「かっちゃん…」
「ボサッとすんなデク!!
テメェらと違って、俺は障子紙程度の強度があればいいところだ!!
とっととソイツぶっ殺せ!!
俺が死んでガキ連れてかれたら、あの世から這い上がってきてブッ殺すからなァ!!」
「言ってること無茶苦茶なんだけど!?」
「いーから早よやれ俺が死ぬ!!」
「かっちゃんから一生出ないような台詞出た!!」
「いちいち驚いてんじゃねェぞあとでぶっ殺すから覚えてろォ!!」
かっちゃんと久々に大声で会話した。
いつもならすんごい顔つきで怒るのに、今は少し笑ってるように見える。
口の悪さは相変わらずだけど。
拳を握り、かっちゃんに迫る男の腹に叩き込む。
あかりさんの時に使った装備は、火力が高すぎて使い難い。
そう思っていたが、相手が硬すぎる場合はこれが丁度いいらしい。
隕石より硬い個性ってなんだ。もう何度も言ってるが言わせて欲しい。
人工個性デタラメすぎだろ!!
「さっきからららぁ…、ウナちゃんと僕の邪魔するなって、言ってててるるるるだろろろぉぉおおおっっ!!」
「するだろ!!子供泣いてんだから!!」
「一般常識も身についてねェ大人に子供がホイホイついてくかそのシワの少ねェ脳みそに知識詰めてこい馬鹿野郎!!」
「理想と現実の区別つかないロリコン中年とか、惚れる要素ゼロじゃないですか。
女性全員が恋愛対象外って言いますよ」
「テメェみてェなアブねェ妄想男にこのガキ懐くか!!俺が言うのもなんだがなァ、現実見つめ直してから来いやクソガリィ!!」
「後半三人、火に油注いでどうするんですか!?」
音街さんのツッコミが響く。
でも、その甲斐あってか相手のこめかみがピクピクしてる。
年中キレて高血圧で死にそうなかっちゃんみたいに、キレてても冷静さを失わないタイプじゃない。
キレて冷静さを失うタイプだ。
「ぉお前らぁぁああっ!!ぶっ殺ぉぉおおおすっっ!!」
「「「やってみろォ!!こっちがお前をブッ飛ばァすッッッ!!!」」」
僕たち三人の声が響いた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
『ポンコツゥゥゥ……っ!!
私の食べ歩きを邪魔するとは、万死に値するぅぅうう…!!』
『あ…キズナさん、まだソレ根に持ってるんですか…』
あかりさんが地獄の底から響くような声で、私への恨み節を放つ。
最近はここいらの商店街を回って、おばちゃんからコロッケを買うのが日課とか言ってたっけ。
現在、私たちはというと。
専用機となったカノープスとアルデバランを身に纏い、プロヒーローと交戦していた。
理由は…察して欲しい。
緑谷くんたちが交戦してる=私たちは囮役ってことになってるんですから。
「キズナ!オールマイトから逃げ切れたその実力、確かに認めよう!!
だが!俺は力を持たない人を守るために、ここに立っている!!
お前がここに現れるだけで、どれだけの人が恐れてしまうと思っている!?
このシンリンカムイ、例え貴様の足元にも及ばずとも、貴様を死ぬ気で食い止める!!」
あの肝試しからカッコよくなりましたよね、シンリンカムイ。
実力も少しは向上したのか、テレビで見るよりも樹木の伸びが早く、複雑だ。
しかも、まだまだ余力を残してそうである。
手加減してるとは言え、あかりさんが釘付けになっている。
私はその他のプロヒーローを相手にしているが、全体的に実力が向上している気がする。
エンデヴァーの事務所の人たちよりは流石に厳しくないが、それに迫る勢いで、波状攻撃が放たれる。
『むぅうう…。タイミングバラバラだから、予測立てるのが難しいですぅ…』
「キズナの協力者はこちらに任せろ!!
カムイ、キズナに何もさせるなァ!!」
「有難い…!」
私には、息もつかせぬ波状攻撃。
あかりさんには、下手に身動きが取れない樹木の牢獄。
あくまで緑谷くんたちのサポートの私たちは、攻撃を捌くことくらいしかできない。
あかりさんはその気になれば、樹木の牢獄程度、一撃で吹っ飛ばせる。
しかし、シンリンカムイの腕からそれが伸びているとなると、話は別。
腕丸ごと吹っ飛ばす可能性がある。
『こういうタイプの時間稼ぎが、一番大変なんですねぇ…』
私がそう呟いたその時だった。
「ウナちゃんはァああっ!!
僕のお嫁さんなんだぞォォォォォォぉぉおおおォォォォォォオッッッ!!!!」
街に影を落とす、巨大な化物が現れたのは。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「閃光弾って知ってるかァ!?
スタングレネードォ!!」
かっちゃんの目眩しで敵が怯む。
轟くんがその隙に敵を凍らせ、氷を壊される前に熱線を放った。
「ナイスだボンバーヘッド!!」
「爆豪勝己だ半分や…轟ィ!!」
「そりゃ悪かったな、爆豪ォ!!」
かっちゃんと轟くん、実は結構相性が良かったりするのだろうか。
そんなことを考えるが、首を横に振って要らない思考を霧散させる。
「くそぉ…!炎が邪魔で…!」
爆炎、熱線による2連目眩しで敵が怯む。
僕は地面がひび割れるほどに踏みしめ、拳を強く握った。
「正義のォっ!!昇ォッ!竜ゥゥッ!!けェェぇぇえええんッッッ!!!」
「がべっ!?」
要するに、ただのアッパーだ。
僕のアッパーカットが、敵の顎を捉える。
ずずぅん、とその体が沈むのを確認し、僕は手の埃を払った。
昇竜拳という名称にしたのは、正確ではなかったかも。
アッパーカットを日本語に訳すと、如何してもダサくなるから、きりちゃんの案を取り入れたんだけど。
「アッパーにしたのは、鎌倉山割った時の反省ですか?」
「あ、うん。街、割っちゃうし…」
「話半分に聞いてたんですけど、本当だったんだ…」
「ンなモン作れるくらい頭いいなら加減しろや」
「いや、あの時は頭に血が昇ってて…」
「爆豪みてェな状態だったわけか」
「ソレ俺が年中キレてるってことかァ!?」
「「「「うん」」」」
「…ッソがァ!!反論できねェエ!!」
こうやって、かっちゃんと楽しく会話ができる日が来るなんて。
かっちゃんと協力して、敵に立ち向かう日が来るなんて、思いもしなかった。
そう考えると、おかしくなって。
かっちゃんからは見えてないけれど、僕は笑みを浮かべた。
「…バクゴーさん。カッコ良かったです」
「………そうかよ」
音街さんの言葉に、かっちゃんが少し笑って、彼女の頭を撫でた。
その時だった。
「ダメだよぉ…。だめなんだよよよよぉおおおおっっ!!その男は、ダメなんだァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
敵が奇声と共に起き上がる。
僕らが戦闘態勢を取ったその瞬間。
彼の体が、一瞬にして膨張した。
僕らは知っていたはずなんだ。
人工個性が、人の手に余るものだって。
僕らは知っていたはずなんだ。
『人工個性が人間に埋め込まれていた例がない』ことに。
「ウナちゃんはァああっ!!
僕のお嫁さんなんだぞォォォォォォぉぉおおおォォォォォォオッッッ!!!!」
人工個性に飲み込まれた敵…いや。
細胞単位で人とは呼べない怪物が、そのアギトを開いた。
次回でかっちゃんメインは終わります。
ちょっとした一幕
爆豪「デ…出久!!」
緑谷「ごめんまって気持ち悪い吐きそう。デクでお願い」
轟「すまん、気持ち悪い。俺でも吐きそうだ」
東北「おえっ」
爆豪「テメェらァァア!!」