そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。


かっちゃん、デクのもう一つの顔を知る

ガキの家にて。

ガキの両親に「あがってゆっくりしてけ」と言われ、よりによってデク共々客室に連れてかれた。

よほどの金持ちなのか、客室一つがアホほど広い。

メイドやら執事やら、空想だけのモンかと思ってたが、実在してたことに驚いた。

 

 

「珍しい。かっちゃんが机に足乗っけてない。明日、天変地異でも起きるの?」

「そりゃどう言う意味だクソナードォ!!

アホでも分かるくれェに高価なモンだから、損害賠償請求されねェよォにしてるだけだわボケ!!」

 

「不良ぶるなら、その世界トップクラスのみみっちさ捨てた方がいいですよ、ボンバーマン。略してボンマン」

「ンだときりたんぽォ!!ボンマンってなんだゴラ死ねや!!」

「『ぽ』はいりませんし、あと百年は死ぬ予定ないです」

 

 

コイツら、マジでぶっ殺す…!!

 

 

怒りを抑えるように掌を爆破させるも、右隣に座るコイツらはこれっぽっちも動じない。

特にデク。昔はビビり散らしてたのに。

小学4年あたりから「チラチラ光ってウザい」としか言わなくなった。

 

 

…石っコロが、調子に乗るんじゃねェよ…!

 

 

そんなことを思っていると、ランドセルを片付けたガキが、俺に飛びついてきた。

 

 

「バクゴーさーん!」

「ぐぶっ!?」

 

 

重さ約40キロが俺の腹に突き刺さる。

鍛えてはいるが、圧縮された内臓と衝撃の痛みから、情けない声が出た。

 

 

「魚雷みてェに突っ込んでくんな痛ェだろクソガキィ!!」

「バクゴーさんは避けないでしょ?」

「避けるかアホ!!

テメェなんざあと5倍デカくなっても簡単に受け止めたるわクソが!!」

 

「痛いのに?」

「痛くねェ!!」

「言うことの統一くらいしたらどうですかね。アホっぽく見えます」

「ンだとクソガきりたんぽォォォォォォォオオオオオッッッ!!!!」

 

 

俺が怒鳴ると、ガキが笑う。

くそっ。今日は厄日だ。

 

…久々に、デクとマトモ…かはどうか分かんねーが、会話をした気がする。

逃げてたということを突きつけられたようで、また腹が立った。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「ウナちゃぁぁああん!!迎えに来たよぉお、おおおお!!」

「っ、緑谷ァ!!ソイツら守れェ!!」

 

 

半分野郎とこないだのガリガリが、ぶっ壊れた壁の瓦礫とともに部屋に入ってきたのは。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

「…俺専用スーツ…ねぇ」

 

 

時は数分前に遡る。

先生の家に寄った帰りで、緑谷から貰った『轟焦凍専用スーツ1号』の入ったカプセルを手で遊ばせる。

 

要らねェ、って断ろうとも思った。

だが、これがないと、あの機械野郎に勝てる確率がないことも事実だった。

 

あの梅色事件。俺は戦闘面で役に立ったとは言えない。

むしろ、ただのお荷物だった。

緑谷から聞いた話じゃ、「人工個性は既存の個性とは一線を画すどころじゃない差がある」らしい。

ソレは俺も目の当たりにしてる。

腐っても。腐ってもNo.2の男を、軽々しく吹き飛ばす個性さえも作り出せるのだ。

俺が生身で相手した所で、ものの数秒で殺されるのがオチだ。

 

 

「…俺の個性も…応用しねェ限りは、通用しねェ確率が高い、か」

 

 

右指でマッチ一本ほどの火を、左指で爪くらいの大きさの氷を同時に生み出す。

あの時、ヒメとミコトを助けるために、がむしゃらになってやった同時発動。

このくらいだったら大丈夫だが、より大きい力になると、脳を酷使し過ぎて鼻血が出るんだよな。

それでただぶっ放す、もしくは熱膨張で吹き飛ばすくらいしか出来ないんじゃ、割りに合わない。

 

 

「メドローア習得しねェと」

 

 

現実であれだけ威力が出るかは分からないが、やってみる価値はある。

少なくとも、ただ氷と炎を放つよりはマシだろう。

そんなことを考えていると、豪華な家の前で何事かぶつぶつ言ってる男を見つける。

 

 

「くそっ…。あのガキ、僕のウナちゃんから離れろよ…。ウナちゃんは僕のなんだぞ…」

 

 

…通報するか。

 

逃げられても見つけられるように写真を撮り、警察に連絡を入れようとする。

 

 

 

その時。男は首筋に何かを打ち込んだ。

 

 

 

「ぉ、おお?おおお!

わかる!わかるぞ!ぼ、僕にも、強い個性ががががあ、ぁぁ…!!」

 

 

挙動がおかしい。

カラカラと転がってきた筒が、俺の爪先に当たる。

 

俺がそちらの方をちらり、と見ると、『人工個性試作品』と書かれたラベルがあった。

 

 

人工個性を量産する準備をしている…?

ぞっ、と首筋に冷たいものが走るのがわかる。

あんな危険なモンが、あんないかにも危険そうなヤツの手に渡ってる。

 

 

「っ、アンタ!」

「ウナちゃぁぁああん!!今、会いに行くからねぇぇぇぇぇええ!!」

 

 

俺が男の前に飛び出した時には、すでに遅かった。

拳から放たれた風圧で、俺は無様に吹き飛ばされた。

豪華絢爛な家の壁にぶつかるも、氷でなんとか受け身をとる。

が。続け様に衝撃が走ると、壁が砕けた。

砕けた壁の奥を見ると、目を開く緑谷が真っ先に目に入る。

 

 

「ウナちゃぁぁああん!!迎えに来たよぉお、おおおお!!」

「っ、緑谷ァ!!ソイツら守れェ!!」

 

 

俺が声を張り上げると共に、緑谷がシリウスを纏い、デカイ盾を作り出す。

人工個性相手に、出し惜しみはしてられない。

カプセルのボタンを押し、貰った腕輪に認証させる。

瞬間。俺の体は、水色がかった白と赤の鎧に包まれた。

 

 

「状況は!?」

「人工個性の試作品!!ウナって子を狙ってる!!以上!!」

 

がしゃん。

高級そうな机が、俺の足で砕け散る。

仮面越しに映る男の姿が、ボコボコと音を立てて変わる。

 

 

「ウナちゃんから離れろよぉおお、爆発頭のクソガキぃぃぃいいいい、いい、イイイイイィィィッッッ!!!」

 

 

アンバランスな体型のソイツは、怪しい光を灯した瞳をボンバーヘッドと、音街ウナへと向ける。

 

さっきの言動と言い、個性社会のアイドルの追っかけって過激だなァ!!

 

 

「…デクに、半分野郎…?

テメェ、そのカッコ…SAVER…?」

「かっちゃん、説明は後!早くこの場から離れて!」

 

 

東北が小さな機械を取り出し、この間、俺を守っていたあの膜を張る。

振り下ろされた拳が膜に激突するとともに、凄まじい風圧が、家の一角をめちゃくちゃに破壊する。

 

 

「緑谷先輩、時間稼ぎ頼みます!

私は自立リゲルと救助に向かいます!」

「分かった!気をつけて!」

「むーーーっ!!むぅーーーーーっ!!!」

「ウナちゃんんんん!!ソイツらはダメだよぉおお!!ボクと一緒にいきよよよぉおお、よぉおお!!」

 

 

何か言いたげなボンバーヘッドを、縄でぐるぐる巻きにして引きずってく東北と音街。

彼女らが部屋から去るのを待たず、男がそれを追いかけようとする。

 

 

「ジャスティスゥゥ…」

「ヘルズスキル…」

 

 

分子の遠隔操作をスーツの機能によって可能とし、停止させる。

触れてなきゃ強く、瞬時に冷却出来ないという弱点を消した、このスーツありきの技。

 

 

「ブロォォォオオオオオォォォオオオオオオオオオオッッッ!!!」

「コキュートスバインド!!!」

 

 

本当だったら漢字のほうが良いんだが、正体バレは防ぎたい。

緑谷作のスーツはなんでもありだし、個性の特定はされないだろう。

氷によって磔にされた男に、緑谷の拳が叩き込まれる。

不純物ゼロの純氷だ。そう簡単にヒビは入らないし、身動きも取れないだろう。

人工個性相手だ。手加減も油断もしてられない。

 

 

「僕とウナちゃんの邪魔するなぁぁあ!!」

「いっ…!?」

「んなっ…!?」

 

 

これっぽっちも効いてない…!?

冗談だろ…!!隕石砕く拳だぞ!?

 

純氷をあっさりと破壊し、男は緑谷に殴りかかる。

緑谷はそれを咄嗟に避けることなく、両腕でそれを受け止めた。

 

 

「轟くぅうん!!今のっ…ぎぎっ…、うちにぃ……、攻撃をぉ!!」

 

緑谷の余裕の無さそうな声が響く。

左側の炎でジェネレーターから放出されるエネルギーを燃やし、更に威力を増大させたものを指先に集中させる。

 

 

「ヘルズスキル・インフェルノレイ!!」

 

 

指先から放たれた熱線が、男に襲いかかる。

だが、その一撃は謎のバリアによって阻まれてしまった。

 

 

「…は?」

「流石は人工個性いい!!僕の思った通りに変わってくれるうぅう!!

この力があれば、ウナちゃんとあんなことも、こんなこともおおぉおふふふふ!!」

 

 

その笑い方、あの肝試しを思い出すから今すぐやめろ!!

 

口から出ようとした言葉を飲み込み、緑谷を投げ飛ばした男を氷結と全身で食い止める。

それでも、東北が逃げた方向へと無理に進もうとする男に、俺は声を張り上げた。

 

 

「っ、テメェ、あの子の何が目的だ!?」

「そんなのぉ、体に決まってるじゃないかぁぁあ!!」

「あァ!?あんな子の体に、人工個性に関するモンがあるってのか!?」

「関係ないよぉ!あの子を僕のお嫁さんにするんだからぁぁあ!!」

 

 

イカれてやがる!!

あの子がまだ結婚できる歳じゃないって、正常な判断も出来ねェのかよコイツ!!

 

火に油を注ぐことはせず、純氷の壁を幾重にも重ねた箱で閉じ込める。

飛ばされた緑谷が駆け寄り、その箱にバリアを張った。

 

 

「これで閉じ込めた!出る前に催眠音波を流すから、耳栓を…」

「っ、緑谷!!すぐに離れろ!!」

 

 

びしり。

氷に、バリアに、ヒビが走る。

俺は咄嗟に氷を緑谷の前に作り、彼を傍に抱えて一歩下がる。

次の瞬間には、そこには大きな穴が開いていた。

 

 

「邪魔だぁぁぁああ!!僕とウナちゃんの邪魔ををををォォォオオオオオ!!」

 

 

奇声を上げながら、竜巻を発生させる男。

スーツに切り傷がついたあたり、触れたものを斬る竜巻を起こしてるんだろう。

人工個性ってのは、本当にデタラメだ。

攻撃は兎に角、アホみたいにタフな相手だ。

なら、そのタフさを捻じ伏せる攻撃でブチのめすしかない。

 

 

「コイツ、慣れてねェし興奮してっからバカみてェな火力の個性しか作らねェ!!

緑谷!!紲星ン時に使ったっつー装備に替えろ!!」

「え!?下手したら殺しちゃうかも…」

 

 

緑谷はそう躊躇うが、相手をただの人間と見ない方がいい。

梅の一件と、紲星の存在で、そのデタラメさはよく知ってるだろ。

俺は緑谷に語りかけるように言うと、声を張り上げ、熱線と氷の散弾銃を放った。

 

 

「いいから早く替えろ!!街一つ簡単に吹っ飛ばす奴が相手なんだぞ!!

安心しろ!!相手はこんだけ殺す気で攻撃しても死んでねェんだ!!

簡単にはくたばらねェ…がぁっ!?」

「うるさぁぁあああい!!」

 

 

俺の腹に拳が突き刺さる。

俺がそれを言い終わる前に、景色が線になる。

拳によって吹き飛ばされたと悟るのに、数秒にかからなかった。

 

 

「緑谷ァああっっ!!!

後で戻る!!それまで絶対ェ音街ンとこ行かすんじゃねェぞ!!」

 

 

遠のいていく緑谷に、声を張り上げる。

通信で拾っていたのだろう。

緑谷は少し頭を抑えるそぶりを見せながら、サムズアップしていた。




お待たせしました。次回、かっちゃん覚醒(ただし口の悪さは変わらない)
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