そうだ、先生になろう。   作:鳩胸な鴨

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サブタイトル通りです。


ガチハロウィン、開催
先生、青筋でメロンになる


緑谷くんたちがサバイバルから帰還し、一週間後。

つづみさんは彼らのことをいたく気に入ったらしく、空いてる日に希望があれば稽古を付けることになった。

現在、僕は子供たちを連れて、興味本位でその稽古場…緑谷くん作の浮遊大陸…に訪れてるわけだが…。

 

 

「…ば、バクゴーさんたち、大丈夫?」

「「「「大丈夫に見えるか?」」」」

「見えませんごめんなさい」

 

 

死屍累々としていた。

目の前で一方的にボコボコにされた四人は、大の字で寝転びながら音街さんに問う。

プロヒーローでもここまで容赦のない訓練とかやるんだろうか。

 

 

「親父のよりはマシだぞ。アレはただのアホだ。アホアホの実を食ったアホ人間のダメ親父だ。まるでダメな親父でマダオだ」

「エンデヴァーのことになると饒舌に貶しまくるよね、君…」

 

 

父親が嫌いすぎて反抗期が天元突破してる。

縁切られるんじゃないか、とも思ったけど、むしろ喜びそうだ。

下手なエンデヴァーアンチよりアンチしてるな、轟くん。

 

 

「エンデヴァーの強みは冷静な判断力と、長年磨き上げた個性によるものよ。

国内なら、彼に敵う敵は少ないんじゃないかしら?そうなると、必然的に、格上との戦闘も経験しなくなる…。

だから、前例のない事態に非常に弱い。

テンパる事態に陥ったことも少ないから、テンパった時のリカバリーが極端にド下手。

轟くんにもその癖があるから、矯正が効く今のうちに叩き直すわよ」

「わかりました……」

 

 

エンデヴァーと似た欠点があると言われて、露骨に嫌そうな顔をする轟くん。

血縁までも嫌ってそうだ、アレ。

…そういや、つづみさんが轟くんをサバイバルに誘う際、突っかかってきたからブチのめしたって言ってたな…。

今度、菓子折りを持って謝りに行こう。

 

つづみさんの「殺すこと前提の強さ」は、戦闘において「ヒーローとして対応するための強さ」よりも理に叶ってる部分が多い。

彼女がエンデヴァーに勝てたのは、それが大きな要因だろう。

殺しを極めた女に心をへし折られて、変な方向に向かわれても迷惑だ。

よそ様の家庭に口出しするのは気がひけるが、轟くんのために動いた方が良いのかもしれない。

 

 

「お茶子ちゃんは、格闘のセンスはズバ抜けてるわ。体運びがすごく上手。

でも、本格的にやったことがないから中途半端に終わってるのよね。

コウくんの知り合いに、格闘術が得意な子がいるから、師事を仰いでみたら?」

「は、はひ……っ」

 

 

麗日さんが息も絶え絶えに、つづみさんの言葉に頷く。

あの子には、初めて女の子を紹介するなぁ。

修行した後にスイパラを連れ回す未来が鮮明に見える。

 

 

「爆豪くん。個性を使った立ち回りは、かなり上手いわ。

ただ、動きがパターン化し過ぎ。対処された時の対応も、初見だったら通じるけど、二度目からは通じないわ。

全体的にパターンの使い回しが多いから、臨機応変に対応できるまで徹底的にやるわ。

地獄見るけど、覚悟はできてる?」

「わーってらァ…!次はブッ殺す……!!」

「あと、殺意も中途半端。

それを使ったフェイントも重ね合わせたら、手数が増えるのと同義なのにね」

「………っ、そがァ!!!!」

 

 

爆豪くんの「殺す」、本職には通じないことが判明。

顔面の圧だけで言ってるようなものだったし、無理もないんだろうけど。

 

 

「で。緑谷くん。君は分析力と判断力はズバ抜けて良いわ。

多分、人類の中で最もソレに優れてる。

…でも、それ以外は全ッッッッ部ダメ!!

ダメダメの実でも食べたのかってくらいダメすぎて呆気に取られたわ!!!

はっきり言って、惰性で部活してる中学生のがまだマシよ!!!」

「……は、は…ひっ……!」

 

 

緑谷くんがボロクソ言われてる。

小学校の頃から、体動かすのは得意じゃなかったからなぁ。

基礎体力は人並み以上にあるけれど、ルールある競技になるとてんでダメになっていた。

頭では最適な動きを理解しているんだろうが、体を動かし慣れていないらしい。

結果、彼が最も厳しい評価を下されることとなった。

 

 

まぁ、要するに。鈴木つづみは、一等星における「師匠ポジ」になったわけだ。

ただし、頭にスパルタの付く。

因みに。轟くんに思うところはないかと聞いたところ、「個性鍛えるよりも有効。個性は個人の発想力次第だから」と、言外にエンデヴァーの修行を否定し、つづみさんの修行を持ち上げてた。

ううむ。エンデヴァー嫌いが加速してる。

エンデヴァーはただ教え方が押し付けに近いだけで、同じ個性持ちならば有効な修行ではある…つづみさん談…らしいんだけど…。

嫌うな、とは言わない。

気が合わないのはもう仕方がないのだから、その血縁を利用するということも覚えてほしい。

 

修行を終えた四人に、子供たちがスポーツドリンクを渡す最中、僕は隣に座り込んだつづみさんに問うた。

 

 

「やってみてどうですか?」

「……教えるのって、大変ね。

その子たちに足りないものは、それぞれまったく違うものだから」

 

 

そりゃあ、な。

その子に必要なものを見抜く目が無ければ、教育なんてやらない方がいい。

必要としているものじゃなくて、これがあればもっと輝ける、欠落したもの。

それを見抜けなければ、やりたいことしかやらない中途半端な子供の出来上がりだ。

 

 

「そう考えると、教師って給料の割に合わない仕事量よね」

「まぁ、そうですね。

正直、プロヒーロー兼教師やってるヒーロー科教師の方が、はるかに給料はいいです」

 

 

ヒーロー科教師の給料は、普通の教師の給料が雀の涙に見えるほど高い。

小学校の教師の給料…何倍だアレ。

ヒーローとしての歩合給と合わせれば、僕からすれば乾いた笑みしか出ないほどに高いのは確かだ。

 

 

「…さっきから、携帯鳴ってるわよ」

「へ?」

 

 

給料への不満を心の中で愚痴っていると、つづみさんが僕のカバンに指を刺す。

言われた通りにその中身に手を突っ込み、ブーっ、ブーっ、と揺れる携帯を取り出した。

どうやら、知らないうちにマナーモードにしていたらしい。

液晶に映る名前は、町内会会長のものだった。

…嫌な予感しかしない。

出ないわけにもいかないため、僕は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。

 

 

「もしもし…。あ、はい……。

 

……はぁああっっっ!?!?!?

えっ、ちょ、マジで言ってんですか!?!?

あと何日だと思って…ああ切れてる!!!」

 

「ど、どうしたの…?」

 

 

マジか畜生。

告げられた「お願い」という名の強制命令に、僕は眉間を抑える。

あのボケ老人、本当に町内会から出ていってほしいんだが。

ふと、周りを見ると、僕の叫び声に反応してか、皆がぽかんとしていた。

…この際巻き添えだ。協力してもらおう。

 

 

「……ハロウィンの出し物考えろと」

「折寺って、そんなこともしてんのか?」

「まぁ。死ぬほど盛り上がらねェクソみたいな仮装大会だぞ」

 

 

折寺、町内会のメンバーが妙なところで季節イベントに乗り気なんだよなぁ。

盛大に大コケしてるのに、懲りずに続けるくらいには。

お盆の出し物が大成功したから、ハロウィンも押し付けようって魂胆だろう。

全く、いい性格してる。

 

 

「ウチの地元はやらんなぁ…。

で、その出し物はいつやるん?」

 

 

そこに触れるか、麗日お茶子。

正直、口にも出したくないが、言わなければ伝わることもないだろう。

僕はため息混じりに、その事実を告げる。

 

 

「三日後です」

「……………………はい?」

「三日後です」

 

 

これだから折寺の町内会は大っ嫌いなんだ!

重要なことほど後で伝えやがって!!

もし会社だったら、とっくの昔に倒産してるわ!!!

忘れていた。あの連中の無責任さが、この二ヶ月ですっかり頭から抜けていた。

そのことを今更後悔しても、もう遅い。

 

 

「……東北さん。ずん子さんに連絡を」

「あの、先生…?」

 

 

こうなったら、トコトン全力でやってやる。

仮装パーティー?生ぬるい。

 

 

「ガチハロウィン、やりましょう」

「青筋でメロンみたいになってる…」

「そりゃ怒るわ…」

 

 

学問に青春全てを捧げてきた僕を舐めるんじゃない。

ハロウィンの由来くらい、とっくの昔に知っている。

なら、その再現と行こうじゃないか。

恐怖のドン底まで叩き落としてやる。




折寺の町内会は総じて無能揃いです。やる気がないので。
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