そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。


轟焦凍、ガチギレ

「かっちゃんと轟くんから、あんな悲鳴出るんだ…」

「二人とも、悲鳴あげる性格じゃないですからね。

シチュエーションとセリフ、更には衣装までもこだわった甲斐がありました」

 

「こだわりすぎて、あかりさんがさっきから離れないんですけど」

「ふぐぅ…。ひぐぅ…。怖かったぁぁぁぁ…」

 

 

兵器やってた女の子までもが「怖い」って言うレベルか。

 

 

すごく生き生きしてる先生に、僕…緑谷出久は半目を向ける。

まぁ、この評判のおかげで、シンリンカムイを始めとして、ここいらで活動してるプロヒーローのサインをもらえた。

それだけは感謝する。

 

 

けれど、どう考えてもやり過ぎだ。

一緒に回ったセイカさんなんて、出て来れた安堵で気絶してる。

あかりさんは完全に腰が抜けて、僕に抱きつくことで漸く立ち上がっているような状態だった。

 

 

アニマトロニクス…ジュラシック・パークなど、動物の表現で使われるロボット…とか、ただの町内会の出し物で使うのか…?

それをノリノリで作ってた僕も僕だけど。

 

 

「マジモン見たことのある僕でもキツかったですよ、アレ」

「デザインはイタコさんに協力していただきました」

 

 

だからか!!

 

 

脳髄にまで恐怖を植え付けるような見た目してる、とは思っていた。

まさか、マジモンをよく知っている人にデザインを頼んでたとは。

通りで、プログラミングの時、ああも細かい動きまでも要求してくるわけだ。

そんなことを考えていると、轟くんとかっちゃんの悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「半分野郎ォォォォォオオッッッ!!

てめこらっ、気づいたんなら先言えやァァァァァアアアアアッッッ!!!」

 

「無茶言うなボンバーヘッドォ!!

いきなり来たんだから、ァァァァァアアアアア無理無理無理無理無理近い近い近い近い近いィィィィィイイイッッッ!?!?」

 

「あんぎゃあァァァァァアアアアアァァァァァアアアアアッッッ!?!?

耳元っ、声っ、声ェェェェェェェェェェエエエエエッッッ!?!?」

 

 

…あの二人がこんなに大声出すって、やっぱり怖かったんだな、ここ。

本職の人と手を組んだお化け屋敷って、絶対注目集まるよなぁ。

 

 

そんなことを思いながら、僕はコーラを飲み干した。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

「…見つけたぞ。レコーダー…。これで、先っ、進める…」

「声小せェぞ…」

「あんだけ叫べば枯れるっての…」

 

 

エンカウントし、逃げ回るのを繰り返して、どれだけ時間が経ったかは、もうわからない。

東北がやってたホラーゲームの主人公も、こんな気分だったんだろうか。

ガラガラになった声で、レコーダーの発見を報告する。

ボンバーヘッドも疲労困憊で、互いに大の字に寝転びたい気持ちで一杯だった。

 

 

「ショート、ここは大丈夫そう。レコーダー流そ!」

「…元気だな、あのガキ」

「元気だけが取り柄のアホだ…。俺らより怖がってねェ…。

怖い理由を理解してねーからな…」

「酷い!」

 

 

暫く腰掛けて体力を回復し、覚悟を決めてレコーダーのボタンを押す。

カメラで確認したのだろう。

何処からか流れた放送が、聞き慣れたノイズ音を発した。

 

 

『この個性もいいなぁ…。あの個性もいいなぁ…。みんないらないいらないって言うけど、僕にないんだよ?

いらないなら僕にくれよ。くれよ。くれよ。

くれって!よこせ!よこせェェェェェぁあハハハはは』

 

 

ぶつっ。

 

 

東北の声だってのに、アニメでしか聞かねーような狂気に満ち溢れてやがる…。

ノリノリで録音したんだろうな、コレ。

 

 

「…個性がないって、こんなに辛いの?」

 

 

ふと、ヒメが俺の裾を引っ張りながら問いかける。

…俺は良くも悪くも個性を持って生まれたから、その苦しみはわからない。

それでも、緑谷たちが味わってきた苦しみは、少しだけ理解しているつもりだ。

 

 

「けっ。くだらねェ逆恨みでこんなモン作りやがって…。

あンのクソナード、ぜってェ殺す…!」

 

 

このボンバーヘッド、先生とは別ベクトルで性格悪ィな。

 

先生と緑谷が、逆恨みでこんな大がかりなものを作るわけがない。

作るとしたら、思いつき程度のものだろう。

…にしても、口が悪い。

ヒメにその口調がうつったら、どうするつもりだ。

 

 

「おい。子供の前だぞ」

「うっせェ」

 

 

俺が注意すると、ボンバーヘッドは施錠の外れた扉を開く。

磔死体が並ぶ通路の奥には、「死」と書かれた扉があった。

 

 

「…Bendyのパクリじゃねーか」

「あ?ンだソレ?」

「百年くらい前の海外のホラゲー」

 

 

まぁ、俺は他のホラゲーを知らないから、アレが普通なのかも分からないが。

…「死」の文字の最後あたりが、とんでもなく変な方向に伸びてるのが不穏だ。

 

 

「…ここで待ってても仕方ないな」

 

 

俺たちは嫌々ながら、一歩を踏み出した。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

最後の部屋に足を踏み入れる。

手術室のような部屋に、乾いた血液の跡。

中心には、古いタイプの映写機が、壁に映像を映し出していた。

 

 

「…なんかいるのかと思ったが、なんも居ねェな」

「出口を探そう。構図的に見て、そろそろ公民館の裏口あたりだ」

「命令すんな」

 

 

半分野郎に怒鳴り散らす元気もない今、俺は部屋を見渡そうとする。

 

 

 

 

『むこせー菌は、おれがやっつけたぞー!』

 

 

 

……は?

 

 

 

聞こえた声。

思い出したくない過去が、何処からか聞こえてくる。

反射的に、視線を映写機が映し出すソレに向ける。

 

 

 

『やめっ、やめてよっ…、かっちゃん…!』

 

 

 

そこには、俺の忘れたい過去があった。

No. 1ヒーローになるためには、大きすぎる障害となる映像。

それが、俺の目の前に流れていた。

 

 

「…っっっ、ぁンの、クソナードどもがァァァァァアアアアアッッッッッッ!!!!」

 

 

 

ボンッ!!

 

衝動が任せるままに、叩きつけるように、爆破で映写機をブッ壊す。

 

 

さっきから俺への当て付けか?

陰湿なことばっかしやがって…!!

 

 

壊れた映写機を蹴り飛ばす。

がしゃん、と壁に激突し、完全に壊れても、映像は壁に流れたままだった。

 

 

「どれだけ俺の足を引っ張ったら気が済むんだ、クソどもが!!

俺のオールマイトを超えるヒーローへの道の邪魔ばっかしやがってェ!!!」

 

 

感情のままに怒鳴り散らし、暴れた。

アイツらはこう言いたいんだろう。

俺の将来なんて、自分たちの掌の上だと。

ふざけるな。ふざけるな!!

俺の輝かしい未来が、テメェらの匙加減で潰されてたまるか!!

 

 

「…おい」

「触んなァ!!」

 

 

半分野郎が、俺を止めようと手を掴む。

ばっ、と手を振り払う。

すると、半分野郎は凄まじい形相で俺の胸ぐらを掴んだ。

 

 

「んの、馬鹿野郎がァ!!」

 

「がっ!?」

 

 

ごちん。

頭骨同士がぶつかる音が響く。

つぅ、と肉が裂けて血が流れる中、それを拭くことも許さず、半分野郎が続ける。

 

 

「テメェ、さっきから気に入らねーからって暴れて、恥ずかしくねェのか!!

嫌いなモンだから、自分より下のヤツだからって怒鳴り散らして!!

小さな子に、『大丈夫?』って聞くこともしねェで、なにがヒーローだ!?」

 

「…、ヒーローは、勝つモンだろォが…!

一番上って称号だろォが…!!」

 

「っの野郎ォ…!!歯ァ食いしばれェ!!」

 

 

俺が言うと、半分野郎は俺の頬に拳を突き刺した。

 

 

「テメェも、あのクソ親父みてェなこと言いやがって!!

いいか!?テメェのその超絶めでてぇお花畑頭に教えてやる!!

 

 

勝つだけなら…一番上になるだけなら、敵でもできる!!

 

 

アメリカのヴィラン史どころか、世界さえも震撼させたNo. 1ヴィラン…『世界最強の天才肌』と呼ばれた『フィクサー』は、誰にも討ち取られることはなかった!!

若き日のオールマイトも、傷一つ負わせることも出来ず、見逃されたって話だ!!

最後にはテレビをジャックして、生中継で自分より下だったヤツらを嘲笑いながら寿命で死んだ!!

 

フランスの最大級敵の『ディアブロ』に勝てたヒーローは、いまだに一人も居ねェ!!

それどころか、フランストップでさえ赤子扱いされるレベルだ!!

ソイツも、ヴィジランテの『SAVER』に国際中継の真っ只中、一撃でブチのめされた!!

 

そいつらがヒーローって呼ばれねェのはなんでだ!?」

 

 

半分野郎の言葉に、俺は言葉を詰まらせた。

その態度に、半分野郎は更に声を張り上げる。

 

 

「答えろォオオッッ!!!!!

勝ってるやつが…一番上のヤツがヒーローって呼ばれねェのはなんでだァアァァァァァアアアアアアッッッ!!!!?」

 

 

 

俺は、その答えがわからなかった。

 

 

 

呆然とする最中、どうして良いかわからないのだろう、バケモノがオロオロと半分野郎の肩を叩く。

 

 

「ちょっ、君!やめなさい!」

「離せ!!お前が答えるまで、俺はお前を殴り続けるぞバカ野郎ォ!!」

 

 

半分野郎が喚く最中、この施設から連れ出される。

俺とガキも同じように、外へと案内された。

 

 

意地張って、行かなきゃよかったんだ。

半分野郎と出会ったせいで、俺はこの答えに悩むことになってしまった。




次回から「ボンバーマン、アイドルに懐かれる」が始まります。かっちゃんメインです。お楽しみに。
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