そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。


肝試しってお盆にやるモン?
爆豪「内臓全部飛び出るかと思ったわ!!」


「お盆に肝試し?」

「町内会が開催する出し物です。

うちの学校からは、見た目が病人っぽい僕が参加することになりました」

 

 

あの戦いから2週間。

夏休みもいよいよお終いとなる時期にやってくる『お盆』に、僕らは全員が僕の家に集まっていた。

 

 

「肝試しって?」

「ひ、ヒメは…嫌いなんじゃないかな…?」

「ミコトの方がダメだろ。ホラーマンで泡吹くくらいなんだから」

 

 

ホラーマンって、あのアンパンマンのホラーマン!?

アレで泡吹くとか、どれだけホラーに耐性が無いんだろうか。

皆でアイスキャンディを舐める中、東北さんが「そういえば」と声を上げる。

 

 

「タコ姉様も参加するって言ってました。

オバケ役で」

「オバケ!?オバケに会えるの!?」

「ヒメちゃん、近いしうるさいです」

 

 

むぎゅう、と擬音が聞こえそうなほどに密着するヒメちゃんを、東北さんが押し退ける。

手に持ったゲーム機からは、謎の呻き声と悲鳴が響き渡っていた。

湿っぽい音も聞こえるし、英語も聞き取れる。

 

 

「ソレ、さっきから何してんだ?」

「百年くらい前に流行った海外のホラゲーです。轟先輩、やってみます?」

「…まぁ、参考程度に」

 

 

差し出されたゲーム機を手に取り、轟くんが東北さんの隣に座る。

その膝に吸い寄せられるように、ヒメちゃんがちょこんと座り、ミコトちゃんが恐る恐るソファの奥から覗き込む。

 

 

「ショート、ホントに大丈夫…?」

「大丈夫だっての。ミコトみたいに怖がりじゃねぇし」

「あ、そこは…」

 

 

瞬間。ミコトちゃんが悲鳴もあげず、その場でぶっ倒れた。

 

 

「うぉっ。…なんだこのドロドロの怪物」

「腹パンマンです。捕まったら腹パンされて死ぬんで、そこ右に逃げてください」

「お口は可愛いよ?」

 

 

三人が仲睦まじくゲームに熱中する最中、ミコトちゃんを抱え、セイカさんが布団に寝かせる。

腹パンマン…腹パンされて死ぬ…ホラーゲーム …って、アレか。

携帯ゲーム機版は海外限定じゃなかったか。

だから勝手に僕名義の通販使ったのか、このクソガキ。

アイアンマンやらの有名作品といい、前世の産物は結構在るんだな。

 

 

「で、緑谷くん。自由研究終わりました?」

 

「はい!『ナノテクの可能性』という、数万字の論文ができました!

琴葉博士から『ノーベル賞イケるで!』ってお墨付きの、会心の出来ですよ!」

 

「宿題用の自由研究ですよこのバカ!!」

 

 

小学校の頃よりも悪化してる。

天才とバカは紙一重と言うけれど、ただ単に基準が自分だと思ってるだけだと思う。

ひたむきに頑張ってきた弊害が、ここに来て出てしまったか。

 

 

「こういうのは、そこらの生態調査をソレっぽくやるだけでいいんですよ。

見つけた動物の写真貼って、『こういう生態ですよー』的なの書けばいいんです。

いいですか?」

 

「え?それじゃ学会で通用しないですよ?」

 

「学会に出すモンじゃないんですよ自由研究ってのは!!」

 

 

これだから科学者脳は!!

 

 

一応説明しておこう。

何故、僕が緑谷くんの自由研究の添削をしているかというと…これで分からない方がおかしいか。

どう考えても、中学生の自由研究の域を超越してるのだ。

小学校時代からひしひしと「おかしいな」とは感じていた。

中学生になってからは、よりそれが顕著に現れているように思える。

どこで教育を間違ったんだろう。

 

 

「で。その肝試しって何をするんですか?」

 

 

三本目のアイスキャンディを舐めながら、あかりさんが問うた。

僕は緑谷くんに「やり直し」と告げ、彼の「なんでェ!?」という断末魔を背に、彼女に答える。

 

 

「そこのホラゲーみたいに、心霊現象舐め腐った輩を死ぬほど驚かせる遊びです」

「言い方悪ィし趣旨違うぞ先生」

「わざとです」

「余計タチ悪ィわ」

 

 

僕以外にツッコミがいると楽だ。

将来、エンタメ番組に引っ張りだこなヒーローになりそうだ。

 

 

「水奈瀬さんはオバケ役ですか?」

「いえ、設定とセッティング係です。

あと恐怖を煽るアナウンス係。

大体のこと押し付けられたんで、思いっきりやってやろうと」

 

 

町内会の老害どもめ。

実家への墓参りは済ませたから別にいいが、あと四日とかいう土壇場で僕に押し付けやがって。

それでいて「なんもできてないから頼んだ」だって?

ふざけるのも大概にしろよ、腰抜かすほどビビらせてやるからな。

 

 

「轟くんたちも参加してみます?」

「ヒメはこういうの強い…ってか、アホだからなにが起きてんのかさっぱり理解しねーんだが、ミコトはなぁ…」

「ショート酷い!!」

 

 

確かに、ゲームを覗き込むだけでアレなら、ミコトちゃんは驚かす側でもキツそうだ。

 

 

「緑谷くんたちはどうします?」

「僕はセッティングのお手伝いと機材の提供だけして、あかりさんと普通に回ってみようと思います」

「私はずん姉様と驚かす側やりますね。

頼まれた衣装はずん姉様が作ってます」

「私は水奈瀬先生のお手伝い…はさせてもらえないので、普通に回ります!」

 

 

セイカさんには僕が「頼むから仕掛け側に参加するな」と念押ししたため、普通に回ることにしたようだ。

機材は、普通に売ってそうなものを用意してもらった。…それでも若干オバテクだが。

その代わり、手先が器用なずん子さんに無理を頼み、とびっきり恐ろしい衣装を作ってもらっている。

たとえ日中で出会しても、腰を抜かすくらいには怖い見た目だ。

 

 

「ショートー!おーねーがーいー!」

「…ヒメと回る。ミコトは…緑谷のお母さんと留守番で」

 

 

…言い忘れていた。

 

 

結局、あの事件は以前と同じように「超常現象」として片付けられた。

あかりさんに「犯人は私ですよー」的な振る舞いをしてもらったが、報道されていないあたり、機密情報扱いされたらしい。

 

 

梅の雨が降り注いだ後、梅の木は緑谷くんのラボへと運び込まれた。

緑谷くん曰く、「細胞単位で分解して、ラボの中で再構築しました」とのこと。

ヒメちゃんとミコトちゃんは、戸籍をでっち上げ、僕が養子として引き取った。

無個性として登録したため、「面倒な爆弾は嫌だ」という理由で、親族は担任できないという規定を破ってまで僕のクラスに押し付けられた。

 

 

株投資がやめられなくなってしまった。

中毒じゃなくて、生活費が枯渇するという意味で。

 

 

轟くんは、個性の不正使用で前科がつくかと思いきや、状況が状況だったため見逃されたらしい。

その後、エンデヴァーに「勝手な外出を禁ずる」と監視がつけられることになりかけた。

 

が。轟くんはそのエンデヴァーに対し、「家族への仕打ちを俺の名前と身分証付きでメディアに垂れ流すぞ?いいのか?」と脅し、ことなきを得たという。

 

表に出たらまずい、という自覚はあったらしい。

…生徒たちが僕の性格の悪さを引き継いでる気がする。

 

 

とまぁ、それはさておき。

本題に入るとしよう。

 

 

「さてと…。クソガキ。夏休みの宿題の進捗どうですか?」

「…………な、なんのことでしょう?」

「言っときますけど、成績の件、本気の本気ですからね」

 

「そんな殺生なァ!?」

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

「勝己ー!町内会の出し物、興味ない?」

「あぁ?」

 

 

ぼりぼりと頭をかきながら、寝起きで霞む目でババアを睨む。

町内会の出し物っつーと、毎年やってる肝試し。

メンバーがやる気が最底辺のクソジジイどもしか居ないから、出し物の一つ一つが退屈なんだが。

その中でも群を抜いて、この肝試しは退屈だと記憶している。

 

 

「ほざけ」と参加しない旨を伝え、朝食のコーンフレークをがっついた。

…おかしい。いつもはスパスパ俺の頭をぶっ叩くババアが、手を出さねェ。

訝しげに眉を潜めていると、ババアは何処からか衣装を取り出した。

 

 

「今年の肝試し、結構本格的なのよ!」

「うぎゃァァァァァああああァァァァァアアアアアアアアッッッ!?!!?!?」

 

 

その衣装を見た途端、俺は無様に悲鳴を上げ、椅子とコーンフレークごとすっ転んだ。

言葉にするのも憚られる、あらゆるものを冒涜的するような見た目の化け物。

ネームドヴィランでもチビって逃げそうな程に恐ろしい見た目のソレが、衣装を着た俺の母親だと気づくのに、数秒かかった。

 

 

「ばっ…、バッッッバア!!ふっっっざけんじゃねェぞォ!!実の息子殺す気か!?」

 

「あーはっはっはっはっ!!

ひー、ひーっ…。あ、アンタ、そんな声出るんだ…、あはははっっ!!」

 

「笑うなァ!!」

 

 

内臓全部飛び出るかと思ったわ!!

 

 

衣装を脱がせ、笑うババアに詰め寄る。

が。ババアは腹がねじ切れるんじゃねーかって程、爆笑したままだった。

 

 

「ひーっ…。ひー…っ。水奈瀬先生凄いわねェ。こんな怖いの、町内会の出し物でデザインするなんて」

「は?」

 

 

水奈瀬先生…?

 

 

俺が一番嫌いな人間の名前が、ババアの口から出た。

水奈瀬コウ。俺が人生で出会った人間の中で、これからも出会わないであろうレベルの性格の悪い教師。

すぐにクビになると思っていたのに、もう六年近くもこの街に住んで、教師をしてやがる。

 

それが、肝試しに関わってる…?

俺は怒鳴りたい気持ちを押さえつけ、ババアに問うた。

 

 

「一体どういうこった?」

「あれ?聞いてない?

今年の肝試し、水奈瀬先生が計画してくれてるんだって!

出久くんも協力してて、ポスターには『オムツを着用の上、ご参加ください』って書いてるほどの怖さらしいよ〜?」

 

 

デクと、あのクソ教師が…?

 

 

ババアの答えに、ふつふつと怒りが湧き上がるのがわかる。

次の瞬間、俺は声を張り上げていた。

 

 

「上等ォだゴラァァァァァァアアッッッ!!

誰がテメェらのくだらねェ出し物にビビるかッッッソがァァァァァアアッッッ!!!!

逆にテメェらの心臓握り潰して殺したるわクソどもがァァァァァァァァァァああああッッッ!!!!!」

 

「うっさい!!」

 

二日後、俺はこの時の宣言を死ぬほど後悔した。




かっちゃんは朝はコーンフレーク派です。

???「朝食はパン派ですか!?ご飯派ですか!?」

???「コーンフレーク」
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