃない。

ほんの偶然。

僕がバズった動画をエゴサして、これまた気持ち悪い顔でニヤニヤしていた所に、風で煽られた植木鉢が激突しただけだ。

であるからして、僕はこれといって徳は積んでいなかったと言える。

 

記憶が戻った…というより、何故か蘇ってしまったのは、幾年も前だ。

当時、僕は3歳児だった。

舌足らずな声を出すのがやっとな口で、両親へと駆けていた時だ。

たまたま転んで軽く頭をぶつけ、前世を思い出した。

 

我ながら、恥だらけの人生を思い出して、酷く辟易したのは、言うまでもない。

友人から引くほどに聞かされた、判を押したように決まった『チート転生主人公』なのでは、と思ったこともある。

 

 

 

 

だが、そんな期待は見事に打ち砕かれた。

 

 

 

 

僕が新たに生きることとなったのは、『個性』という特殊能力が人々に芽生え、『ヒーロー』と『敵』が戦う世界だった。

僕自身は、自他共に認める活字バカだったため、漫画のことはあまり明るくない。

確か、友人がよく語っていた『僕のヒーローアカデミア』という漫画の世界と酷似している。

 

話がそれた。

まぁ、僕も一般的な子供たちに漏れず、『個性』とやらが目覚めるのを楽しみにしていた。

 

 

 

 

結果は、お察しだ。

『無個性』と呼ばれる、障害児としての人生がスタートした。

 

 

 

 

 

そこからは苦労の連続だった。

前世であれほど「人種差別、良くないよ!」と語ってきた我が国の教育は、個性が世に出た瞬間に消え失せたらしい。

 

 

 

 

 

 

今や「強い個性?偉いね!弱い個性?がんばれ!無個性?どっかいけ!」の三拍子。

 

 

 

 

 

 

虐げられましたよ、ええ。

でも、この歳で大人として物事を考えられるというのは、大きなアドバンテージのようで。

不思議と僕は、挫けることなく、極めて真面目な生徒として小、中学校生活を送った。

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

中学三年生の頃。

僕はふと、鏡の前に立ってみた。

前々から薄々思ってはいたが、こうやって鏡の前に立つことで、それは確信に変わる。

 

 

 

 

どうやら僕は、『水奈瀬コウ』として転生を果たしたようなのだ。

 

 

 

 

名前もそのまんま。

声だって、ボイスロイドの水奈瀬コウから機械音らしいノイズを抜いたものだ。

僕は歓喜した。そりゃもう、気持ち悪いくらいに喜んだ。

実は僕、愛用しているボイスロイドは、この水奈瀬コウだった。

琴葉姉妹も、東北姉妹も、結月ゆかりや弦巻マキも確かに好きだ。

でも、その中でも群を抜いて、水奈瀬コウというキャラクターに惹かれていた。

 

 

そんな喜びも束の間。

地獄の進路相談がやってきました。

以前は無茶な目標ばかり立てて、それをクリアしていって。

最後の最後で大きく躓いて、自宅警備員とフリーターの間を彷徨う毎日。

またそれを繰り返す気にもなれず、僕は無難な高校を受験しようとした。

 

 

 

…あれ?待てよ。

 

 

ふと。僕の脳裏に、ある設定が甦る。

 

 

 

 

 

ーーーー水奈瀬コウって、教師じゃん。

 

 

 

 

 

 

そう。

水奈瀬コウを水奈瀬コウたらしめる要素の一つとして、『教師』があった。

この世界に、ボイスロイドは存在しない。

であれば、僕が『水奈瀬コウ』としての人生を歩んでもいいはずだ。

 

 

寧ろ、歩んでみたい。

 

 

ボイスロイドを使った動画だって、僕が『こういう人生を送れたら』という願望が形になったものなのだから。

 

 

だから、僕はこう言った。

 

「先生になりたいです」

 

 

目の前に座る教師は、さほど興味もなさそうにプリントに文字を走らせる。

記入要項に「理由」の欄があったのか、彼は面倒そうに「理由は?」と聞いてきた。

 

「僕が僕らしく在ることができるから、ですかね」

 

身の桁に合わない、キザな台詞で答える。

先生は「面倒くさっ」と言いたげな表情を隠そうともしなかった。

最後に、志望校は何処だと聞かれた。

だから、僕は無難にこう言った。

 

「近場で、それなりに偏差値ある所で」

 

 

 

まぁ、特に特筆することもなく、行事中だろうがなんだろうが、死に物狂いで勉学に励んだ高校、大学を経て。

僕はめでたく教師になった。

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

「緑谷くん。君はどんな大人になりたいですか?」

 

 

僕が初めて受け持った生徒の一人。

緑谷出久という、僕と同じ無個性の少年に問いかける。

 

 

「僕は…ヒーローになりたいです」

 

 

彼は少し吃りながら、それでも断固として意思を曲げぬよう、真っ直ぐな瞳で言った。

 

 

「でしたら、これからのプランを、先生と考えていきましょう」

 

一見、無茶で無謀な夢。

それでも、僕が水奈瀬コウで在りたいと思うように。

緑谷くんにも、彼が「緑谷出久で在りたい」という要素として、「ヒーローになる」というのが根付いているのだろう。

 

 

教師としては、「叶わない夢は見るな」と言わなければならないのだろう。

でも、僕の思う水奈瀬コウならばきっと、こういうのだろう。

 

 

「嫌でしたか?」

 

 

「えっ、あの…。諦めろ、とかは…?」

 

 

「言いませんよ。君が君で在る理由が、ヒーローになることなのでしょう?であれば、僕は応援するだけです。

 

今のように、諦めきれないからではなく。

夢を掴むために、死に物狂いで足掻きましょう。死に物狂いで進みましょう。

 

 

足掻くことない人間に、道が拓けることなどありません。

それは、歴史が証明してます」

 

 

 

「っ…、ぅ、ぅぁっ…」

 

 

「先生が『学歴』という武器を使ったように。

 

無個性というハンデを帳消しにするほどの武器を、その身さえも犠牲にして研ぎましょう。

 

結果を出すために、ただ前だけを見て、がむしゃらに。

 

 

君もまた、何か武器を見つけて磨きなさい」

 

 

 

 

ーーーーーーその武器で、その体で戦いましょう。君の夢を叶うことを是としない、この世界と。

 

 

 

 

 

 

僕が思い描いた水奈瀬コウのような、理想の教師になれているかはわからない。

でも、僕は。この個性社会で、教師として在り続けようと思う。




後に、緑谷くんは引くほど強くなったので、水奈瀬コウ先生から一言。

「…いや、武器を研げとは言ったけど。



言ったけども、まさかパワードスーツ作るとは思わなかった」




パワードスーツってすごいね。byみなせこう

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